40代薬剤師の転職で年収が下がるとは限りません。全産業では40代で賃金が増えた人が減った人より多い結果です。提示が低い場合は給与の内訳と昇給実績を確認し、残業代込みで減る年収と、得られる時間や負担の軽さを比べて判断する方法を解説します。
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読者からの相談 調剤薬局で管理薬剤師をしている44歳です。残業と責任の重さがつらくなり、エージェントに相談したところ、一般の薬剤師として残業の少ない薬局を紹介されました。ただ、提示された年収は今より80万円ほど低いものでした。ネットで調べても「40代の転職は年収が下がる」とばかり出てきて、この提示を受けていいのか決められずにいます。下がるのは仕方ないことなのでしょうか。
📌 この記事のポイント
40代薬剤師の転職で年収が下がるとは限らない。全産業では賃金が増えた人のほうが多い 今より低い年収が提示される理由は、役職や手当を手放すことや、賞与・基本給の違い 受けるかは、残業代も含めて実際に減る年収と、その分で得るものを並べて決める 1 まず結論:40代薬剤師の転職で年収は下がるとは限らない。下がる提示を受けるかは得るものと比べて決める 2 全産業の統計では、40代は転職して賃金が増えた人のほうが多い 3 年収の提示額が下がる理由は、役職や手当を手放すことと、賞与・基本給の違い 4 転職先の昇給で下がった分を取り戻せるかは、面接やエージェントに聞くまで分からない 5 年収が下がる提示を受けるかは、下がった分で何を得るかで決める 6 まとめ:年収が下がる分で得るものを書き出せば、提示を受けるかは自分で決められる まず結論:40代薬剤師の転職で年収は下がるとは限らない。下がる提示を受けるかは得るものと比べて決める 提示額を見て、思っていたより低くて手が止まった。調べれば調べるほど「40代は下がる」と出てくる。相談者さんは、今より低い年収で転職するか迷っておるんじゃな。
残業も責任も軽くなりそうなのに、年収が80万円下がると聞くと足がすくみますよね…。「仕方ないことなのか」と聞きたくなる気持ち、分かります。
先に答えを言うておこう。まず、全産業の統計では、40代は転職して賃金が増えた人のほうが多い 年代じゃ。「40代だから下がる」とは言えん。
えっ、そうなんですか。下がる話ばかり目にするので、逆だと思っていました。
それでも今より低い年収が提示されるのは、役職や手当を手放すときや、賞与・基本給の水準が違うときじゃ。相談者さんは、管理薬剤師を降りて移ろうとしておるからの。
では、受けるかどうかじゃが、「入ってから取り戻せるか」に賭けて決めるものではない。年収が下がる分と、転職で得るもの を並べて比べるんじゃ。
「仕方ないかどうか」ではなくて、下がった理由と、その分で得るものを確かめれば、自分で決められるということですね。
全産業の統計では、40代は転職して賃金が増えた人のほうが多い 求人を探し始めると、「40代の転職は年収が下がる」という言葉があちこちで目に入る。何度も見るうちに、それが当たり前のように思えてくるものじゃ。
同じ言葉を何度も見ると、確かめもせずに信じてしまいますよね。
じゃから、公的な統計で確かめておこう。厚生労働省の「雇用動向調査」じゃ。1年間に転職した人の賃金が、前の職場と比べて増えたか減ったかを調べておる。
全産業の統計で、転職した40〜44歳は賃金が増えた人が44.9%・減った人が27.4% 転職した人の賃金の変化(令和7年雇用動向調査・全産業)
年齢 増加 変わらない 減少 うち1割以上の減少 40〜44歳 44.9% 24.6% 27.4% 17.6% 45〜49歳 41.1% 28.0% 30.1% 16.1%
40代前半も後半も、増えた人のほうが多いんですね。相談者さんは44歳だから、40〜44歳の行ですね。
そうじゃ。これは令和7年の数字じゃが、1年前の令和6年も賃金が増えた人のほうが多くてな。40〜44歳は増加45.9%・減少29.0%、45〜49歳は増加46.4%・減少23.8%じゃった。
ただ、2年分の数字じゃから、「40代なら下がらん」とまでは言えん。
傾向として頭に入れておく、くらいがちょうどよさそうですね。
それに、読み方で気をつけたいことが4つある。1つ目は、全産業のデータで、薬剤師だけの数字ではないこと。2つ目は、見ておるのは「賃金」の増減で、年収そのものではない ことじゃ。
薬剤師の年収の統計として読むと、言いすぎになるんですね。
3つ目は、勤めていた職場から別の職場へ転職した人の数字で、自営業から移った人は含まんこと。4つ目は、正社員からパートになった人のように、働き方が変わった人も含むことじゃ。
働き方が変わった人も入っているなら、正社員どうしの転職だけを見た数字ではないんですね。読むときは、そこも頭に置いておきたいですね。
全産業の統計で、転職して賃金が1割以上下がった40代は6人に1人ほど 一方で、賃金が1割以上下がった人も、40〜44歳で17.6%、45〜49歳で16.1%おる。
6人に1人くらいですか…。増える人が多いとはいえ、大きく下がる人もちゃんといるんですね。
そうじゃ。実態は「必ず下がる」でも「下がらない」でもない。では、下がる提示はどんなときに出るのか。そこはこの調査からは分からんので、提示額がどう決まるかを考えてみよう。
年収の提示額が下がる理由は、役職や手当を手放すことと、賞与・基本給の違い 同じ薬剤師の仕事なのに、移るだけで何十万円も下がると、自分の値打ちを低く見られたような気がするものじゃ。
じゃが、下がる提示には理由がある。まずは、転職で役職や手当を手放すことじゃ。冒頭の相談者さんは、まさにこれに当たる。管理薬剤師から、一般の薬剤師として移ろうとしておるからの。
管理薬剤師を降りる分、下がるのは想像がつきます。でも、どのくらいの差があるものなんでしょう。
厚生労働省の「第25回医療経済実態調査」を見てみよう。薬局や病院の経営と給与を調べた調査じゃ。保険薬局(法人)の令和6年度の平均給料は、賞与を含めた年額で、一般の薬剤師が480.3万円、管理薬剤師が726.2万円じゃ。
かなり離れていますね…。この差が、管理薬剤師の手当ということですか?
そこは違う。これは保険薬局で働く一般の薬剤師と管理薬剤師、それぞれの平均給料(賞与を含む年額)じゃ。年齢や経験、基本給の違う別の人たちを比べた数字で、同じ人が役職に就く前と後を比べたものではない。差額をそのまま役職手当の額と読んではいかん。
水準が離れているのは確かだけど、自分が降りたらその額だけ下がる、という意味ではないんですね。
そうじゃ。それでも、役職を手放して一般の薬剤師として移れば、提示額は一般の薬剤師の給与水準をもとに決まる。相談者さんの80万円にも、役職を手放した分が含まれておると考えられる。
手放す手当は、役職の手当だけではない。勤続年数で増える手当も、転職先では勤続年数が初めから数え直される。
それから、手当のほかにも提示年収に差が出る理由がある。賞与の月数と、基本給の水準じゃ。月給が同じでも賞与が年に何か月分出るかで年収は変わるし、基本給の水準も職場によって違う。
求人票の月給だけ見ていたら、そこは見落としそうです。
じゃから、提示額は「年収いくら」だけで見んことじゃ。月給・手当・賞与(何か月分か)・残業代の見込み に分けて、エージェントか転職先に確かめるとよい。
残業の少ない職場に移るのに、残業代まで分けて見るのは少し意外です。
残業代は、残業した時間の対価じゃからの。じゃから、下がった額は2つに分けて見る。残業代を除いた差 で、給与の水準そのものがどれだけ下がるかが分かる。
そうじゃ。残業代も含めた差 が、家計に入る収入が実際にいくら減るかじゃ。受けるかを決めるときは、こちらを見落としてはいかん。
相談者さんの80万円も、残業代の分を分けると、給与の水準の差と、残業が減る分の差に分かれるんですね。
今の年収のうち、転職で手放す額を給与明細と賞与明細から出す手順は、50代向けの記事にまとめています。年代に関係なく使える手順です。
あわせて読みたい50代薬剤師の転職で年収はどれくらい下がる?下げ幅の見積もり方
給与明細と賞与明細から、役職手当・賞与の差・勤続年数に応じた手当など転職で失う額を出す手順を解説
転職先の昇給で下がった分を取り戻せるかは、面接やエージェントに聞くまで分からない 提示額が下がると、「入ってから昇給すれば、すぐ戻りますよ」と言われることがある。
言われたら、つい信じたくなりますね。それで決めてしまっていいものなんでしょうか。
本当にそうなるかは、確かめるまで分からん。昇給で元の年収に戻るとも戻らんとも決めつけず、転職先の昇給の実績 を確かめるんじゃ。
残業代を除いて下がった年収を年間の昇給額で割ると、給与が転職前の水準に戻るまでの年数が出る 計算は簡単じゃ。残業代を除いて下がった額を、年間の昇給額で割る。 それで、残業代を除いた給与が転職前の水準まで戻る年数が出る。
割り算1つで出るなら、相談者さんも自分の数字ですぐ試せますね。
仮に、残業代を除いた差が年60万円だったとしよう。昇給が月5,000円、つまり年6万円なら10年じゃ。昇給が月1万円、年12万円なら5年になる。60万円も昇給の額も、仮の数字じゃ。
10年と5年では、まったく違いますね…。65歳まで働くなら、44歳の相談者さんには20年ほどあります。戻るまでの年数がその中のどれくらいを占めるかは、知っておきたいところです。
ただし、ここで言う「戻る」は、残業代を除いた給与が転職前の水準まで戻るという意味じゃ。残業が減った分の残業代は、昇給しても戻らん。それに、今の職場に残っても昇給はあるから、残った場合との差が縮むとは限らん。「10年で追いつく」とは読まんことじゃ。
残った場合も少しずつ上がっていくなら、追いかけっこになるんですね。そこは見落としそうでした。
転職先での中途入社の人の昇給・役職と、1年目の賞与は、面接やエージェントに聞く 戻るまでの年数の計算に使う昇給額を、どこで確かめるかじゃ。求人票には、昇給や賞与の前年度の実績が載っておることもある。ただ、それは会社全体の数字で、中途で入った人にそのまま当てはまるとは限らん。次の3つは、面接かエージェントに聞いて確かめるとよい。
! 面接・エージェントに聞く3つ
中途で入った人の昇給の実績(「中途で入った方は、入社後の数年間で月給がどれくらい上がっていますか」)
管理薬剤師・薬局長に就く条件と、中途で就いた人がいるか
入社1年目の賞与の扱い(求人票の賞与の実績が、1年目にもそのまま当てはまるか)
1つ目の聞き方なら、角を立てずに聞けますね。賞与の扱いまで面接で聞くのは、少し勇気が要りそうですけど…。
面接で聞きにくければ、エージェントを通して聞いてもらう手もある。
1つ目が分かれば、戻るまでの年数が自分の数字で出せる。
2つ目は、役職に就くことで転職前の年収に戻せる可能性があるか。3つ目は、入って最初の年の年収が提示どおりになるかを見る材料じゃ。
3つとも、求人票を眺めているだけでは分からないことですね。
年収が下がる提示を受けるかは、下がった分で何を得るかで決める 取り戻せるかは、聞いてみるまで分からん。では、受けるかどうかは何で決めるか。下がった分で、何を得るのかじゃ。
提示額を見ると、つい下がる額のほうばかり目が行きますよね。得るほうも、同じように書き出すということですか?
今の職場と提示された職場で、年収の差と残業・休日・通勤・責任の差を並べる そうじゃ。今の職場と提示された職場を1枚に並べる。年収は、残業代を除いた額と、含めた額の両方を書く。相談者さんとは別の、仮の例で見てみよう。
今の職場と提示された職場の比べ方(数字はすべて仮の例。残業代は1時間2,500円として計算)
項目 今の職場 提示された職場 差 年収(残業代を除く) 例:600万円 例:540万円 年60万円下がる(給与水準の差) 残業代 例:年45万円 例:年15万円 年30万円減る 年収(残業代を含む) 例:645万円 例:555万円 年90万円減る(家計の収入減) 月の残業時間 例:15時間 例:5時間 月10時間減る 年間休日 例:110日 例:120日 10日増える 通勤時間(片道) 例:40分 例:20分 20分減る 責任 管理薬剤師の業務あり なし 言葉で書く
残業代を除くと60万円の差でも、含めると90万円も減るんですね…。
そうじゃ。家計に入る収入が実際に減るのは、90万円のほうじゃ。まず、減ったあとの収入で、生活費や住宅ローン、必要な貯蓄をまかなえるかを確かめることじゃ。
そこに無理があったら、得るものを比べる以前の話になりますね。
そのとおりじゃ。無理がないと分かったら、得るものと比べる。この例では、残業が月10時間、年120時間減る。減る90万円を120時間で割ると、1時間あたり7,500円じゃ。
年収が減る分を1時間あたりにすると、7,500円で1時間の自由な時間を得ている、とも言えるし、1時間あたり7,500円を手放している、とも言えるんですね。
どちらの見方も正しい。大事なのは、年収が減る90万円と引き換えに得る時間や、軽くなる責任に、自分が価値を感じるかを言葉にしてみる ことじゃ。「平日の夜に自分の時間がとれる」「休日に呼び出されない」のように具体的に書けるなら、その提示は受ける候補になる。
転職で得るものが具体的に見つからんなら、年収が下がるその提示は受けんでよい。
言葉にならないなら受けない、というのは分かりやすいですね。責任の軽さのようにお金に換えにくいものも、言葉で書けばいいんでしょうか。
そうじゃ。無理に金額にせんでよい。言葉で書いて並べるだけで十分じゃ。
下がる提示を受ける前に、提示額が一般薬剤師の相場に収まるかを確かめる 得るものを並べて受ける気持ちが固まっても、提示額そのものが安すぎては困る。一般の薬剤師として移るなら、受ける前に、提示額が同じ業態・経験年数・地域の一般薬剤師の相場の中に入っておるかを確かめておきたい。
下がったうえに、一般の薬剤師としても安く見られていたら、それは避けたいですね。
相場の幅に収まっておれば、同じ業態・経験年数・地域の目安から大きく外れていないかを確かめられる。ただし、休日や業務負担などは診断に反映されんから、幅の中なら必ず適正とは言い切れん。幅を下回る場合は、エージェントを通して条件を相談する材料になるぞ。
目安から大きく外れていないかが分かるだけでも、判断の材料になりますね。
相場の幅は、適正年収診断で出せる。業態・経験年数・地域を選ぶと、同じ条件の一般薬剤師の相場の幅が出る。業態を選ぶ画面では「現在の」と聞いてくるが、転職先の業態を選べばよい。
そうじゃ。年収の欄には、今の年収ではなく提示額を入れる。画面は「現在の年収」と聞いてくるし、結果の文章も今の年収として書かれておるが、見るのは診断結果に表示される相場の幅の中で、提示額がどこにあるかじゃ。入れるのは、残業代の見込みと賞与を含めた年額 。相場のほうも、残業代と賞与を含めた額で出ておるからの。
相場と比べるときも、残業代を含めた年額でそろえるんですね。
なお、役職を保ったまま移る場合は、この比べ方は合わん。出てくる幅が一般の薬剤師の相場じゃからの。その場合は、提示額の内訳の確認にとどめるとよい。
相談者さんのように一般の薬剤師として移るなら、まず表で転職して得るものを比べ、提示を受けるか考える。そのあと、提示額が一般薬剤師の相場より安すぎないかを確かめる。その順番ですね。
提示額が同じ条件の相場のどこにあるか、30秒でできる適正年収診断で確かめてみてください。
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まとめ:年収が下がる分で得るものを書き出せば、提示を受けるかは自分で決められる この記事のまとめ
1 全産業の統計では、40代は転職して賃金が増えた人のほうが多い 2 今より低い年収が提示される理由は、役職や手当を手放すことや、賞与・基本給の違い 3 取り戻せるかは、転職先の昇給の実績を聞くまで分からない 4 受けるかは、残業代も含めて実際に減る年収と、その分で得るものを並べて決める 「80万円下がる」という数字だけを見ておると、受けるか断るかで止まってしまう。得るものを横に書き出せば、自分で決められる。
表を1枚書いて、提示額が相場のどこにあるかも見ておけば、相談者さんも迷わずに決められそうですね。
そうじゃ。受ける前に確かめておけば、あとで悔やまずに済む。
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