エトカマ錠75mgを承認 ESR1遺伝子変異を伴う乳癌に新たな治療選択肢
薬の概要
- 販売名
- エトカマ錠75mg
- 一般名
- カミゼストラント
- 効能・効果
- 内分泌療法中に ESR1 遺伝子変異が確認され疾患進行が認められないホルモン受容体陽性かつ HER2陰性の手術不能又は再発乳癌
注目ポイント
乳癌は、乳腺にできるがんです。ホルモン受容体陽性の乳癌では、女性ホルモンの作用を利用してがんが増えることがあります。治療中に ESR1(estrogen receptor 1:エストロゲン受容体1)遺伝子に変異が入ると、アロマターゼ阻害剤(AI:aromatase inhibitor:アロマターゼ阻害剤)などの内分泌療法が効きにくくなることがあります。内分泌療法を続けているのに、画像上はまだ進行していない段階でこの変異を拾えるかが重要です。 カミゼストラントは、エストロゲン受容体(ER:estrogen receptor:エストロゲン受容体)に結合して、その働きを抑え、受容体の分解も促す薬です。PMDA資料では、野生型だけでなく変異型のERにも結合し、がん細胞の増殖を抑える作用が示されています。今回の承認で注目されるのは、AIとCDK4/6(cyclin dependent kinase 4 and 6:サイクリン依存性キナーゼ4/6)阻害剤による一次治療中に、ESR1遺伝子変異が出現した患者を対象に、AIを本剤へ切り替える戦略が承認された点です。 有効性の中心となったSERENA-6試験は、無作為化二重盲検試験です。これは、患者を2群に分けてどちらを使っているかを医師と患者の両方が分からないようにした比較試験です。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS:progression-free survival:無増悪生存期間)は、本剤群15.97カ月、対照群9.23カ月で、対照群に対する優越性が示されました。副次評価項目のPFS2や全生存期間(OS:overall survival:全生存期間)でも、少なくとも現時点では不利な傾向は示されていません。 実務上のポイントとしては、適応患者の見極めが最重要です。承認された体外診断用医薬品または医療機器を使って、内分泌療法中にESR1遺伝子変異が確認された患者に使います。さらに、閉経前乳癌や男性では、LH-RH(luteinizing hormone-releasing hormone:黄体形成ホルモン放出ホルモン)アゴニスト投与下で使用します。術前・術後薬物療法としての有効性と安全性は確立していません。 安全性では、肝機能障害、静脈血栓塞栓症、QT(QT interval:QT間隔)延長、眼障害、徐脈が特に確認ポイントです。薬物相互作用では、CYP3A(cytochrome P450 3A:シトクロムP450 3A)基質との併用、強いCYP3A誘導剤との併用回避が重要です。服薬指導では、1日1回、毎日同じ時間帯に服用し、飲み忘れは6時間以内なら服用、6時間を超えたら飛ばして翌日1回分を飲むこと、服用後に嘔吐しても追加服用しないことを伝える必要があります。
注意点
【適応・患者確認】 - 本剤は、CDK4/6阻害剤を含む内分泌療法中に ESR1 遺伝子変異が確認され、しかも画像上の疾患進行が認められない患者が対象です。 - したがって、検査結果だけでなく「今は進行していないか」も確認します。 - ESR1遺伝子変異の検査は、十分な経験を有する病理医または検査施設で行い、承認された体外診断用医薬品または医療機器を使います。 【用法・用量】 - 成人:カミゼストラントとして 75 mg を 1 日 1 回経口投与します。 - CDK4/6阻害剤との併用が前提です。 - 閉経前乳癌および男性乳癌では、LH-RHアゴニスト投与下で使用します。 - 食事の有無にかかわらず服用できますが、毎日同じ時間帯に飲むよう指導します。 - 飲み忘れた場合は、予定時刻から 6 時間以内ならできるだけ早く服用し、6 時間を超えたらその日は飲まず翌日に 1 回分を服用します。 - 服用後に嘔吐しても、追加服用はしません。 【副作用で特に見る点】 - 肝機能障害:AST、ALT、γ-GTP、ビリルビンなどを確認します。倦怠感や黄疸などの症状があれば早めに評価します。 - 静脈血栓塞栓症:下肢痛・腫脹、呼吸苦、胸痛などを確認します。 - QT延長・徐脈:心電図や脈拍を見ます。めまい、失神、動悸、息切れがあれば注意します。 - 眼障害:光視症、霧視、複視、ドライアイなどが比較的多く、症状が続く場合は眼科受診を考えます。 【休薬・中止の目安】 - 徐脈が Grade 2 以上なら、症状が回復するまで休薬します。 - 眼障害(光視症、霧視など)が Grade 2 以上なら、症状が回復するまで休薬し、3週間以内に改善しなければ眼科医の診察を踏まえて中止を検討します。 - それ以外の副作用が Grade 3 以上なら、Grade 1 以下に回復するまで休薬し、3週間以内に回復しない場合や再発した場合は中止を検討します。 - Grade は NCI-CTCAE(National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events:米国国立がん研究所有害事象共通用語基準)ver.5.0 に準じます。 【相互作用】 - 本剤は CYP3A 基質なので、強い CYP3A 誘導剤はできるだけ避けます。 - CYP3A 基質の中でも、治療域の狭い薬は併用に注意が必要です。 - そのほか、CYP2C9、CYP2C19、BCRP(breast cancer resistance protein:乳癌耐性タンパク)、OATP1B1(organic anion transporting polypeptide 1B1:有機アニオン輸送ポリペプチド1B1)基質でも曝露上昇の可能性があるため、併用薬の確認が重要です。 【妊娠・授乳】 - 胚・胎児毒性が懸念されるため、妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましいです。 - 妊娠可能な女性には、投与中および最終投与後 4 週間の避妊が必要です。 - 男性には、投与中および最終投与後 1 週間のバリア法による避妊が必要です。
まとめ
エトカマ錠75mgは、ESR1遺伝子変異を伴うホルモン受容体陽性・HER2陰性乳癌に対する、CDK4/6阻害剤併用の新しい内分泌治療薬です。実務では、適応患者の確認、眼障害・徐脈・QT延長・肝機能障害・血栓塞栓症の観察、そして相互作用と服薬方法の指導を押さえることが重要です。
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