薬剤師が事務さんに仕事を頼めないとき|人間関係をこじらせない業務分担の伝え方
公開日:
調剤薬局で事務スタッフに仕事を頼みにくい、業務範囲をめぐって関係がこじれている薬剤師へ。厚生労働省の通知で確認できる業務の範囲と、事務スタッフ・管理薬剤師への伝え方、転職を考える判断基準を解説します。
登場キャラクター

薬剤師じいさん
薬剤師歴70年の大ベテラン。病院・薬局・ドラッグストアすべてを経験してきた生き字引。豊富な経験と公的データに基づいて、若手薬剤師の悩みにズバッと答えます。

みさ
新卒2年目の若手薬剤師。病院で働いているけど、年収やキャリアに不安を感じている。全国の悩める若手薬剤師を代表して、気になることをどんどん質問していきます!
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読者からの相談
調剤薬局で働く4年目の薬剤師です。事務さんは私より10年以上長く勤めている方で、忙しいときに「これお願いします」と頼むと「それは薬剤師さんの仕事ですよね」と返されることがあります。逆に事務さんが散剤を計っているのを見かけても、「前からこうしてるので」と言われそうで止められません。事務さんとの人間関係を考えると、毎朝気が重いです。
📌この記事のポイント
- 言いづらさの大きな要因は性格ではなく、担当の決めごとがないこと
- 法令に関わることは止めて管理薬剤師へ。担当が曖昧なら判断の主語を外に置く
- 非薬剤師に任せているのに手順が定まらない職場は、相性ではなく体制の問題
まず結論:事務さんへの言いづらさは、困りごとを分ければ減らせる

今日は、薬局で事務さんとの人間関係に悩んでおる相談者さんの話じゃ。「これお願いします」のひと言に、毎回ひと呼吸置いてしまうそうでな。

分かる気がします…。頼んだあとの空気が気になって、結局自分でやってしまうんですよね。それが続くと、業務そのものより人間関係のほうが消耗しそうです。

そこでな、先に結論を言うておこう。言いづらさを減らすのに必要なのは、丁寧さでも押しの強さでもない。困りごとを種類ごとに分けることじゃ。

散剤の計量のように法令に関わることと、取り揃えのように担当が決まっておらんだけのことは、打ち手がまるで違う。ひとまとめに抱えるから動けなくなるんじゃ。

たしかに…どちらも「言いにくいこと」として一緒にしていました。

担当が決まっておらんだけの話なら、判断の根拠を自分の外に置けばよい。「私はこう思う」ではなく「通知だとこうなっている」「手順書だとどうなってましたっけ」に変えるんじゃ。

自分の意見としてぶつけない、ということですね。

この記事では3つを順に見ていく。困りごとの分け方、それぞれの伝え方、それでも分担が決まらん職場をどう判断するか、じゃ。
薬剤師と事務は、責任・待遇・職能の向きがそろっていない

まずは、なぜあの一言が言いにくいのかを整理しよう。薬剤師と事務さんの関係はな、責任・待遇・職能の3つが、それぞれ別の向きになっておるんじゃ。

ひとつは責任の向きじゃ。調剤の最終的な責任は薬剤師にあるから、業務の指示は薬剤師の側から出ることになる。ところが職場内の年次は逆であることが多い。

あとから入った人が、先にいる人に指示を出す形になるんですね。それは…言いにくいと思います。

ふたつめは待遇じゃ。資格や責任範囲が違えば待遇も違う。同じ空間で同じ時間働いておると、その差は日常的に意識される。

そのずれが、お互いの認識の食い違いにつながることはある。ただな、相手が何を不満に感じておるかは本人に聞かんと分からん。決めつけんことじゃ。

制度の話なのに、毎日顔を合わせていると個人の話になってしまうんですね…。

みっつめは職能の差じゃ。服薬指導や薬学的な判断を伴う説明は薬剤師が担う。患者さんに薬のことを聞かれれば、最終的には薬剤師が出ていくことになる。

その3つが重なると、「これお願いします」が単なる業務連絡では済まなくなりそうです。

そこじゃ。誰がどこまでやるかが決まっておらん職場では、その一言が毎回小さな交渉になる。明文化された基準がないと、在籍年数や慣習のほうが優先されやすいんじゃ。

つまり、言い出せないのは性格の問題だけではなくて、決めごとがない場所で毎回ゼロから交渉させられているから、ということですか。

それが大きいのう。相談者さんの側に落ち度があるわけではない。
まず、困りごとを3つに分ける

ここで一度、困りごとを3つに分けよう。どれに当たるかで、やることがまるで違うからの。

どんな分け方でしょう?

ひとつめは、法令や患者さんの安全に関わることじゃ。散剤を事務さんが計っておる、というのがこれにあたる。これは言い方の工夫で扱う話ではない。

そこは「角が立たないように」ではないんですね。

ふたつめは、法令上は薬剤師以外もできるが、その薬局で誰の担当か決まっておらんことじゃ。取り揃えを断られた、というのはこちらじゃな。

同じ「頼めない」でも、中身がまったく違うんですね。

みっつめは、業務分担ではなく態度や相性そのものの問題じゃ。陰口や冷たい態度がつらいのなら、この記事の打ち手では届かん。狭い職場の構造の話になる。
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陰口や冷たい態度そのものがつらい場合は、狭い職場の構造から対処法を整理しています。

人格を否定される、あいさつを返してもらえん状態が続いておるなら、それも別の対処が要る。
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この記事で扱うのは、ひとつめとふたつめじゃ。ここから順に見ていこう。
あなたの感覚は合っている|ただし「できる」と「担当」は別

ここから通知の話をするんじゃが、その前にひとつ言うておきたいことがある。

たぶん相談者さんは、どこまで頼んでよいかをすでに分かっておる。散剤を計るのを事務さんに頼んではいかんことも、取り揃えなら頼めることもな。

言われてみれば…薬剤師なら知らないわけがないですよね。

そうじゃ。問題は知識ではない。分かっておるのに言えんのは、その根拠が自分の頭の中にしかないからじゃ。

根拠を外に置く、という最初のお話につながるんですね。

うむ。線引きそのものは、2019年に厚生労働省から出た通知に示されておる。「調剤業務のあり方について」という通知じゃ。

具体的にはどう書かれているんですか?

薬剤師以外が行っても差し支えないのは、3つの条件をすべて満たす場合だけとされとる。薬剤師の目が現実に届く限度の場所、品質等に影響がなく患者に危害が及ばないこと、判断を加える余地に乏しい機械的な作業であること、じゃ。

「機械的な作業」という言い方が厳しいですね。判断が入る時点でもう違う、ということですか。

そう読める。差し支えない例としては、処方箋に記載された医薬品の必要量を取り揃える行為と、一包化した薬剤の数量の確認が挙げられておる。数量の確認は、薬剤師の監査前のものじゃ。

逆に、はっきりだめだと書かれているものもあるんですか。

軟膏剤、水剤、散剤等を直接計量、混合する行為じゃな。薬剤師以外が行うと薬剤師法第19条に違反するとされておる。薬剤師が途中で確認しておっても同じじゃ。

後から確認していてもだめなんですね…。

それから、薬剤師以外が行う場合も「薬剤師の指示に基づき」行うものとされ、調剤の最終的な責任は薬剤師にあるとされておる。

ということは、冒頭のご相談にあった散剤の話は…

そうじゃ。事務さんが散剤を計っておるのを止められん、というあの話な。あれは「前からこうしてきた」ほうが通知に反しておるケースじゃ。相談者さんが神経質なのではない。

逆に「それは薬剤師さんの仕事ですよね」と返された件はどうなんでしょう。

ここは慎重にいこう。通知が言うておるのは「薬剤師以外が行っても差し支えない」ということであって、事務さんの担当業務だと決めたわけではないんじゃ。

「できる」と「その薬局で担当になっている」は別、ということですか。

そのとおりじゃ。じゃから取り揃えを断られたときは、相手が間違っておるという話にはならん。誰の担当か決まっておらんことのほうが問題なんじゃ。

散剤のほうは相談者さんの感覚が合っていて、取り揃えのほうは決めごとがないのが原因、と分かれるんですね。

ついでに言うておくと、この通知で説明できるのは業務の分担の話だけじゃ。態度が冷たい、待遇の差が空気に出る、といった部分には効かん。それでも、分担の話に限っては相談者さんの外に根拠がある。ここが使えるんじゃ。
事務さんへの伝え方|困りごとの種類で一手を変える

ここからが本題じゃ。さっき分けた3つに合わせて、最初の一手を変える。同じ「言いにくいこと」でも、やることは別なんじゃ。

丁寧に言えばいい、という話ではないんですね。
困りごとの種類と、最初の一手
| 困りごとの種類 | 最初の一手 |
|---|---|
| 散剤の計量など、法令に関わること | その場で作業を止めて、管理薬剤師に報告する |
| 取り揃えなど、担当が決まっていないこと | 「通知だと」「手順書だと」と主語を自分の外に置く |
| 分担そのものが決まらないこと | 管理薬剤師に、店舗の手順として決めてもらう |
A. 法令に関わることは、言い方より先に止めて報告する

ひとつめじゃ。散剤や軟膏を事務さんが計っておる。これは角が立たない言い方を探す場面ではない。

患者さんの安全に関わるからの。その場で作業を止めて、管理薬剤師に報告する。手順と研修を直すのは薬局の側の仕事で、二人で決着をつける話ではないんじゃ。

でも、告げ口みたいに思われないでしょうか…。

個人を責めるのではなく、事実だけ伝えればよい。「散剤の計量を事務さんがされていたので止めました。手順を確認させてください」で足りる。相手の落ち度の話にせんことじゃ。
B. 担当が決まっていないことは、主語を自分の外に置く

ふたつめじゃ。取り揃えのように、法令上は差し支えないが担当が決まっておらん場合な。ここで「それ、やめてもらえますか」と言うと、相談者さんと相手の話になってしまう。

自分のやり方を否定された、と受け取られそうです。

そこで「これ、通知だと薬剤師以外の方でも差し支えないことになってるんですよね」に変える。自分の意見ではなく、共通の根拠を示す形になるんじゃ。

「なんで急に」と言われたら、どうしましょう…。

「私が決めた話ではなくて、うちの手順だとどうなってましたっけ」と続ければよい。二人とも手順を見る側に回るから、向かい合う構図がなくなる。

質問の形なら、責めている感じもしないですね。

それも重い日は、口に出さんでもよい。「これは頼める」「これは担当が曖昧じゃ」と自分の中で整理しておくだけで、次の場面の迷いが減る。ただしこれは、担当が曖昧なときに限る話じゃぞ。

法令に関わることは、黙っていてはいけないということですね。
C. 分担そのものは、管理薬剤師に決めてもらう

みっつめじゃ。そもそも担当が決まっておらんのなら、毎回その場で交渉するより、決めてもらったほうが早い。

自分から言い出していいものなんでしょうか。

個人の不満としてではなく、業務の話として持っていけばよい。「取り揃えの担当が決まっておらず、忙しいたびに個人間の交渉になっています。誰が担当するのか、店舗の手順として決めていただけませんか」でよい。

「事務さんが協力してくれない」ではなく、「決まっていない」と伝えるんですね。

そこが肝じゃ。誰かの落ち度にすると角が立つが、決めごとの不在なら誰も責めずに済む。ついでに、頼む側の自分も一度見直しておくとよい。

自分も、というと?

本来は薬剤師がやるべきことまで回しておらんか、雑用のように頼んでおらんか、ということじゃ。頼む前に一度そこを通しておくと、頼んだときの通りやすさが変わる。
手順も指示系統も出てこない職場は、相性ではなく体制の問題

さて、ここからは、それでもうまくいかん場合の話じゃ。

AからCまで試したのに、ということですか。

そうじゃ。管理薬剤師に分担を決めてほしいと頼んでみた。それでも「そのへんは臨機応変で」としか返ってこん。手順書は見たことがない。そういう職場があるんじゃ。

頼んでも決めてもらえないんですね…。

そのとき起きておるのは、相談者さんと事務さんの相性の問題ではない。決める役割が果たされておらん状態じゃ。

「調剤業務のあり方について」の通知はな、薬剤師以外に取り揃えや数量確認などを行わせておる薬局に対して、その業務の手順書の整備と必要な研修を求めておる。

全部の業務の分担表を作れ、という話ではないんですね。

そこは分けて考えるとよい。じゃが、非薬剤師に任せておるのに手順も指示系統も定まっておらんのなら、それは薬局の側の宿題が残っておるということじゃ。消耗しておるのは相談者さんだけではない。

事務さんも、同じ曖昧さの中で判断を迫られているわけですね…。

人間関係がつらいから辞める、と考えると後ろめたさが残る。じゃが、ここで見ておるのはもう少し手前の話じゃ。決めるべき人が決めておらん職場から離れる、という判断じゃな。

それなら、逃げるという言葉は当てはまらないですね。

条件の合う職場がどれくらいあるかは、探してみんと分からん。数問の診断で自分に合う転職サイトを確かめるところからでよい。まずは見てみるだけでもよいぞ。
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次の職場で業務分担を確認する方法

次は、移るとしたときに同じことにならんための確認じゃ。

求人票を見れば分かるものなんでしょうか。

そこが難しいところでな。業務分担の運用は、求人票にはほとんど書かれておらん。じゃから確認先を分けておくんじゃ。

分けるというと…求人票で分かることと、そうでないこと、ですか。

そうじゃ。求人票で分かるのは、薬剤師と事務スタッフの人数構成、1日あたりの処方箋枚数、開局時間と店舗の規模あたりじゃな。

人数構成なら求人票でも見られますね。

面接で聞くのは、非薬剤師による取り揃えを実施しておるか、誰が指示を出して誰が最終確認をするか、手順書があるか、最後に見直したのはいつか、じゃ。

「最後に見直したのはいつか」を聞くのはいいですね。あるかないかだけだと、形だけの手順書でも「あります」になってしまいますもんね。

よい気づきじゃ。そして、自分では聞きにくいことは転職エージェントに裏取りを頼むとよい。事務スタッフの定着率、分担でもめたとき誰が調整するか、といったところじゃな。

たしかに、定着率は面接では聞きづらいです…。

見学ができるなら、薬剤師と事務さんがどう声を掛け合っておるかを見ておくとよい。規模や業態の名前では判断できん。見るのは運用の中身じゃ。

名前ではなく、中身を見る、ですね。
!次の職場で確認すること
- 求人票で見る:薬剤師と事務スタッフの人数構成
- 求人票で見る:1日あたりの処方箋枚数
- 求人票で見る:開局時間と店舗の規模
- 面接で聞く:非薬剤師による取り揃えを実施しているか
- 面接で聞く:誰が指示を出し、誰が最終確認をするか
- 面接で聞く:業務分担の手順書があるか、最後に見直したのはいつか
- エージェントに頼む:事務スタッフの定着率
- エージェントに頼む:分担でもめたとき誰が調整するか
- 見学で見る:薬剤師と事務スタッフがどう声を掛け合っているか
まとめ:困りごとを分ければ、あの一言は言いやすくなる
この記事のまとめ
- 1法令に関わることは止めて管理薬剤師へ。言い方の工夫で扱わない
- 2担当が決まっていないだけなら、主語を通知や手順に移して伝える
- 3分担そのものは本人同士で決めず、管理薬剤師に決めてもらう
- 4非薬剤師に任せているのに手順が定まらない職場は、体制の問題

事務さんとの関係で消耗しておるとき、多くの人は「自分の言い方が下手なのかもしれん」と考える。じゃが、言い方の前に、分けることと決めてもらうことじゃ。

決まっている職場なら、もう十分に言える…ということですね。

そうじゃ。頼んでも決まらん職場なら、変えるべきは言い方ではない。移ることも含めて考えてよい。どう探せばよいか分からんときは、転職サイトの選び方から見ておくと動きやすいぞ。

今日のお話、「自分が我慢すればいい」と思っている人にこそ届いてほしいです。分けるのは、相手を責めることじゃないんですね。
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