エヌフロンシア筋注シリンジ105mgを承認 RSウイルス感染による下気道疾患の予防に新たな選択肢
薬の概要
- 販売名
- エヌフロンシア筋注シリンジ105mg
- 一般名
- クレスロビマブ(遺伝子組換え)
- 効能・効果
- 1. 生後初回のRSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)感染流行期の重篤なRSウイルス感染症のリスクを有する新生児及び乳児における、RSウイルス感染による下気道疾患の発症抑制
- 2. 生後初回のRSウイルス感染流行期の1.以外のすべての新生児及び乳児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の予防
注目ポイント
RSウイルス感染症は、はじめは鼻汁や発熱などのかぜ症状として始まり、悪化すると細気管支炎や肺炎などの下気道疾患につながります。特に乳児では重症化しやすく、入院が必要になることもあります。早産児や、慢性肺疾患(chronic lung disease:慢性肺疾患)や先天性心疾患(congenital heart disease:先天性心疾患)を持つ児では、さらに重くなりやすいとされています。 クレスロビマブ(遺伝子組換え)は、RSVのFタンパク質に結合するモノクローナル抗体です。ウイルスが細胞に入り込む際に重要なFタンパク質をふさぐことで、感染性を中和し、RSVの増殖を抑える仕組みです。半減期を延ばすためにFc領域にYTE置換が入っており、流行期に1回投与する使い方が想定されています。 今回の承認で注目されるのは、生後初回のRSV流行期に使う長期間作用型の予防薬として、健康な新生児・乳児だけでなく、重篤化リスクのある児にも使える選択肢が増えた点です。審査では、主要評価項目としてRSVに関連する医療介入が必要な下気道感染症(medically attended lower respiratory infection:MALRI)の発現率が用いられ、健康な正期産児・早産児を対象とした試験で有効性が示されました。重篤化リスクのある児では、パリビズマブとの比較試験で同程度の結果が示されており、同じ流行期に使う予防策として位置づけられています。 一方で、投与対象は一律ではありません。審査では、在胎35週以下の早産児、過去6カ月以内に慢性肺疾患の治療を受けた児、血行動態に異常のある先天性心疾患、免疫不全、ダウン症候群の児などが主な対象として整理されました。免疫不全を伴う児や、肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患の児については、臨床試験での投与経験が乏しいため、今後の製造販売後の情報収集が重要とされています。
注意点
【用法・投与の確認】 本剤は、シーズン1に1回、通常は105mgを筋肉内注射します。生後初回のRSV流行期に使う薬なので、いつの流行期に入るか、投与歴があるかを確認することが大切です。審査報告では、流行初期に投与することが前提として整理されています。 【投与対象の見極め】 重篤化リスクのある児に使う場合は、在胎35週以下の早産、慢性肺疾患、血行動態に異常のある先天性心疾患、免疫不全、ダウン症候群が中心です。特に免疫不全を伴う児は、理論上は効果が期待されるものの、臨床試験での投与経験がないため、添付文書や院内ルールに沿って慎重に扱う必要があります。 【特に注意したい集団】 体重1.1kg未満の児では投与経験がなく、曝露量が高くなる可能性が示されています。体重が極端に軽い新生児では、ベネフィットとリスクを確認した上で投与判断が必要です。 【手技・手術後の対応】 心肺バイパス手術(cardiopulmonary bypass:心肺バイパス手術)や体外式膜型人工肺(extra-corporeal membrane oxygenation:体外式膜型人工肺)を用いた処置後は、回路への吸着で血中濃度が下がる可能性があります。補充投与が必要と判断される場合は、投与からの日数にかかわらず、術後に安定した時点で速やかに105mgを追加投与する方針が示されています。 【副作用・安全性】 審査では大きな安全性上の懸念は少ないと判断されていますが、重篤な過敏症反応、特にアナフィラキシーには注意が必要です。モノクローナル抗体薬ではまれでも重いアレルギー反応が起こり得るため、投与後の観察と緊急時対応の確認が重要です。
まとめ
エヌフロンシア筋注シリンジ105mgは、RSVの流行期に1回使う長期間作用型の予防薬です。健康な新生児・乳児に加え、重篤化リスクのある児にも選択肢を広げる薬として承認されました。実務では、対象児の確認、体重が非常に軽い場合の慎重判断、手術後の補充投与、重篤な過敏症への備えを押さえておくことが重要です。
詳細は審査報告書をご確認ください。
審査報告書を確認する