6年制薬学部を出たのに年収が4年制時代と変わらない。その不満は正当です。制度変更で2年増えたのに報酬が追いつかない構造的理由と、年収を上げる5つの現実的な選択肢を解説します。
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読者からの相談私立の6年制薬学部を卒業して5年目の薬剤師です。学費は総額1,200万円以上かかりました。それなのに年収は450万円程度で、4年制時代に卒業した先輩薬剤師と変わりません。2年間多く通った意味は何だったのか、正直モヤモヤしています。
📌この記事のポイント
- 6年制になっても薬剤師の年収は4年制時代とほぼ変わっていない。追加の2年間は報酬に反映されない構造になっている
- 追加2年分の学費+機会費用は合計1,000万円以上。この不満は「わがまま」ではなく構造の問題
- 年収を改善する現実的な選択肢は5つある。まずは自分の年収が相場のどこにいるかを把握することが第一歩
6年制になっても薬剤師の年収が上がらなかった理由
まず最初に伝えておきたいことがある。6年制になったのに年収が低すぎると感じるのは、甘えでもわがままでもない。構造的な問題じゃ。
4年制時代に卒業した先輩と年収が変わらないって、周りでもよく聞く話です。2年多く通ったのに同じ給料って、正直納得がいかなくて…。
その気持ちは当然じゃ。事実を確認しよう。旧4年制で薬剤師になった世代と、6年制を経て薬剤師になった世代で、給与水準はほぼ変わっておらん。求人票でも「4年制卒」「6年制卒」で区別されることはなく、薬剤師という資格に対する市場評価は制度移行前後で同じなんじゃ。
え、求人でも区別されていないんですか?2年多く学んでいるのに…?
されておらん。雇用主から見れば、4年制で取った免許も6年制で取った免許も同じ「薬剤師免許」。同じ給与テーブルが適用される。追加2年分の教育に対する上乗せ報酬は、労働市場に存在しないんじゃ。
つまり制度だけ変わって、報酬の仕組みはそのまま…。なぜこうなったんですか?
2006年に薬学部が4年制から6年制に変わったが、この制度変更の目的は「薬剤師の質の向上」であって「待遇改善」ではなかった。臨床実務実習の充実や倫理教育の強化が目的で、調剤報酬は「6年制だから」という理由では引き上げられなかったんじゃ。
教育側のカリキュラムは増えたけど、報酬制度は追いついていない。それって構造として破綻していませんか?
東邦大学の研究でもこの問題は指摘されておる。2001年度と2020年度の薬局薬剤師の初任給を比較すると、月給は約4万円しか上がっていない。19年間で16%程度の上昇じゃが、同期間の物価上昇を考慮すれば実質的な給与上昇はほぼゼロ。6年制になったことが給与を上げたとは言えない数字じゃ。
19年間で実質ゼロ…。報酬は変わっていないのに、学費と時間だけ増えた。不満を感じない方がおかしいですよね。
同じ6年制でも、医師・歯科医師とはこれだけ差がある
もう一つ、はっきりさせておきたいことがある。6年制という点だけを見れば、薬剤師は医師や歯科医師と同じ長さの課程を経て国家試験を受ける。じゃが、賃金の水準はまったく違うんじゃ。
同じ6年なのに…。実際、どのくらい差があるんですか?
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査に、職種別の賃金データがある。そこから年収を出すとこうなる。
6年制3職種の平均年収(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種別・企業規模計10人以上・男女計。きまって支給する現金給与額×12か月+年間賞与その他特別給与額で算出)
| 職種 | 平均年収 | 平均年齢 |
|---|
| 医師 | 約1,512万円 | 45.7歳 |
| 歯科医師 | 約1,063万円 | 39.6歳 |
| 薬剤師 | 約567万円 | 40.1歳 |
歯科医師は平均年齢がほぼ同じなのに、薬剤師の1.9倍…。医師にいたっては2.7倍ですか。
医師は平均年齢が5歳ほど上じゃから、その分は差し引いて見る必要がある。じゃが歯科医師は薬剤師とほぼ同じ年齢で、それでも倍近い。6年という課程の長さが、そのまま報酬に反映される仕組みにはなっておらんのじゃ。
「6年も通ったのに」というモヤモヤの正体は、ここだったんですね…。同じ6年制と言われる職種と、これだけ違う。
誤解のないように言っておくと、業務の内容も責任の範囲も違うから、単純に不公平だという話ではない。ただ「6年制になったから報酬が上がる」という期待は、制度のどこにも保証されていなかった。それだけははっきりしておる。
追加の2年間で失ったものを数字にする

次に、6年制で追加された2年間のコストを具体的に数字にしてみよう。これを把握しておくと、自分の不満がどれだけ正当か客観的にわかる。
学費だけでもきついのに、それ以外にもコストがあるんですか?
ある。まず追加2年分の学費じゃ。文部科学省の調査では、私立薬学部の授業料と施設設備費は年に合わせて約176万円。5〜6年次の2年分で約350万円になる。国立の標準額なら2年分でおよそ107万円じゃ。
私立なら350万円か…。それだけでもきついですね。
さらに大きいのが「機会費用」じゃ。4年制なら22歳で働き始められたところを、6年制は24歳スタート。この2年間に薬剤師として稼げたであろう年収は約700万〜800万円になる。
学費350万円+逸失収入700万円…合計1,000万円以上!これを回収するのに何年かかるんだろう…。
しかも、先ほど確認した通り6年制になったことによる給与上昇は実質ゼロ。仮に月3万円の上乗せがあったとしても、1,000万円を回収するのに28年かかる計算じゃ。実質ゼロなら回収は不可能。投資としては完全に破綻しておる。
「6年間勉強した分が報われていない」って感覚は、データで見ても完全に正当な不満だったんですね…。でも構造は自分じゃ変えられないですよね。じゃあどうすればいいんでしょう?
制度は変えられんし、この1,000万円が制度から返ってくることもない。取り戻す方法があるとすれば、自分の年収を上げることだけじゃ。
…たしかに。嘆いていても1円も戻ってこないですもんね。具体的に年収を上げるには何ができるんですか?
うむ、それを次で見ていこう。その前に一つ。この学費を奨学金でまかなって、いま返済に追われている方は、返済の実負担を軽くする打ち手を整理した記事も用意しておる。当てはまる方はあわせて読んでみてほしい。
あわせて読みたい薬剤師で奨学金返済がきつい人へ|薬学部の学費と負担を軽くする選択肢
奨学金の返済がきつい方はこちら。薬剤師の借入実態を公的データで確認し、減額返還制度・自治体の返還支援制度・年収を上げる方法を整理します
年収を上げる5つの現実的な選択肢
投じたコストを取り戻すつもりで、年収を上げる現実的な選択肢を5つ整理しよう。
お願いします。薬剤師を続けるにしても辞めるにしても、選択肢を全部知っておきたいです。
1. 高年収の企業・職種への転職
同じ薬剤師でも、働く場所を変えるだけで年収が100万円以上変わることがある。代表的なのは3つじゃ。
薬剤師資格を活かした高年収の選択肢
| 転職先 | 年収目安 | ポイント |
|---|
| ドラッグストア | 500万〜650万円 | 調剤併設店なら薬剤師業務も可能。年収水準が高い |
| 製薬企業(MR等) | 600万〜900万円 | 薬学の知識を活かせる。成果報酬型で上限が高い |
| 地方の薬剤師不足エリア | 550万〜700万円 | 人手不足により好条件。住居手当等の福利厚生も厚い |
地方だと年収が上がるんですか。人手不足エリアは条件がいいって聞いたことはありましたけど、具体的に見ると差が大きいですね。
うむ。特にドラッグストアや地方の調剤薬局への転職は、薬剤師の日常業務を大きく変えずに年収を上げられる可能性がある。製薬企業は業務内容が大きく変わるが、6年制で学んだ薬理学や臨床知識はMRとして活きるぞ。
転職サイトに登録するとして、担当者にはどう伝えればいいんですか?
「今の年収は○万円です。年収を上げたいです」と現在の年収だけ伝えれば十分じゃ。あとは担当者が条件に合う求人を探してくれる。まずは登録して相談するだけでよいぞ。
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2. 認定・専門薬剤師資格の取得
2つ目は、資格を武器にする方法じゃ。研修認定薬剤師やかかりつけ薬剤師の算定要件を満たすことで、薬局の収益に直接貢献できる。これは交渉材料になるし、転職時の年収アップにもつながる。
6年制で臨床教育を多く受けた分、認定薬剤師の取得には有利かもしれないですね。…そう考えると、追加の2年間が間接的に活きる場面もあるんでしょうか。
鋭い気づきじゃ。がん専門薬剤師や感染制御専門薬剤師のように、6年制カリキュラムの臨床知識が前提になる資格もある。制度が年収に直接反映されない以上、自分でその価値を換金する仕組みを作る必要があるんじゃ。
3. 管理薬剤師・エリアマネージャーへの昇進
3つ目は、今の職場で上のポジションを狙う方法じゃ。管理薬剤師になれば手当が月2万〜5万円つくし、エリアマネージャーや本部職になればさらに上がる。
ただ、管理薬剤師のポストって限られていますよね。うちの薬局だとポストが埋まっていて、いつ空くかわからない状況です…。
そこが現実的な壁じゃな。ポストが空かないなら、管理薬剤師として迎えてくれる薬局に転職するという選択肢もある。昇進を「待つ」だけでなく「取りに行く」発想が大事じゃ。
4. 副業で収入源を増やす
4つ目は、本業を続けながら別の収入源を作る方法じゃ。最近は副業を認める薬局も増えておる。
副業って言っても、何をやればいいのか迷います。薬剤師に関係あることじゃないとダメですか?
いや、やりたいことがあるなら薬剤師に関係なくてもよい。メディカルライティングや予備校講師のように知識を活かすもよし、まったく別の分野でもよい。ただ、手っ取り早く収入を上げたいなら、派遣薬剤師が一番効率がよいぞ。
派遣薬剤師ですか。たしかに、新しいスキルを身につけなくても今の能力でそのまま稼げますね。
うむ。派遣薬剤師の時給は2,800〜3,500円程度が相場で、週1回の勤務でも月10万円以上の上乗せになる。転職するほどではないが収入を増やしたい、という人には現実的な選択肢じゃ。
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5. 独立開業
5つ目は、自分で事業を持つ道じゃ。資金面のハードルは高いが、在宅専門の薬局やオンライン服薬指導に特化した事業など、小規模で始められる選択肢も出てきておる。
独立って大変なイメージがありますけど、小さく始められる形もあるんですね。
うむ。経営者になれば収入の天井がなくなる。ただしリスクも伴うから、まずは独立支援制度のある調剤薬局チェーンに転職して、経営ノウハウを学びながら準備するというルートもある。
開業支援してくれる会社があるんですか。いきなり独立じゃなくて、働きながら準備できるなら現実的ですね。
そうじゃ。開業資金の一部を支援してくれたり、物件探しやFC加盟のサポートをしてくれる企業もある。将来の独立を見据えて、まずはそういった環境に身を置くのも一つの戦略じゃ。
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5つも選択肢があるんですね。でも、自分にはどれが合うんだろう…。
どれが合うかは、今の年収が相場のどこにいるかで変わる。相場以下なら転職で上がる余地があるし、相場通りなら資格や副業で上乗せする方向が現実的じゃ。まずは自分の現在地を確認してみるとよいぞ。
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まとめ:制度は変えられないが、自分のキャリアは変えられる
この記事のまとめ
- 16年制になっても薬剤師の年収は4年制時代と変わっていない。制度変更は「質の向上」が目的で、報酬改善は含まれていなかった
- 2追加2年分のコスト(学費+機会費用)は1,100万円以上。この不満は構造の問題であり正当なもの
- 3年収改善の選択肢は5つ:高年収職種への転職、資格取得、昇進、副業、独立開業
- 4どの選択肢が合うかは今の年収と相場の差で判断する。まずは自分の立ち位置の確認から
6年制になったのに年収が変わらない。その不満は構造の問題であって、あなたの甘えではない。ただし制度を嘆いていても年収は変わらん。自分で動ける範囲で、キャリアを組み替えていくしかないんじゃ。
「制度は変えられないけど、キャリアは変えられる」って、なんだか腹落ちしました。まずは自分の年収が相場のどこにいるかを確認して、そこから考えてみます。
うむ。焦って動く必要はない。まずは現在地を知ること。それだけで次の一歩が見えてくるぞ。