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調剤薬局の昇給が少ない構造的な理由|年収を上げる現実的な方法

公開日:

調剤薬局の昇給が少ないのは薬剤師の能力ではなく業界構造の問題です。厚労省の賃金構造基本統計調査をもとに年収カーブの実態を解説し、昇進・業態変更・地域変更など年収を上げる現実的な選択肢をお伝えします。

登場キャラクター

薬剤師じいさん

薬剤師じいさん

薬剤師歴70年の大ベテラン。病院・薬局・ドラッグストアすべてを経験してきた生き字引。豊富な経験と公的データに基づいて、若手薬剤師の悩みにズバッと答えます。

みさ

みさ

新卒2年目の若手薬剤師。病院で働いているけど、年収やキャリアに不安を感じている。全国の悩める若手薬剤師を代表して、気になることをどんどん質問していきます!

💬
読者からの質問

調剤薬局で働いて5年目の薬剤師です。毎年の昇給が月3,000円程度で、年収がほとんど変わりません。大学の同期は一般企業で毎年しっかり昇給しており、だんだん差がついてきました。このまま今の薬局で働き続けて大丈夫なのか不安です。

📌この記事のポイント
  • 調剤薬局の昇給が少ないのは、調剤報酬の上限と管理職ポスト不足という構造的理由であり、あなたの能力の問題ではない
  • 医療・福祉業の昇給額は全産業平均の約6割。薬剤師の年収カーブも35歳以降で伸びが鈍化する
  • 年収を上げるには、今の構造の中で最大化する(昇進・加算)か、構造を変える(ドラッグストアへの転職・地方への転職)のが現実的な選択肢

調剤薬局の昇給が少ないのは構造の問題

先生
毎年の昇給が数千円だと、さすがに不安になるよな。わしも調剤薬局に勤めていたときに給与明細を見て、「6年も大学に通ったのに、この上がり幅か」と思ったことがある。
新人
私の周りでも、「昇給の少なさに驚いた」って話はよく聞きます。頑張っているのに給料に反映されないと、モチベーションにも関わりますよね…。
先生
うむ。ただ、先に伝えておきたいのは、調剤薬局の昇給が少ないのはあなたの能力の問題ではないということじゃ。これは業界の構造に原因がある。

調剤報酬は法律で決まっている|売上の天井がある

先生
まず1つ目の理由は、調剤薬局の売上構造にある。調剤薬局の売上のほとんどは調剤報酬で成り立っていて、この単価は法律で決まっておる。薬局側が自由に価格を設定できないんじゃ。
新人
あ、たしかに。一般企業なら営業を頑張ったり新商品を出したりすれば売上が伸びますけど、薬局にはそういう手段がないですよね。
先生
その通り。処方箋の枚数を増やすか加算を取るかくらいしか売上を伸ばす方法がなく、どちらも大幅な増収にはつながりにくい。しかも調剤報酬は2年ごとに改定され、近年は引き下げ傾向が続いておる。
新人
売上が伸びない構造だから、昇給の原資も限られる…。薬剤師がどんなに丁寧に仕事をしても、会社の収益構造上、給料を大きく上げにくいってことですね。
先生
そういうことじゃ。これが昇給の少なさの根本原因じゃよ。

管理職のポストが少ない|昇進の天井もある

先生
2つ目の理由は、昇進の天井じゃ。調剤薬局の役職は管理薬剤師・薬局長くらいしかない。一般企業のように主任、係長、課長、部長と細かい職階があるわけではないんじゃ。
新人
ポストが少ないと、能力があっても順番待ちになりますよね…。
先生
うむ。大手チェーンならエリアマネージャーなどのポストもあるが、数は限定的じゃ。多くの薬局では昇給が「昇進」に紐づく給与体系になっておるから、ポストがなければ給料も上がらないという構造がある。
新人
売上の天井と昇進の天井。ダブルで頭を押さえられている感じですね。これは個人の努力だけではどうにもならない…。

データで見る薬剤師の年収の現実

先生
構造の問題はわかった。では、その構造が実際の数字にどう表れているのか、公的なデータで確認してみよう。

昇給額のデータで見る「構造の壁」

先生
まず昇給額から見てみよう。厚生労働省の「令和6年賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、医療・福祉業の1人あたり月額賃金改定額は6,876円じゃ。
新人
月に約7,000円…。調剤薬局だと月3,000〜5,000円程度のケースが多いと聞きますけど、質問者さんの月3,000円だと業界平均の半分以下ですね。
先生
そうなる。しかも、その業界平均自体が全産業平均と比べてかなり低い。同じ調査で全産業平均は11,961円。医療・福祉はその約6割にとどまっておる。

1人あたり月額賃金改定額(令和6年賃金引上げ等の実態に関する調査)

区分月額改定額改定率
全産業平均11,961円4.1%
医療・福祉6,876円2.5%
新人
全産業平均の6割…。なぜ医療・福祉だけこんなに低いんですか?
先生
さっき話した構造の問題がそのまま数字に表れておるんじゃ。一般企業は業績が上がれば昇給原資も増えるが、医療・福祉は売上が診療報酬や調剤報酬という法律で決まった単価に縛られておる。だから景気がよくなっても、他の産業ほど昇給に反映されにくい。
新人
逆に言うと、景気が悪くなっても他の産業ほど影響を受けにくいってことですか?
先生
その通りじゃ。調剤報酬で売上が安定している分、不況でも雇用や給与が大きく崩れにくい。これは薬剤師の強みでもある。ただ、今回のテーマは「昇給が少ない」ことじゃから、安定の裏返しとして上がりにくいという構造がある、ということじゃな。
新人
安定はしているけど、伸びにくい。「給料は構造で決まる」って話が、まさにデータに出ているんですね…。
先生
うむ。ただし注意点がある。これは医療・福祉業全体の数字で、調剤薬局に限ったデータではない。病院・介護なども含まれた平均じゃ。介護職など薬剤師より低賃金の職種も含まれておるから、調剤薬局だけで見れば多少違う可能性はある。とはいえ、調剤報酬に縛られる構造は調剤薬局も同じじゃ。
新人
業界全体の構造が昇給を抑えている。その中で自分の昇給額が業界平均よりさらに低いとなると、職場自体の問題もあるかもしれないってことですね。

年齢別の年収カーブ|あなたは今どこにいるか

先生
次に、年収が年齢とともにどう変わるかを見てみよう。厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」のデータじゃ。

薬剤師の年齢別平均年収(令和6年賃金構造基本統計調査)

年齢平均年収(万円)
25〜29歳約501
30〜34歳約564
35〜39歳約614
40〜44歳約639
45〜49歳約680
50〜54歳約745
新人
30代前半までは順調に上がっていますけど、35歳を超えたあたりから伸びが鈍くなっていますね…。
先生
うむ。30代前半までは5年で約60万円ずつ上がっておるが、35〜39歳から40〜44歳では伸びが約25万円に半減しておる。これがさっき話した「売上の天井」と「昇進の天井」が年収カーブに表れた結果じゃ。
新人
しかもこれは全業態の薬剤師の平均ですよね。調剤薬局だけで見たら、もっと緩やかになる可能性がある…。
先生
その通りじゃ。ドラッグストアや製薬企業の薬剤師も含まれた平均じゃからな。調剤薬局に限れば、このカーブはさらに緩やかになる傾向がある。
新人
だとすると、自分の年収がこの平均と比べてどうなのかが気になります。平均より上なのか下なのかで、取るべき行動も変わりますよね。
先生
まさにそこが大事なんじゃ。業界平均を見て一喜一憂するより、自分自身の年収が経験年数や地域に対して適正かどうかを確認する方がよほど有益じゃ。適正より低いとわかれば、環境を変えるだけで年収が上がるケースもある。まずは確認してみることじゃ。
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年収を上げる現実的な方法|構造を理解したうえで動く

先生
ここまでの話をまとめると、給料は業界の構造で決まるということじゃ。ということは、年収を上げるために必要なのは「頑張る」ことではなく、「構造の中で最大化する」か「構造そのものを変える」かのどちらかじゃ。
新人
具体的にはどういう選択肢がありますか?
先生
大きく2つの方向性がある。今の調剤薬局にいながら年収を最大化する方法と、働く環境を変えて年収を上げる方法じゃ。順番に見ていこう。

今の構造の中で最大化する|昇進と加算

先生
まずは、今の調剤薬局にいながら年収を最大化する方法じゃ。厚生労働省の「第24回医療経済実態調査」によると、保険薬局における管理薬剤師の平均年収は約724万円。一般薬剤師の約486万円と比べて約240万円高い。薬局長やエリアマネージャーになれば、さらに上積みも見込める。
新人
約240万円も差があるんですね。ただ、この差には経験年数や年齢の違いも含まれていますよね?
先生
その通りじゃ。管理薬剤師は経験を積んだ人が多いから、純粋な手当の差だけではない。ただ、管理薬剤師になることで年収が上がる方向にあるのは確かじゃ。
新人
でも、さっきポスト数に限りがあるって話でしたよね。昇進以外に、今の薬局にいながら年収を上げる方法ってないんですか?
先生
よい質問じゃ。実はもう一つある。調剤報酬の加算を積極的に取って、薬局の売上に貢献する方法じゃ。かかりつけ薬剤師のフォローアップ、在宅訪問、服薬情報提供など、加算を取れる業務を地道に積み上げていくと、経営者としては「この薬剤師がいるから売上が上がっている」と評価せざるを得なくなる。
新人
なるほど。調剤報酬という構造の中で、売上を伸ばせる数少ない手段が加算なんですね。
先生
その通り。加算を取れる薬剤師は転職市場でも評価が高い。どの薬局も加算を取れる人材を求めておるからな。ただし、正直に言えば簡単な話ではない。在宅やフォローアップを日常業務に上乗せでこなすのは負担が大きいし、成果が給与に反映されるかどうかは会社の評価制度次第じゃ。
新人
加算を取って評価される道はあるけど、そこまでの労力に見合うかは人によるってことですね。
先生
うむ。「昇進も加算も、今の環境では限界がある」と感じたら、もう一つの方向性を考えてもよいかもしれん。

構造を変える①|ドラッグストアへの転職

先生
ここからは、働く環境を変えて年収を上げる方法じゃ。さっき「調剤薬局の昇給が少ないのは調剤報酬という売上の天井があるから」と話したな。であれば、その天井がない業態に移れば、年収が上がる可能性がある。
新人
天井がない業態…ドラッグストアですか?
先生
そうじゃ。ドラッグストアは調剤報酬に加えて、OTC医薬品・日用品・食品など物販の利益がある。売上の天井が調剤薬局より高い分、従業員に還元できる原資も大きく、年収は調剤薬局より高い傾向がある。
新人
「給料は構造で決まる」って話の延長で考えると、売上構造が違う業態に行けば給料も変わるのは自然な話ですね。
先生
ただし、トレードオフがある。品出し・レジ対応・売場管理など、調剤以外の業務が発生する。「薬剤師としての専門業務に集中したい」と考える人にとっては、ストレスになる可能性がある。年収を取るか、業務内容を取るか。ここは自分の価値観次第じゃ。
新人
どちらが正解ではなく、何を優先するかで判断する。その選択に必要な情報を持っておくことが大事なんですね。
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構造を変える②|地方への転職

先生
もう一つは、働く地域を変えることじゃ。薬剤師が不足している地方では、同じ業態・同じ業務内容でも年収が高くなる傾向がある。
新人
それも構造の話ですよね。人手が足りないから、高い給料を出さないと人が来ない。
先生
その通り。ただし、額面だけで判断するのは危険じゃ。生活コスト、家族の事情、通勤環境など、年収以外の要素も大きく影響する。
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まとめ:給料は構造で決まる。まず自分の立ち位置を確認しよう

この記事のまとめ

  1. 1調剤薬局の昇給が少ないのは調剤報酬の上限と管理職ポスト不足という構造的な理由であり、あなたの能力の問題ではない
  2. 2医療・福祉業の昇給額は全産業平均の約6割。薬剤師の年収カーブも35歳以降で伸びが鈍化しており、構造の壁がデータに表れている
  3. 3年収を上げるには、今の構造の中で最大化する(昇進・加算)か、構造を変える(ドラッグストアへの転職・地方への転職)のが現実的な選択肢
  4. 4いずれの判断をするにも、まずは自分の年収が同条件の薬剤師と比べてどの位置にあるかを確認することが第一歩
先生
今日の話をまとめると、調剤薬局の昇給が少ないのは構造の問題であって、あなた自身の問題ではないということじゃ。
新人
構造がデータにはっきり出ているのを見て、納得しました。昇給額も年収カーブも、構造で説明がつくんですね。
先生
うむ。そのうえで、年収を上げたいなら「今の構造の中で最大化する」か「構造を変える」かのどちらかじゃ。昇進・加算で攻めるか、業態や地域を変えるか。いずれも「頑張る」のではなく「環境を選ぶ」ことで年収を上げるアプローチじゃよ。
新人
まずは自分の年収が相場と比べてどうなのかを知るところからですね。現状がわからないと、何を変えるべきかも判断できませんもんね。
先生
その通りじゃ。まずは自分の立ち位置を把握することから始めてみるとよいぞ。
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