ドラッグストア薬剤師の年収は本当に高いのか。業態別に分けた薬剤師の公的統計は公表されておらず、平均どうしでは比べられません。同じ会社でも新卒と中途で年収体系が違い、総額表示と年収本体が混在します。求人票を今の職場と同じ条件に揃える3つの手順を解説します。
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読者からの相談調剤薬局で7年目の薬剤師です。年収が思うように上がらず、ドラッグストアへの転職を考えています。求人を見ると「総額721万円」と書かれていて、今より150万円以上高い。ただ、周りからは「あそこは残業が多いから高いだけ」「品出しもやらされる」とも聞きます。この721万円は、本当に自分ももらえる額なんでしょうか。
📌この記事のポイント
- ドラッグストア薬剤師の年収が高いかどうかは、公的統計では確かめられない
- 同じ会社でも新卒と中途で年収体系が違い、総額表示と年収本体が混在している
- 求人票は「採用区分・住宅補助・労働時間」の3つを揃えてから今の年収と並べる
まず結論:求人票を同じ条件に揃えないと、高いかどうかは判断できない
今日は「ドラッグストアの薬剤師は年収が高いというが、本当か」という相談じゃ。相談者さんは調剤薬局で7年目、目の前に総額721万円という求人票がある。
150万円以上も違うんですね…。それだけ差があると、気になって当然だと思います。
先に結論を言うとな。この721万円が高いのかどうかは、そのままでは判断できん。今の年収と条件が揃っておらんからじゃ。
条件が揃っていない、というのは…。同じ「年収」という言葉なのに、中身が違うということですか?
そうじゃ。理由は2つある。1つ目は、業態別に分けた薬剤師の年収統計が公表されておらんこと。だから「ドラッグストアの平均」と「調剤薬局の平均」を見比べても、答えは出てこん。
えっ、無いんですか? 「業態別の平均年収」という表は、いろんな記事で見かけますけど…。
あれは公的な統計ではないのじゃ。詳しくは次で見よう。2つ目は、各社の募集要項を読むとわかる。同じ会社の中でも、新卒と中途で年収体系が別々で、しかも金額の表示ルールが違うんじゃ。
同じ会社の中で、表示ルールが違う…! それなら、他社と比べる前につまずいてしまいますね。
じゃから、やることは「業態の平均を見比べる」ことではない。目の前の求人票を、今の職場と同じ条件に揃えてやることじゃ。手順は3つある。
- 手順①:自分が応募する採用区分の条件を見ているか確かめる
- 手順②:年収本体と住宅補助を分ける
- 手順③:固定残業代と実労働時間で、時間当たりに直す
揃えた後の数字なら、今の年収と並べられるということですね。順番に見ていきたいです。
業態別の薬剤師年収を分けた統計は、実は公表されていない
まずは「なぜ平均を見比べても答えが出ないのか」を押さえておこう。ここが腑に落ちんと、また別の記事の数字を探しに戻ってしまうからの。
たしかに、調べれば調べるほど数字が違って、どれを信じればいいのか分からなくなりそうです。
賃金構造基本統計調査の「薬剤師」は産業計だけ
薬剤師の年収でいちばんよく引かれるのが、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」じゃ。職種別の集計があって、薬剤師も対象になっとる。
私も見たことがあります。平均年収が出ているものですよね。
職業情報提供サイト(job tag)が令和7年の調査をもとに示しとる薬剤師の数字は、こうじゃ。
薬剤師の基準値(令和7年賃金構造基本統計調査より)
| 項目 | 数値 |
|---|
| 平均年収 | 566.8万円 |
| 平均年齢 | 40.1歳 |
| 所定内実労働時間 | 月157時間 |
| 時間当たり賃金 | 2,828円 |
566.8万円が薬剤師全体の平均なんですね。この数字なら見たことがあります。
ところがな。この調査で公表されとる薬剤師の表は、すべて「産業計」なんじゃ。調剤薬局も、ドラッグストアも、病院も、製薬企業も、全部合わせた数字での。
つまり、この566.8万円を業態ごとに分けた内訳は出ていない、ということですか。
うむ。いちばん信頼できる統計に、業態の切り分けが無いのじゃ。
「保険薬局の平均」には調剤併設ドラッグストアも入りうる
もう一つよく引用されるのが「医療経済実態調査」じゃ。病院と保険薬局の経営実態を調べるもので、薬剤師の給与も出てくる。
病院の数字はそこから出ているんですね。それなら業態別と言えそうな気もしますけど…。
ここで調査の対象を見てほしい。第25回調査(令和7年実施)では、調剤報酬明細書の取扱件数が月300件以上の保険薬局を、無作為に抽出しとる。
保険薬局が対象……あっ。調剤併設のドラッグストアの調剤部門も、保険薬局ですよね?
よい気づきじゃ。まさにそこでな。「保険薬局の平均」として紹介される数字には、ドラッグストアで働く薬剤師が含まれとる可能性があるのじゃ。
それだと「調剤薬局はいくら、ドラッグストアはいくら」という比較表を見ても、きれいに分かれていないことになりますね…。
民間の集計はあるが、数え方まで見ないと使えない
ここは正確に言うておこう。「業態で差は無い」という話ではない。実際、転職サイトが自社の掲載求人を業態別に集計して、調剤併設のドラッグストアのほうが調剤薬局より高い、という結果を出しとるところもある。
そうなんですね。では、その数字を見ればいいのでは…?
数え方を見てほしいんじゃ。たとえばある転職サイトの集計は、掲載求人の「上限年収」の平均値と注記されておる。求人票に「500万〜650万円」と書いてあれば、650万円のほうを拾って平均した数字ということじゃ。
上限の平均…! それは「その会社に入ったらもらえる額」とは別物ですね。自分がいくらで採用されるかは、また違う話になる。
そういうことじゃ。公的統計には業態の切り分けが無く、民間の集計は数え方がそれぞれ違う。どちらも嘘ではないが、そのまま自分の判断には使えん。だから目の前の求人票に降りていく必要がある。
相談者さんが答えにたどり着けなかったのは、調べ方が足りなかったからではないんですね。
代わりに読めるのは、各社が公開している募集要項の実額
そこじゃ。見るべきは各社が公開しとる募集要項。社員区分ごとの実額が書いてあって、出所もはっきりしとる。
求人サイトのまとめ記事ではなく、会社が自分で出している数字ということですね。
同じ会社でも、新卒と中途で年収体系が違う
ここが最初の落とし穴じゃ。コスモス薬品を例にすると、薬剤師の募集要項は新卒とキャリア採用で別々に用意されておる。2026年8月時点で、新卒のナショナル社員は想定年収653万円、キャリア採用の一般薬剤師は年収625万円と書かれとる。
あれ、新卒のほうが高いんですか? 7年働いた人より新卒が上というのは、なんだか不思議です。
そう見えるじゃろう。だがこれは表示の基準が違うだけじゃ。新卒の653万円は家賃補助を織り込んだ額と注記されておる。一方キャリア採用は、年収625万円と家賃補助を分けて書いて、合わせた総額を721万円としとる。
同じ会社の中で、片方は補助込みの数字、もう片方は補助を分けた数字…。これは並べて比べたら間違えます。
相談者さんが見た721万円は、キャリア採用の総額のほうじゃ。7年目の薬剤師が応募するのはこちらで、新卒の653万円は最初から比較の相手ではない。まず自分がどちらの表を見ておるのかを確かめる。ここが手順①になる。
転勤の範囲でも、同じ職種の年収が変わる
そのキャリア採用の中を見ると、今度は転勤の範囲で区分が分かれておる。
コスモス薬品 キャリア薬剤師(一般薬剤師)の社員区分(2026年8月時点の募集要項より)
| 社員区分 | 転勤の範囲 | 月給 | 年収 | 家賃補助 | 総額の見込み |
|---|
| ナショナル社員 | 全国 | 446,500〜482,300円 | 625万円 | 80%(上限月8万円) | 721万円 |
| リージョナル社員 | 選択した地域内で転居あり | 413,000〜448,700円 | 578万円 | 80%(上限月8万円) | 674万円 |
| エリア社員 | 転居を伴う転勤なし | 396,500〜503,600円 | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
同じ一般薬剤師なのに、全国転勤かどうかで47万円違うんですね。仕事の中身が変わるわけではないのに…。
そのうえ、転居を伴う転勤がないエリア社員は、月給の幅しか書かれておらん。年収も総額も載っておらんのじゃ。
転勤したくない人ほど、自分の年収が求人票から読み取れないということですか…。それは確認しないと分からないですね。
同じ構造は他社にもある
勤務地の条件で給与が変わるのは、1社だけの特殊な仕組みではない。スギ薬局の新卒採用(調剤併設ドラッグストアコース)でも、2026年8月時点で総合薬剤師が月360,000円、調剤薬剤師が月335,000円と示されとる。いずれも薬剤師手当等を含む、6年制の額じゃ。
そのうえで「勤務地区分によって低減あり」と明記されとる。つまり大手のドラッグストアでは、勤務地の条件が給与に反映される仕組みが、あらかじめ制度として組み込まれとるわけじゃ。
ドラッグストアで働いている友人から「同期でも給料がぜんぜん違う」と聞いたことがあったんですが、そういうことだったんですね。
求人票を今の職場と同じ条件に揃える3つの手順
ここからが実際の作業じゃ。手元に求人票を用意して、3つ揃えてみてほしい。揃えた数字なら、今の年収と並べて比べられる。
手順①:自分が応募する採用区分の条件を見ているか確かめる
まず、目にした額がどの区分のものかを確かめる。新卒向けの数字か、キャリア採用の数字か。そして社員区分は全国転勤か、地域限定か。ここがずれておると、以降の比較がすべてずれる。
求人サイトの記事だと、そこまで書かれていないことも多そうです。
じゃから会社の採用ページまで戻るとよい。それでも社員区分が書かれておらんときは、「この金額はどの採用区分・どの勤務地区分の想定ですか」と確かめるところから始める。
最初に聞いておけば、その後の比較が全部ずれずに済みますね。
なお、勤務地そのものを変えたら年収がどうなるか——都市部と地方の差の話は、この記事では扱わん。そちらが気になる人は別の記事にまとめてある。
あわせて読みたい薬剤師が地方に転職すれば年収は上がる?額面と実質年収の両面で検証
厚労省データをもとに額面年収の地域差を確認し、物価・生活費を考慮した実質年収の視点で検証します
手順②:年収本体と住宅補助を分ける
次は、提示額の中身じゃ。さっきの表をもう一度見てほしい。会社は「年収625万円」と「家賃補助」を分けて書いて、合わせた総額を721万円としとる。
差は96万円ですね。上限が月8万円ということは、年間だとちょうどその額になります。
そのとおりじゃ。ここで大事なのは、会社自身が分けて表示しとるということ。だから読む側も分けて考える。相談者さんの721万円は、給与そのものではなく、住宅補助を足した総額じゃ。
総額と年収本体は別物。住宅補助は自分が実際に使えるかで価値が変わるでは、96万円を引いて625万円で比べればいいということですか?
単純に引いて終わりにはできん。家賃補助は現金でもらう手取りではなく、住居費が減ることによる効果じゃからの。自分が実際に受けられるかどうかで、価値がまるで変わる。
なるほど…。同じ96万円でも、人によって意味が違うということですね。
- 今すでに家賃10万円の賃貸に住んでいる人には、上限いっぱいに近い価値がある
- 持ち家の人や、実家から通っている人には、価値はぐっと下がる
- 今の職場にも住宅手当がある場合は、その差額だけが増える分になる
今の職場の手当と比べるところまでやらないと、本当の増減は出ないんですね。
そういうことじゃ。「年収本体どうし」と「住宅の条件どうし」を、それぞれ突き合わせる。総額の721万円と、今の年収を直接ぶつけてはいかん。
手順③:固定残業代と実労働時間で、時間当たりに直す
3つ目は時間じゃ。提示された年収に固定残業代——みなし残業代が含まれとる求人がある。含まれとるなら、何時間分なのかを必ず確かめてほしい。
同じ600万円でも、残業代が最初から入っているかどうかで、まったく違う条件になりますもんね。
そうなんじゃ。月45時間分の固定残業込みの600万円と、残業代が別途支給される600万円は、別物じゃ。そのうえで年収を時間当たりに直してみる。計算は「年収 ÷ 年間の実労働時間」でよい。
実際に計算すると、どのくらい変わるものなんでしょう。
たとえば、今は月20時間ほどの残業で収まっとる人が、営業時間の長い店舗へ移って月45時間になった場合を考えてみよう。
- 今:年収520万円、月160時間働いている → 520万円 ÷ 1,920時間 = 約2,708円
- 転職後:年収600万円、月185時間になった → 600万円 ÷ 2,220時間 = 約2,702円
年収は80万円も増えているのに、時間当たりはほとんど変わっていない…。これは気づきにくいです。
年収が上がっても、時間当たりでは横ばい、あるいは下がることがあるんじゃ。
自分の場合はどうなのか、確かめる目安があるといいんですが…。
そこで薬剤師全体の平均を物差しに使う。ただし1つ注意がある。さきほどの表の157時間は「所定内」の労働時間で、残業は含まれておらん。
残業を含めた実労働時間は、別に押さえないといけないんですね。
統計は所定内と超過を分けて集計しとる。年収566.8万円を時間当たり2,828円で割り戻すと、年およそ2,004時間——月にすると約167時間が、残業込みの実労働時間になる。時間当たりを比べるときは、157時間ではなくこちらを使う。
157時間で割ってしまうと、平均の時間単価を高く見積もってしまうところでした。3つ揃え終えて、それでも残っている差が、その職場が本当に上乗せしている分ということですね。
求人票では分からないことは、面接かエージェントに聞く
ここまでは求人票に書いてあることの読み方じゃった。ただな、判断に必要な情報には、求人票だけでは分からないものもある。
たしかに…。書いてあることと書いていないことを、分けておいたほうがよさそうですね。
求人票に書いてあること
求人票だけでは分からないことが多いもの
一方、次の4つは書かれていないことが多い。面接か、間に入ってくれる転職エージェントに聞くことになる。
- 実際の平均残業時間(募集要項の固定残業時間と一致するとは限らない)
- 社員区分を後から変更できるか。変更した場合、年収がどう変わるか
- 転勤の頻度と範囲が、実際にどう運用されているか
- 調剤とOTC(市販薬)・売場業務の時間配分
2つ目の「区分を変えられるか」は、あまり考えたことがありませんでした。
これがいちばん効いてくるかもしれん。結婚、親の介護、配偶者の転勤——こういう事情は、入社したあとに出てくるものじゃからの。全国転勤の区分で入って、事情が変わったときに区分を変えられるのか。変えたら年収はどうなるのか。求人票からは読み取れん。
入る前に聞いておかないと、後から選択肢が無くなってしまうんですね。
求人票の「年収600万円可」という書き方の、「可」の一語もそうじゃ。たいてい何かの条件がついておる。わしが薬局におった頃も、条件面談まで進んで初めて手当の内訳を知った、という話は耳にした。求人票の段階で分かるのは、書いてある部分だけじゃ。
早い段階で聞いてしまったほうが、お互いにとってよさそうですね。4つ目の売場業務の時間配分も、気になる人は多そうです。
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揃った数字を、自分の相場と突き合わせる
3つ揃えて、面接で聞くことも整理できた。最後に残るのは「この数字は自分にとって高いのか」という問いじゃ。
平均年収の記事に戻れば分かる……わけではないんですよね。
そこじゃ。平均は年齢構成込みの数字じゃからの。さきほどの566.8万円は、平均年齢40.1歳の薬剤師全体の平均じゃ。
相談者さんは7年目ですから、40.1歳の平均と比べても自分の立ち位置は分からないですね。地域も業態も混ざっていますし。
じゃから最後は、自分の経験年数・業態・地域を入れて出した相場と突き合わせる。揃えた年収本体の数字は、そのまま使える。
転職を決めていなくても大丈夫です。今の年収が相場に対してどのあたりなのかを知っておくだけでも、求人票の見え方が変わります。
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まとめ:条件を揃えると、比べられる数字が手に入る
ドラッグストア薬剤師の年収は本当に高い?
- 1業態別に分けた薬剤師の公的統計は公表されていない。平均どうしでは比べられない
- 2同じ会社でも新卒と中途で年収体系が別。総額表示と年収本体が混在している
- 3求人票は採用区分・住宅補助・労働時間の3つを揃えてから今の年収と並べる
- 4実残業時間と区分変更の可否は求人票に載らないことが多いので、面接で聞く
「ドラッグストアは年収が高いのか」を平均どうしで決めようとすると、いつまでも答えが出ん。公的統計に業態の切り分けが無く、民間の集計は数え方がそれぞれ違うからじゃ。
でも条件のレベルまで降りれば、比べられるんですね。どの採用区分の数字か、住宅補助は自分にとっていくらの価値か、その年収は何時間分の労働に対するものか。
そう。その3つを揃えれば、目の前の求人票と今の職場が同じ土俵に並ぶ。そして揃えた数字は、そのまま相場との比較に使える。
求人票の見方が変わりました。721万円という数字を見たときに、「どの区分の、何が入った金額なんだろう」と考えられそうです。
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