40代で薬剤師の年収が頭打ちになり、昇給が止まったと感じていませんか。保険薬局の給与水準は直近でほぼ横ばいですが、年齢別の平均年収は調査年でカーブの形が変わり、年齢だけでは説明できません。まず疑いたい給与テーブルと役職を、手元の資料で確認する方法を解説します。
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読者からの相談調剤薬局で働く45歳の薬剤師です。勤続15年になりますが、ここ3〜4年は昇給が年5,000円ほどで、賞与も横ばいのままです。管理薬剤師の打診は一度ありましたが、あの責任を引き受ける気にはなれず断りました。40代になると薬剤師の年収は頭打ちで、もう上がらないものなのでしょうか。住宅ローンと子どもの学費が重なる時期に、このまま定年まで今の年収が続くのかと思うと不安です。
📌この記事のポイント
- 40代で年収が頭打ちに見えても、原因を年齢と言い切ることはできない
- 保険薬局の給与水準は横ばい。まず疑いたいのは給与テーブルの上限と役職の有無
- 賃金規程・給与明細・役職手当の3点で、昇給が止まった原因を切り分けられる
まず結論:「40代だから」では説明できない。先に確認したい2つ
まず言っておくとな、給与明細の額面がここ数年動いていないという感覚は、気のせいではない。薬局で働く薬剤師の給与水準は、業界全体で見てもほとんど動いておらんのじゃ。
気のせいじゃなかったんですね…。この相談者さん、たぶん「自分の頑張りが足りないのかな」って思っていた気がします。
そこじゃ。ただ、それを「40代だから」で片づけるのは早い。統計を見ても、年齢だけで説明がつくようにはなっておらんのじゃ。
まず疑いたいのは、今の職場の給与テーブルのどこにおるかと、役職に就いとるかどうかの2つじゃ。もちろん昇給が止まる理由はこれだけではないが、この2つは自分で確かめられるぶん、先に潰しておく値打ちがある。
自分で確かめられるというのは大きいですね。「年齢のせい」って言われたら、もうどうしようもないですけど…。
まさにそこが肝心でな。年齢を原因にすると打てる手が消えてしまう。じゃが賃金規程・給与明細・役職手当の3つを見れば、原因を自分で切り分けていける。
「上がっていない」は気のせいではない。でも「年齢のせい」とは言い切れない
薬局の給与は、一般も管理も前年度比0.2〜0.3%
まず「本当に上がっとらんのか」から確かめよう。厚生労働省の「第25回医療経済実態調査」に、保険薬局で働く薬剤師の給与が職種別に出ておる。令和7年に実施された調査じゃ。
公的な調査で職種別まで出ているんですね。数字を見るのが少し怖いです…。
保険薬局・一般病院で働く薬剤師の平均給料計(令和6年度)
| 職種・施設 | 平均給料計 | 中央値 | 前年度比 |
|---|
| 保険薬局の管理薬剤師 | 726万1,788円 | 668万625円 | +0.2% |
| 保険薬局の薬剤師 | 480万2,997円 | 492万6,026円 | +0.3% |
| (参考)一般病院の薬剤師 | 581万1,246円 | 580万4円 | +2.1% |
令和6年度の数字じゃ。薬局は一般薬剤師も管理薬剤師も、前年度比0.2〜0.3%。前の年度から水準がほとんど動いておらん。
業界全体で、ほぼ横ばいなんですね…。相談者さんが「昇給が年5,000円ほど」と感じているのも、業界の動き方から外れた話ではないということですか。
方向としてはそうじゃ。ただしひとつ注意がある。この「平均給料計」は施設ごとの平均であって、同じ人の昇給額ではない。じゃから0.3%を自分の昇給率として読んではいかんぞ。
というと、人が入れ替わった影響も入っているということですか?
その通りじゃ。ここで言えるのは「業界全体として給与水準が動いておらん」というところまでじゃ。自分の昇給額そのものは、あとで給与明細で確かめることになる。
なぜ薬局の昇給がここまで低いのか、構造そのものを知りたい方は、こちらで詳しく解説しています。
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薬局の昇給額が低く抑えられる仕組みと、年収を上げるための現実的な選択肢を解説
年齢別の平均年収は、調査年でカーブの形が変わる
さて、ここからが本題じゃ。「40代で頭打ちになる」という話は、本当なのか。厚労省の「賃金構造基本統計調査」で、薬剤師の年収を年齢階級別に見てみよう。
それを見れば、40代でどうなるかがはっきりしますね。
それがな、そう簡単ではないんじゃ。令和6年と令和7年を並べてみるとよい。
薬剤師の年齢階級別の平均年収(賃金構造基本統計調査・男女計)
| 年齢階級 | 令和6年 | 令和7年 |
|---|
| 35〜39歳 | 614.2万円 | 598.0万円 |
| 40〜44歳 | 646.2万円 | 595.2万円 |
| 45〜49歳 | 667.3万円 | 675.8万円 |
| 50〜54歳 | 744.7万円 | 642.9万円 |
えっ、令和6年は40代を通じて上がっているのに、令和7年は40〜44歳が30代後半を下回っている…!50代前半にいたっては、1年で100万円も違います。
そこが大事な点じゃ。同じ年代の薬剤師が、1年で100万円も給料を下げられたわけではあるまい。調査のたびに対象となる人が入れ替わるから、年齢階級ごとの数字はどうしても振れるんじゃ。
動いとる。令和6年の599.3万円から、令和7年は566.8万円じゃ。
そういうことだったんですね…。ネットで調べると「40代から下がる」と書いてある記事も「年齢に比例して上がる」と書いてある記事もあって、どっちなんだろうと思っていました。
どちらも、どちらかの年の数字を切り取っただけじゃ。こういう横断調査から言えるのは「年齢だけでは説明がつかん」というところまででな、「40代になると昇給が止まる」とも「年齢とともに上がり続ける」とも言えんのじゃ。
年齢を手がかりにするのは、いったん諦めたほうがよさそうですね。
そういうことじゃ。じゃから年齢は脇に置いて、自分で確かめられるところから見ていこう。
年収の水準を大きく分けているもの|役職と職場の給与テーブル
同じ保険薬局でも、一般薬剤師と管理薬剤師で約246万円
さっきの医療経済実態調査の表を、もう一度見てほしい。同じ保険薬局で働いていて、一般薬剤師は480万2,997円、管理薬剤師は726万1,788円じゃ。
その差、約246万円じゃないですか…。同じ保険薬局という業態でも、職位別の平均にこれだけ差があるんですね。
中央値で見ても、一般薬剤師492万6,026円に対して管理薬剤師668万625円で、分布の真ん中どうしでも開いとる。
一部の高い人が平均を引き上げているだけ、という話でもないわけですね。
ただしな、ここは気をつけてほしい。これは全国の薬局を集めた数字で、同じ人が管理薬剤師になる前と後を比べたものではない。管理薬剤師のほうが年齢も経験年数も高い傾向があるから、246万円のすべてが役職によって生まれた差だとは言えんのじゃ。
「管理薬剤師になれば246万円上がる」とは読めないということですね。
その通りじゃ。ここで言えるのは「役職の有無で年収の水準がはっきり違う」というところまででな、だからこそ自分の職場ではどうなのかを確かめる値打ちがある。
統計で分かるのはそこまでで、あとは自分の職場を見にいくしかないんですね。
そういうことじゃ。わしが調剤薬局におった頃も、同期で管理薬剤師になった者とならなかった者がおってな。数年経つと、年収の差がはっきり出てきた。日々の調剤の中身は、そこまで変わっておらんかったのにのう。
やっている仕事が近いのに差がつくと、なんとも言えない気持ちになりますね…。
じゃから「頑張りが足りん」の話ではないんじゃ。業態でも水準は違ってな、一般病院の薬剤師は581万1,246円で、伸び率も2.1%と薬局より高い。
いや、そこは慎重に見てほしい。これは全国の平均を並べただけの話じゃ。同じ業態のなかにも、給与の高い職場と低い職場が両方ある。
それにな、役職を取れば年収が上がるのは事実じゃが、その手当が実際の負担に見合うかどうかは、まったく別の問題じゃ。
打診を受けて迷っている方は、こちらもあわせて読んでみてください。
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まず疑いたい2つの型|「テーブル上限型」と「役職未取得型」
ここで整理しよう。昇給が止まる理由はいくつもあるが、自分で確かめやすく、当てはまる人も多いのがこの2つじゃ。
確かめやすいところから潰していくということですね。
1つ目はテーブル上限型じゃ。今の等級で決められた上限に達しとって、同じ等級におる限り基本給が動かん状態じゃな。勤続年数が長い人ほど、ここに当たりやすい。
長く勤めた人ほど当たりやすいというのは、なんだか皮肉ですね…。その場合はどうすれば?
等級を上げる要件を満たすか、給与テーブルそのものが違う職場へ移るか。この2つじゃ。そして2つ目が役職未取得型。等級にはまだ上がる余地があるが、役職手当の分だけ差がついとる状態じゃ。
同じ「上がらない」でも、中身がまったく違うんですね。打つ手も変わってくると。
その通りじゃ。役職未取得型なら、役職に就くか、役職以外の方法で差を埋めるかになる。

冒頭の相談者さんは、どちらなんでしょうか。管理薬剤師の打診を断って、勤続15年ですよね。
それがな、この情報だけではどちらとも決まらんのじゃ。勤続が長くても等級の上限までまだ余裕がある場合もあるし、評価で止まっとる場合も、そもそも定期昇給の仕組みが無い場合もある。
そうじゃ。じゃからこそ、次の3つを確かめにいく。ここから先は推測ではなく、手元の資料で答えが出る話じゃ。
昇給が止まった原因を、手元の資料で切り分ける
確認に必要なものは、すべて手元と社内にある。求人を見に行く必要も、誰かに相談する必要もないぞ。
それは気が楽ですね。転職活動を始めないと分からない、みたいな話だと構えてしまいます。
賃金規程で、自分の等級と上限を見る
まず確かめたいのは3点じゃ。自分が何等級の何号俸におるのか、その等級の上限額はいくらか、そして等級を上げる要件は何か。上限に達しとるなら、テーブル上限型が確定する。
ざっくり言えば、等級が役割や責任の段階で、号俸はその等級の中の細かい刻みじゃ。毎年少しずつ上がるのは号俸のほうでな、その等級で決められた最後の号俸まで行くと、そこで止まる。
毎年の昇給が小さくなっていくのは、その刻みを上がりきったからかもしれないんですね。ところで賃金規程って、そもそも見せてもらえるものなんですか?
よい問いじゃ。労働基準法の第89条は、常時10人以上の労働者がおる事業場について、就業規則に「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切日及び支払期日並びに昇給に関する事項」を定めるよう求めとる。そして第106条は、その就業規則を労働者に周知するよう定めとるんじゃ。
周知というと、掲示したり配ったりということですか。うちの病院にも給料表があって、新人研修のときに見た記憶があります。
そうじゃ。作業場の見やすい場所に掲示するか備え付けるか、書面を交付するなどの方法とされとる。ただしな、条文から言えるのはここまでじゃ。
うちもそうでした。ただ、賃金のことだけ別冊になっている職場もありそうですが、その場合はどうなるんですか?
よいところに気づいたのう。厚労省のモデル就業規則でも、賃金に関する事項を就業規則本体とは別の規程として定めることはできるとされとる。じゃがその場合も、別に定めた規程は就業規則の一部として扱われるんじゃ。
別冊になっているから見られない、という話ではないんですね。
そういうことじゃ。周知の対象という点は変わらん。ただし、人事評価の個別資料や社内の運用資料まで当然に見られるわけではないぞ。まずは「賃金規程を見たい」と総務や上長に伝えて、どこまで確認できるか試すところからじゃな。
わしの周りでも、賃金規程を最後まで読んだことがある薬剤師はほとんどおらんかった。給与というのは向こうから決まってくるもので、自分で調べるものだと思っておらんかったんじゃな。
たしかに…。入職のときに渡された書類を、その後読み返したことはないかもしれません。
それにな、等級を上げる要件が分かること自体に値打ちがある。要件が具体的に書いてあれば、それは今の職場で昇給を求めるときの材料になるんじゃ。
あ、それは思いつきませんでした。「なんとなく上がらない」のと「この要件を満たせば上がる」のとでは、まったく違いますもんね。職場を移る以外の道が見えることもあると。
給与明細を3年分並べて、基本給と手当を分ける
次は給与明細じゃ。直近3年間の同じ月の給与明細を1枚ずつ、計3枚並べる。それだけでよい。
同じ月で揃えるんですね。それなら今日の夜にでもできそうです。何を見ればいいんですか?
止まっとるのが基本給なのか手当なのか、この一点じゃ。基本給が動いておらんなら、給与テーブルや昇給ルールをまず確認する。基本給は上がっとるのに手取りが増えとらんなら、残業代が減った、調整手当が縮んだといった別の理由が考えられる。
同じ「上がらない」でも、原因がまるで違うんですね。打つ手も変わってきそうです。
変わるとも。それと3年分そろえる理由もあってな、1年だけだと、たまたま賞与の月数が動いただけかどうかが分からんのじゃ。
役職手当の額と要件を確認する
最後は、役職に就いた場合に実際いくら増えるのかを、具体的な金額で確かめることじゃ。
でも相談者さんは、責任が重いから断ったんですよね。それなのに金額を調べる意味があるんでしょうか。
これは役職を勧めるための確認ではないんじゃ。増える額が分かってはじめて、その負担を引き受ける値打ちがあるかを、自分で判断できるようになる。
金額を知らないまま「責任が重そうだから」と断るのと、金額を見たうえで「この額なら割に合わない」と決めるのとでは、納得感が全然違いますね。
そこじゃ。ついでに、認定薬剤師などの資格手当があるかどうかも同じ規程で確かめられる。ただし手当の有無も金額も職場によって大きく違うので、まず自分のところの額を見ることじゃ。
資格を取れば解決、と決めつけずに、まず自分の職場の条件を見るということですね。
そういうことじゃ。3つ見終えたら、こう読むとよい。等級の上限に達しておればテーブル上限型、上限に余地があって役職手当の分だけ差がついとるなら役職未取得型。基本給は動いとるのに手取りが減っとるなら、どちらでもなく手当や残業代の側の話じゃ。
3つとも見れば、少なくとも「どこを見に行けばいいか」がはっきりしますね。
ここまでで、自分が社内のどこにおるかは分かる。分からんのは、社外と比べてどうかじゃ。同じ経験年数、同じ業態、同じ地域で働く薬剤師と比べて、自分の年収がどのあたりにあるか。
社内で原因を切り分けて、それから社外の相場との差を知る。その順番なんですね。
材料をそろえてから、動くかどうかを決めれば十分間に合う。相場との差は3分ほどで確かめられるし、転職を決めておらんでも使えるぞ。
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まとめ:原因を年齢に置かなければ、次にやることが決まる
この記事のまとめ
- 1昇給が止まった実感は正しい。保険薬局の給与水準は業界全体でほぼ横ばい
- 2ただし年齢別平均のカーブは調査年で形が変わり、年齢だけでは説明できない
- 3まず疑いたいのは給与テーブルの上限と役職。保険薬局は職位で水準がはっきり違う
- 4賃金規程・給与明細・役職手当を見れば、原因を自分で切り分けられる
40代で年収が頭打ちになり上がらない。この状態を「年齢のせい」で片づけてしまうと、できることが何も残らんのじゃ。
原因を言い当てなくても、確かめられるところから切り分けていけばいいんですね。それなら今日からでも動けます。
そういうことじゃ。まずは自分の位置を知るところから始めればよい。
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