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薬剤師が患者のクレームでトラウマになったら|自分を守るためにできること

公開日:

患者のクレームがトラウマになり投薬が怖い薬剤師へ。怖さの原因は「メンタルの弱さ」ではなく職場の構造的問題です。同僚への相談の仕方から、スタッフが守られる職場の選び方まで、元薬剤師が解説します。

登場キャラクター

薬剤師じいさん

薬剤師じいさん

薬剤師歴70年の大ベテラン。病院・薬局・ドラッグストアすべてを経験してきた生き字引。豊富な経験と公的データに基づいて、若手薬剤師の悩みにズバッと答えます。

みさ

みさ

新卒2年目の若手薬剤師。病院で働いているけど、年収やキャリアに不安を感じている。全国の悩める若手薬剤師を代表して、気になることをどんどん質問していきます!

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読者からの質問

調剤薬局で働いて5年目の薬剤師です。先日、薬の準備に少し時間がかかっただけで患者さんに激しく怒鳴られ、それ以来、投薬台に立つのが怖くなりました。家に帰っても怒鳴られた場面が頭から離れません。「自分のメンタルが弱いだけなのかな」と思うと誰にも相談できず、毎日がつらいです。

📌この記事のポイント
  • 患者のクレームがトラウマになるのは「メンタルが弱い」からではなく、67%の薬局がクレーム対策を持たない構造的な問題が原因
  • まずは信頼できる同僚一人に話し、「あの患者さんだけ代わってほしい」と頼むことから始められる
  • 環境を変えるなら「患者が少ない職場」ではなく「スタッフが守られる職場」を選ぶ

まず伝えたいこと — クレームのトラウマはあなたのせいではない

先生
患者に怒鳴られた経験が頭から離れない。投薬台に立つと手が震える。あの患者が来る日は朝から胃が痛い。もしそんな状態にあるなら、まず伝えたいことがある。それはあなたのメンタルが弱いのではなく、職場のサポート体制が足りていないということじゃ。
新人
「メンタルが弱い」って、自分でもそう思い込んでしまいがちですよね…。周りの薬剤師がうまくやっているように見えると、余計に「自分だけおかしいのかな」って感じてしまいそうです。
先生
その気持ちはよくわかる。しかし実態を見れば、あなただけの問題ではないことがはっきりするぞ。

67%の薬局が「対策なし」— 問題はあなたではなく環境

先生
日経メディカルが2017年に実施した調査によると、薬局薬剤師の67.4%が「問題のある患者への具体的な対策がない」と回答しておる。これは少し前のデータじゃが、現場の声を聞く限り、状況が大きく改善されたとは言いがたい。3人に2人の薬剤師が、理不尽なクレームに対して何の後ろ盾もなく一人で対処させられている状況じゃ。
新人
67%…。3人に2人って、ほとんどの薬局で対策がないってことですよね。それなのに「個人で何とかしろ」というのは、そもそも無理がありませんか?
先生
その通りじゃ。特にワンオペの店舗では深刻でな。怒鳴る患者の前で代わってくれる人がいない。対応中も調剤室の電話は鳴り続ける。次の患者は待っている。逃げ場がないまま、すべてを一人で受け止めるしかないんじゃ。
新人
それ、想像するだけで息が詰まりますね…。先生もそういう経験はあったんですか?
先生
あるぞ。わしが調剤薬局で勤務していた頃、供給不足で薬が揃わない旨を丁寧に説明したにもかかわらず「何のための薬局だ」と激怒された経験がある。こちらに非がなくても、目の前にいるからぶつけられる。この環境で恐怖を感じない方が不自然じゃよ。
新人
先生でもそうだったんですね…。つまり、トラウマになるのは心の弱さではなく、職場の仕組みの問題だってことですね。

「患者に嫌悪感を持ってしまう」のも自然な反応

先生
もう一つ、多くの薬剤師が口に出せずにいることがある。それは、クレームを受けた後に「患者さんに嫌悪感を持ってしまう」という感覚じゃ。
新人
それ、すごくわかります。以前は丁寧に服薬指導していたのに、怒鳴られてからは最低限で済ませたくなる。そして「こんな気持ちで患者さんに接するなんて、薬剤師失格なのでは」って自分を責めてしまう…。SNSでもそういう投稿を見かけたことがあります。
先生
しかしこれは、心を守るための自然な防衛反応なんじゃ。強い恐怖を経験した後、似た状況を避けようとするのは人間として正常な反応であり、罪悪感を感じる必要はない。
新人
自然な反応だと聞いて少し安心しました。でも、その状態がずっと続くのは問題ですよね?
先生
よい着眼点じゃ。放置すると、患者対応だけでなく仕事全体への意欲が下がり、バーンアウトに至るリスクがある。「気持ちの問題」で片付けず、具体的な対策を取ることが大切じゃ。

まずは一人に話すことから始める

先生
ここからは、今の職場でできることを具体的に考えていこう。最初にやるべきことは一つ。信頼できる同僚に、一言だけ話すことじゃ。
新人
でも「クレームがトラウマで怖い」って、なかなか言いづらくないですか? 弱い人だと思われそうで…。
先生
「相談」と構える必要はないぞ。「あの患者さんの対応、正直きつかったです」と一言漏らすだけでいい。大事なのは、つらい状況を自分一人の中に閉じ込めないことじゃ。

誰に、何と言えばいいか

先生
話す相手は管理者でなくていい。まずは同じ店舗で一緒に働いている同僚の中で、一番話しやすい人を一人選ぶ。そして伝えるのは「あの患者さんの対応がきつい」という事実だけでいい。理由や感情を全部説明する必要はないんじゃ。
新人
「全部話さなくていい」って言われると、少しハードルが下がりますね。「実はトラウマで…」と切り出すのは重いけど、「あの患者さん、きつくないですか?」なら普通の会話の延長ですもんね。
先生
そうじゃ。しかも相手も同じ患者に困っている可能性が高い。理不尽な患者は、特定の薬剤師だけに怒鳴るわけではないからな。「実は自分も…」という反応が返ってくることも多いぞ。

具体的に何を頼むか — 「あの患者さんだけ代わってほしい」

先生
話ができたら、次は具体的なお願いじゃ。ここで大事なのは、頼みごとを小さくすること。「クレーム対応全般を何とかしてほしい」ではなく、「あの患者さんが来たときだけ、投薬を代わってほしい」。これだけでいい。
新人
たしかに、「全部のクレームに対策して」だと相手も困りますよね。でも特定の一人だけなら、「いいですよ」って言ってもらいやすそうです。
先生
その通りじゃ。トラウマの原因が特定の患者なら、その一人の対応から離れるだけで状況はかなり変わる。全部を解決しようとせず、一番つらいところから一つだけ外すという考え方じゃ。
新人
特定の患者さんだけじゃなく、投薬台に立つこと自体が怖くなっている場合はどうすればいいですか?
先生
その場合は「しばらくの間、ピッキングや監査を多めに回してもらえないか」と相談するのも一つの方法じゃ。投薬台に立つ回数を減らしながら、少しずつ慣らしていく。同僚も事情がわかっていれば、自然にカバーしてくれることが多いぞ。

一人薬剤師の場合は上長に雑にでもいいから相談する

新人
ここまでの話は同僚がいる前提ですよね。一人薬剤師で店舗に相談できる相手がいない場合はどうすればいいですか?
先生
一人薬剤師ということは管理薬剤師じゃろうから、店舗内に上司はおらん。しかし、チェーンならエリアマネージャー、小規模の薬局なら経営者が上長にあたる。「特定の患者さんの対応で困っていて、正直きついです」と、雑にでもいいから伝えてみることじゃ。
新人
きちんとした相談じゃなくても、まず声を上げること自体が大事ってことですね。
先生
そうじゃ。そしてここが大事なんじゃが、相談したときの上長の反応をよく見てほしい。親身になって対応策を一緒に考えてくれるなら、その組織にはまだ期待できる。
新人
逆に、「それくらい自分で何とかして」とか「慣れるしかないよ」みたいな反応だったら…?
先生
その組織はあなたを大切にしていない、ということじゃ。困っている薬剤師の声を聞いても動かない職場で、我慢し続ける必要はない。それは環境を変えるべきサインじゃよ。

環境を変えるなら — 次の職場で確認すべきポイント

先生
相談しても状況が変わらない、あるいは心身に影響が出ている場合は、環境を変えることを検討する段階じゃ。これは「逃げ」ではなく、自分の健康を守るための合理的な判断じゃよ。つらさが日常生活にも支障をきたしているなら、心療内科などの専門家への相談も並行して考えてほしい。
新人
環境を変えるとして、次の職場はどう選べばいいんですか? また同じことが起きたら…と思うと不安です。
先生
大事なのは「患者が少ない職場」を探すことではないんじゃ。どんな職場でも患者対応はあるし、理不尽な人はどこにでもおる。問題なのは、そのとき自分が守られるかどうかじゃ。

「スタッフが守られる職場」を見極める

先生
次の職場を探すときに見てほしいポイントは2つある。1つ目は人員体制じゃ。常時2人以上の薬剤師がいる店舗なら、困ったときに代わってもらえる。ワンオペの店舗を避けるだけで、状況は大きく変わるぞ。
新人
つらかった原因って、クレーム自体もそうですけど、「そのとき誰にも頼れなかった」ことが大きいですもんね。特に一人薬剤師だと、つらいときに相談することも代わってもらうこともできない。同じ状況でも、すぐに頼れる人がいたら感じ方は全然違いそうです。
先生
2つ目は、管理者の姿勢じゃ。面接や見学のときに「クレーム対応で困ったことがあったらどうしていますか?」と聞いてみるとよい。具体的な対応方針が返ってくる職場は、スタッフを守る意識がある。「まあ、うまくやってます」のような反応なら、今の職場と同じことが繰り返される可能性が高い。
新人
面接で聞いていいんですね。こちらから質問することで、職場の姿勢がわかるってことか…。求人票だけではわからない部分ですね。

最初の一歩は「求人を見てみる」だけでいい

先生
「転職する」と決める必要はない。まずは転職サイトに登録して、どんな求人があるか見てみるだけでも十分じゃ。
新人
「薬剤師2名以上体制」の求人があるんだ、とか、「クレーム対応研修あり」って書いてある薬局もあるんだ、って知るだけでも気持ちが違いそうですね。
先生
そうじゃ。今の職場だけが選択肢ではないと知っているだけで、毎日の出勤のつらさの質が変わる。いきなり応募する必要はないから、まずは情報収集から始めてみるとよいぞ。
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まとめ:トラウマを我慢し続ける必要はない

この記事の要点

  1. 1患者クレームのトラウマは「メンタルが弱い」のではなく、67%の薬局がクレーム対策を持たない構造的な問題
  2. 2まずは同僚一人に話し、「あの患者さんだけ代わってほしい」と頼むことから始められる
  3. 3環境を変えるなら「患者が少ない職場」ではなく「スタッフが守られる職場」を選ぶ
  4. 4転職を決めなくても、求人を見てみるだけで「他に選択肢がある」と気づける
先生
今日の話をまとめると、患者のクレームでトラウマを抱えるのはあなたの弱さではなく、サポートのない環境に原因がある。まずは信頼できる同僚に一言話すことから始めてみてほしい。それでも状況が変わらないなら、環境を変えることも合理的な判断じゃ。
新人
「怖い」「つらい」って感じることに罪悪感を持たなくていいんだ、って思えました。まずは「あの患者さん、きつくないですか?」って一言だけ同僚に話してみるのが第一歩ですね。
先生
そうじゃ。患者に怒鳴られた経験が消えることはないかもしれん。しかし、その経験に毎日怯えながら働き続ける必要もない。あなたの感覚は正しいんじゃ。
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