育休でボーナスが減った薬剤師へ。休んだ期間を賞与の算定で考慮すること自体は認められていますが、その期間を超えて不利に算定することは認められていません。賞与規程と明細から減り方を確かめる手順、算定根拠の聞き方、相場と比べるための概算まで解説します。
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読者からの相談調剤薬局で働く薬剤師です。第一子の産休・育休から復帰して、最初のボーナスの明細を開いたら、前回の半分以下でした。休んだぶんが減るのは分かっていたのですが、どう計算されてこの額になったのかは、明細のどこにも書かれていません。事務長に聞こうとしたら「休んでいた期間があるからね」で会話が終わってしまって、それ以上は言えませんでした。休ませてもらった立場で金額のことを持ち出すのも気が引けて、そのままにしています。
📌この記事のポイント
- 育休でボーナスが減るのは違法ではないが、休んだ期間を超えて不利に算定することは認められない
- まず賞与規程の算定方法を確認し、読み取れないときは前回の賞与額から参考額を出す
- 休んだ日数の扱いと、それ以外の評価要素は分けて確認してよい
まず結論:育休で賞与は減るが、休んだ期間を超えて不利に算定はできない
まず先に答えを言っておこう。育休で賞与が減ること自体は、違法ではないんじゃ。働かなかった期間のぶんが差し引かれるのは、認められた扱いでな。
そうなんですね…。じゃあ相談者さんも、「休んだのだから当然」で飲み込むしかないということですか?
いや、そこに線があるんじゃ。厚生労働省の指針は、この点について2つのことを言っておる。1つは、賞与の算定で休んだ期間に相当する日数を日割りで差し引くことは、不利益な取扱いには該当しないということ。もう1つは、休んだ期間に相当する日数を超えて働かなかったものとして扱うことは、「不利益な算定を行うこと」に該当する、ということじゃ。
つまり、休んだ期間のぶんを考慮するのはよくて、それを超えて扱うと別問題になる、ということですか。
そういうことじゃ。ただし気をつけてほしいのは、賞与には会社の業績や個人の評価といった別の要素も入るということでな。減った幅そのものが休んだ割合の中に収まるとは限らん。じゃからまずは、賞与規程に書かれた算定方法を確かめるのが先じゃ。
相談者さんが飲み込んだ違和感にも、確かめる手がかりがあるということですね。それが分かるだけでも、少し気持ちが違う気がします。
自分の賞与が休んだ日数のぶんだけ減っているか、明細と規程で確かめる
ここからは手順の話じゃ。確かめ方は3つのステップでな、順番にたどれば今日のうちに判定できる。
今日のうちに、ですか。もっと専門的な計算が必要かと思っていました。
そう難しくはない。ただ1つだけ先に言っておくと、計算に使うのは明細の額面、つまり支給総額のほうじゃ。手取りで計算すると数字が合わん。理由は後の章で説明する。
①賞与規程で算定対象期間と算定式を確認する
最初に確定させるのは、その賞与が「いつからいつまでの働き」を対象にしておるかじゃ。これを算定対象期間という。
ボーナスが出る直前の半年間、みたいなイメージでしょうか。
そこが落とし穴でな。支給月の直前6か月とは限らんのじゃ。職場ごとに規程で決まっておる。
職場によって違うんですか…。じゃあ、その規程はどこで見られるんですか?
賞与の計算方法は、就業規則の本体ではなく賃金規程・賞与規程に書かれておることが多い。そして規程は、労働者がいつでも見られる状態にしておく義務が事業主にあるでな、見せてほしいと伝えて構わん。掲示、備え付け、書面の配布、社内システムと方法は職場ごとに違うから「写しをもらえる」とまでは言い切れんが、閲覧を求めるのは正当じゃ。
規程を見たら、計算方法まで書いてあるものなんでしょうか。
「基本給×〇か月×出勤率」のような算定式が書いてあれば、その式に自分の休業日数を当てはめるのがいちばん正確じゃ。一方で、「賞与は会社の業績により支給する」とだけ定められ、個別の算定式までは規程から読み取れない職場もある。この場合は自分では検算できんから、聞くところから始めることになる。
検算できない人もいる、ということですね。その場合の道も用意されているなら安心です。
それともう1つ、支給日在籍要件も見ておくとよい。「支給日に在籍していること」を条件にしておる職場は多く、この条項自体は有効とされておる。育休中も在籍しておることに変わりはないから通常は満たすが、規程が「支給日に現に就労していること」と書いておる場合は確認の対象じゃ。
育休中でも在籍は続いている、と考えればいいんですね。少し安心しました。
②算定対象期間に休んだ日数を数える
次は、算定対象期間のうち何日休んだかを数える番じゃ。ここが読者のいちばん間違えやすいところでな。
多いのが、産前産後休業の日数を入れ忘れることじゃ。多くの人は産休と育休をまとめて「育休」と呼ぶが、休業日数を数えるときの起算点は産前休業を始めた日でな。
言われてみれば、産休のぶんを別で考えてしまいそうです。それが抜けたら、計算そのものが合わなくなりますね。
そういうことじゃ。日数は明細からではなく、休業の開始日と終了日から拾うとよい。産休と育休が続いておると、本人が思っておる休業期間と、会社が算定に使った期間がずれることがある。悪意ではなく、起算日の取り違えというだけの話でな。
悪気なく間違っていることもあるんですね。それなら、確認すること自体は失礼にならない気がします。
もう1つ、数える単位を規程に合わせることも大事じゃ。暦日か所定労働日かで割合は変わる。そこがずれると、本当は休んだ割合どおりの計算なのに「減らされすぎておる」と読み違えてしまうでな。規程から読み取れんときは、その点も後で聞く対象にしておけばよい。
③前回の賞与額 ×(1 − 休業割合)と実額を比べる
さて、規程から算定式が読み取れんかった場合じゃ。そのときは、こう見当をつける。あくまで算定根拠を確認するための参考でな。

たとえば算定対象期間が6か月、およそ182日として、そのうち91日休んでおったなら、休業割合は0.5になる。前回の賞与が40万円だったなら、参考額は20万円じゃ。この参考額と、実際の支給額を比べる。
自分の明細の数字を当てはめるだけなら、今夜にでもできそうです。
ただし、この計算には限界もある。前回の賞与額を基準にしておる以上、その間の業績や評価の変動も混ざるからのう。参考額を下回っておるからといって、それだけで不当だと決まるわけではない。
ということは、差が出たら即おかしい、とは言えないんですね。
そのとおりじゃ。ここで分かるのは「休んだ日数だけでは説明のつかない差があるかどうか」まで。そのうえで結果は3つに分かれる。
- 参考額とほぼ同じだった … 大きな差は見当たらない。納得できるならここで終えてよい
- 参考額を明らかに下回っていた … 休んだ日数以外の要素も含めて算定根拠を聞いてよい
- そもそも算定式が規程から読み取れなかった … 検算ができないので、聞くところから始める
参考額とほぼ同じだった場合は、それ以上悩まなくていいということですか?
そうじゃ。参考額との差が大きくなく、それで納得できた人は、ここから先を読む必要はない。この計算で適法だと確かめられるわけではないが、腑に落ちたならそれでよい。全員を職場への確認に押し出すつもりはないんじゃよ。
冒頭の相談者さんは、「休んでいた期間があるからね」で会話が終わってしまったんですよね。
相談者さんは「前回の半分以下」と言っておったな。仮に算定対象期間の半分を休んでおったなら、参考額はちょうど前回の半分になる。そこを下回っておるなら、算定根拠を聞いてよい側に入るということじゃ。
なお、今回の賞与だけでなく、復帰してからずっと給料が下がっている、という方もいます。それは休業期間による一時的な減額とは別の話なので、こちらの記事で確認してください。
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賞与の額面の減り方と、手取りの減り方は同じではない
ここからは、計算が合わんときにまず疑うべき場所の話じゃ。控除の側でな、休んだ日数に関係なく育休を取った人全員に関わる。
さっき「額面で計算する」とおっしゃっていたのは、この話に繋がるんですね。
賞与の社会保険料が免除されるのは「1か月超」の育休
賞与にかかる社会保険料には、免除の条件があってな。令和4年10月1日以降に始めた育児休業等では、賞与を支払った月の末日を含む連続した1か月を超える育休を取った場合に限って免除される。
育休を取っていれば自動的に免除、ではないんですか。
そこじゃ。毎月の給与にかかる保険料とは要件が違ってな。月々のほうは、育休の期間に月末が含まれる月が免除される。令和4年10月からは、開始と終了が同じ月に収まる短い育休でも、その月に14日以上取っておれば免除の対象に加わった。
月々の保険料と賞与の保険料で、見るところが違うんですね…。これは知らないと間違えそうです。
賞与のほうは、月末を含んだうえで連続1か月を超えることまで求められる。免除されておれば控除が減るから、額面の減り方ほどには手取りが減らんこともある。自分がどちらだったかは、明細の控除欄を見れば分かるぞ。
賞与が減っても、育児休業給付金は増えない
もう1つ、誤解されやすい点を潰しておこう。育児休業給付金の計算に使う休業開始時賃金日額は、育休を始める前6か月の賃金から算出する。ただし、この賃金に賞与は含まれん。
ボーナスが減ったぶん、給付金のほうで少し戻ってくる…というわけではないんですね。
残念ながらそうじゃ。3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は除かれる決まりでな。つまり賞与の減額は、そのまま年収に効く。じゃからこそ、最後に年収の話へ戻る必要がある。
賞与が参考額より少ないとき、規程どおりでも認められない場合がある
ここからは、参考額を明らかに下回っておった人に向けた話じゃ。参考額との差が大きくなく、納得できた人は、ここは読み飛ばしてよいぞ。
休んだ日数を超えて「働かなかったもの」として扱っていないか
厚生労働省の指針は、休業した期間に相当する日数を超えて働かなかったものとして取り扱うことを、不利益な算定にあたる例として挙げておる。
そこにもう1つ並んでおるのが、実際には働いていないわけではないのに、育児休業等の申出をしたことだけを理由に賞与を減額することじゃ。
休んでいない期間まで一律に下げられていたら、こちらに当てはまるかもしれないということですか。
近づく、という言い方が正確じゃな。これで「違法です」と決まるわけではない。確認する余地がある、という段階でな。
断定はできないけれど、黙っている理由もない、という位置ですね。
出勤率の条件は、規程に書いてあっても無効になることがある
もう1つ知っておいてほしいのが、規程に書いてあれば必ず通る、とは限らんという点じゃ。賞与の支給に「90%以上の出勤」を条件とする規程について、最高裁が判断した事例がある。東朋学園事件という、平成15年12月4日の判決じゃ。
出勤率で条件をつけること自体が、問題になったんでしょうか。
問題になったのは中身のほうでな。出勤すべき日数には産前産後休業の日数を入れながら、出勤した日数にはその日数や短縮した勤務時間を含めない、という部分じゃ。この部分について、公序に反し無効と判示された。
休んだ日を分母に入れて、分子には入れない…。それは確かに不公平に見えます。
ただし、この判決は産前産後休業と勤務時間の短縮についてのものでな。育児休業のすべてにそのまま及ぶわけではない。それでも、「規程にそう書いてあるから」という理由だけで引き下がる必要はない、ということは言えるじゃろう。
賞与の算定根拠の聞き方と、説明に納得できないときの相談先
ここからが実際の行動じゃ。聞く相手と聞き方さえ決まってしまえば、負い目があっても言えるものでな。
相談者さんも「気が引けて」とおっしゃっていました。そこが最後の壁になりそうです。
算定式が規程になかった人は、まず何を聞くか
①で見た賃金規程・賞与規程が、ここでも起点になる。算定式が書かれていなかった人は、自分では検算できんからのう。この場合は、次の2点を聞くところから始めるとよい。
- 賞与の算定対象期間は、いつからいつまでか
- 休業した日数の控除を、どう計算しているか
これは会社を疑う行為ではない。判断材料がないから確認する、というだけのことじゃ。
休んだ日数の扱いと、それ以外の評価要素を分けて聞く
聞き方にはコツがあってな。待遇への不満としてではなく、計算方法の確認として切り出すんじゃ。たとえばこう伝える。
🗣️
算定根拠の聞き方賞与の算定対象期間のうち、私が休業していたのは〇日でした。控除は日数の日割りで計算されていますか
日数と計算方法だけを聞いていて、金額への不満は一言も入っていないんですね。
ここで「総合的な評価です」と返ってくることがある。賞与に評価の要素があること自体は、おかしなことではない。じゃが、それだけでは休んだ日数がどう扱われたのかが分からんままでな。
それを言われたら、会話が終わってしまいそうです…。相談者さんの「休んでいた期間があるからね」と似ています。
🗣️
「総合的な評価です」と言われたときの聞き直し休んだ日数のぶんの控除とは別に、どの評価要素が下がったのかを教えていただけますか
「別に」という言い方で、日数の話と評価の話を分けているんですね。
分けて聞く理由があってな。育休を取ったこと自体を理由に評価を下げておるのなら、さっきの指針が挙げる不利益な算定に近づく。逆に、休んでいない期間の働きぶりに対する評価であれば、それは正当な要素じゃ。
評価そのものを否定するのではなくて、中身を分けて聞くんですね。それなら角も立ちにくそうです。
それともう1つ、算定対象期間に産前産後休業が含まれておる人には材料が増える。妊娠・出産等については別の指針があってな、賞与の算定で休んだ期間を考慮する場合に、同じ期間休業した疾病等と比べて不利に取り扱うことも、不利益な算定の例として示されておる。
病気で同じ日数休んだ人と比べる、という見方があるんですか。
「同じ日数を病気で休んだ場合と、扱いは同じですか」と聞ける。これは男女雇用機会均等法の側の指針で、産前産後休業などが対象じゃ。育休の分にそのまま当てはめる話ではないから、そこは分けて考えるとよい。
社内で解決しないときは労働局に相談できる
社内で説明を求めても納得できる回答が得られん場合、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に2つの仕組みがある。
1つは、都道府県労働局長による紛争解決の援助でな。助言・指導・勧告という形で間に入ってもらえる。もう1つは、両立支援調停会議による調停じゃ。第三者が調停案を作り、受諾を勧告することができる。
段階が2つあるんですね。いきなり大ごとにしなくていいのは、少し心強いです。
それに、援助を求めたことや調停を申請したことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをすることは禁止されておる。相談したこと自体で不利になる、という心配はせんでよい。
そこがいちばん怖いところなので、禁止されていると分かるのは大きいです。
ここで案内しておるのは「育休を理由とする不利益取扱い」の窓口じゃ。一方で、就業規則などで支給条件や算定基準が定まっておって支払義務がはっきりしておる賞与なら、条件を満たしておるのに支払われんという話は労働基準監督署が適する場合もある。迷うときは、まず雇用環境・均等部(室)で相談してみるとよい。
育休の影響を除いた概算年収で、相場と比べる
確認が済んだら、最後は年収の話に戻ろう。復帰後に時短で働いておる人は、先ほど紹介した「時短で年収ダウン」の記事で換算を済ませてから、ここに戻ってくるとよい。
薬剤師の賞与は、年収に占める割合が大きい
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査によると、薬剤師の年間賞与その他特別給与額は88万3,500円じゃ。男女を合わせた平均で、平均年齢40.1歳の集計でな。
年間で88万円…。改めて数字で見ると、大きいですね。
ただし読み方に注意が要る。これは1年間の合計額であって、1回あたりの支給額ではない。夏と冬の配分は職場ごとに違うから、自分の1回分は明細で確かめるとよい。
平均から自分の1回分を逆算するのは難しいんですね。
そういうことじゃ。いずれにしても賞与は年収の中で無視できん大きさで、1回の減額でも年収に響くのはそのためでな。
育休のあった年の年収は、そのまま相場と比べない
ここで多くの人がつまずくんじゃが、育休のあった年の年収は、休んでいた期間のぶん低く出る。この数字を平均年収と並べても「低い」としか分からん。
じゃから、比べるなら育休の影響を除いた概算年収を出してからじゃ。あくまで概算で構わん。手順はこうなる。
!育休の影響を除いた概算年収を出す
育休のあった年の年収を、そのまま使わない
復帰後がフルタイムなら、通常勤務時の月給×12に年間賞与の見込みを足す
賞与の見込みは、賞与規程の算定式か、育休の影響がない年の実績から見当をつける
復帰後が時短なら、先に時短の記事で時短率の割り戻しを済ませる
まだ育休中なら、休業前の月給を使う
概算した額が、同じ業態・経験年数・地域の相場より低ければ、育休だけでは説明がつかん差があるということじゃ。基本給か、手当か、賞与の水準か。どこに差があるのかを分けて確かめるとよい。
「育休のせいで下がった」で終わらせずに済むんですね。どこに差があるのかまで分かれば、次に確かめることも決まりそうです。
自分の概算額が相場と比べてどうなのかは、適正年収診断で確かめられる。年収の欄には、育休のあった年の額ではなく、いま出した概算額を入れるんじゃぞ。
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まとめ:休んだ期間の扱いは確かめられる。数字を見てから決めればいい
この記事のまとめ
- 1休んだ期間を考慮すること自体は認められるが、超えて扱うことは認められない
- 2まず賞与規程の算定方法を確認し、読み取れないときは前回の賞与額から概算する
- 3参考額との差が大きくなく、納得できるならそこで終わりにしてよい
- 4休んだ日数の扱いと、それ以外の評価要素は分けて聞いてよい
休んだのだから減って当然、と自分に言い聞かせて終わらせなくてよい。休んだ期間がどう扱われたかは、手元の明細と賞与規程で確かめられるんじゃ。
確かめたうえで納得できたならそれでよくて、説明がつかないなら聞いていい。そう思うと、明細を開くのが少し怖くなくなりますね。
そのとおりじゃ。数字が出てから動けばよい。順番さえ間違えなければ、負い目に押し切られることもないでな。
概算額まで出したら、相場と比べてみるのがよさそうですね。育休だけで説明がつく差なのかどうかが分かるだけでも、次に考えることが変わりそうです。
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