時短勤務で年収が下がったママ薬剤師へ。賃金や賞与の算定で減らしてよいのは、短くなった時間のぶんまでが原則です。減った額を「受け入れる分・申請すれば戻る分・根拠を聞いていい分」の3つに分け、フルタイム換算で相場と比べる方法まで解説します。
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読者からの相談調剤薬局で働く35歳の薬剤師です。1歳の子がいて、育休から復帰して1日6時間の時短勤務にしました。時間が減ったぶん給料が下がるのは覚悟していたのですが、先月の賞与明細を見たら思っていたより減っていて、フルタイムのときの半分近くでした。時短だからこんなものなのか、それとも一度聞いたほうがいいのか分かりません。でも時短にしてもらっている手前、薬局長には切り出せずにいます。
📌この記事のポイント
- 賃金や賞与の算定で減らしてよいのは、短くなった時間の比率ぶんまでが原則
- 下がった額は「受け入れる分・申請すれば戻る分・根拠を聞いていい分」に分けられる
- 残った年収をフルタイム換算して初めて、相場と比べられる
まず結論:賃金や賞与を減らしてよいのは「短くなった時間のぶん」まで
時短にすれば年収が下がる。これは避けられん。働く時間が減っておるのじゃから当然じゃ。じゃが、賃金や賞与の減らし方には原則がある。時間に応じて決まる給与と賞与を減らしてよいのは、短くなった時間の比率ぶんまで、じゃよ。
原則があるんですか。てっきり「時短にしたら会社の決めた額になる」ものだと思っていました…。
そう思われがちじゃな。育児・介護休業法の第23条の2は、育児のための所定労働時間の短縮措置を利用したことを理由にした不利益な取扱いを禁じておる。厚生労働省はその例のひとつに「減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと」を挙げておるんじゃ。
つまり、時間が減ったぶんを引くのは当たり前だけれど、そこを超えて引くのは別の話として扱われている、ということですか?
その理解でよい。じゃから「減りすぎではないか」という感覚は、確かめられる感覚なんじゃ。気のせいで片づけんでよい。
確かめられる、と言われると少し気が楽になりますね。「そういうものだから」で飲み込むしかないと思っていました。
そこでこの記事では、下がった額をひとかたまりで見るのをやめて、3つに分けていく。分けたうえで、戻せる分は戻し、残った額をフルタイムに換算して相場と比べる。そこまでやれば、今の年収が妥当かどうかを自分で判断できるようになるぞ。
下がった額は3つに分けられる
まず、減った額をひとかたまりで見るのをやめようかの。「時短にしたから減った」の一言でまとめてしまうと、手の打ちようがなくなるんじゃ。3つに分ければ、受け入れる分と動ける分がはっきりする。

まずは時短前と今の給与明細・賞与明細じゃ。仕分けるだけならこれで始められる。減り方に引っかかるところが出てきたら、そのときに就業規則や賃金規程の該当箇所を見にいけばよい。
①時短ぶん — 週の勤務時間が減った割合まで
1つ目は、純粋に時間が減ったぶんじゃ。週に働くと決められた時間——所定労働時間じゃな。それが時短前の何割になっておるか、その割合を「時短率」と呼ぶことにしよう。1日8時間から6時間になったなら0.75じゃな。
勤務日数を減らすタイプの時短の場合はどうなりますか?病院でも、時間ではなく日数を減らして復帰した先輩がいます。
考え方は同じじゃ。週40時間から週24時間になったなら0.6。週あたりで見ればよい。この分は受け入れる分になる。残業がなくなって残業代が消えるのも、ここに含めて考えるとすっきりするぞ。
残業代もですか。時短だと残業自体をしませんもんね…。そう考えると、思っていたより「当たり前に減る分」は大きいのかもしれません。
そこは押さえておいてほしい。年収の総額で見れば、時短率より大きく下がることは普通にある。残業代のように、時間に応じて無くなるものがあるからの。原則が効くのは、時間に応じて決まる給与と賞与の計算のほうじゃ。
年収そのものと、原則が当てはまる部分は分けて見るんですね。
②申請していないだけの分 — 動けば戻る
2つ目が、実は取り戻せる分じゃ。時短中の減収を補う手続きがいくつか用意されておってな。共通しておるのは、申請せんと動かんということじゃ。
そうじゃ。知らんまま1年過ぎてしまうことも珍しくない。わしが薬局におった頃は今の給付はまだ無かったが、社会保険の手続きは昔からある。それでも誰にも教わらんまま、届出の時期を逃した人を何人も見てきたぞ。中身は次の章でまとめて見ていこう。
③賞与や手当が時短率を超えて減っている分 — 根拠を聞いていい
3つ目が、賞与や手当が時短率を超えて削られておらんか、という部分じゃ。時短率が0.75なのに賞与が0.5になっておるなら、その差の0.25には説明が要る。
冒頭のお便りの相談者さんが「賞与がフルタイムのときの半分近く」とおっしゃっていましたけど、まさにここを確かめる話ですね。
うむ。確かめ方は後の章で具体的に見ていくとしよう。
申請すれば戻る3つの手続き
ここからは2つ目の「申請していないだけの分」じゃ。3つとも勤務先を経由して出す書類でな、最初の一歩は「勤務先に伝える」で共通しておる。
全体像を先に見せていただけますか。3つ並ぶと混乱しそうで…。
時短中の減収に関わる3つの手続き
| 手続き | 何が変わるか | 対象の子 | 出す先 |
|---|
| 育児時短就業給付金 | 原則として賃金の10%が支給される | 2歳未満 | 勤務先経由でハローワーク |
| 育児休業等終了時報酬月額変更届 | 社会保険料が早く下がる | 育休の終了時に3歳未満の子を養育している人 | 勤務先経由で年金事務所等 |
| 養育期間標準報酬月額特例 | 将来の年金額が下がらない | 3歳未満 | 勤務先経由で年金事務所等 |
育児時短就業給付金 — 支払われた賃金の10%
1つ目は2025年4月に始まった、雇用保険の給付じゃ。2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して働く、雇用保険の被保険者が対象での。支給額は時短就業中の各月に支払われた賃金額の、原則10%じゃ。
10%…!時短後の月給が24万円なら、月に2万4千円ということですか。年間にしたら結構な額になりますね。
要件を満たしておれば、目安としてはそのくらいじゃな。ただ、時短にすれば誰でも、という給付ではない。同じ子で育児休業給付を受けて、そこから続けて時短に入った場合か、時短を始める前の2年間に一定の被保険者期間がある場合が対象になる。
始めるまでの経緯で変わるんですね。育休から続けて時短にした人なら、そこは満たしていそうです。
そういう人が多いじゃろうな。それと、賃金と支給額の合計が時短前の賃金額を超えんように、支給率が調整される仕組みもある。金額の上限もあってな。支給限度額は484,121円、開始時賃金月額は上限496,200円・下限96,090円、支給額が2,562円以下なら支給されん。いずれも2026年8月時点の額で、毎年8月1日に改定されるぞ。
毎年変わるんですね。読むときは時点を確かめたほうがよさそうです。ほかに気をつけることはありますか?
3つある。まず対象年齢じゃ。給付の対象は2歳未満の子じゃが、時短制度そのものは3歳未満まで使える。つまり2歳の誕生日で、給付だけが先に切れるんじゃ。
1年ずれているんですか。時短を続けているのに給付だけ終わると、そこでまた手取りが落ちますね…。知らないと驚きそうです。
2つ目は、対象になる働き方の幅じゃ。1日6時間にする措置に限らん。勤務日数を減らして週の所定労働時間が短くなった場合も含まれる。短時間正社員やパートへの転換に伴う短縮も対象じゃ。
さっきの日数を減らすタイプでも対象になるんですね。それは心強いです。
じゃが3つ目が肝心でな。短縮後の週の所定労働時間が20時間を下回ると、雇用保険の被保険者ではなくなって、給付の対象から外れるんじゃ。子が小学校就学の始期に達するまでに週20時間以上へ戻す労働条件が、就業規則等の書面で確認できる場合は別じゃがな。
時間を削りすぎると、10%ごと失ってしまうということですか。もっと減らしたいと思ったときこそ、そこを確認しないと危ないですね。
そこが落とし穴じゃな。それと、10%はあくまで補填でな。減った分が全部埋まるわけではない。自分が対象になるかどうかは、勤務先かハローワークで確かめてくれ。
育児休業等終了時報酬月額変更届 — 社会保険料を早く下げる
2つ目は社会保険の話じゃ。給与が下がっても、社会保険料はしばらく前の水準のまま引かれ続ける。手取りが想像以上に減るのは、これが理由のひとつなんじゃ。
給料は下がったのに、引かれる額は前のまま…。それは効きますね。
この届出を出すと、復帰後3か月の報酬の平均で標準報酬月額を計算し直して、4か月目から反映される。通常の随時改定より条件がゆるくてな。1等級の差でも改定できて、支払基礎日数が原則17日以上の月が1か月あれば足りる。週の所定時間が短い短時間労働者は11日以上で見るなど、別の基準もある。固定的賃金が変わっておらんでも改定されるぞ。
条件がゆるいんですね。ということは、対象になる人はかなり多そうです。
そして大事なのは、届け出るかどうかを本人が決められるという点じゃ。会社が勝手に判断するものではない。
養育期間標準報酬月額特例 — 保険料を下げても年金は減らさない
ただし、今の届出には副作用がある。標準報酬月額を下げると、その期間に納める保険料が減る。ということは、将来受け取る年金額もその分だけ少なくなるんじゃ。
えっ、手取りが増えて喜んでいたら、将来が削られていた…ということですか。それは怖いです。
そこを打ち消すのが3つ目、養育期間標準報酬月額特例じゃ。3歳未満の子を養育しておる間、年金額の計算に使う標準報酬月額を、その子の養育を始めた月の前月の額——つまり下がる前の額とみなして計算してくれる。
つまり、保険料は下がったままで、年金の計算だけ前の水準で見てもらえるということですか?
そのとおりじゃ。ここは間違えやすいところでな。この特例で保険料が安くなるわけではない。安くなるのは前の届出の効果で、この特例が守るのは将来の年金額だけじゃ。じゃから、終了時改定で標準報酬月額が下がるのなら、この特例も対象になるか合わせて確かめるとよい。改定だけで終わらせると、目先の手取りと引き換えに将来の年金を削ることになりかねん。
改定を出したら、特例のほうも確認する。そう覚えておけばいいんですね。もう時短を始めてしまった人は、今からでも間に合うんでしょうか。
申出日の前月までの2年間まで遡れる。じゃから、今からでも間に合う可能性はあるぞ。3つとも、まずは勤務先の担当者に「育児時短就業給付金と、標準報酬月額の手続きをしたいのですが」と伝えるところからじゃ。
じゃがな、制度を使い切っても、それでも生活が回らんと感じることはある。その場合は、時短を続けるか雇用形態そのものを変えるかという、別の判断になる。
時短を続けるか、パートに切り替えるかで迷っている場合は、以下の記事で判断軸を解説しています。
あわせて読みたい育児中の薬剤師、本当に正社員からパートに転職すべき?|判断軸を徹底解説
正社員継続(時短)とパート切り替えを、収入・キャリア・両立負荷の3軸で比較する判断軸を解説
賞与が時短率を超えて減っていないか確かめる
ここで3つ目、時短率を超えて減っておる分に戻ろう。これは制度ではなく、自分の職場の計算の話じゃ。確かめる材料は、就業規則・賃金規程と、手元の明細になる。
規程を見るところから始めるんですね。少し身構えてしまいます…。
減額は「働かなかった時間ぶん」までが原則
身構えんでよい。見るところは決まっておる。厚生労働省の指針にはこう書かれておってな。所定労働時間の短縮措置で「現に短縮された時間の総和に相当する日数」を日割りで算定対象期間から控除することは、不利益な取扱いには該当しない、とある。
そこまでは、さきほどのお話どおりですね。では、超えた場合は…?
同じ指針に続きがある。「現に短縮された時間の総和に相当する日数を超えて働かなかったものとして取り扱うこと」は、「不利益な算定を行うこと」に該当すると書かれておるんじゃ。平成21年厚生労働省告示第509号じゃな。
働かなかった時間ぶんを引くのは問題ない、それを超えて引くのは別の話。さっきの結論が、そのまま書かれているんですね。
そういうことじゃ。ただし、時短以外の理由で差が出ることもあってな。賞与の算定期間に育休の期間が含まれておる場合や、賞与の計算式が勤務時間以外の要素を持っておる場合じゃ。評価や在籍期間などじゃな。
数字が合わないからといって、すぐに不当だと決めつけないほうがいいということですか。
そうじゃ。じゃから次にやることは、抗議ではなく確認になる。
就業規則のどこを見て、何を聞くか
見るのは、就業規則または賃金規程の賞与の算定に関する条項じゃ。支給対象期間、算定の基礎になるもの、欠勤や短時間勤務をどう扱うかが書かれておる。
突き合わせるのは2つじゃ。ひとつは自分の時短率、つまり週の所定労働時間が時短前の何割になっておるか。もうひとつは実際の賞与の減額率、時短前の賞与と比べて何割になっておるか。後者が前者より大きければ、その差の根拠を確認する余地がある。
数字が2つ並ぶだけなら、自分でもできそうです。でも…それを職場に聞くのが、いちばん難しい気がします。相談者さんも「時短にしてもらっている手前、切り出せない」とおっしゃっていましたし。
よい指摘じゃ。じゃから、待遇への不満ではなく計算方法の確認として切り出すとよい。たとえばこう伝えるんじゃ。
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職場での聞き方時短勤務の場合の賞与の計算方法を知っておきたいのですが、規程のどこを見ればよいですか
規程の場所を尋ねる形なんですね。それなら相手を責める言い方になりませんし、負い目があっても言えそうです。
実際、計算根拠を聞いてみたら単純な計算違いだった、ということもあってな。悪意ではなく、単に運用が追いついておらんだけのこともある。それでも納得できる説明が得られん場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談窓口があるぞ。
フルタイム換算して、相場と比べる
ここまでで3つに分かれた。最後は、残った額が相場から見てどうかじゃ。先に押さえておきたいことがある。時短の年収を、そのまま公開されておる平均年収と比べても意味がないんじゃ。
どうしてですか?…あ、統計に載っている平均年収は、フルタイムで働いている人の数字だからでしょうか。
よく気づいたの。比べれば必ず「低い」と出る。じゃがそれは時短にしたのじゃから当たり前で、何も分からん。
比べても落ち込むだけの比較だったんですね…。それは知らずにやってしまいそうです。
時短年収 ÷ 時短率 で換算額を出す
計算そのものは割り算ひとつじゃ。時短の年収を時短率で割る。それだけでフルタイム換算額が出る。
時短の年収が336万円で、1日8時間から6時間になっておる場合じゃな。時短率は0.75じゃから、336万円 ÷ 0.75 で448万円。これが「フルタイムで働いていたとしたら、いくらもらえる職場なのか」を表す数字になる。
336万円のままだと低く見えますけど、448万円と並べると印象がまったく違いますね。
じゃな。なお、賞与の削られ方によっては実額がこの式より下振れすることがある。その場合は、ひとつ前の章の確認に戻ってくれ。
この448万円は、そのまま「本来もらえるはずの年収」と考えていいんでしょうか。
そこは慎重にいこう。この式が割り戻しておるのは所定労働時間の分だけじゃ。時短前に残業代が付いておった人は、その分は換算額に乗ってこん。手当の支給条件が変わっておる場合も同じでな。相場と並べるための参考値と思ってくれ。
ぴったりの数字ではなく、比べるための目安なんですね。
換算額を相場と並べて、次に確かめることを決める
出した換算額を、同じ業態・同じ経験年数・同じ地域の相場と並べる。ちなみに薬剤師全体の平均年収は566万7,900円じゃ。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査の数字でな、これもフルタイムで働く一般労働者のものじゃから、換算額と同じ土俵で比べられる。
2通りじゃ。換算額が相場並みなら、下がった分の多くは時短によるものと考えてよい。そこは受け入れる部分と判断しやすい。
低いほうに出た場合は、どう受け止めればいいんでしょう。
時短だけでは説明がつかんかもしれん、と考える。時短にする前から職場の水準が低かったのかもしれんし、以前は残業代が大きかった、賞与の算定期間に育休が入っておる、という事情かもしれん。どれなのかは、給与体系と賞与の計算方法を確かめてから判断すればよい。
…確かめる先が変わるんですね。前者なら制度を使い切って乗り切る話ですけど、後者は職場そのものを見直すかどうかにつながりますもんね。
そこが切り分けられると、次に考えることが変わる。ひとつだけ気をつけてくれ。時短の年収をそのまま入れると低く出る。時短率で割り戻した換算額のほうを入れることじゃ。
業態・経験年数・地域と現在の年収を入れると、自分の条件での相場と比べられます。年収の欄には、時短の年収そのままではなく、先ほど出したフルタイム換算額を入れてください。転職を決めていなくても使えます。
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まとめ:分ければ、受け入れる分と動く分がはっきりする
この記事のまとめ
- 1賃金や賞与の算定で減らしてよいのは、短くなった時間の比率ぶんまでが原則
- 2給付金・保険料の改定・年金の特例は、申請しないと動かない
- 3賞与が時短率を超えて減っていたら、計算根拠を確認する余地がある
- 4フルタイム換算して相場と並べれば、時短だけで説明がつくかどうかが見える
減った額をひとかたまりで見ておると、ただ苦しいだけで手が出せん。3つに分ければ、受け入れる分と、今月動ける分と、聞いてよい分に整理できる。
ひとかたまりで見ていたから、ずっと苦しかったんですね…。分けるだけで、明日やることが決まるのが不思議です。
時短にしたこと自体を悔やむ必要はないんじゃ。確かめる順番を知っておるかどうか、それだけの差じゃよ。
相場と比べるときは、年収の欄に時短の年収そのままではなく、時短率で割り戻したフルタイム換算額を入れてください。
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