上司のパワハラに悩む薬剤師へ。パワハラは環境の問題であり、あなたの問題ではありません。辞めたいと思ったときの判断基準・パワハラ防止法(労働施策総合推進法)の要件・相談窓口・転職で環境を変える方法を解説します。
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読者からの相談 調剤薬局で働いて3年目の薬剤師です。上司から毎日のように叱責を受けていて、些細なミスでも全員の前で怒鳴られます。相談できる同僚もおらず、毎朝出勤するのがつらいです。これはパワハラなのか、自分が甘いだけなのかもわかりません。辞めたいのですが、「逃げ」になるのではないかと踏み切れません。どうすればいいのでしょうか。
📌 この記事のポイント
パワハラは本人の能力ではなく環境の問題であり、辞めることは逃げではない 我慢し続けると心身の健康を損なうリスクがある。早めの対処が重要 社内相談・外部窓口・転職の3つの選択肢を知り、自分に合った一歩を踏み出そう 1 そもそもパワハラとは?薬局で起きやすい3つのパターン 2 パワハラを我慢し続けるとどうなるか 3 パワハラへの3つの対処法 4 まとめ:パワハラは環境の問題。選択肢を知ることが最初の一歩 そもそもパワハラとは?薬局で起きやすい3つのパターン まず伝えたいのは、パワハラは相談者さんの問題じゃないということじゃ。わしも若い頃、管理薬剤師だった上司に毎日のように詰められた経験がある。疑義照会の判断を報告するたびに「おまえは薬剤師に向いてない」と調剤室で怒鳴られてな。患者さんにも聞こえる声で言われたときは、薬剤師になるために必死で勉強してきた自分を全否定された気がしたもんじゃ。毎朝、薬局のドアを開けるのが怖くてな。
先生にもそんな時期があったんですね。今つらい思いをしている読者の方も、「自分が悪いのでは」と感じているかもしれません。
うむ。だからこそ、まずパワハラの定義を確認しておこう。厚生労働省の指針は、代表的な言動を6つの類型に整理しておる。身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害じゃ。
薬局では、上司が管理薬剤師で、その人に指導も評価もシフトも集まりやすい。この関係の中で起きやすいパターンが、特に3つある。順番に見ていこう。
ミスへの過剰な叱責|全員の前で怒鳴られる 1つ目は、ミスへの過剰な叱責じゃ。調剤ミスや在庫ミスを全員の前で怒鳴る。「こんなこともできないのか」と人格ごと否定する。これは指導ではなくパワハラじゃ。
実際にネット上でも「ミスをすると全員の前で怒鳴られる」「萎縮してまたミスをする悪循環」という声がありますよね。指導とパワハラの線引きはどこにあるんですか?
大事な点じゃな。指導は業務改善が目的で、相手の成長を意図しておる。一方、パワハラは人格否定や見せしめが目的になっている。全員の前で怒鳴る必要がある指導など、まずないと思ってよい。
「自分が甘いだけでは」と迷っている方も多いと思います。簡単に確認できるポイントはありますか?
次の4つに1つでも当てはまるなら、それは指導ではなくパワハラの可能性が高い。①個室ではなく全員の前で叱責される、②「向いていない」「使えない」など人格や能力そのものを否定される、③改善策の提示がなくただ怒られるだけ、④同じミスをしても特定の人だけが叱責される。心当たりがあるなら、自分を責める必要はないぞ。
この4つ、当てはまる方は少なくないと思います。ただ、いざ「これはパワハラだ」と言葉にするのは勇気がいりますよね。法律の上では、どこからがパワハラなんでしょうか?
よい問いじゃ。労働施策総合推進法、いわゆるパワハラ防止法という法律がある。職場のパワハラを、①優越的な関係を背景とした言動、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、③労働者の就業環境が害されること、この3つで捉えておる。事業主は、そうしたことが起きんように相談へ応じる体制を整えなければならん、と定められておる。
さっきの4つのチェックは、②と③を自分で確かめる目安ということなんですね。
そう考えてよい。ただし、個別のケースが法律上のパワハラに当たるかどうかを決めるのは、わしでも相談者さん自身でもない。「違法かどうか」を先に決めようとせず、この3つに照らして自分の状況を言葉にしておく 。そのくらいの使い方がちょうどよい。
無視・仲間外れ|6類型でいう「人間関係からの切り離し」 2つ目は、無視や仲間外れじゃ。指針では「人間関係からの切り離し」と呼ばれておって、仕事から外す、別室に隔離する、集団で無視する、といった例が挙げられておる。
SNSでも「薬局長に何をしても無視される」という投稿を見かけたことがあります。大きな組織なら部署異動という手がありますけど、指示を出す人が1人に決まっている現場だと、それも難しいですよね。
そうじゃ。しかも相手は、シフトも評価も握っておる管理薬剤師であることが多い。抵抗しにくい関係が、最初からできあがっておるわけじゃな。さっきの①「優越的な関係」とは、まさにこの状態を指しておる。
言い返せない、断れないというのは、性格の問題ではなくて立場の差がそうさせているんですね…。
うむ。だから外から見えにくく、長期化しやすい。本人も「こんなものかもしれない」と感覚が麻痺していくことがある。
薬局で働いている友人からは、無視されるほどではないけれど特定の人と気まずくて、職場にいるだけでしんどいという話も聞きました。それも同じように考えていいんでしょうか?
それは、行為そのものというより人の組み合わせの話じゃ。パワハラと同じ土俵で考えんでよい。今の職場で試せることから順に当たっていく手があるぞ。
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派閥・ターゲット化|新人や異動者が狙われやすい 3つ目は、派閥じゃ。古参のスタッフが派閥を作り、新人や異動してきた薬剤師をターゲットにするパターンがある。
「派閥があって新人がターゲットにされる」という話、薬局あるあるとして聞きますね。小さいコミュニティほど権力構造が固定されやすいのかもしれません。
うむ。人が入れ替わらない環境では、一度できた力関係がずっと続く。新しく入った人が標的になりやすいのは、そういう構造の問題じゃ。
逆に、この3つのどれにも当てはまらない場合はどう考えればいいんでしょう。強く叱責されるわけではないけれど、なんとなくやりにくい、という方もいそうです。
よい問いじゃ。とくに年上の薬剤師が年下の管理薬剤師の下についたときは、どちらも気を使っておるのに距離が開いていくことがある。それはパワハラとは別の問題じゃから、扱い方も違ってくる。
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パワハラを我慢し続けるとどうなるか さて、パワハラに当てはまると感じたら、次に考えてほしいのは「我慢し続けるリスク」じゃ。
「もう少し頑張れば変わるかも」と思って耐えている方も多いですよね。
気持ちはわかる。じゃが、パワハラは基本的に時間が解決する問題ではない。厚生労働省の「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を見てみよう。労働局に寄せられた民事上の個別労働関係紛争の相談で、最も多かったのが「いじめ・嫌がらせ」じゃ。件数は55,614件で、14年連続の最多になっておる。それだけ多くの人が悩んでおるし、放置しても自然には解決しないということでもある。
心身の健康への影響 まず深刻なのは、心と体への影響じゃ。不眠、胃痛、動悸、朝起きられない。これらが続くと、うつ症状に発展するリスクがある。
一度重症化すると、回復にも時間がかかりますよね。「限界まで頑張って倒れる」のは、頑張ったことにはならない…。
そこでひとつ勧めておきたい。症状が出ておるなら、我慢せずに受診しておくことじゃ。いつから、どんな症状が出ておるか。診療の記録に残しておけば、相談や転職を考えるときの前段になる。
あとから「仕事が原因だった」と説明するときの材料にもなりますね。職場では言い出しにくくても、医療機関にならそのまま話せそうです。
その通りじゃ。体を壊してからでは遅い。自分の健康より大事な仕事などないんじゃよ。
スキル成長の停滞 もうひとつのリスクは、スキルの成長が止まることじゃ。萎縮して質問もできない環境で、薬剤師として伸びることは難しい。
たしかに。怒られないように最低限のことだけする、という守りの姿勢になってしまいますよね。
うむ。パワハラ環境にいる時間は、キャリアにとっても損失じゃ。本来なら学べたはずのことを学べないまま時間だけが過ぎていく。
パワハラへの3つの対処法 では、どう動けばいいか。選択肢は大きく3つある。どれが正解かは状況によるから、自分に合ったものを選べばよい。
安易に「すぐ辞めろ」とも言えませんし、かといって「我慢しろ」とも言えないですよね。まずは選択肢を知ることが大事ということですね。
社内の相談窓口を使う 1つ目は、社内のハラスメント相談窓口じゃ。大手チェーン薬局であれば、相談窓口が設置されていることが多い。
転職せずに解決できるなら、それが一番ハードルが低いですよね。メリットとデメリットはどうですか?
メリットは、異動や配置転換で解決する可能性があること。転職せずに環境が変わるなら、それに越したことはない。デメリットは、小規模薬局では窓口自体がないことや、窓口が形骸化しているケースもあることじゃ。
窓口があっても、相談したこと自体が上司に伝わって、あとで仕返しをされないか。そこが怖くて動けない人は多そうです。
その不安はもっともじゃ。さっきの労働施策総合推進法には、相談したことや、事実を述べたことを理由に、解雇その他不利益な取扱いをしてはならん、と事業主に対して定められておる。ただ、定めがあることと、現場でそのとおり運ばれるかは別の話じゃ。守られると決めつけず、知っておく材料として持っておくとよい。
相談するなら、証拠を残しておいた方がいいですよね。
その通りじゃ。いつ、どこで、誰に、何を言われたか。できればメモやメールなど形に残る証拠があるとよい。口頭だけだと「言った言わない」になりやすいからな。
外部の相談窓口を使う 2つ目は、外部の相談窓口じゃ。代表的なのは労働局の「総合労働相談コーナー」。無料で、匿名でも相談できる。
会社には言いにくい場合の選択肢ですね。第三者に話すことで、自分の状況を客観視できそうです。
そうじゃ。「これはパワハラなのか、自分が甘いだけなのか」と迷っている場合に特に有効じゃ。ただ、強制力はないので、相談しても職場が直接変わるわけではない点は理解しておく必要がある。
転職で環境そのものを変える 3つ目は、転職じゃ。わしはこれを「逃げ」だとは思わない。パワハラは環境の問題であって、自分自身に非があるわけではない。環境を変えることは、自分を守るための正当な判断じゃ。
先生自身も環境を変えた経験があるんですよね。実際にどう変わりましたか?
わしの場合、転職したことで毎朝の胃痛がなくなった。前の職場では調剤室に入るだけで手が震えていたが、次の薬局では先輩が疑義照会を一緒に考えてくれてな。「同じ薬剤師の仕事なのに、こんなに違うのか」と驚いたのを覚えておる。
うむ。ただし、転職にもリスクはある。次の職場が必ずよいとは限らないから、見極めは必要じゃ。
転職先の人間関係を事前に確認する方法ってあるんですか?完全にガチャになってしまうのは怖いです…。
転職エージェントを使えば、求人票には載っていない内部情報を事前に聞ける。特に薬剤師の平均勤続年数と離職率は必ず確認してほしい。人がすぐ辞める職場には、それなりの理由があるからな。
離職率が高い職場は要注意ということですね。でも、数字だけではわからないこともありますよね…。
その通りじゃ。だからこそ、エージェントに職場見学をセッティングしてもらうのがおすすめじゃ。見学の際に次の3つを確認するだけで、かなりリスクは下がるぞ。
1つ目が最も重要じゃ。パワハラは上司との関係で起きるものだから、その上司になる人の人柄を自分の目で見るのが一番確実じゃよ。質問に丁寧に答えてくれるか、話し方に威圧感がないか。短い会話でも伝わるものは多い。
たしかに、先生も「調剤室で怒鳴られた」とおっしゃっていましたもんね。短い見学でも、その人の話し方や態度で感じるものはありそうです。2つ目の「雰囲気の観察」は、具体的にどこを見ればいいですか?
スタッフ同士が自然に雑談しているか、質問や報告がしやすそうな空気かを見るとよい。ピリピリした沈黙が続く職場や、特定の人だけが一方的に話している職場は注意じゃ。
「特定の人だけが一方的に話している」って、まさにパワハラが起きている職場の特徴ですね…。3つ目の教育体制は、パワハラとどう関係するんですか?
大いにある。教育の仕組みがなく「見て覚えろ」の職場は、ミスをしたときに個人の責任にされやすい。マニュアルやOJT担当者がいる職場は、仕組みでミスを防ごうとする文化がある。パワハラが起きにくい土壌じゃ。
なるほど…。最初のセクションで出てきた「ミスを全員の前で怒鳴る」パターンって、まさに仕組みがなくて個人を責める職場で起きることなんですね。この3つを知っておくだけで、見学の見方がだいぶ変わりそうです。
ここまで3つの選択肢を教えていただきましたけど、正直「自分はどれを選べばいいのか」がまだ迷う方もいると思います。転職に踏み切るべきラインってあるんでしょうか?
よい質問じゃ。次の3つのうち1つでも当てはまるなら、社内相談だけで解決するのは難しい。転職を本格的に検討してよいサインじゃ。
! 転職を検討すべき3つのサイン
社内の相談窓口がない、または相談しても改善されなかった
不眠・胃痛・動悸など、仕事が原因の身体症状が出ている
パワハラが特定の上司だけでなく、組織的な問題(派閥・黙認)になっている
1つ目は、社内で解決する手段が機能していないということじゃ。窓口がそもそもない小規模薬局や、相談しても「我慢しろ」で終わった場合は、その職場に残っても状況は変わらない。
2つ目の身体症状は、出ている時点でもう危険信号ということですか?
そうじゃ。不眠や胃痛が「仕事のせいだ」と自分でわかっているなら、それはもう体が限界を訴えておる。「もう少し様子を見よう」と先延ばしにするほど悪化するから、症状が出ている時点で動き始めてよい。体を壊してからでは転職活動自体が難しくなるからな。
3つ目の「組織的な問題」は、上司が変わっても解決しないケースですよね。
その通りじゃ。パワハラを周囲が黙認している、あるいは派閥ぐるみで行われている場合、上司一人が異動しても次のターゲットにされるリスクがある。環境そのものを変えないと解決しない問題じゃ。
逆に言えば、この3つに当てはまらない場合は、まず社内相談や外部窓口から試してみる価値があるということですね。
そういうことじゃ。どの選択肢にも正解はない。じゃが、判断の基準があれば、少なくとも「なんとなく我慢し続ける」という一番よくないパターンは避けられる。転職を考え始めたら、まずは転職サイトの選び方を知っておくと安心じゃよ。
🔍 比較ガイド 薬剤師転職サイトの選び方・使い方
登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説
まとめ:パワハラは環境の問題。選択肢を知ることが最初の一歩 この記事のまとめ
1 パワハラは本人の能力や性格の問題ではなく、環境の問題である 2 上司に指導・評価・シフトが集中する関係が、パワハラを見えにくくし長期化させやすい 3 我慢し続けると心身の健康とキャリアの両方にリスクがある 4 社内相談窓口・外部相談窓口・転職の3つの選択肢がある 5 相談しても改善しない・身体症状が出ている・組織的な問題がある場合は、転職を検討すべきサイン 最後に伝えたいのは、「選択肢がある」と知るだけで気持ちは楽になるということじゃ。今すぐ動かなくてもいい。でも、動ける道があることだけは覚えておいてほしい。
自分を責めず、まずは「環境の問題なんだ」と認識するところからですね。私も新人のとき、先輩との関係でつらかった時期がありましたけど、「自分だけじゃない」と知れただけで少し楽になりました。
うむ。いきなり応募する必要はない。まずは数問の質問で自分に合う転職サイトを診断してみるだけでもよい。それだけで「次がある」と思えるようになるぞ。
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