育児しながら在宅勤務できる薬剤師の仕事を探しているのに、求人が見つからない方へ。求人サイトの「在宅」は在宅医療を指すため、検索語と探す場所の両方を変える必要があります。実在する在宅勤務の求人の偏りと、育児中の薬剤師が取れる3つの現実的な選択肢を解説します。
💬
読者からの相談 調剤薬局で時短勤務をしている30代の薬剤師です。1歳の子どもがいて、通勤は片道50分かかります。子どもが熱を出すたびに職場へ連絡して迎えに行く日が続いていて、体力的にも気持ち的にも消耗してきました。在宅でできる薬剤師の仕事があると知り、求人サイトで「在宅 薬剤師」と検索してみたのですが、出てくるのは訪問して薬を届ける在宅医療の求人ばかりです。紹介記事で見た「DI業務」「メディカルライター」も探しましたが見当たりません。育児しながら在宅勤務できる薬剤師の仕事は、本当にあるのでしょうか。
📌 この記事のポイント
在宅勤務できる求人は存在するが件数は少ない。見つからない原因は検索語と探す場所のずれ 求人は薬局のパート・派遣・業務委託・企業職に分かれる。雇用形態ごとに探す窓口が違う 完全在宅か、子の急な予定に動ければ足りるかで、取れる選択肢が変わる 1 まず結論 — 在宅勤務の求人はある。見つからないのは検索語と探す場所がずれているから 2 求人サイトの「在宅」は、訪問して薬を届ける在宅医療のこと 3 ママ薬剤師が在宅でできる仕事は、雇用形態が偏っている 4 在宅勤務にしても、締切と稼働時間はそのまま残る 5 必要なのは完全在宅か、子の急な予定に動けることか 6 育児中の薬剤師が取れる3つの選択肢 7 まとめ:在宅は目的ではなく、生活を回すための手段 まず結論 — 在宅勤務の求人はある。見つからないのは検索語と探す場所がずれているから このお便りには、先に答えを言うておきたいことがある。在宅勤務ができる薬剤師の求人は、ちゃんと存在する。 ただし件数は限られておって、雇用形態にも偏りがあるがの。
「ある」と聞けるだけで、少し安心します。でも相談者さんは実際に探して見つけられなかったわけですよね…。
そこじゃ。見つからなかった原因は、探し方が下手だったからではない。求人サイトで使われておる「在宅」は、多くの場合「在宅医療」を指しておるんじゃ。
……あ。患者さんのお宅へ訪問して、お薬を届けるほうの「在宅」ですか。
そうじゃ。相談者さんが探しておる在宅勤務——自宅で働くリモートワークとは、まったくの別物じゃな。じゃから「在宅 薬剤師」で検索するほど、目当ての求人から遠ざかっていく。
同じ言葉が別の意味で使われている場所を、一生懸命探していたということなんですね。それは見つからないはずです…。
わしが現場におった頃から、求人票の「在宅」は訪問業務の意味で使われてきた。業界の中では、その使い方がすっかり定着しておるんじゃ。悪気があるわけではないが、外から探す人には分かりにくい。
相談者さんが「自分の探し方が悪いのかな」と思ってしまったのが、なんだか気の毒です。
じゃからいま必要なのは、諦めることではない。検索語と、探す場所を変えることじゃ。 この記事では順にこう確かめていくぞ。検索語のずれを直す。求人の実態を見る。自分に必要なのが本当に完全在宅なのかを決める。そのうえで、取れる選択肢を選ぶ。
3つ目が気になります。「本当に完全在宅なのか」って、どういうことなんでしょう…。
そこは後半でじっくりやろう。その前にひとつ断っておくと、この記事は薬剤師を続ける前提 で書いておる。
なお、薬剤師の仕事そのものを辞めて在宅で働きたい場合は、考える範囲が変わります。
あわせて読みたい薬剤師が異業種に転職して在宅ワークをしたい|現実的な3つの選択肢と進み方
薬剤師を辞めて在宅で働きたい場合に、どんな選択肢があり、どの順序で進めればよいかを解説しています。
求人サイトの「在宅」は、訪問して薬を届ける在宅医療のこと 「自分の調べ方が下手なのだろうか」と思いながら検索を続けるのは、こたえるものじゃ。ここではもう少し具体的に、言葉のずれを解いておこう。
同じ言葉が二通りに使われているなんて、外から探す側は気づきようがないですもんね。
薬剤師の求人で「在宅」と書かれておるとき、その多くは在宅医療の業務を指す。大手の求人サイトにも「在宅薬剤師」という職種のカテゴリがあって、そこに並ぶのは患者さんの自宅や施設を訪問する仕事じゃ。
カテゴリとして独立しているなら、なおさら紛れ込みますね。検索する側は同じ言葉を打ち込んでいるだけですし。
念のため言うておくが、在宅医療の仕事に問題があるという話ではないぞ。地域の医療に欠かせん仕事じゃ。
ここで確かめたいのは、どちらが良いかではなくて、同じ言葉が違う働き方を指している という一点だけ、ということですね。
その通りじゃ。そこで明日できることを言うておこう。検索語を「在宅勤務可」「リモートワーク」「テレワーク」のいずれかに変えることじゃ。 「在宅」の一語では、訪問業務と自宅勤務を区別できん。
言葉を1つ変えるだけなら、今日の帰りにでもできますね。
ただし、それだけでは足りん。薬剤師専門の求人サイトでは、検索語を変えても在宅医療の求人が混ざり続ける。 数が少ないぶん埋もれやすいから、専門サイトだけで探すのはもったいない。一般の転職サイトや派遣会社、ハローワーク、事業者の直接募集まで、窓口を増やして見るんじゃ。
探す言葉だけでなく、探す場所も変えるということですね。薬剤師向けのサイトだけを見ていたら、たしかに届かないです。
見るときの注意もひとつある。「リモート可」と書かれておっても、条件を読むと研修期間は出社が必要だったり、「将来的に在宅も可能」という書き方だったりすることがあるんじゃ。
「可」の一文字に、いろんな段取りが隠れているんですね…。
じゃから、在宅で働ける条件が求人票に明記されておるか を、そのつど確かめることじゃな。
ママ薬剤師が在宅でできる仕事は、雇用形態が偏っている 求人がいくつか見えてくると、今度は「どれが自分に現実的なのか」で迷うものじゃ。中身には偏りがあるので、ここで整理しておこう。職種の名前を並べるより、雇用形態で見たほうが探し方が決まるからの。
在宅勤務ができる薬剤師の求人を、雇用形態で整理する
働き方 確認できた仕事 探すときに見る条件 薬局のパート・正社員 オンライン服薬指導、薬歴の入力など 完全に在宅か、店舗へ出る日があるか 派遣 医薬品の情報を扱うDI関連の業務 在宅で働ける条件が求人票に明記されているか 業務委託 オンライン服薬指導、医療記事の執筆・監修 案件量によって収入が変わる前提になっているか 企業の正社員・契約社員 メディカルライター、安全性情報 未経験可の枠があるか、出社日数の下限はどれくらいか
この表に入れたのは、実際に募集を確認できた仕事だけじゃ。
紹介記事だと、もっとたくさんの職種が並んでいるのを見かけますけど…。
そこじゃな。中には、探しても募集が見つからんものもある。見つからん仕事を選択肢として並べても、読んだ人が実際に探した時点で行き詰まるだけじゃ。 じゃからここには入れておらん。
あ、でも相談者さんが探していた「DI業務」も「メディカルライター」も、この表に載っていますね。無いのではなくて、探していた場所に無かった、ということですか…。
そういうことじゃ。あの2つは実在する。相談者さんが見ておった場所に出てこんかっただけでの。雇用形態ごとに、探す窓口が違うんじゃ。
薬局のパートや正社員なら、一般の転職サイトやハローワーク、薬局の直接募集じゃ。派遣なら製薬・治験に強い派遣会社、企業の職種なら総合の転職サイトや製薬に強いエージェント。業務委託は求人サイトではなく、クラウドソーシングや、オンライン診療を手がける事業者の直接募集で出てくることが多い。
表の行が、そのまま見に行く場所の違いになっているんですね。
そのうえで、正直に言うておきたいことがある。表に挙げた求人は、件数が少ないうえに、訪問の求人に埋もれやすい。 調剤薬局の求人とは、比べものにならんほど限られておる。
「ある」けれど「たくさんはない」ということですね。……正直、聞くのが少し怖い話でもあります。
じゃが先に知っておいたほうがよい。それと、収入の話もここでしておこう。業務委託の在宅案件は、案件の量で収入が上下する。 事業者側の受注状況で決まる部分が大きいから、月ごとに変わる前提で見ておくほうが安全じゃ。
毎月同じだけ入ってくる、とは考えないほうがいいんですね。
医療記事の執筆や監修も、単価が高くない傾向があるでの。数をこなさんと、まとまった収入にはなりにくい。
始めやすいぶん、収入は読みにくいということですね。
それと、オンライン服薬指導を薬局の外から行うには条件が付く。その薬局に所属して働いていること などが求められるでの、「免許さえあれば自宅から単発で受けられる仕事」とは考えんほうがよい。求人ごとに勤務の条件を確かめることじゃな。
在宅勤務にしても、締切と稼働時間はそのまま残る 「在宅にさえなれば、全部が楽になる」——そう思うて動いて、肩透かしを食う人もおる。先に期待の中身を確かめておこう。
たしかに、家で働けるようになりさえすれば解決する気がしてしまいます。
在宅勤務で変わるのは「働く場所」じゃ。締切も、決められた稼働時間も、そのまま残る。子どもを見ながら片手間にできる仕事ではない。
家にいる=手が空いている、ではないんですよね。1歳のお子さんがいるなら、なおさらだと思います。
業務委託を選ぶなら、さっき言うた収入の振れ幅がそのまま効いてくる。家賃や保育料のような固定費を、その収入で賄う前提にすると苦しくなるぞ。
……在宅勤務、思っていたより手放しでは喜べない感じですね。
とはいえ、意味がないという話ではないぞ。実際に効くことが2つある。ひとつは、通勤時間がまるごと消えること じゃ。
あ、相談者さんは片道50分でしたね。往復だと1時間40分…。毎日となると、かなり大きいです。
積み上がると効いてくる差じゃな。もうひとつは、保育園から呼び出されたときに、職場から自宅へ戻るための移動がなくなること じゃ。迎えに行くことや看病そのものが消えるわけではないし、看病しながら通常どおり働けるという意味でもないぞ。
看ている人が別にいる日や、子どもが眠っている時間帯なら、という条件付きなんですね。それでも、迎えのために早退しなくて済むのは大きいです。
つまり在宅勤務は、万能でもなければ無意味でもない。何が解決すれば生活が回るのか によって、価値が変わるんじゃ。
じゃあ、その「何が解決すればいいのか」をはっきりさせるのが次ですね。
必要なのは完全在宅か、子の急な予定に動けることか ここまで読んで、気持ちが少し萎えたかもしれん。じゃが結論を出すのはまだ早いぞ。ここで一度、手段から目的へ戻ってみよう。
「在宅勤務がしたい」というのは、手段のほうだということですか。
そうじゃ。「在宅勤務がしたい」の奥には、たいてい別の願いがある。多くの場合、必要なのは家から出ないことそのものではなく、子どもの急な発熱や送り迎えに合わせて動けること じゃ。
言われてみると、相談者さんが書いていたのも「熱を出すたびに迎えに行く日が続いている」でした。困っているのはそこですよね。
どちらが自分に近いかで、選ぶ選択肢が変わる。次の3つで確かめてみるとよい。
! 在宅を軸に探すべきかどうかのセルフチェック
通勤時間そのものが負担で、そこを削らないと生活が回らない
必要なのは家にいることではなく、子の急な発熱や送迎に合わせて動けること
収入がしばらく不安定になっても、働く場所を優先したい
これ、どう読めばいいでしょうか。全部に「はい」と答えたくなってしまいます。
当てはまった項目で読むんじゃ。1つ目に「はい」なら、通勤そのものを無くすか、大幅に短くするかの二択になる。 在宅を軸に探しつつ、②の通勤時間が短い職場も同時に見るとよい。
2つ目に「はい」なら、通勤ありでも条件次第で解決する。 むしろそのほうが選択肢は多くなるぞ。
在宅にこだわらないほうが、かえって選べる幅が広がるんですね。
そして3つ目が「いいえ」なら、収入が変動する業務委託中心の働き方は向かん。 次に挙げる選択肢のうち、②を先に検討するとよい。
自分がどれなのかで、見るところが変わってくるんですね。
育児中の薬剤師が取れる3つの選択肢 ここまでで、自分に要るものが見えてきたはずじゃ。ここからは実際に取れる選択肢を3つ挙げるぞ。3つを分けておるのは、動き出すまでの時間 と収入の読みやすさ が違うからじゃ。
同じ「在宅で働く方法」を3つ並べる、ということではないんですね。
そうじゃ。①は今の勤務を続けたまま在宅の仕事を足す形、②と③は主たる働き方そのものを変える形になる。性質が違うので、そこは隠さず並べておこう。
① 今の勤務を続けたまま、在宅の仕事を副業として持つ — すぐ始められるが、収入は変動する ひとつ目は、今の勤務を続けながら、業務委託の在宅案件を少しずつ持つ形じゃ。始めるまでの時間はいちばん短くて済む。
今の仕事を辞めずに試せるのは、心理的なハードルが低そうです。
ただし案件の量で収入が変わるから、生活費の柱にはしにくい。向いておるのは、勤務日数を減らさずに、在宅の仕事がどんなものかを試してみたい方 じゃな。
今の職場を続けながら、というのは気軽そうですけど…勝手に始めてしまっていいものなんでしょうか。
よいところに気づいたの。まず確かめるのは、いまの勤め先が副業を認めておるか じゃ。就業規則に定めがある。とくに管理薬剤師は兼業が制限されることがあるでの、そこを飛ばして始めると後で困る。
最初の関門は、案件を探すことではなく就業規則なんですね。
そのうえで、稼働時間の見積もりを甘くせんことじゃ。夜や休日に作業時間を確保できる前提になっておらんか、始める前に確かめてほしい。今の勤務に上乗せする形なので、総労働時間はむしろ増える。
……そうか。楽になるつもりで始めて、逆に苦しくなることもあるんですね。
② 通勤ありで負担の軽い働き方に変える — 収入が安定し、いちばん現実的 ふたつ目は、完全在宅にはこだわらん形じゃ。相談者さんのように、すでに時短で働いておるなら、次に動かせるのは勤務日数と通勤時間じゃ。 通勤時間の短い職場に移るか、時短からパートへ切り替えるか——この2つが②の中身になる。
3つの中で求人の母数が最も多く、収入も読める。さっきのチェックリストで2つ目に「はい」と答えた方は、ここが本命になるぞ。
悩みの中心が「子どもの急な予定への対応」なら、通勤しているかどうかは決定的ではないですもんね。
そういうことじゃ。ただし雇用形態を変えると、収入の見通しも変わる。 動く前に試算しておくことじゃな。
パートや時短に変えたときの収入の見通しは、別の記事で詳しく整理しています。
あわせて読みたい薬剤師が育児と両立できるパート転職ガイド|収入の目安と求人の探し方
パート薬剤師の時給相場と収入シミュレーション、扶養の考え方、求人の探し方を解説しています。
③ 経験を積んで、企業の在宅勤務ができる職種へ移る — 時間はかかる みっつ目は、メディカルライターや安全性情報など、企業側に在宅勤務の制度がある職種へ移る形じゃ。
表に出ていた企業の職種ですね。未経験だと難しいでしょうか。
未経験可の枠がある求人も存在するぞ。ただし募集は多くなく、準備と応募にまとまった期間が要る。数年単位で考える選択肢 じゃな。向いておるのは、すぐでなくてよいので、数年かけて働き方を変えていきたい方じゃ。
すぐには動けないけれど、方向としては残しておける、という感じでしょうか。
その受け取り方でよい。ひとつ断っておくと、臨床開発モニターのように、在宅勤務の制度があっても医療機関へ出向くことが仕事の芯にある職種は、ここには入れておらん。 遠方なら泊まりの出張も入るからの。
1歳のお子さんがいる相談者さんには、そこは決定的な違いですね。在宅勤務ができる、とだけ聞いていたら見落としそうです。
注意点はもうひとつ、「未経験でもすぐ在宅」と読める求人情報を鵜呑みにせんこと じゃ。出社日数の下限がどこにあるか、在宅で働ける条件が明記されておるかを確認してほしい。
ここでも「明記されているか」なんですね。検索語を変えたときと同じ話だ…。
まとめ:在宅は目的ではなく、生活を回すための手段 この記事のまとめ
1 在宅勤務ができる薬剤師の求人は存在するが、件数は限られている 2 見つからない原因は「在宅」の語義のずれと、探す場所が合っていないこと 3 在宅勤務でも締切と稼働時間の拘束は残る。場所が変わるだけ 4 完全在宅が必要か、急な予定に動ければ足りるかで、取る選択肢が変わる 最後にひとつだけ。在宅で働くこと自体が目的ではないはずじゃ。 「子どもの急な予定に合わせて動ける」という目的から逆算すれば、取れる手は在宅勤務だけではない。
最初は「在宅の求人が見つからない」という行き止まりの話だったのに、いつのまにか選択肢が3つに増えていました。
検索語と探す場所を変える。求人の実態を知る。自分に必要なのが完全在宅かを決める。ここまでできておれば、あとは条件を伝えて探すだけじゃ。
見つからなかったのは自分のせいじゃなかったと分かるだけでも、次に進みやすくなりますね。
今回見てきたとおり、在宅勤務ができる求人も、通勤時間の短い低負荷な求人も、雇用形態によって探す窓口が分かれていました。自分で条件を絞り込むだけでは届きにくいので、条件を伝えて探してもらう相手を選ぶところから始めると動きやすくなります。すぐに応募する必要はありません。
🔍 比較ガイド 薬剤師転職サイトの選び方・使い方
登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説