病院薬剤師の年収はなぜ低い?5つの構造的理由と年収を上げる現実的な方法
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病院薬剤師の年収が低い構造的な理由を厚労省データで解説。平均年収569万円の内訳、薬局・DSとの生涯年収差512万円の実態、年収を上げる3つの方法まで。
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薬剤師じいさん
薬剤師歴70年の大ベテラン。病院・薬局・ドラッグストアすべてを経験してきた生き字引。豊富な経験と公的データに基づいて、若手薬剤師の悩みにズバッと答えます。

みさ
新卒2年目の若手薬剤師。病院で働いているけど、年収やキャリアに不安を感じている。全国の悩める若手薬剤師を代表して、気になることをどんどん質問していきます!
結論:病院薬剤師の年収が低いのには構造的な理由がある。ただし「損」とは限らない
病院薬剤師の年収はなぜ低い?
- 1病院の非営利性・診療報酬制度・人件費構造など、年収が上がりにくい5つの理由がある
- 2生涯年収は病院の方がわずかに高い。薬局との差はたった512万円
- 3病院に残っても資格取得・管理職・国公立移籍で年収アップは可能

先生、病院薬剤師って年収が低いって聞くんですが、このまま続けるべきか迷っています…

その悩みはとても多いぞ。まず数字を押さえよう。厚労省「第24回医療経済実態調査」によると、病院薬剤師の平均年収は約569万円、薬局の一般薬剤師は約486万円じゃ。

あれ、全年齢で見ると病院の方が高いんですか?

そうじゃ。ただし注意点が2つある。1つは、薬局で管理薬剤師になると平均約735万円と大きく上がること。もう1つは、20〜30代に限ると病院の方が低く出やすいことじゃ。だから若手は「病院は低い」と感じやすいんじゃな。

じゃあ、年収だけで判断しない方がいいということですか?

その通りじゃ。この記事では、年収が低い構造的な理由、生涯年収データ、続けた方がよい人・転職した方がよい人の特徴、そして年収を上げる方法まで整理していくぞ。
病院薬剤師の年収が低い5つの構造的理由

まず押さえておきたいのは、年収が低いのはみさ個人の問題ではなく、業界の構造に原因があるということじゃ。1つずつ整理していこう。
理由①:病院は非営利が原則で、利益を給与に反映しにくい

まず最も根本的な理由は、病院の経営構造じゃ。医療法により、病院は非営利性を保つことが求められておる。一般企業なら売上が伸びれば社員の給与に還元しやすいが、病院はそういう仕組みになっていないんじゃ。

たしかに、ドラッグストアは業績が良ければ給与も上がりそうですけど、病院ではあまり聞かないですね…。
理由②:診療報酬制度が病院の収益を制限している

2つ目は、収入の上限が制度で決まっていることじゃ。病院の収益は診療報酬で大部分が決まる。薬剤師がどれだけ頑張っても、得られる報酬は制度の範囲内。2023年度の一般病院の医業利益率は平均マイナス1.7%じゃ。そもそも赤字の病院が多いんじゃよ。

赤字経営だと、給与を上げる余裕なんてないですよね…。
理由③:医師・看護師と比べて人件費削減の対象になりやすい

3つ目は、病院内での人件費の優先順位の問題じゃ。病院経営で人件費を配分する際、医師や看護師は診療・入院体制の維持に不可欠で、配置基準も厳しい。結果として、薬剤師は相対的に人件費を抑えやすい部門になっておるんじゃ。

うう…薬剤師も必要な存在なのに、コスト削減の対象になりやすいんですね。

もちろん薬剤師は必要不可欠じゃ。ただ、経営判断として人件費の配分に差が出やすい構造があるということじゃな。
理由④:新卒に人気が高く、高い給与を出さなくても採用できる

4つ目は、労働市場の需給バランスじゃ。病院薬剤師は臨床経験を積めるため新卒の人気が高い。応募者が多ければ、病院側は高い給与を提示しなくても採用できてしまうんじゃ。

たしかに、私も就活のとき病院を志望する同期がすごく多かったです。人気があるからこそ給与が上がりにくいって、なんだか皮肉ですね…。
理由⑤:ドラッグストアの高年収と比較されやすい

最後の5つ目は、比較対象の問題じゃ。大手ドラッグストアでは新卒初年度から年収500万円を超える提示が珍しくない。実際の数字を見ると、ウエルシア薬局は初年度で年収515万円以上、ツルハドラッグも480万円以上が見込まれておる。

SNSで「ドラスト初年度500万超えた」みたいな投稿を見ると、つい比べちゃって…病院の20代380万円だと見劣りしますよね。

実際に若手の段階では50万円以上の差がつく。ただし、それだけで「病院は損」と決めるのは早計じゃ。次は生涯年収で比較してみよう。

5つの理由を聞くと、個人の問題じゃなくて業界の構造の問題なんだってわかりました。でも、実際のところどのくらい差があるんですか?

その通りじゃ。構造を理解した上で、次はデータを見てみよう。まずは自分の年収が相場と比べてどうなのか、客観的に把握しておくのもよいぞ。
生涯年収で見ると、病院と薬局の差はわずか512万円

構造的に低くなりやすいのはわかりました。じゃあ実際、薬局やドラッグストアとどのくらい差があるんですか?

ここからはデータで確認しよう。単年の年収ではなく、生涯年収で見ると景色が変わるぞ。厚労省の偏在資料によると、65歳まで常勤で働いた場合の生涯年収は、病院薬剤師が約2億3,280万円、薬局薬剤師が約2億2,768万円じゃ。差はわずか512万円で、病院の方がわずかに高い。

え、512万円差…40年以上で考えると思っていたより変わらないじゃないですか。もっと差があるかと思っていました。

そうじゃ。40代以降は病院の昇給カーブが大きくなるから、長期的には差が縮まるんじゃ。

でも正直、「40代になれば追いつく」って言われても、今の生活がキツいのは変わらないんですよね…。奨学金の返済もあるし。

その通り。さっき理由⑤で見た通り、20〜30代は病院の方が低い時期が10年以上続く。奨学金返済や家庭形成など出費が多い時期と重なるから、「病院は低い」という体感は的外れではないぞ。

長い目で見れば大差ないと頭ではわかっても、今の生活に余裕がないとなかなか…

まさにそこが判断のポイントじゃ。下の表で年代ごとの具体的な差を確認してみよう。
年代別・業態別の薬剤師年収比較(厚労省 偏在資料より)
| 年代 | 病院薬剤師 | 薬局薬剤師 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 20代 | 約380万円 | 約430万円 | −50万円 |
| 30代 | 約500万円 | 約530万円 | −30万円 |
| 40代 | 約600万円 | 約600万円 | ±0万円 |
| 50代 | 約700万円 | 約600万円 | +100万円 |
| 生涯年収 | 約2億3,280万円 | 約2億2,768万円 | +512万円 |

50代で100万円も差がつくんですね…。そういえば、大学の同期でドラッグストアに行った子はけっこう稼いでるみたいなんですが、ドラッグストアはどうなんですか?

ドラッグストアは公的な年代別データがないため正確な比較はできん。ただし、大手3社(ウエルシア・ツルハ・マツキヨココカラ)の求人情報から年収の中央値を約580万円と推計すると、生涯年収は約2億5,000万円前後になる。病院・薬局より高めに見えるが、あくまで求人サイトの掲載情報からの概算じゃから、厚労省データに基づく比較とは精度が異なる点は注意じゃ。
国公立病院と民間病院で年収はどれくらい違う?

次は、同じ病院でも国公立と民間でどれくらい違うかを見ておこう。国公立病院の薬剤師は公務員扱いで、初任給は月約20.3万円(年収約300万円)と低いが、毎年の定期昇給で月額5,000〜7,000円ずつ上がっていく。長く勤めれば平均年収600万円以上に達し、役職次第では800万円超も可能じゃ。

初任給は低くても、毎年確実に上がっていくのは安心感がありますね…。私は民間病院なので、正直うらやましいです。

民間病院の状況も整理しておこう。医療法人の平均年収は約529万円じゃ。初任給は国公立より高めに出ることもあるが、定期昇給が保障されていないケースが多い。病院の経営状況に左右されやすく、昇給額の見通しが立ちにくいのが特徴じゃ。
国公立病院と民間病院の年収比較
| 項目 | 国公立病院 | 民間病院 |
|---|---|---|
| 初任給(月額) | 約20.3万円 | 約22〜25万円 |
| 定期昇給 | 毎年あり(月5,000〜7,000円) | 保障なし(経営状況次第) |
| 平均年収 | 600万円以上(国立病院:約627万円) | 約529万円(医療法人) |
| 管理職クラス | 800万円超も可能 | 600〜700万円程度 |
| 退職金(35年以上) | 1,500万円以上 | 病院により異なる |

長期的には国公立の方が有利なんですね。

退職金も含めた生涯収入で見ると、国公立の方が有利になりやすい。ただし採用枠が限られるため、民間から国公立への移籍は計画的に準備する必要があるぞ。
3業態比較で自分の立ち位置を確認する

年収のデータは整理できてきたんですが、正直、年収だけで決めていいのかなっていう迷いもあります…。

いい視点じゃ。ここからは年収以外の軸も見ておこう。働き方・身につく経験・向いている人の3つで整理したのが下の表じゃ。

病院は医師や看護師との多職種連携など、他の業態では得にくい経験が積めるということですね。

そうじゃ。病棟業務やチーム医療の経験は病院ならではの強みじゃ。薬局は日勤中心で在宅・地域連携に関われる。ドラッグストアはOTCや店舗運営など幅広い業務を経験できる。年収だけでなく、自分がどんな経験を積みたいか、どんな働き方が合うかを軸に考えることが大事じゃ。
病院薬剤師を続けた方がよい人の特徴
やりがい・専門性に価値を感じている

ここまでデータを整理してきたが、次は「じゃあ自分はどうすべきか」の判断基準を見ていこう。まず、病院に残った方がよいのは、病院業務そのものにやりがいを感じている人じゃ。病棟業務やチーム医療、専門性の深化は病院ならではの経験で、後のキャリアの基礎にもなる。年収だけで辞めるのはもったいないぞ。

それは刺さります…。私、病棟で患者さんから「ありがとう」って言われる瞬間が好きで今の仕事を続けてるところがあるので。
国公立病院で長期キャリアを築ける環境にある

たしかに、チーム医療の経験って病院でしか積めないですもんね。私もカンファレンスで医師と議論できるのは、やっぱり病院ならではだなって感じます。

その気持ちは大事にした方がよい。加えて、国公立病院に勤めている場合はさらに有利じゃ。上の比較表で見た通り、国公立は定期昇給と退職金が手厚いから、安定と長期的な収入を重視するなら国公立で腰を据える選択は合理的じゃよ。
40代以降の昇給カーブで逆転できるキャリアパス

でも私みたいに民間病院だと、そこまで待てるのかなって不安もあります…。40代以降に逆転するって、ほんとに実感できるものなんですか?

先ほどの年代別テーブルで見た通り、40代で病院と薬局は同額に追いつき、50代では病院が100万円上回る。長く勤め続けることで、薬局の一般薬剤師を上回るポジションに到達しやすい構造があるんじゃ。

薬局で管理薬剤師になるルートと比べるとどうですか?

そこは注意が必要じゃ。3業態比較で触れた通り、薬局の管理薬剤師は平均約735万円と高い。あくまで「一般薬剤師同士」で見たときに病院が逆転するという話じゃな。
転職を検討した方がよい人の特徴
年収への不満が継続している

一方で、転職を検討した方がよいケースもある。まず、年収への不満が継続して強い場合じゃ。転職エージェント各社の情報によると、病院から調剤薬局やドラッグストアへの転職で年収が50〜100万円アップするケースは珍しくない。特に3〜5年の病院経験があると、病棟業務やチーム医療の経験が評価されて交渉力が高まるんじゃ。
忙しさと待遇が見合っていない

50〜100万円アップは大きいですね…!正直、同期で薬局に転職した子がまさにそのくらい上がったって聞いて、揺らいだことあります。

その気持ちはよくわかる。もう1つ、忙しさと待遇が見合っていないケースも見ておこう。厚労省資料では、薬剤師不足を感じている病院の53.3%で時間外勤務が増えているとされておる。

それだけ負荷が高いのに、給料に反映されにくいということですよね…

その通りじゃ。責任や負荷が重いのに待遇面の納得感が低いなら、その違和感は無視しない方がよいぞ。
働き方を変えたい明確な理由がある

「違和感を無視しない」…それ響きます。私も最近、このままでいいのかなってモヤモヤが消えなくて。

そのモヤモヤの正体が年収なのか、それとも働き方なのかを見極めることも大事じゃ。外来中心で働きたい、管理職に挑戦したい、地域を変えたいといった希望がはっきりしているなら、それも立派な転職のタイミングじゃぞ。
病院薬剤師のまま年収を上げる方法

でも、まだ転職するって決めたわけじゃないんです。病院の仕事自体は好きだし…今のまま年収を上げる方法があるなら知りたいです。

その考え方は正しいぞ。病院に残ったまま年収を上げる方法は主に3つある。
専門・認定資格の取得

1つ目は専門・認定資格の取得じゃ。がん薬物療法認定薬剤師、感染制御認定薬剤師、緩和薬物療法認定薬剤師などが代表的じゃな。

がん薬物療法の認定は気になってました。病棟でがん患者さんを担当することが多いので、今の経験がそのまま活かせそうですよね?

その通りじゃ。病院で働いていると実務経験を積みながら資格取得に直結しやすいのが強みじゃ。資格手当がある病院では年収に上乗せされるし、手当がなくても昇進の際に評価されやすくなるぞ。

今の仕事が資格に直結するって考えると、ちょっとモチベーション変わりますね。ちなみに、年収にはどれくらい影響するんですか?

資格手当は月5,000〜20,000円程度が相場で、年間6〜24万円の差になる。金額だけ見ると大きくはないが、管理職への道が開けるという意味では投資対効果は高いぞ。
管理職(薬剤部長等)を目指す

年6〜24万円か…手当だけだと大きくはないですけど、管理職への道が開けるっていうのは気になります。

2つ目の管理職に繋がる話じゃな。薬剤部長や副部長になれば年収600〜700万円以上も見えてくる。ただしポストは限られておるから、5年以上の経験と認定資格、そしてマネジメント能力が求められる。

早めに意識しておいた方がいいんですね。

その通りじゃ。若手のうちから認定資格を取り、チーム医療やマネジメント経験を積んでおくことが近道じゃよ。
国公立病院への移籍で定期昇給を確保する

今は民間病院なんですが、国公立に移る選択肢もありますか?

あるぞ。一時的に年収が下がる可能性はあるが、上で見た通り国公立は定期昇給と退職金が手厚い。病院薬剤師を続けたいが年収の見通しが不安という人には、同じ「病院勤務」の中での転職も選択肢じゃ。
今の年収が妥当か確認する方法

ここまで聞いてきて、そもそも自分の年収が相場と比べてどうなのか、ちゃんと把握できてないことに気づきました…。

よい気づきじゃ。まずは厚労省の「賃金構造基本統計調査」で、自分の地域の薬剤師年収の中央値を調べるとよい。都道府県によって100万円以上の差があるから、全国平均だけ見ても参考になりにくいんじゃ。

地域差が100万円以上もあるんですね…!経験年数や役割に合ったもっと具体的な目安を知る方法はありますか?

当サイトの適正年収診断では、地域・経験年数・役割から年収の目安を確認できる。続けるか辞めるかを考える前に、まず自分の立ち位置を把握しておくことをおすすめするぞ。
まとめ:年収だけで「辞める・続ける」を決めない
病院薬剤師の年収は低い?
- 1病院薬剤師の生涯年収は約2億3,280万円。薬局との差はわずか512万円で、40代以降は病院の方が伸びる
- 2やりがいや専門性に価値を感じているなら、年収だけで辞める判断はもったいない。一方で、不満が続くなら転職で50〜100万円アップも現実的
- 3病院に残る場合も、資格取得・管理職・国公立への移籍で年収アップは可能。まずは自分の適正年収を把握することから始めよう

今日の話を聞いて、漠然とした不安がだいぶ整理できました。「病院=損」って単純な話じゃないんですね。

その通りじゃ。大事なのは「病院は低いらしい」で終わらず、自分は何を優先したいのかを整理することじゃ。

まずは自分が何を優先したいのか、ちゃんと考えてみます。病院に残る場合でも、資格取得とか国公立への移籍とか、できることがあるってわかったので、少し前向きになれました。

モヤモヤがあるなら、まずは自分の条件で年収の目安を確認してみることから始めるとよいぞ。