「管理薬剤師に向いてない」「マネジメントが苦手でつらい」と感じる薬剤師へ。苦手を“やり方で変わる部分”と“役割の本質”に分けて整理し、今の職場で試せる工夫から、役職を外して薬剤師の強みを活かす働き方まで、現実的な選択肢を解説します。
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読者からの相談 調剤薬局で管理薬剤師を任されて1年ほどです。調剤や服薬指導は苦になりませんが、後輩が同じ調剤ミスを繰り返しても強く言えずに自分で抱え込んでしまい、急な欠勤が出ても誰に頼むか切り出せず結局自分がシフトの穴を埋めています。本部からは数字を求められ、現場との板挟みで気が休まりません。マネジメントが苦手で、管理薬剤師に向いていない気がします。でも薬剤師の仕事自体は辞めたくありません。どうすればいいでしょうか。
📌 この記事のポイント
管理薬剤師のマネジメントが苦手で「向いてない」と感じても、薬剤師失格ではない マネジメントの苦手は“やり方で変わる部分”と“役割の本質”に分けて考える 工夫しても合わないなら、まず社内で役職を外す相談、難しければ転職すればいい 1 まず結論:「向いてない」のは“あなた”ではなく“役割との相性” 2 管理薬剤師の「苦手」を“変えられる部分”と“変えにくい部分”に分ける 3 今の職場で試せるマネジメントの工夫 4 工夫した経験は、転職でも“マネジメントの実績”になる 5 それでも「人の監督」が合わないなら、役職を外す選択肢がある 6 まとめ:向いてないのは役割。薬剤師の強みを活かせる場所を選ぼう まず結論:「向いてない」のは“あなた”ではなく“役割との相性” 冒頭のお便りのように「人をまとめるのが苦手で、管理薬剤師に向いていない」と感じてしまう人は多い。じゃが、それはあなたの人格や、薬剤師としての能力の問題ではないんじゃ。
調剤や服薬指導はちゃんとできるのに、人の管理になると急につらくなる…という方は多そうですね。
これは「役割との相性」の問題でな。先に結論を言うと、やることは2段階じゃ。1つ目は、マネジメントの「苦手」を2種類に分けること。“やり方や仕組みで変わる部分”と、“管理薬剤師という役割の本質ゆえ変えにくい部分”じゃ。
そうじゃ。2つ目は、変わる部分は今の職場で工夫して減らし、それでも役割の本質が合わないなら、役職を外す・管理を求められない職場へ移ること。
つまり「辞める」か「我慢する」かの二択じゃないんですね。
その通り。調剤や服薬指導が苦にならないなら、薬剤師としての強みはそのまま活かせる。じゃがその前に、一つ断っておきたいことがある。
この記事はすでに管理薬剤師になっている本人 に向けて書いておる。「上司の管理薬剤師が合わなくて困っている」という部下側の話ではないし、まだ打診の段階で迷っている人向けでもない。
たしかに「管理薬剤師 向いてない」と調べると、部下の立場から書かれた記事も混ざっていますもんね。自分がどっちの立場で読んでいるかで、必要な情報が変わりそうです。
そういうことじゃ。まだ管理薬剤師になっておらず、打診を受けて返事に迷っている段階なら、断ってよい根拠と断り方を整理したこちらのほうが役に立つぞ。
あわせて読みたい管理薬剤師になりたくない・断れないときは|断ってよい根拠と返事の前に確認すること
打診を受けて迷っている段階の方はこちら。断ってよい根拠と、返事の前に会社へ確認しておきたいことを整理します
管理薬剤師の「苦手」を“変えられる部分”と“変えにくい部分”に分ける ここからが大事なところじゃ。「マネジメントが苦手」とひとことで言っても、中身は2種類が混ざっておる。
混ざっている…たしかに、何がそんなにつらいのか、自分でもうまく説明できないことってありますよね。
そこを分けないと、「全部自分のせい」と抱え込んでしまう。まずは“変わる部分”から見ていこう。
やり方・経験・仕組みで変わる部分 指示の出し方、注意の伝え方、シフト調整の段取り、急な欠勤への備え。これらは「やり方」と「仕組み」で軽くできる部分じゃ。
最初からうまくできて当然、というわけではないんですね。
管理薬剤師になって1年なら、できないことがあって当たり前じゃ。冒頭のお便りの「後輩に強く言えず抱え込む」「欠勤の穴埋めを自分でやる」も、性格よりやり方の問題でな。
「自分がダメだから」じゃなくて、やり方を変えれば減らせる…と思うと、少し気が楽になります。
役割の本質ゆえ変えにくい部分 一方で、変えにくい部分もある。それは「人を監督すること」そのものじゃ。
監督…管理薬剤師にとって、そこは避けられないものなんですか?
実はそうなんじゃ。管理薬剤師は薬局の管理者という立場でな。薬機法(医薬品医療機器等法)の第8条に、その役割が書かれておる。
薬局の管理者は、その薬局で働く薬剤師やほかの従業者を“監督”し、設備や医薬品を“管理”し、業務に必要な注意をしなければならない、とある。e-Govの条文で読めるぞ。
つまり「人を監督する」ことが、管理薬剤師の役割そのものに入っているんですね。
そうじゃ。だから努力だけで完全に避けられるものではない。ただ、これは「だからもっと頑張れ」という話ではないぞ。
逆じゃ。やり方で変わる部分を工夫してもなお、“人を監督すること自体”がどうしても合わないなら、それは性格を直す問題ではなく、役割を変えた方が合理的、という判断材料になる。
苦手の正体が「役割そのもの」なら、自分を責めても仕方ない、ということですね。
今の職場で試せるマネジメントの工夫 とはいえ、いきなり役割を変える前に、今の職場でできることから試してみよう。コツは「コミュニケーション力やカリスマに頼らず、仕組みで回す」ことじゃ。
仕組みで回す…人をまとめるのが苦手でも、それならできそうな気がします。
わしも人を仕切るのは得意でなくてな。調剤薬局におった頃、口で「気をつけてな」と言うより、当番表とチェックリストを貼り出した方が、よほど薬局が回ったわい。
先生でも苦手だったんですね…!仕組みにしてしまえば、毎回声をかけなくて済むんですね。
その通り。A、B、Cの順で、できるものから手をつけてみてくれ。
A. コミュ力に頼らない個人の工夫 Aは個人でできる工夫じゃ。指示や申し送りは、口頭ではなくメモや共有ノートに書く。言いづらいことも、文字なら伝えやすい。
面と向かって言うのが苦手でも、書いて渡すならハードルが下がりますね。
苦手な「注意」も、みんなの前ではなく、短い1対1で1点だけ伝える。そして全部を抱え込まず、まず“1つのタスクだけ”誰かに任せてみるんじゃ。
一気に全部を任せるんじゃなくて、1つからでいいんですね。
B. 属人的な管理を「仕組み」に置き換える Bは、属人的な管理を「仕組み」に変えることじゃ。在庫・発注・期限チェックを当番制にする、シフト調整のルールを先に決めて文章にする、ヒヤリハットの共有を決まった型にする。
「その都度お願いする」のがなくなると、気疲れがだいぶ減りそうです。
そうじゃ。先に仕組みにしておけば、あなたが毎回声をかけなくても回る。人をまとめるのが苦手な人ほど効くやり方でな。
声をかけ続けること自体がしんどさの一因だったので、仕組み化はまさに効きそうです。
C. 人員・教育体制を本部・上司に相談する Cは、一人で背負わないことじゃ。人員が足りない、教育の体制がない、管理業務が多すぎる。こうしたことは、本部や上司に相談していい事柄でな。
相談すると「管理者なのに」と思われそうで、つい我慢してしまいそうです。
相談は弱音ではなく、管理者としての正当な業務じゃ。冒頭の「本部と現場の板挟み」も、一人で抱える問題ではない。現場の実情を数字とセットで本部に伝えるのは、立派なマネジメントなんじゃ。
板挟みも、自分の力不足じゃなくて、伝えて動かす仕事の一部なんですね。
しかもこれは、気持ちの持ちようの話ではない。薬機法の第八条第二項は、薬局の管理者について「保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その薬局の業務につき、薬局開設者に対し、必要な意見を書面により述べなければならない」と定めておる。相談してよいどころか、意見を述べることは管理者の義務なんじゃ。
義務…! 遠慮して飲み込むようなことじゃなかったんですね。でも、伝えても会社が動いてくれなかったら同じでは…?
そこも手当てされておる。第九条第二項では、開設者は管理者の意見を尊重し、措置を講じる必要があるときは実施したうえで、その内容を記録して保存しなければならないとされておる。措置を講じない場合は、その旨と理由まで記録が要る。書面で出す意味はここにあるんじゃ。
書面にしておけば、会社側にも記録の義務が生まれるんですね。「言ったけど流された」で終わらせないための仕組みなんだ。
もっとも、任されたばかりで自分の権限がどこまでなのかも分からん、という場合もあるじゃろう。そのときは工夫より先に、権限の範囲を会社に確認するところから始めるとよいぞ。会社の側にも、管理者の権限を明らかにする措置を講じる義務がある(第九条の二第一項第一号)。
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「実務経験5年」が誰に向けた基準かを一次情報で整理し、権限の範囲・相談先など、着任時に会社へ確認したい5つのことを解説
! 今の職場で試せる工夫(できるものから)
指示や申し送りを、口頭でなくメモ・共有ノートに書く
苦手な注意は、人前でなく短い1対1で1点だけ伝える
まず1つのタスクだけ、特定のスタッフに任せてみる
在庫・発注・期限チェックを当番制かチェックリストにする
人員不足や管理業務の負担を、本部・上司に相談する
工夫した経験は、転職でも“マネジメントの実績”になる ここまでの工夫は、たとえ後で転職したとしても無駄にならんぞ。
そうなんですか?役職を外れるなら、意味がなくなる気がしていました。
逆じゃ。「属人的だった在庫管理を当番制に変えた」「申し送りを定型化してミスを減らした」——これらは面接で語れる、立派なマネジメントの実績でな。
たしかに、仕組みを作って改善した話なら、人前で仕切るのが苦手でも語れますね。
だから改善に取り組むことに損はない。今の職場に残るにしても、別の道に進むにしても、あなたの財産になる。
どちらに転んでも無駄にならないと思うと、安心して工夫に取り組めますね。
それでも「人の監督」が合わないなら、役職を外す選択肢がある 工夫を試してみて、それでも「人を監督すること」自体がどうしてもつらいなら、無理に続ける必要はない。
ならんよ。さっき見たように、人の監督は管理薬剤師の役割の本質じゃ。そこが根本的に合わないなら、それは役割とのミスマッチでな。役職を外れるのは、あなたの強み——調剤や服薬指導、患者対応の専門性——を活かすための選択じゃ。
苦手な役割を手放して、得意なところで勝負する、ということですね。
その通り。次のようなサインがあるなら、役職を外す・環境を変えることを考えていい段階じゃ。
! 役職を外す・環境を変えることを考えていいサイン
工夫してもなお、人を指導・監督すること自体に強いストレスを感じる
管理業務のことを考えると、休日も気が休まらない状態が続いている
調剤や服薬指導は好きなのに、管理職であることだけが理由で辞めたくなっている
これに当てはまると、もう性格の問題ではなく、役割が合っていないということですね。
そうじゃ。ただ、そう感じても、いきなり転職を考えなくていい。順番があるんじゃ。まず試すのは、今の会社で「役職を外して一般薬剤師に戻れないか」を相談することじゃ。
同じ会社で、役職だけ外してもらう、ということですか?
そうじゃ。慣れた職場や人間関係、通勤を変えずに済むから、転職より負担が小さい。切り出すときは「管理が嫌だ」ではなく「調剤や服薬指導に専念したい」と前向きに伝えるとよい。
いきなり全部リセットするより、まず社内で相談する方がハードルが低いですね。
ただ、会社によっては「代わりの管理薬剤師がいない」と難色を示すこともある。一般薬剤師に戻れる見込みがないなら、そのときは役職を外せる職場へ移ることを考える、という二段構えじゃ。
まず社内で相談して、難しければ外に目を向ける、という順番なんですね。
社内で役職を外す相談をどう切り出すか、一般薬剤師に戻ると年収がどう変わるかは、以下の記事で詳しく解説しています。
あわせて読みたい管理薬剤師から一般薬剤師に戻りたい|役職を外す2つの道と年収への影響
社内で役職を外す道と転職する道の2つを、相談が通りやすい条件、下がるのは役職手当だけなのか、判断軸の5項目に分けて整理。公的データをもとに解説
その通り。そして移る先を選ぶときは、「業態」ではなく「構造」で見るのが大事じゃ。ドラッグストアか調剤薬局か、ではなくてな。
そうじゃ。どの業態にも、管理がきつい職場とそうでない職場の両方がある。見るべきは、管理を本部や別の管理者が担う体制か、一般薬剤師として募集しているか、困ったときに相談できるサポート体制があるか、じゃ。
求人票の「アットホーム」みたいな言葉じゃなくて、体制そのものを見るんですね。
その通り。ただ、こうした条件は求人票だけでは読み取りにくい。いきなり応募する必要はない。まずは、自分に合う職場の見極め方を知っておくと安心じゃ。
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まとめ:向いてないのは役割。薬剤師の強みを活かせる場所を選ぼう この記事のまとめ
1 管理薬剤師に「向いてない」と感じても、それは人格でなく役割との相性 2 苦手は“やり方で変わる部分”と“役割の本質(監督・管理)”に分けて考える 3 まずは今の職場で、コミュ力に頼らず仕組みで回す工夫を試す 4 それでも合わないなら、まず社内で役職を外す相談、難しければ職場を移る 最後に伝えたいのはこれじゃ。管理薬剤師に向いていないと感じても、薬剤師としてのあなたが否定されたわけではない。苦手なのは「人をまとめる役割」であって、薬剤師の仕事そのものではないからのう。
「向いてない」を自分のすべての話にしなくていいんですね。つらかったのは役割との相性だったと分かるだけで、次の一歩が軽くなります。
うむ。自分に合う職場の探し方が気になったら、まずは転職サイトの選び方から見てみるとよい。転職を決めていなくても大丈夫じゃ。
🔍 比較ガイド 薬剤師転職サイトの選び方・使い方
登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説