薬剤師が地方に転職すれば年収は上がる?額面と実質年収の両面で検証
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薬剤師が地方に転職すると年収は本当に上がるのか?厚労省データをもとに額面年収の地域差を確認し、物価・生活費を考慮した実質年収の視点で検証します。
登場キャラクター

薬剤師じいさん
薬剤師歴70年の大ベテラン。病院・薬局・ドラッグストアすべてを経験してきた生き字引。豊富な経験と公的データに基づいて、若手薬剤師の悩みにズバッと答えます。

みさ
新卒2年目の若手薬剤師。病院で働いているけど、年収やキャリアに不安を感じている。全国の悩める若手薬剤師を代表して、気になることをどんどん質問していきます!

先生、薬剤師は地方に転職すると年収が上がるって本当ですか?Uターンを考えていて気になっているんですが…

結論から言うと、地方は薬剤師不足の影響で額面年収が高い傾向があるんじゃ。ただし、年収は地域だけでなく職種・経験年数・物価でも変わるから、額面だけで判断すると落とし穴があるんじゃよ。今回は厚労省のデータで地域差を確認しつつ、地方転職の判断軸を整理していくぞ。
結論:地方への転職で年収は上がりうるが、地域だけで判断するのは危険
薬剤師が地方に転職すれば年収は上がる?
- 1地方は薬剤師不足で額面年収が高い傾向がある。ただし地域だけで判断するのは危険
- 2物価差を考慮した「実質年収」で比べると、同じ額面600万円でも東京と群馬で約47万円の差が出る
- 3地域・職種・経験年数・生活コストを総合的に見て、自分の条件で確認することが大切

まず、地域による年収差がどのくらいあるのかを押さえておこう。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、薬剤師の年収が都道府県別に表示されておる。全国値は599.3万円じゃ(賃金構造基本統計調査ベース)。

599万円が全国平均なんですね。都道府県によってけっこう差があるんですか?

都道府県ごとに金額が異なるから、地域差があること自体は公的データで裏付けられておる。ただし「年収が高い地域に引っ越せば得」と単純にはいかない。年収は職種や経験年数、勤務先の条件でも変わるし、物価の違いもあるからな。

額面の数字だけで比べちゃダメなんですね。じゃあ何を見ればいいんですか?

順を追って整理していこう。まずは地方の年収が高くなりやすい構造的な理由、次に物価を考慮した実質年収の考え方、最後に自分の条件で判断するための視点じゃ。
薬剤師の地方年収が高いのはなぜ?偏在と需給バランスの構造

地域差があるのはわかったんですが、そもそもなんで地方の方が高くなるんですか?人が少ないから…とかですか?

いい勘じゃ。背景としてまず考えたいのが、薬剤師の偏在じゃ。厚生労働省の薬剤師確保計画ガイドラインでは、薬剤師の偏在は都道府県内だけでなく、都道府県間でも生じていると整理されておる。

都道府県の間でも偏りがあるんですね…。私の実家がある県はどうなんだろう。

厚労省が公表している偏在指標資料で、都道府県ごとに薬剤師の充足状況に差があることが示されておるんじゃ。これが年収にも影響してくる。薬剤師が不足しやすい地域では、採用のために条件を調整する必要が出やすく、逆に人が集まりやすい地域では条件が大きく動かないこともある。

つまり、人手不足の地域ほど年収が高くなりやすいということですか?

そう考えるのは自然じゃ。ただし正確に言うと、公的データが示しているのは「薬剤師の偏在がある」という事実までじゃ。偏在が年収差の直接の原因だと明示した公的資料はない。とはいえ、人が足りない地域で採用条件が上がりやすいのは経済の基本原理じゃから、偏在が年収差に影響していると考えるのは妥当じゃろう。

なるほど…。私は今、都内の病院に勤めてるんですが、たしかに薬剤師が余っている感じはあります。地方だと職種によっても違ったりしますか?

そうじゃ。厚労省の薬剤師確保計画ガイドラインでは、特に病院薬剤師の確保が喫緊の課題とされておる。つまり、同じ薬剤師でも、地域差に加えて、勤務先の違いによっても需給の影響を受けやすい構造があるんじゃよ。
物価・生活費を考慮した薬剤師の実質年収を地域別に比較する

額面年収に地域差があるのはわかりました。でも、額面が高ければそれでいいんじゃないですか?

そこが落とし穴じゃ。総務省の消費者物価地域差指数を見ると、都道府県ごとに物価水準が違う。つまり、同じ額面でも「手元に残る豊かさ」は地域によって変わるんじゃ。

それって、たとえば東京と地方だとどのくらい違うんですか?Uターン先と今の生活費を比べたいなって…。

たとえば、額面年収が同じ600万円でも、東京都(物価指数104.0)では実質約577万円、群馬県(物価指数96.2)では実質約624万円になる。額面は同じなのに、約47万円の差が出る計算じゃ。

47万円も!それが「実質年収」の考え方なんですね。

そうじゃ。地方は額面年収が高い傾向がある上に物価も低い。つまり実質年収で見ると、地方の優位性はさらに大きくなることもある。逆に、都市部は額面が高く見えても物価が高いから、実質では目減りしやすい。

47万円も差が出るんですね…!実家のある地域だとどうなるのか気になります。他の地域のデータもありますか?

主要な地域の額面年収と実質年収を一覧にしてみたぞ。額面の順位と実質の順位が入れ替わるケースに注目してみてくれ。
出典:額面年収は厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査、物価指数は総務省 消費者物価地域差指数2023年(総合)より算出
| 地域 | 額面年収 | 物価指数 | 実質年収 | 額面との差 |
|---|---|---|---|---|
| 熊本県 | 761.8万 | 98.9 | 770.3万 | +8.5万 |
| 広島県 | 715.7万 | 98.8 | 724.1万 | +8.4万 |
| 新潟県 | 686.9万 | 98.2 | 699.5万 | +12.6万 |
| 静岡県 | 665.2万 | 98.5 | 675.3万 | +10.1万 |
| 愛知県 | 631.4万 | 98.5 | 641.0万 | +9.6万 |
| 全国平均 | 599.3万 | 100.0 | 599.3万 | ±0 |
| 東京都 | 609.2万 | 104.5 | 582.9万 | −26.3万 |
| 群馬県 | 564.2万 | 96.4 | 585.3万 | +21.1万 |
| 神奈川県 | 572.0万 | 103.1 | 554.8万 | −17.2万 |
| 北海道 | 528.6万 | 101.7 | 519.8万 | −8.8万 |

東京は額面609万円なのに実質583万円まで下がるんですね。逆に群馬は額面564万円なのに実質585万円で、東京とほぼ同じ…!

そうじゃ。額面だけ見ると東京の方が45万円も高いが、実質ではほぼ変わらない。一方、熊本は額面でも実質でもトップクラスじゃ。このように、地域によって額面と実質の関係はまったく違うんじゃよ。

こうして並べて見ると、額面の順位と実質の順位ってけっこう入れ替わるんですね。単純に「額面が高い県に行けばいい」って話じゃないんだ…。

その通りじゃ。全体の傾向を整理すると、都市部は求人の選択肢が多いが人が集まりやすく年収は上がりにくい。物価も高い。地方は求人数は限られるが、人手不足で条件が良くなりやすく、物価も低い。どちらにもメリット・デメリットがあるから、実質年収で比べることが大切じゃ。
地方転職で年収が上がる人・上がらない人を分ける3つの視点
1. 今の年収が、その地域で妥当か

実質年収の考え方はわかったんですが、正直それだけで転職を決めていいのかなって不安もあって…。

よい気づきじゃ。実質年収以外にも判断の軸がある。ここからは3つの視点で整理していこう。まず1つ目は、自分の今の年収が、その地域で見てどうなのかじゃ。全国平均だけを見ても、自分の条件には当てはまらない。

たしかに…。私の年収が今の地域で高いのか低いのかもよくわかってないです。

厚労省のjob tagのように、地域差を前提に見られるデータを使って、自分の状況に引きつけて考える必要があるぞ。
2. 地域だけでなく、職種や経験年数もあわせて見る

地域だけ見ればいいわけじゃないんですね。私は病院勤務なんですが、地方に行っても病院と薬局で全然違ったりしますよね…。

そうじゃ。賃金構造基本統計調査では、薬剤師の年収を年齢階級別・事業所規模別に確認できる。同じ地方でも、病院、調剤薬局、ドラッグストアで水準が違うから、地域と職種はセットで見るべきじゃ。
3. 年収だけでなく、物価・生活費・働き方もあわせて見る

地域と職種のセットで見るのか…。今まで「地方は年収高い」ってざっくりとしか考えてなかったです。

そして3つ目じゃが、額面年収が高いことが、そのまま満足度につながるとは限らないことも押さえておきたい。生活コスト、通勤、働き方、将来のキャリアなども含めて考える必要がある。地域差の話は、最終的には「どこで、どう働きたいか」の話につながるんじゃよ。
こんな薬剤師は、地方転職で年収を見直す価値がある

正直、私の場合はUターンしたい気持ちが先にあって、年収のことはあとから考え始めた感じなんですが…こういうケースでも地方転職って意味ありますか?

むしろそういう人にこそ、ここまでの情報は役立つぞ。具体的に言うと、今の年収が低い気がするが地域要因なのか職場要因なのか分からない人。それから、みさのようにUターンや引っ越しを考えていて働く場所も含めて見直したい人じゃな。

私みたいにUターンを考えている人はまさにですね。他にもいますか?

年収だけでなく生活コストや暮らしやすさも含めて働き方を考え直したい人も当てはまるぞ。下のフローチャートで自分が当てはまるか確認してみてくれ。
自分の条件だと年収はどのくらいになりそうか確認するには?

ここまで聞いてきて、地域差のデータは頭に入ったんですが、結局「私の場合どうなの?」がまだわからなくて…。

まさにそこが大事じゃ。地域差の話を読んでも、最後に必要なのは「自分の場合はどうなのか」の確認じゃ。全国平均ではなく、少なくとも地域、職種、経験年数を入れて考える必要がある。Pharma Worksでは、こうした条件から年収の目安を確認できる適正年収診断を提供しておる。この記事の内容を自分ごととして整理するための参考にしてみてくれ。
まとめ:地方転職は「額面年収」だけで決めないことが大切
地方転職で年収アップを狙うなら
- 1地方は薬剤師不足で額面年収が高い傾向があり、物価も低いため実質年収の優位性はさらに大きくなることもある
- 2ただし年収は地域だけでなく職種・経験年数・働き方で個人差がある。「地方に行けば上がる」と鵜呑みにしない
- 3まずは自分の地域・職種・経験年数で適正年収を確認し、そこから判断することが大切

最後にポイントを整理しておこう。①地方は薬剤師不足で額面年収が高い傾向がある。②物価差を考慮した実質年収で比べると、地方の優位性はさらに大きくなることもある。③ただし、職種・経験年数・働き方で個人差があるから、自分の条件で確認することが大事じゃ。

「地方に行けば上がる」って漠然と思ってたんですが、実質年収とか職種の違いとか、考えることがたくさんあるんですね。まずは自分の条件で適正年収を確認してみます!

そのとおりじゃ。「地方に行けば上がる」と鵜呑みにせず、自分の場合はどうかを確かめてから動くのがいちばんじゃよ。