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薬剤師が介護休業を取れないときの対処法|辞める前に確認すべき2つのステップ

公開日:

介護休業を取りたいのに人手不足で言い出せない・断られた薬剤師へ。介護休業は法律で定められた権利であり、事業主は原則拒否できません。「言い出せない」を超えるための伝え方と、それでも変わらないときに介護と両立しやすい職場へ移る選択肢を2ステップで解説します。

登場キャラクター

薬剤師じいさん

薬剤師じいさん

薬剤師歴70年の大ベテラン。病院・薬局・ドラッグストアすべてを経験してきた生き字引。豊富な経験と公的データに基づいて、若手薬剤師の悩みにズバッと答えます。

みさ

みさ

新卒2年目の若手薬剤師。病院で働いているけど、年収やキャリアに不安を感じている。全国の悩める若手薬剤師を代表して、気になることをどんどん質問していきます!

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読者からの質問

調剤薬局で働く40代の薬剤師です。親の介護が必要になり、介護休業を取りたいと思っていますが、薬剤師2人体制の薬局で「休まれたら回らない」と言われそうで言い出せません。介護休業は権利だと聞きましたが、実際に人手不足の職場で取れるのでしょうか。もう辞めるしかないのかと毎日考えてしまいます。

📌この記事のポイント
  • 介護休業は育児・介護休業法で定められた権利。薬剤師2人体制の薬局であっても、人手不足を理由に事業主が拒否することはできない
  • 「言い出せない」は自然な感情。まずは「介護が始まった」と事実だけ伝えれば、2025年改正法で会社側に制度案内の義務があるため、自分から制度の話を切り出す必要はない
  • 正式に申し出ても職場の空気が変わらないなら、正社員のまま介護と両立しやすい職場へ移る選択肢がある。「辞めるか我慢するか」の二択ではない

まず結論 — 介護休業は法律で守られた権利

介護休業が取れないときの2ステップ:1.職場に正しく伝える、2.介護と両立しやすい職場へ移る
先生
「介護休業を取りたいけど、人手不足で言い出せない」「断られたらどうしよう」。こう悩んでいるなら、まず知っておいてほしいことがある。介護休業は、育児・介護休業法で定められた労働者の権利じゃ。要件を満たしていれば、事業主は申出を拒否できん。
新人
「うちは薬剤師2人しかいないから無理」って言われたら、それでも取れるんですか?
先生
取れる。「人手が足りない」は法的に認められる拒否理由ではないんじゃ。人員の確保は事業主の責任であって、あなたが「迷惑をかけるから」と遠慮して制度を使わない理由にはならん。
新人
でも、同僚に全部しわ寄せが行くと思うと、罪悪感で言い出せない気持ちはすごくわかります…。
先生
その気持ちは自然なものじゃ。薬剤師は免許がないとできない業務がほとんどで代替が効きにくい職種じゃから、余計にそう感じるじゃろう。じゃがな、その罪悪感を抱えたまま自分が倒れたら、介護も仕事もどちらも立ち行かなくなる。制度を使うのは「迷惑をかけること」ではなく「長く働き続けるために必要なこと」じゃ。
新人
介護休業中の収入はどうなるんですか? 完全に無給だとさすがに厳しいですよね。
先生
介護休業給付金として、休業前の賃金の67%が雇用保険から支給される。たとえば月収40万円の薬剤師なら、給付金は月約26.8万円。施設探しで2ヶ月取得すれば合計約54万円、最大93日(約3ヶ月)まで取得できる。なお、給付金には上限額があるから、月収が高い人は満額にならない点には注意じゃ。
新人
想像していたよりも収入面の不安は小さいですね。ところで、自分の場合は本当に対象になるんでしょうか? 義理の両親の介護でも取れるのか気になります。

誰が、誰のために取れる制度なのか

先生
対象家族と労働者の要件を整理しておこう。

介護休業の対象家族と労働者の要件

項目内容
対象家族配偶者(事実婚含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫
介護の状態2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態(要介護2以上が目安)
雇用形態正社員は原則対象。パート・派遣も契約継続見込みがあれば対象
勤続年数原則すべての労働者。労使協定で勤続1年未満が除外される場合あり
新人
義理の両親も対象なんですね。「親」だけかと思っていました。
先生
うむ。判定の軸は「2週間以上、常時介護が必要な状態」じゃ。要介護2以上が目安と言われておる。さらに、パート・派遣でも、契約継続の見込みがあれば取得できる。「正社員だけの制度」と誤解されがちじゃが、雇用形態を問わず使える制度じゃぞ。

介護休業だけが選択肢ではない

先生
もう一点、知っておいてほしいことがある。介護のために使える制度は介護休業だけではない。介護休暇(年5日・時間単位で取得可)、所定外労働の制限(残業免除)、短時間勤務、フレックスタイムなど、日常の両立に使える制度が幾つもある。
新人
「介護休業を取らなきゃ」と思い詰めていました。
先生
実は、介護をしている労働者のうち介護休業を取得しているのは1割程度なんじゃ。多くの人は介護休暇とフレックス、それと介護保険サービスを組み合わせて日々を回しておる。介護休業は「施設探し」「看取り」などまとまった期間が必要な場面で使う「カード」と捉えるのが現実的じゃ。
新人
なるほど。私の場合は介護休業を取りたい状況ですが、選択肢の全体像は知っておいた方が良さそうですね。
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先生
他にも選択肢があると知った上で、それでも「自分の場合はやはり介護休業が必要だ」と判断したなら、ここからは取得するための具体的なステップを2つに分けて説明していこう。

ステップ1 — 「言い出せない」を超える伝え方

新人
ステップ1では、具体的に何から始めればいいんでしょうか?
先生
ゴールは「2週間前までに書面で介護休業を正式申出すること」じゃ。じゃが、その前に整理しておきたい気持ちと、最初の伝え方がある。順に見ていこう。

言わないままは、お互いにとってよくない

先生
「言い出せない」気持ちは自然じゃ。じゃがな、言わないままでいるのは、自分にとっても、職場にとっても、よくないんじゃよ。
新人
お互いにとって、というのはどういうことでしょう?
先生
自分の側では、罪悪感と疲労が積み重なる。それに、急な早退や休みが「勤務態度の問題」と誤解されて『仕事ができないやつ』と思われるリスクもある。職場の側も、いつ何が起きるか分からん状態では準備のしようがないし、急に休まれても困ってしまう。情報を共有していないせいで、双方が損をする状態じゃ。
新人
「言いにくいから言わない」ではなく、「お互いのために言う」と捉え直すんですね。
先生
そう。完璧な切り出し方を考える必要はない。早めに、一言伝える。それが第一歩じゃ。
新人
ただ、伝えた結果、職場の反応が冷たくて気まずくなってしまったらどうしましょう?
先生
そのときは、介護に理解のある職場へ移ればよい。詳しくはこの後のステップ2で話すが、「言わない」「言って我慢する」の二択ではないんじゃ。今はまず、伝えることに集中しよう。

まず「介護が始まった」ことだけ伝える

先生
いきなり「介護休業を取りたいです」と切り出す必要はない。最初の一歩は、上司に「親の介護が始まった」という事実だけ共有することじゃ。
新人
制度の話を自分から切り出さなくてもいいんですか?
先生
実は、2025年4月の育児・介護休業法改正で、事業主は介護に直面した社員に対して、介護休業制度に関する情報の周知と取得意向の確認を個別に行うことが義務化されたんじゃ。つまり、あなたが「介護が始まった」と伝えれば、職場側が制度について案内する義務がある。「介護休業を取らせてください」と最初から自分で切り出す必要はないんじゃよ。
新人
自分から制度の話を持ち出さなくていいなら、最初の一歩のハードルがだいぶ下がります。
先生
具体的には、「親の介護が始まりまして、今後急な休みが必要になる可能性があります。何か社内で必要な手続きはありますか?」と聞いてみるとよい。事実共有と質問の形を組み合わせれば、会社側は改正法に基づき制度案内を始める流れになる。

書面で正式に申し出る

先生
口頭で状況を共有したら、次は書面で正式に介護休業を申し出る。法律上は、休業開始日の2週間前までに申し出る必要がある。
新人
書面って、何を書けばいいんですか?
先生
「対象家族の氏名と続柄」「介護が必要な理由」「休業の開始日と終了日」の3つを書けばよい。特別なフォーマットは不要じゃが、会社に所定の様式があればそれを使うとスムーズじゃ。書面は「言った言わない」を防ぐ記録として残るし、万が一拒否された場合の証拠にもなる。自分を守る意味でも書面で出すことが大切じゃ。
新人
「2週間前までに書面で出す」。これが正式な手続きなんですね。

ステップ2 — それでも変わらないなら、両立しやすい職場へ

先生
ステップ1の通りに正式に申し出ても、「うちでは無理」「もう少し待ってほしい」と難色を示されたり、制度は使えたものの『権利だから仕方なく認めた』という空気を感じるケースもある。介護休業の拒否は法律上できないとはいえ、介護で疲弊している中で行政指導まで持ち込んで残るのは負担が大きい。
新人
「権利だから仕方なく認めた」という空気だと、結局気まずくて長く働けなくなりますよね…。
先生
うむ。薬剤師は売り手市場じゃから、ステップ1をやった上でも変わらない職場に固執するメリットは薄い。介護と両立しやすい職場へ正社員のまま環境を変えるのが合理的な判断じゃ。「逃げ」ではなく「やれることをやった上での選択」じゃぞ。

介護休業の取得実績で職場を見分ける

新人
「介護と両立しやすい職場」って、どう見分ければいいんでしょうか?
先生
「介護休業を申し出にくい」「申し出ても通らなかった」経験をした人にとって、次の職場で確認しておきたい一番のポイントは『介護休業を実際に取った薬剤師がいるか』じゃ。制度があっても運用されていない職場は多い。じゃが、実績がある職場なら、自分が申し出るときの心理的ハードルが格段に下がる。
新人
求人票には書かれていない情報ですよね。
先生
そう。だからこそ、転職サイトのエージェントに直接聞くことが大事じゃ。「介護休業を申し出にくかった経験があります」と最初に伝えるだけで、エージェントは条件に合う求人を絞ってくれる。

!「申し出にくい・通らなかった」経験者ならではのリクエスト例

  • 介護休業の取得実績がある職場を優先的に紹介してほしい
  • 薬剤師3人以上の体制で、1人欠けても回る店舗を希望
  • 近隣店舗からのヘルプ体制があり、急な休みに対応しやすい職場を優先したい
  • 面接時に「介護で休んだ場合の対応」を確認できる場を設けてほしい
先生
いきなり応募する必要はない。まずは自分に合った転職サイトの選び方を知っておくだけでも、気持ちが楽になるぞ。
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比較ガイド

薬剤師転職サイトの選び方・使い方

登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説

まとめ:「取れない」で終わらせない。一つずつ動いてみよう

この記事のまとめ

  1. 1介護休業は法律で定められた権利。人手不足や2人体制を理由に事業主が拒否することはできない
  2. 2介護休業だけが選択肢ではない。介護休暇・所定外労働制限・介護保険サービスを組み合わせて日々を回し、介護休業は「施設探し」「看取り」などまとまった期間で使う「カード」と捉える
  3. 3ステップ1:まず「介護が始まった」と事実だけ伝える。2025年改正法で会社側に制度案内の義務がある。正式申出は「2週間前までに書面」で
  4. 4ステップ2:それでも変わらないなら、正社員のまま介護と両立しやすい職場へ。「介護休業の取得実績がある職場」をエージェントに聞こう
先生
「介護休業を取れない」と感じている薬剤師に伝えたいのは、一人で抱え込む必要はないということじゃ。制度は法律で守られておるし、介護休業だけが選択肢でもない。今の職場で取れないなら、両立できる職場に移ればよい。「辞めるか我慢するか」の二択ではないんじゃ。
新人
「人手不足だから無理」で諦めていた方も、法的な権利があると知るだけで選択肢が見えてきますね。
先生
うむ。大切なのは、いきなり大きな決断をしないことじゃ。まずは上司に「介護が始まった」と伝えることから。それが最初の一歩じゃよ。
新人
先生、ありがとうございます。ステップ1の「状況を伝えるだけ」なら、明日にでもできそうですね。一人で抱え込まないで、一つずつ動いてみようって思えました。
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薬剤師転職サイトの選び方・使い方

登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説