薬剤師で奨学金返済がきつい人へ|負担を軽くする現実的な選択肢
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薬学部6年制の学費は私立で約1,200万円。薬剤師の年収で奨学金を返すと手取りはどうなるか、公的データで検証します。減額返還制度の活用法と年収を上げる現実的な方法もお伝えします。
登場キャラクター

薬剤師じいさん
薬剤師歴70年の大ベテラン。病院・薬局・ドラッグストアすべてを経験してきた生き字引。豊富な経験と公的データに基づいて、若手薬剤師の悩みにズバッと答えます。

みさ
新卒2年目の若手薬剤師。病院で働いているけど、年収やキャリアに不安を感じている。全国の悩める若手薬剤師を代表して、気になることをどんどん質問していきます!
💬
読者からの質問
薬学部を卒業して調剤薬局で働く3年目の薬剤師です。奨学金を月4万円返済していますが、手取り25万円から家賃と返済を引くと生活に余裕がありません。6年も大学に通って薬剤師になったのに、奨学金の返済がこんなにきついとは思いませんでした。
📌この記事のポイント
- 薬剤師の奨学金返済がきついのは、薬学部6年制の学費(私立で約1,200万円)が他学部より圧倒的に高く、借入額が大きくなりやすいことが根本原因
- 薬剤師の年収は決して低くないが、20代〜30代前半は昇給が緩やかで「返済が重い時期」が長く続く
- 返済制度だけでは限界があり、現実的には「年収を上げる」のが唯一の打ち手。転職・副業・奨学金支援制度を活用しよう
奨学金返済がきついのは「甘え」ではなく構造の問題

毎月の奨学金の引き落としを見て、ため息が出る気持ちはよくわかるぞ。「薬剤師は高収入」と言われる分、返済のきつさを周りに理解してもらいにくいのも厄介なところじゃ。

私も学生時代、先輩から「薬剤師になれば奨学金はすぐ返せるよ」と言われたことがあるんですが、実際に働き始めると全然そんなことなくて驚きました…。

その感覚は正しいぞ。奨学金返済がきつい原因は、金銭感覚の問題ではなく、3つの構造が重なっているんじゃ。1つ目は、薬学部6年制の学費が高すぎること。私立で約1,200万円と、他学部の2〜3倍じゃ。

1,200万円…。4年制の理系学部だと550万円くらいですよね。倍以上の差があるんですね。

2つ目は、20代〜30代前半の昇給が緩やかなこと。返済が重い時期に年収が伸びにくい。そして3つ目は、借入額が大きい分、返済期間が15〜20年と長いことじゃ。

つまり、学費が高い、昇給が遅い、返済が長い。この3つが重なるから「薬剤師なのに余裕がない」状態になるんですね。自分だけがきついのかと思っていましたが、構造的な問題だと知ると少し安心します。

そうじゃ。では、具体的な数字で確認していこう。
薬学部の学費と奨学金返済額のリアル

「きつい」の正体を知るために、まずは学費と奨学金の数字を具体的に確認していこう。漠然とした不安は、数字で見ると整理しやすくなるぞ。
私立薬学部6年間の学費は約1,000〜1,400万円

文部科学省の調査によると、私立薬学部の初年度納付金は約215万円。6年間の合計では、大学によって差はあるが約1,000〜1,400万円。平均すると約1,200万円前後じゃ。

1,200万円…。4年制の学部と比べると、やっぱり圧倒的に高いんでしょうか?

私立文系4年間で約400万円、理系4年間で約550万円じゃ。薬学部は年数が1.5倍なだけでなく、年間の学費自体も高い。この学費差がそのまま、奨学金の借入額の大きさに直結しておるんじゃ。

文系の3倍近い学費…。そう考えると、奨学金の額が大きくなるのは当然ですね。
奨学金の借入額と月々の返済シミュレーション

では、実際にどれくらい借りている人が多いのか。厚生労働省の「薬剤師の需給動向把握事業」の調査によると、薬学部5・6年生で奨学金を利用している学生は全体の約35%。借入総額の平均は約650万円じゃ。

学費が1,200万円でも、全額借りるわけではないんですね。親の援助や貯蓄でまかなえる分は借りない人が多いということですか?

そうじゃ。ただし、1,000万円以上借りている学生も一定数おる。親の支援が少ないケースや、生活費まで奨学金でまかなうケースでは借入額がかなり大きくなる。平均650万円を目安に、自分の状況に合わせて考えるとよい。

平均650万円でも、毎月の返済はけっこうな額になりそうですね…。

日本学生支援機構の返還例をもとに、具体的な返済パターンを見てみよう。たとえば第一種(無利子)で私立自宅外の場合、月額64,000円×72か月で貸与総額は約461万円。月々の返済は約19,200円で、返済期間は20年じゃ。
薬学部6年制の奨学金返済パターン(JASSO返還例より)
| 借入パターン | 月額貸与額 | 貸与総額 | 月返済額の目安 | 返済年数 |
|---|---|---|---|---|
| 第一種(無利子)私立自宅外 | 64,000円 | 約461万円 | 約19,200円 | 20年 |
| 第二種(有利子)月8万円 | 80,000円 | 576万円 | 約25,000円 | 20年 |
| 第二種(有利子)月12万円 | 120,000円 | 864万円 | 約38,000円 | 20年 |

第一種だけでも月2万円近く。でも、学費が1,200万円だと第一種だけでは足りないですよね?

その通り。第二種(有利子)を併用するケースが多い。第一種と第二種を併用すると、月々の返済が4〜5万円になることも珍しくない。6年間の貸与期間(72か月)が返済総額を押し上げている構造じゃ。

月4〜5万円を20年間…。冒頭の質問者の方と同じ状況の人は、かなり多いんじゃないでしょうか。
薬剤師の年収で奨学金を返すとどうなるか

学費と返済額がわかったところで、次は薬剤師の年収と突き合わせてみよう。「年収が高いはずなのに、なぜきついのか」を数字で確認するぞ。
20代〜30代薬剤師の年収と手取りの実態

厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の年齢別平均年収はこうなっておる。25〜29歳で約501万円、30〜34歳で約564万円、35〜39歳で約614万円じゃ。

全職種の平均が約460万円だと考えると、薬剤師の年収は高い方ですよね?

確かに高い方じゃ。しかし、月収に換算すると25〜29歳で額面約33万円、手取りは約26万円。30〜34歳でも手取りは約29万円程度じゃ。年収の数字だけ見ると悪くないが、ここから奨学金を返すと「体感の豊かさ」は大きく変わってくる。

年収500万円と聞くと余裕がありそうに思えるのに、手取りにすると26万円…。そこから返済が引かれると、一気に現実味が変わりますね。
手取りから家賃と返済を引くとどうなるか

25〜29歳の薬剤師の手取り約26万円で、実際にシミュレーションしてみよう。家賃7万円、奨学金返済4万円を引くと、残りは15万円じゃ。

15万円で食費、光熱費、通信費、交際費、貯金…。生活はできるけど、余裕はまったくないですね。

ここに車のローンが加わったり、結婚や出産でライフステージが変わったりすると、さらに厳しくなる。わしの教え子にも、同じ状況で悩んでいた薬剤師が何人もおった。奨学金の返済は毎月確実に引かれるのに、昇給は年に数千円。「いつ楽になるのか」が見えないことが、精神的にいちばんきついんじゃ。

年収自体は他の職種より高いのに返済がきつく感じるのは、6年制という初期投資が大きすぎて、手取りの「体感」が低くなっているからなんですね…。

その通りじゃ。ただ、ここで大事なのは「自分の年収が同じ条件の薬剤師と比べてどうか」を把握することじゃ。相場より低い場合は、年収を上げる余地があるかもしれん。まずは確認してみるとよいぞ。
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返済制度だけでは解決しない

ここからは対策の話じゃ。まず返済制度の面でできることを確認しておこう。JASSOには減額返還制度というものがあって、月々の返済額を1/2から最大1/4まで減額できる。

返済額を減らせるんですか? それはありがたいですね。

ただし、条件がある。給与所得者の場合、年間収入400万円以下でないと使えん。薬剤師だと25歳前後で年収400万円を超えるケースが多いから、大半の薬剤師には適用されないんじゃ。新卒1〜2年目や、産休・育休で収入が減った時期なら使える可能性はあるが、限定的じゃ。

年収400万円以下…。薬剤師だと使える期間はかなり短そうですね。他に返済額を減らす方法はあるんですか?

繰上返還で有利子分(第二種)の利息を節約することはできるが、これは余裕がある人向けの話で、「きつい」と感じている段階ではそもそも繰り上げる余裕がない。つまり、返済制度の面でできることには限界があるんじゃ。

制度では根本的に解決できないとすると、結局どうすればいいんでしょう…?

結論はシンプルじゃ。返済額は簡単に減らせない以上、収入を増やすしかない。 次のセクションで、具体的な方法を見ていこう。
現実的には「年収を上げる」しかない

返済制度だけでは限界がある以上、奨学金返済を楽にするには年収を上げるのが現実的な打ち手じゃ。方法は大きく3つある。
転職・業態変更で年収を上げる

まず、最もインパクトが大きいのは転職や業態変更じゃ。薬剤師の年収は業態によって差がある。ドラッグストアは調剤薬局より年収が高い傾向があり、転職で年収が50万〜100万円上がるケースもある。月にすると4〜8万円の差じゃ。

月4〜8万円の差は大きいですね。奨学金の返済額がまるまる吸収できるくらいの金額じゃないですか。

ただし、年収だけで転職先を決めるのはおすすめしない。ドラッグストアでは品出しやレジなど調剤以外の業務もあるし、業態ごとにトレードオフがある。まずは現職で見直せるポイントも確認してみることじゃ。住宅手当が出ていない、薬剤師手当が少ない、サービス残業が常態化している場合は、転職で実質的な手取りが上がるケースもある。

「年収の額面」だけじゃなくて、手当や残業代も含めたトータルで考えるべきなんですね。

調剤薬局の昇給が少ない構造的な理由については、別の記事で詳しく解説しておる。奨学金の返済がきついのに昇給もしないと感じている人は、あわせて読んでみるとよいぞ。
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休日の派遣で収入を上乗せする

すぐに転職するのは難しいという場合は、今の職場を続けながら休日に派遣薬剤師として単発で働く方法もある。薬剤師は派遣の時給が高めなので、月に数回入るだけでも奨学金の返済分をかなりまかなえるぞ。

転職しなくても始められるのはハードルが低いですね。ただ、職場が副業を許可しているかは確認が必要ですよね?

その通り。就業規則で副業が禁止されている場合もあるから、事前に確認しておくことじゃ。副業OKなら、転職を考える前にまず試してみる価値はあるぞ。
奨学金返済支援制度のある職場を探す

転職を検討するなら、もう1つ知っておきたいのが奨学金返済支援制度じゃ。一部の薬局チェーンや病院では、薬剤師の奨学金返済を支援する制度を設けておる。

奨学金の肩代わり制度ってことですか? 具体的にはどんな内容なんでしょう?

たとえば医療法人藤井会では、総額360万円の一括支給コースと、月額5万円を最長6年間支給するコースの2種類がある。いずれも5年間の勤務で返済が免除される仕組みじゃ。他にも、奨学金返済手当として月1〜3万円を支給する薬局チェーンもある。

360万円はかなり大きいですね…! でも、5年間は辞められないってことですよね?

そこが注意点じゃ。こうした制度はほとんどが貸与型で、一定年数の勤務で返済免除になる代わりに、途中で退職すると残額の返還義務が生じる。藤井会の例では2年以内の退職で全額返金じゃ。奨学金の返済が楽になる一方で、数年間はその職場に縛られることになる。

返済が楽になるメリットと、拘束されるデメリットがあるんですね。どうやって見極めればいいんでしょう?

職場の雰囲気や業務内容に納得したうえで制度を使うなら、返済負担を大きく減らせるよい選択肢じゃ。ただし、制度だけに惹かれて入社すると、合わなかったときに身動きが取れなくなる。転職エージェントに相談する際は「奨学金返済支援制度のある求人を探している」と伝えると、制度の有無だけでなく職場の実態も含めて提案してもらえるぞ。

なるほど、エージェントに条件として伝えればいいんですね。年収アップと返済支援、両方を軸に比較できそうです。
比較ガイド
薬剤師転職サイトの選び方・使い方
登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説
まとめ:返済を楽にするために、まず年収を見直そう
この記事の要点
- 1薬剤師の奨学金返済がきついのは、薬学部6年制の学費(私立で約1,200万円)が他学部より圧倒的に高く、借入額が大きくなることが根本原因
- 2薬剤師の年収は決して低くないが、20代〜30代前半は昇給が緩やかで、返済が重い時期が長く続く構造になっている
- 3返済制度(減額返還等)だけでは限界があり、現実的には「年収を上げる」のが唯一の打ち手
- 4転職エージェントに「奨学金返済支援制度のある求人」「年収アップできる求人」と伝えて相談するのが具体的な第一歩

ここまで見てきたように、奨学金返済がきつく感じるのは、あなたの甘えでも金銭感覚の問題でもない。薬学部6年制の学費が高すぎる構造と、若手のうちは昇給が緩やかな業界特性が重なった結果じゃ。

構造の問題だとわかると、自分を責めなくていいんだって思えますね。でも、制度では限界があるとなると、やっぱり自分から動くしかないんですね。

そうじゃ。具体的に動くなら、転職エージェントに「奨学金返済支援制度のある求人を探している」「年収を上げたい」と伝えてみることじゃ。自分一人で求人票を見比べるより、条件に合った職場を効率よく見つけられるぞ。

まずはエージェントに相談してみるのが第一歩なんですね。転職サイトの選び方も知っておきたいです。
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