新薬承認

イムシブリー皮下注10mgを承認 後天性視床下部性肥満に新たな治療選択肢

記事公開:承認日:

薬の概要

販売名
  • イムシブリー皮下注10mg
一般名
  • セトメラノチド酢酸塩
効能・効果
  • 後天性視床下部性肥満

注目ポイント

後天性視床下部性肥満(acquired hypothalamic obesity:aHO)は、脳の視床下部が損傷されることで起こる肥満です。視床下部は食欲やエネルギー消費を調整する場所なので、ここが傷つくと「食べ過ぎる」「消費しにくい」状態になり、急速で持続的な体重増加につながります。小児でも起こり、生活習慣の改善だけでは抑えにくいのが問題です。 イムシブリー皮下注10mgの一般名はセトメラノチド酢酸塩です。セトメラノチドは、メラノコルチン4受容体(MC4R:melanocortin type 4 receptor)を刺激する薬です。MC4Rは、食欲を抑えたりエネルギー消費を増やしたりする経路に関わります。aHOではこの経路がうまく働きにくくなるため、そこを補う考え方の薬として位置づけられます。 今回の承認で注目されるのは、aHOに対して国内で承認された治療選択肢が示された点です。審査では、国際共同第III相試験(複数施設で行う検証的試験)の結果から、ベースラインから52週時までのBMI(body mass index:体格指数)の変化率でプラセボに対する優越性が示されました。あわせて、体重や腹囲の改善傾向も確認されています。 一方で、この薬は誰にでも同じ量を使う薬ではありません。年齢と体重で漸増方法が分かれ、さらに腎機能障害の有無でも用法・用量が変わります。試験に含まれた人数が少ない年齢層や腎機能障害患者もあるため、承認と同時に医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)に基づく情報収集が求められています。


注意点

【用法・用量の確認】 通常は成人と4歳以上の小児に、セトメラノチドとして0.5mgから1日1回皮下投与を開始します。その後、1週間ごとに0.5mgまたは1.0mgずつ増量し、年齢と体重に応じた用量まで上げます。6歳未満では体重で上限が分かれるため、処方時は年齢と体重を必ず照合します。 - 6歳未満 20kg未満:1.5mg - 6歳未満 20kg以上25kg未満:2.0mg - 6歳未満 25kg以上30kg未満:2.5mg - 6歳未満 30kg以上:3.0mg - 6歳以上:3.0mg 腎機能障害がある場合は、さらに注意が必要です。中等度腎機能障害は eGFR(estimated glomerular filtration rate:推算糸球体ろ過量)30~59mL/min/1.73m2、重度は15~29mL/min/1.73m2です。6歳以上では漸増のしかたが別に定められており、6歳未満でも中等度・重度腎機能障害では慎重な投与が必要とされています。末期腎不全(eGFR 15mL/min/1.73m2未満)では投与しないことが望ましいとされています。 【副作用で特に押さえる点】 皮膚色素過剰が目立つ副作用です。試験では皮膚の色が濃くなる事象が比較的多く、投与中止に至った例もありましたが、重篤例はなく回復性が認められています。投与開始前と投与中は、全身の皮膚を定期的に確認する必要があります。 悪心、嘔吐、下痢、腹痛などの胃腸障害もよく見られます。多くは軽度から中等度でしたが、症状が強いと継続困難になることがあります。副腎機能不全を合併する患者では、これらの症状で内服の糖質コルチコイド製剤が飲めないと急性副腎皮質機能不全のリスクになるため、必要に応じて非経口投与を含めた対応が必要です。 【その他の注意】 注射部位反応は、紅斑、疼痛、そう痒感などとして現れることがあります。重篤例は多くありませんが、自己注射の指導時には、注射部位の回し方や局所症状の確認を意識するとよいです。 性的興奮障害関連事象として、勃起増強や自発陰茎勃起が報告されています。持続する勃起がある場合は受診が必要であることを、本人や保護者に説明しておくことが大切です。 精神障害関連事象や副腎機能不全については、臨床試験では明確なリスク増加は示されていませんが、症例数が限られています。うつ病や自殺関連事象の既往、腎機能障害、6歳未満の小児では、製造販売後の情報収集が行われるため、処方監査では併存疾患と観察ポイントを意識する必要があります。


まとめ

イムシブリー皮下注10mgは、MC4Rを刺激して食欲抑制とエネルギー消費の改善をねらう、aHO向けの新しい治療薬です。年齢・体重・腎機能で用法・用量が細かく分かれるため、特に小児や腎機能障害のある患者では漸増方法と注意喚起を丁寧に確認する必要があります。


詳細は審査報告書をご確認ください。

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