薬剤師の残業が多い原因は職場の構造|ワークライフバランスを改善する方法
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薬剤師の残業が多いのは個人の効率ではなく職場の構造的問題です。残業が発生する4つの原因と、残業の少ない職場の特徴、ワークライフバランスを改善する具体的な方法を解説します。
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薬剤師じいさん
薬剤師歴70年の大ベテラン。病院・薬局・ドラッグストアすべてを経験してきた生き字引。豊富な経験と公的データに基づいて、若手薬剤師の悩みにズバッと答えます。

みさ
新卒2年目の若手薬剤師。病院で働いているけど、年収やキャリアに不安を感じている。全国の悩める若手薬剤師を代表して、気になることをどんどん質問していきます!
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読者からの質問
毎日21時過ぎまで残業しています。薬歴が終わらず、閉店後も1〜2時間は残るのが当たり前です。他の薬局もこんなに残業が多いのでしょうか?ワークライフバランスを改善する方法があれば教えてください。
📌この記事のポイント
- 薬剤師の残業が多いのは個人の効率の問題ではなく、人手不足・薬歴負担・門前病院の診療時間など職場の構造的な原因がある
- 残業の少ない職場には「面対応・在宅特化」「門前クリニックの診療時間が短い」「シフト制で人員が確保されている」などの共通点がある
- まず現職で改善を試み、構造的に変わらないなら環境を変えることも現実的な選択肢
薬剤師の残業が多いのは「構造」の問題

毎日21時過ぎまで残業か…。それは身体にこたえるじゃろう。わしも門前薬局で働いていた頃、1日平均80枚の処方箋を薬剤師3人で捌いておった。閉店後に40〜50件分の薬歴をまとめて書くから、毎日21時を過ぎるのが当たり前じゃった。

80枚を3人って、1人あたり27枚くらいですか。投薬しながら薬歴まで書く余裕なんてないですよね。

当時は「自分が遅いのかな」と思っておったが、その後クリニック門前の薬局に移ったら、1日40枚を2人で回す環境じゃった。17時半に投薬が終わり、18時には薬歴も片付いて帰れた。そこで初めて「前の職場は構造的に無理だったんだ」と気づいたんじゃ。

同じ薬剤師なのに、職場が変わるだけで3時間も違うんですね…。それって個人の能力の問題じゃないですよね。

その通りじゃ。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、医療・福祉業全体の所定外労働時間は月平均6〜8時間程度とされておる。じゃが調剤薬局は職場による差が極端に大きい。門前大病院の薬局では平均を大幅に上回る残業が常態化しているケースも珍しくない。問題は個人の能力ではなく、職場の構造にあるんじゃ。
残業が発生する4つの構造的原因

薬剤師の残業が多い原因は、主に4つの構造に集約される。

4つですか。具体的にどんな原因なんでしょう?

まず1つ目は、慢性的な人手不足じゃ。法令上、薬剤師1人あたりの1日平均処方箋枚数は40枚が配置基準。つまり40枚でも本来はギリギリの人員配置ということになる。そこに薬歴・在庫管理・疑義照会が加われば、営業時間内に終わらせるのはかなり厳しい。

うちの薬局も欠員が半年以上補充されないまま回してます。求人は出してるのに応募がないらしくて…。2つ目はなんですか?

2つ目は薬歴記入の負担じゃ。服薬指導をしながら薬歴を書く時間を確保するのは現実的に難しい。1件あたりの記入に5〜10分かかるとして、30件分なら150〜300分。これが閉店後にまとめて降ってくるわけじゃ。

2時間半〜5時間…。数字にすると恐ろしいですね。3つ目は?

3つ目は門前病院の診療時間に引きずられることじゃ。門前の病院が18時まで診察しておれば、最後の患者さんが薬局に来るのは18時半過ぎ。そこから投薬して薬歴を書けば、20時を超えるのは当然じゃ。

薬局の閉店時間が18時でも、実際にはそこから残業が始まるわけですね。4つ目は?

4つ目は閉店後の雑務じゃ。在庫管理、発注、レジ締め、清掃、翌日の準備。これらは患者さんがいなくなってからしかできん業務じゃ。

どれも自分が早く動けばどうにかなる問題じゃないですね…。
薬剤師の残業が発生する原因と対処可能性
| 原因 | 発生タイミング | 個人の工夫で解決できるか |
|---|---|---|
| 人手不足 | 営業時間中 | 不可能(採用は経営判断) |
| 薬歴記入の負担 | 閉店後 | 短縮は可能だが業務量自体は変わらない |
| 門前病院の診療延長 | 閉店前後 | 不可能(外部要因) |
| 閉店後の雑務 | 閉店後 | 分担は可能だが総量は変わらない |

この表を見ればわかる通り、4つすべてが職場の構造に起因しておる。個人の工夫で多少マシにできる部分はあっても、根本解決は個人の手の届く範囲にはないんじゃ。
「効率を上げれば解決する」は本当か

でも管理薬剤師からは「もっと効率よく動けば定時で帰れるはず」って言われるんです。本当にそうなんでしょうか?

具体的に計算してみよう。配置基準ギリギリの1日40枚を8時間で処理するとして、1枚あたりに使える時間は12分。調剤・鑑査・投薬・薬歴の全工程で12分じゃ。複雑な処方や疑義照会が入れば、この時間内に収まるわけがない。

12分って、調剤と鑑査だけで5〜6分かかりますよね。そこに投薬と薬歴を加えて、さらに疑義照会が入ったら15分以上止まることもある…。

そういうことじゃ。個人が100%の効率で動いても、構造的に1日8時間で終わらない業務量なら、残業は必ず発生する。「残業が多い=あなたが遅い」ではなく、「残業が多い=その職場の業務設計に問題がある」ということじゃ。自分を責める必要はまったくないぞ。
残業の少ない薬局の特徴

ここで知っておいてほしいのは、すべての薬局が残業まみれではないということじゃ。残業の少ない薬局には共通する特徴がある。

具体的にどんな薬局なら残業が少ないんですか?業態によっても違いますよね。

うむ、業態ごとにかなり差がある。わしの経験や周囲の薬剤師の話をもとに、おおまかな傾向を整理してみよう。
業態別・残業の傾向
| 業態 | 残業の多さ | 特徴 |
|---|---|---|
| 門前大病院薬局 | 多い | 処方箋集中・閉店後に薬歴が溜まる |
| 門前クリニック薬局 | 少なめ | 診療終了が早く業務が落ち着きやすい |
| 面対応・在宅特化薬局 | 少なめ | 処方箋が分散し予定が立てやすい |
| ドラッグストア | やや多い | シフト制だが営業時間が長い |
| 病院薬剤部 | 規模による | 大規模病院ほど多い傾向 |

こうして比較すると、同じ調剤薬局でも業態によってかなり違うんですね。
面対応薬局・在宅特化薬局

面対応の薬局は特定の門前病院に依存しないから、処方箋の来るタイミングが分散しやすい。営業時間内に薬歴まで書き終わることが多いぞ。在宅専門薬局も訪問スケジュールが決まっておるから、突発的な残業が少ない傾向がある。

処方箋が分散するのはよさそうですね。ただ、面対応だと処方箋枚数自体が少なくて給与に影響しませんか?

よい質問じゃ。面対応薬局は門前に比べて処方箋枚数が少ない分、年収が若干下がるケースはある。ただし残業代込みの年収と、残業なしの基本給ベースの年収を比較すると、手取りの差は想像ほど大きくないことも多い。「残業代で稼いでいた分」は実質的に自分の時間を切り売りしておっただけじゃからな。
門前クリニックの診療時間が短い薬局

門前が大病院ではなく、午前診・午後診制のクリニックであれば状況が変わる。クリニックが17時に診療終了なら、最終患者が薬局に来るのは17時半頃。18時前後には投薬も薬歴も終わるケースが多い。

門前の医療機関の種類で、毎日2〜3時間も変わるんですね。求人を見るとき、門前がどこなのかチェックするのが大事そうです。

その通り。求人票に「残業少なめ」と書いてあっても、門前が大病院なら信用できん。逆に門前がクリニックで17時終了なら、「残業少なめ」の信頼度は高いぞ。
大手チェーンのシフト制

大手チェーンでシフト制を敷いている薬局も候補じゃ。早番・遅番に分かれておれば、1人が長時間拘束されることは少ない。

ただ大手チェーンって、人手が足りない別店舗にヘルプで飛ばされるって聞きます。通勤時間が往復1時間増えたら、残業が減っても意味ないような…。

鋭い指摘じゃ。大手チェーンには「人員配置にゆとりがある」「教育制度が整っている」というメリットと、「ヘルプ・異動がある」「店舗ごとの裁量が少ない」というデメリットがある。残業は減るが自由度も減る。何を最も優先するかで判断することが大事じゃ。

どの業態にも一長一短があるんですね。ちなみに先生がクリニック門前に移った後、実際の生活はどう変わりましたか?

さっき18時に帰れるようになったと話したが、変わったのは退勤時間だけじゃない。19時には家で夕食を食べて、子どもの宿題を見る時間もできた。週末に疲れが残らんから趣味の時間も取れるようになった。前の職場では子どもが寝た後にしか帰れんかったから、「こんな生活ができるんだ」と心底驚いたものじゃ。

同じ薬剤師の仕事なのに、職場が変わるだけで生活がまるで違うんですね…。

残業の少ない職場があると知っただけでも、気持ちは楽になるじゃろう。具体的にどんな求人があるのか、眺めてみるだけでも現状を客観視できるぞ。
比較ガイド
薬剤師転職サイトの選び方・使い方
登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説
現職でワークライフバランスを改善する方法

残業の少ない職場の特徴はわかりました。でもまずは今の職場でできることを試したい人もいますよね。

うむ。いきなり転職を考える前に、現職で改善を試みるのが順序としては先じゃ。
まず自分の残業のボトルネックを把握する

最初にやるべきことは、自分の残業が何に時間を取られているかを把握することじゃ。1週間ほど記録してみるとよい。薬歴が溜まるのか、処方箋が閉店直前に集中するのか、閉店後の雑務が長いのか。ボトルネックがわからんと対策の打ちようがない。

なんとなく「忙しい」じゃなくて、何にどれだけ時間がかかっているかを可視化するんですね。

そうじゃ。たとえば薬歴がボトルネックなら、SOAPテンプレートの活用や投薬直後のメモで1件あたりの記入時間を短縮できる。閉店後の雑務が長いなら、営業中の空き時間に前倒しできないか見直す。自分で改善できる部分はまず試してみることじゃ。

自分で改善できない部分、たとえば人手不足や門前の診療時間はどうすればいいですか?

そこは次のステップじゃ。自分で改善できないものは上司や経営者に相談するしかない。じゃが、ボトルネックを把握してからでないと、相談しても漠然とした不満で終わってしまう。データを持って具体的に提案する、それが大事じゃ。
上司・経営者に業務改善を相談する

ボトルネックを把握したら、上司や経営者に具体的な提案をする番じゃ。たとえば「事務スタッフにピッキングや入力補助を任せたい」「繁忙時間帯にパート薬剤師を1人追加できないか」のように、業務フローや人員配置の改善案を出すのがコツじゃ。

ボトルネックの記録があれば、「閉店後に薬歴が毎日30件溜まっていて2時間かかっている。ピッキングを事務に任せれば投薬の合間に薬歴を書ける」のように具体的に伝えられますね。でも人手不足が根本にある場合は…。

正直に言わせてもらうと、人手不足の薬局で経営者に予算がないなら、根本解決は構造的に不可能じゃ。2ヶ月ほど具体的に提案して改善の兆しが見えないなら、それはその職場の構造的限界と判断してよいぞ。

2ヶ月やってみて変わらなければ、次を考えていいということですね。
それでも残業が減らないなら環境を変える選択肢もある

現職で改善を試みたうえで構造的に変わらないと判断したら、環境を変えることは決して「逃げ」ではない。残業時間は職場の構造で決まるものじゃから、「構造を選び直す」という合理的な行為じゃ。わしの後輩も管理薬剤師に3回提案して全部却下され、最終的に転職して残業が月5時間になったケースがある。

でも転職先でも同じだったらと思うと怖いです。残業時間って求人票に書いてある数字だけでは実態がわかりにくいですよね。

だからこそ転職エージェントの活用が有効じゃ。確認すべきポイントは3つ。「実際の残業時間(求人票ではなく現場の実態)」「薬歴を書く時間が営業時間内に確保されているか」「門前の医療機関の診療終了時間は何時か」。この3つを聞けば、入職後のギャップはかなり防げる。

特に「門前の診療終了時間」は自分では調べにくいですもんね。エージェント経由なら正確な情報が出てきそうです。

その通り。内部情報を持っているのがエージェントの強みじゃ。「残業少なめ」という曖昧な条件ではなく、「月残業10時間以内」「18時半までに完全退社できる」のように具体的に希望を伝えるのがコツじゃぞ。
パートという働き方も選択肢

正社員のまま転職する以外に、働き方自体を変えるという手もありますか?

パート薬剤師として働くという選択肢がある。パートはシフト時間が明確で、基本的に残業なしで帰れる。時給2,000〜2,500円が相場じゃから、週4日×7時間勤務でも月収24〜30万円程度にはなる。

パートだとボーナスや退職金がなくなるのが心配ですけど、毎日残業なしで帰れると考えると…。

年収だけ見れば下がるが、時給換算すると正社員で残業月40時間よりパートの方が高いケースもある。何より、毎日18時に帰れる生活は金額では測れん価値がある。家庭の状況やキャリアプランと照らし合わせて検討してみるとよいぞ。
休日の少なさも気になるなら

ちなみに、残業だけでなく休日の少なさも気になっておる人もおるじゃろう。残業時間と年間休日数は別の問題で、対策も異なる。転職先を検討するときは、残業時間だけでなく年間休日数や有給の取りやすさもセットで確認しておくとよいぞ。

「残業は少ないけど休みも少ない」という薬局もありますもんね。両方チェックしておくのが大事ですね。
まとめ:残業が多いのは構造の問題。選択肢を知ることから始めよう
まとめ:残業が多いのは構造の問題。選択肢を知ることから始めよう
- 1薬剤師の残業が多いのは人手不足・薬歴負担・門前病院の診療時間など構造的原因であり、個人の効率の問題ではない
- 2残業の少ない職場には「面対応・在宅特化」「門前クリニックの診療時間が短い」「シフト制で人員確保」などの特徴がある
- 3現職で改善を試み、構造的に変わらなければ環境を変えることも有効な選択肢

残業が多い環境にいると「これが普通」と思ってしまいがちじゃが、世の中にはもっとバランスの取れた薬局もある。わしも環境を変えてから「なんであんなに我慢していたんだろう」と心底思ったものじゃ。まずは自分の状況が構造の問題だと認識し、選択肢があることを知るだけでも気持ちは楽になるはずじゃ。

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