薬剤師のパート時給が下がったと感じたら、それは気のせいではありません。賃金構造基本統計調査(短時間労働者)では令和4年の2,903円から3年連続で下落し、最新は2,540円。5年推移と同じ時期の市場の動き、自分の時給を相場と照らす手順を解説します。
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読者からの相談調剤薬局でパート勤務をしている50代の薬剤師です。先日の契約更新で、時給が前より下がった金額を提示されました。理由をはっきり聞けないまま更新してしまい、職場の人にも聞きづらいままです。求人アプリを開いても、数年前に見ていたときより時給が低い気がします。パート薬剤師の時給相場は今いくらなのか、本当に下がっているのかを知りたいです。
📌この記事のポイント
- 短時間労働者の薬剤師の平均時給は2,540円。統計でも令和4年から3年連続で下がっている
- 最低賃金に対する倍率は約3.1倍から約2.4倍へ。賃金の下限との上乗せ幅が縮んでいる
- まず求人3件と比べて自分の位置を確認し、差の出方で相談するか動くかを決める
まず結論:パート薬剤師の時給が下がったのは気のせいではない
契約更新のたびに時給が下がる。求人アプリの数字が前より低く見える。相談者さんが感じておるその違和感はな、気のせいではないんじゃ。統計でも、薬剤師のパート時給は令和4年をピークに3年続けて下がっておる。
えっ、本当にそうなんですか…。こういうのって「自分の職場だけかも」と思って、誰にも確かめられないまま抱え込みがちですよね。
感じておるのは相談者さんだけではないぞ。インターネット上の相談でもな、「以前は時給2,500円ほどだった記憶があるが、今の求人は2,000円台前半から」という声が出ておる。高い時給が当たり前だった時期を知っておる人ほど、落差を強く感じることになるんじゃ。
同じことを感じている方が、ほかにもいらっしゃるんですね。相談者さんも50代ですから、まさにその時期をご存じの世代です。
うむ。それでも金額の話は職場では聞きにくいし、聞いたところで自分のところの事情しか分からん。じゃから、まずは全国の数字を見て、自分の感覚の答え合わせをするところから始めよう。
下がっているのが事実だとすると、ちょっと落ち込みますけど…。
落ち込む必要はないぞ。どれくらい下がったのか、自分の時給は今の相場のどこにあるのか。そこがはっきりすれば、次にどう動けばよいかも決まる。「もう薬剤師のパートに未来がない」という話とは違うんじゃ。
パート薬剤師の最新の平均時給は2,540円
まず、いちばん新しい数字からいこう。厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」——2026年に公表されたものじゃ——によると、薬剤師の「短時間労働者」の1時間当たりの所定内給与額は2,540円じゃった。この調査は2025年6月分の賃金を調べたものじゃ。
2,540円…。数字だけ聞くと高いように思えますけど、「短時間労働者」というのは、パートやアルバイトのことと考えていいんでしょうか。
そこは正確に押さえておきたいところじゃ。この統計はな、雇用の呼び名ではなく働く時間で区分しておる。同じ職場の一般労働者より1か月の所定労働時間が短い人が「短時間労働者」じゃ。じゃから「パート・アルバイトだけを集計した平均」ではないが、パートの時給を考えるときの全国的な目安としては使える数字じゃな。
呼び名ではなく、働く時間で分けているんですね。ではその2,540円は、どういう人たちの平均なんでしょうか。
同じ調査に「平均の姿」も出ておる。平均年齢は52.5歳、1日あたりの所定内実労働時間は5.8時間、1か月あたりの実労働日数は14.4日じゃ。
平均年齢が52.5歳……相談者さんと年齢層が近いですね。遠い誰かの平均ではなく、同じ世代の人たちの数字だと思うと、急に身近に感じます。
そういうことじゃ。ただし一つ断っておくと、この調査は従業員10人以上の事業所を対象にした平均でな。地域や職場ごとの幅は、この数字には表れておらん。そこは後でまた触れよう。
パート時給は令和4年から3年連続で下がっている
さて、本題の「下がったのかどうか」じゃ。同じ調査の同じ区分——短時間労働者の薬剤師——を5年分並べてみると、はっきり見えてくる。

短時間労働者として働く薬剤師の1時間当たり所定内給与額の推移(厚生労働省・賃金構造基本統計調査、男女計・従業員10人以上の事業所)
| 調査年 | 1時間当たり所定内給与額 |
|---|
| 令和3年 | 2,414円 |
| 令和4年 | 2,903円 |
| 令和5年 | 2,845円 |
| 令和6年 | 2,639円 |
| 令和7年 | 2,540円 |
令和4年の2,903円が山になっていて、そこからずっと右肩下がりですね…。令和7年は2,540円ですから、3年で363円も下がっているということですか。
率にすると約12.5%の下落じゃ。仮に時給2,900円で週20時間働いておった人が、同じ時間だけ今の平均で働くとどうなるか。1年を52週として計算すると、年で37万円ほど変わってくる。
37万円…。それは「気のせい」で済ませられる差じゃないですね。
じゃろう。ただな、フェアに補足しておくと、令和3年は2,414円で、今のほうがまだ高いんじゃ。「昔からずっと下がり続けておる」わけではない。それにこの調査は、毎年対象になる事業所や人が入れ替わる。単年の上下には、集計対象の構成の振れも混じっておる。
そこまで正直に言われると、逆に数字を信じていいのか迷ってしまいます…。
数字そのものは疑わんでええ。公表された値では令和4年から令和7年まで3年続けて低下しておる。そこは動かん事実じゃ。相談者さんの実感と統計の向きは一致しておる、というところまでは言えるということじゃな。
最低賃金との倍率は約3.1倍から約2.4倍に縮んでいる
金額そのものの動きは見たな。もうひとつ、比べる相手を変えると見えてくることがある。時給の下限——最低賃金と並べてみるんじゃ。
最低賃金と比べる、ですか。薬剤師の時給とはずいぶん水準が違いそうですけど…。
水準は違うが、動きの向きが逆でな。ここは調べた時点を揃えて見るのが大事じゃ。賃金構造基本統計調査は6月分の賃金を見ておるから、その6月に実際に適用されておった最低賃金と比べる。令和4年の調査時点では930円、令和7年の調査時点では1,055円じゃ。3年で125円、率にして13.4%上がっておる。
薬剤師のパート時給が12.5%下がっている間に、最低賃金は13.4%上がっている……方向が真逆じゃないですか。
薬剤師の短時間労働者の時給と、その調査時点(各年6月)に適用されていた最低賃金(全国加重平均)の比較。倍率は時給を最低賃金で割った概数
| 調査時点 | 薬剤師の時給 | 当時の最低賃金 | 倍率 |
|---|
| 令和4年6月 | 2,903円 | 930円 | 約3.1倍 |
| 令和7年6月 | 2,540円 | 1,055円 | 約2.4倍 |
倍率が約3.1倍から約2.4倍に…。片方が下がって、もう片方が上がったから、差がぐっと縮まったんですね。
ここで気をつけたいのは、これは「2,540円で買えるものが減った」という話ではないということじゃ。最低賃金はどの仕事にも共通する賃金の下限であって、世の中の平均時給ではないからの。この比較から言えるのは、賃金の下限に対する薬剤師の時給の上乗せ幅が、以前より小さくなった、それだけじゃ。
上乗せ幅、ですか。薬剤師の資格や責任に対して上乗せされていた分が、以前より薄く見えるようになった、ということですね。
そう受け取ってもらってええ。もちろん、時給2,540円という水準自体は、時給で働く仕事の中では高いほうでな。そこは今も変わらん。じゃが、下限との距離という一点で見れば、数年前とは違う景色になっておる。
時給が下がった時期に、薬剤師の市場で起きている2つのこと
次は「なぜ下がったのか」が気になるところじゃな。ここは先に正直に言っておく。統計から原因まで特定することはできん。分かるのは、同じ時期に市場で何が起きておるか、そこまでじゃ。
原因は分からない、とはっきり言われると少し戸惑いますけど……推測で断言されるよりは信用できますね。
そう受け取ってもらえるとありがたい。数字で確かめられることだけを2つ、並べておこう。時給の動きと結びつけて読むかどうかは、そのうえで判断してくれ。
薬局で働く薬剤師の数は増え続けている
ひとつ目は、働き手の数じゃ。厚生労働省の「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、届出薬剤師数は329,045人で、前回の令和4年から5,355人、1.7%増えておる。
そこが肝心でな。薬局で働く薬剤師は197,437人で、前回より6,702人、3.5%の増加じゃ。全体の伸びより、薬局で働く人の伸びのほうが大きい。
薬剤師が増えているだけでなく、薬局で働く人がとくに増えているんですね。求人を出す側から見れば、以前より人を見つけやすくなっている可能性はありそうです。
可能性としてはあるな。ただし、この統計が示すのは人数だけで、それが時給をいくら押し下げたかまでは分からん。それにこれも全国の話でな。地方では今も薬剤師が足りず、時給が高い地域はある。そういう地域差は、全国平均には表れんのじゃ。
薬局は値段を自分で決められない——2026年に賃上げの仕組みが入った
ふたつ目は、薬局という業態そのものの構造じゃ。薬局の収入は、調剤報酬や薬価という公定価格で決まっておる。一般の店のように、人件費が上がったから商品の値段を上げる、ということができんのじゃ。
言われてみればそうですね…。病院も同じ仕組みですけど、薬局も値札を自分で決められないんですよね。
わしが調剤薬局におった頃も、そこは変えようがなかったな。人件費が増えれば、その分は利益を削る形になる。厚生労働省の「第25回医療経済実態調査」で、保険薬局のうち法人の損益率を見てみよう。
保険薬局(法人)の損益率の推移(厚生労働省・第25回医療経済実態調査、平均値)。令和元年度・2年度は第23回、令和3年度・4年度は第24回の結果から引用されている
| 年度 | 保険薬局(法人)の損益率 |
|---|
| 令和元年度 | 6.6% |
| 令和2年度 | 6.4% |
| 令和3年度 | 5.7% |
| 令和4年度 | 5.4% |
| 令和5年度 | 5.1% |
| 令和6年度 | 4.9% |
令和元年度の6.6%から令和6年度の4.9%まで、5年続けて下がっていますね。これはかなり厳しい状況ということですか?
そう早合点してはいかん。誤解のないように言うとな、赤字ではない。黒字は保っておるし、調査の報告でも「概ね堅調」と評価されておる。経営難だから時給を下げておる、という単純な話ではないんじゃ。
黒字なのに、利益率だけがじわじわ下がっている……という状態なんですね。
うむ。そしてな、同じ調査には常勤の薬剤師の給与も出ておる。保険薬局(法人)の薬剤師の平均給料計は令和6年度で480万円、前年度からの伸びは0.3%じゃった。こちらは年度でそろえて見ると、同じ令和6年度に最低賃金の改定額は1,004円から1,055円へ、5.1%上がっておる。
0.3%…。ほとんど横ばいですね。ということは、時給が上がりにくいのはパートだけの問題じゃないんですか。
そこに気づけたのは大きいぞ。少なくとも令和6年度までは、法人が運営する薬局では正社員の給与も大きくは動いておらん。ただしな、ここから先は話が変わる可能性がある。
2026年6月からの調剤報酬改定で、調剤ベースアップ評価料というものが新設されての。薬局で働く薬剤師や事務職員の賃上げに使うことを条件に、薬局が算定できる点数じゃ。算定した分は職員の賃金改善に充てる決まりになっておる。
賃上げのための収入が、制度として用意されたということですね。それなら今後は少し変わるかもしれない…。
そういうことじゃ。じゃから、さきほどの0.3%という数字は令和6年度までの話であって、今この瞬間に昇給の余地がないという意味ではない。相談者さんの時給が上がらん理由も、この統計からは決められん。そこは職場に聞いてみんと分からんことじゃ。
自分の時給が相場のどこにあるかを確かめる
さて、ここからは自分の話に引き寄せていこう。ここまでの数字は全国の平均でな。大事なのは平均と比べて終わることではなく、自分が動ける範囲の中で今の時給がどのあたりかを知ることじゃ。
平均2,540円より低かったら、それだけで「損している」と考えていいんでしょうか?
単純にはそうならん。平均2,540円は、全国・全業態を合わせた数字じゃからな。実際の求人は、地域や職場、時間帯によって幅がある。都市部では薬剤師が足りておる地域も多くて、2,000円台前半から中盤が中心になることは珍しくない。逆に人が集まりにくい地域や時間帯なら、平均より高い条件が出る。
じゃあ、相談者さんが「求人アプリの時給が数年前より低い」と感じたのは…
見間違いではないんじゃ。相談者さんが今見ておる求人の水準こそが、今の相場そのものでな。数年前の記憶と比べておるから低く見える、という順序になっておる。
記憶のほうが古い相場だった、ということなんですね…。少し切ないですけど、納得しました。
そこが分かれば、やることは簡単じゃ。おおまかな感触をつかむだけなら、3つの手順で足りる。
- 全国平均2,540円と、自分の今の時給を比べる
- 自分が通える範囲・働きたい曜日と時間帯で、求人を3件だけ開いて時給を見る(おおまかな感触をつかむための簡易チェック)
- その3件と自分の時給の差を見る
求人を3件だけ、というのが意外でした。もっとたくさん見ないと相場は分からない気がしますけど…。
地域の相場を統計として割り出したいわけではないからのう。知りたいのは、自分が現実に応募できる求人がいくらか、それだけじゃ。3件も開けば、自分の時給が高いほうなのか低いほうなのか、おおまかな感触はつかめる。
求人と比べた差で、職場に相談するか動くかを決める
差が分かったところで、どう動くかの話に進もう。先に言っておくと、求人を見る目的は、すぐ転職するためではない。今の時給が地域の相場から外れておらんかを確かめるためじゃ。
確かめたうえで、動くかどうかを決めればいい、ということですね。
- 求人と大きな差がない → 今の時給は相場の範囲。無理に動かなくてよい
- 求人のほうが明らかに高い → その金額を根拠に職場へ相談するか、条件の良い求人へ移るかを検討する
パートでも、時給を上げてほしいと相談していいものなんでしょうか。契約更新のときしか変えられない気がしていました。
そこはな、自分の契約に期間の定めがあるかどうかで変わる。相談者さんのように期間を決めて更新していく契約なら、更新のときが見直しの機会になる。じゃが、期間の定めがない契約で働いておるパートもおるんじゃ。
パートは全部、期間が決まっているものだと思っていました…。
そう思われがちじゃが、厚生労働省の調査には「無期雇用パートタイム」という区分があってな。パートを雇っておる企業のうち、期間の定めのないパートを雇う企業のほうが多い。医療・福祉の分野ではとくにその傾向が強いんじゃ。
更新がない契約だと、時給を見直す機会はどこにあるんですか?
その場合は、昇給の仕組みがあればそこじゃ。会社全体の賃金改定に合わせて見直されることもある。求人票に「昇給あり」と書かれておるパートの募集も実際にあるからの。
雇用契約書か、労働条件通知書じゃ。契約期間の欄に日付が入っておれば期間の定めがある契約、「期間の定めなし」となっておれば無期の契約じゃな。同じ書類に昇給についての記載があることも多い。今日でも確かめられるところから始めるとよい。
さきほど開いた求人3件じゃ。「近隣の同じような働き方の求人がこの時給でした」と具体的な数字で話せると、感情の話にならずに済む。それでも動かんかったときに、はじめて職場を変えるという選択肢が出てくる。
順番が分かると気が楽です。移るとしたら、どんな選択肢がありますか?
求人ごとの時給差は、同じ地域・同じ業態でも数百円違うことが普通にある。働き方を変えずに時給を上げたいなら、主に3つじゃ。
- 同じ働き方のまま、時給の高い求人に移る
- 時給を最優先するなら、派遣という働き方を検討する
- 働く時間や日数を含めて、収入の組み立て方から見直す
派遣は時給が高いと聞きますけど、実際どのくらい違うんですか?
求人媒体で見ると、時給2,700〜3,000円程度の募集が中心でな。パートより高く設定されておることが多い働き方じゃ。ただしこれは求人媒体に載っておる金額の目安で、さきほどまでの公的統計とは別のものと考えてくれ。契約期間や更新の考え方もパートとは違うから、条件面は事前に確認が要る。
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3つ目の「収入の組み立て方から見直す」というのは、働く時間そのものを変えるということですか?
そうじゃ。時給だけでなく、働く時間や日数、月の手取りまで含めて設計し直す考え方じゃな。とくに扶養の範囲を意識して働いておる人は、時給が変われば働ける時間も変わってくる。
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どれを選ぶにしても、まずは今の求人がいくらなのかを知らないと決められないですね。
そこが出発点じゃ。相談するにせよ移るにせよ、材料は同じ——自分の条件に合う求人がいくらで出ておるか、じゃ。まずはそこを知るところから始めるとよい。
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まとめ:時給の違和感は事実。相場を知った今が動きどき
この記事のまとめ
- 1短時間労働者の薬剤師の平均時給は2,540円。令和4年から3年連続で下がっている
- 2同じ時点で比べると最低賃金に対する倍率は約3.1倍から約2.4倍へ縮んでいる
- 3統計から原因は特定できない。同じ時期に薬剤師数の増加と、値上げできない薬局の構造がある
- 4通える範囲の求人3件と比べ、差が大きければ職場へ相談するか移るかを検討する
時給が下がったという違和感はな、思い過ごしではなかった。じゃが、それが分かったことで、比べる相手が「数年前の記憶」から「今の求人」に変わる。ここが大きいんじゃ。
たしかに…。ずっと過去の相場と比べていたら、何をしても納得できないままでしたよね。
数年前の水準に今後戻るかどうかは、この統計だけでは分からん。じゃが、今の相場の中にも高いところと低いところがあることは確かじゃ。自分が通える範囲でどこが高いのかは、求人を見れば分かることじゃからな。
下がったという事実は変えられなくても、その中で一番いい条件を選ぶことはできる、ということですね。それなら今日からでも始められそうです。
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