時短勤務を言い出せない・嫌がられると悩む薬剤師へ。3歳未満の子を育て対象要件を満たす労働者について、短時間勤務は会社の厚意ではなく法律上の措置義務です。時短を取れない理由を3つに分けて確かめる方法と、角を立てない伝え方、嫌がられたときの対処まで解説します。
💬
読者からの相談調剤薬局で働く29歳の薬剤師です。1歳の子どもがいて、育休から復帰するにあたって時短勤務にしたいのですが、店長に相談したら「うちは前例がないからなあ」と渋い顔をされました。夕方はいちばん処方箋が集中する時間帯で、私が先に帰ったら残るスタッフに全部かぶさると思うと、それ以上強く言えませんでした。時短勤務って、職場にお願いして許してもらうものなのでしょうか。
📌この記事のポイント
- 3歳未満で対象要件を満たせば、時短勤務は会社の厚意ではなく法律上の義務
- 時短を取れない理由は3つに分けて確かめられる(子の年齢・労使協定・会社が選んだ措置)
- 申し出ても動かない職場は人員配置と文化の問題。時短が当たり前に取れる職場は実在する
まず結論:時短勤務は「お願い」ではなく、法律が決めた仕組み
まず、いちばん大事な事実から始めようかの。3歳に満たない子を育てながら働く人のために、1日の所定労働時間を原則6時間に短縮する制度——短時間勤務制度——を設けることは、育児・介護休業法が事業主に課した義務なんじゃ。労使協定で対象外とされる人はおるが、それも定められた範囲に限られておる。
義務、なんですか…。冒頭の相談者さんは「前例がないから」と渋られていましたけど、それだと話が変わってきますね。
そこが出発点じゃ。就業規則に書かれておらんでも、職場に使った人がおらんでも、この義務は消えん。「前例がないから」は、制度を設けんでよい理由にはならんのじゃよ。
でも、義務だと分かっていても、夕方のいちばん忙しい時間に自分だけ帰る心苦しさは残ると思います…。「言い出せない」気持ちのほうが大きい方も多いんじゃないでしょうか。
その気持ちはようわかる。じゃからこの記事では、「言い出せるか」で悩む前に、確かめられることから始める。実はな、「時短が取れない」と感じておる状態は、理由で3つに分けられる。自分がどこにおるかが分かれば、次にやることも決まるんじゃ。理由の見分け方、角を立てない伝え方、嫌がられたときの受け止め方、それでも動かん職場をどう見極めるか。この順で見ていくぞ。
時短を取れない理由は3つに分けられる

「時短が取れない」とひとことで言っても、中身は3つに分かれる。子どもの年齢と、会社側の決まりごと。この2つで、自分がどれに当たるかを確かめられるんじゃ。
気持ちの問題だと思っていたものを、先に事実で分けるんですね。自分がどれに当たるのか、順番に確かめたいです。
①子が3歳未満 — 就業規則になくても、会社は時短制度を用意する義務がある
子どもが3歳未満なら、原則としてここに当たる。短時間勤務制度は、事業主が「講じなければならない」措置として法律に定められておる。制度が就業規則に見当たらんのは「うちには時短がない」ではなくて、「あるべき制度がまだ整備されておらん」状態なんじゃ。
冒頭の相談者さんは1歳のお子さんですから、まさにここですね。「前例がないから」は、義務があるかどうかとは関係がない…。
そういうことじゃ。それにな、「うちだけ特別なことを頼んでおるのでは」という負い目も要らんぞ。厚生労働省の令和6年度雇用均等基本調査では、育児のための短時間勤務制度がある事業所は70.0%。制度があるほうが、すでに多数派なんじゃ。
7割…!私の病院にも時短で働いている先輩は普通にいますけど、世の中全体でも当たり前になっているんですね。
ひとつだけ正確に押さえておこう。もともと1日の所定労働時間が6時間以下の人は、この措置の対象外じゃ。すでに6時間以下で働いておる場合は、この①ではなく、勤務条件の相談として扱われる。
②「あなたは時短の対象外」と言われた — 労使協定で外せる範囲は狭い
次は、「あなたは対象外です」と言われるケースじゃ。ここで確かめたいのが、労使協定での。会社は労使協定を結ぶことで、一部の労働者を短時間勤務制度の対象から外すことができる。じゃが、外せるのは次の3つに限られておる。①継続雇用1年未満の人、②週の所定労働日数が2日以下の人、③業務の性質や実施体制に照らして短時間勤務が難しいと認められる業務に就く人じゃ。
①と②は、勤め方が条件になっているんですね。薬剤師で問題になりやすいのは、③の「業務が難しい」でしょうか?
そうなりやすいの。じゃが、ここが大事なところでな。③の「業務が難しいから」を理由に除外する場合に限って、会社には代わりの措置を用意する義務がある。育児休業に準ずる措置、フレックスタイム、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ(時差出勤)、保育施設の設置運営等、テレワーク等——このいずれかじゃ。
「対象外」と言われても、③が理由なら何かしらの措置は用意されるんですね。逆に、①や②で外れている場合は…?
そこは分けて考えんといかん。①②を理由に対象外となる場合、会社に代わりの措置を用意する義務まではない。じゃから、まず自分がどの理由で対象外とされておるのかを確かめるのが先じゃ。理由によって、その次にできることが変わるからの。
同じ「対象外」でも中身が違うんですね…。自分がどれに当たるかは、どう確かめればいいですか?
「労使協定で除外の定めがあるか、確認したいです」と聞いてかまわん。権利を主張して戦う話ではなく、自分がどの決まりの中におるかを確認するだけの話じゃからな。
③子が3歳以上〜小学校就学前 — 会社が用意した働き方の選択肢から1つ選べる
子どもが3歳を過ぎておる場合は、確かめる対象が変わる。2025年10月から、3歳以上で小学校就学前の子を育てる労働者向けに、「柔軟な働き方を実現するための措置」を講じることが事業主に義務づけられておるんじゃ。
「時短は3歳まで」という話は病院の先輩からも聞いたことがあります。その先の仕組みができているんですね。どんな措置なんですか?
始業時刻等の変更、テレワーク等、保育施設の設置運営等、養育両立支援休暇、短時間勤務制度。この5つの選択肢から、会社が2つ以上を選んで用意する仕組みじゃ。そして労働者は、会社が用意した措置の中から1つを選んで利用できる。どの措置を選んだかは、対象となる労働者に個別に知らされることになっておる。
会社が2つ以上用意して、その中から自分で1つ選ぶんですね。まだ聞いていなければ、「うちはどの措置を選んでいますか」と確認するのが次の一歩ですか。
そうじゃ。ただし、こちらの措置にも労使協定による対象外の定めがある。継続雇用1年未満の人と、週の所定労働日数が2日以下の人じゃ。②と同じ考え方での、まず自分が対象になるかを確かめるところから始まる。
そのとおりじゃ。ただ、この仕組みは始まってからまだ日が浅い。会社側の運用が追いついておらん職場もある。「取れない」と感じる背景に、そういう過渡期の事情があることも少なくないんじゃ。じゃから、責めるのではなく確認から入るのが現実的じゃよ。
言い出せないときは、交渉ではなく「手続きの確認」として伝える
自分がどの理由に当たるか分かったら、次は伝え方じゃ。ここで発想を変えてほしい。時短の申し出は「交渉」ではない。①に当たるなら、制度を設けるかどうかは会社の裁量ではなく、もう法律が決めておる。頼み込む必要も、許可を乞う必要もないんじゃ。
頭では分かっても、いざ言うとなると身構えてしまいそうです…。何と言えばいいんでしょうか。
最初のひとことは決まっている — 「手続きを教えてください」
一言で足りるぞ。「育児・介護休業法の短時間勤務制度を使いたいので、手続きと申出期限を教えてください」——これじゃ。
「時短にできますか?」と可否を聞くのではなくて、手続きを聞くんですね。
そこがポイントじゃ。可否を尋ねると、相手に決める権限があるように聞こえてしまう。手続きを尋ねる形にすれば、使うことを前提にした確認になる。角も立たんぞ。
たしかに、「できますか」と聞いて「うーん」と渋られたら、そこで止まってしまいますもんね。口頭で言うのが怖い場合は、メールでもいいんでしょうか。
むしろメールでよい。文面を落ち着いて整えられるし、いつ・誰に伝えたかの記録にもなる。この記録はな、後の章で効いてくるぞ。
メールを1通送れば、それで申し出は完了ということになりますか?
そこは分けて考えるんじゃ。メールでするのは手続きの確認であって、正式な申出とは限らん。会社によっては所定の申出書や申出期限——たとえば開始予定日の1か月前まで——が定められておることがある。じゃから最初のメールで、「必要な書類と申出期限も教えてください」まで聞いておくとよいぞ。
言う相手は、目の前の上司だけではない
もうひとつ、伝える相手を見直すのも有効じゃ。チェーン薬局やドラッグストア、病院には、目の前の上司のほかに、本部の人事やエリアマネージャーというルートがある。時短の手続きは、そもそも店舗ではなく本部が扱う事務であることが多いんじゃよ。
病院でも、勤務形態の手続きは薬剤部ではなく人事課ですもんね。店長さんの判断を待つ話ではなかったのか…。
現場におると、制度の話が店舗で止まったまま本部まで届いておらん、ということは起こる。渋い顔は、悪意ではなく、制度を知らんことから来とる場合もあるんじゃ。「前例がない」と言われても、それだけで断られたと判断せず、本部や人事にも確認してみるとよいぞ。
「断られた」と思っていたものが、実は「担当している人に届いていなかった」だけかもしれないんですね。
そういうことじゃ。それとな、申し出が通る見通しが立つと、次に気になるのは「時短にしたら収入がどうなるか」じゃろう。そちらは別の記事で詳しく扱っておるぞ。
あわせて読みたいママ薬剤師が時短で年収ダウン|下がり方が妥当か確かめる3つの物差し
時短中の収入の減り方には原則があります。下がった額を「受け入れる分・申請すれば戻る分・根拠を聞いていい分」に分けて確かめる方法を解説しています
時短を嫌がられたときの受け止め方
手続きとして正しく申し出ても、渋い顔をされたり、周りの目が冷たかったりすることはある。そのときにどう受け止めるかを、先に用意しておこう。結論から言うと、嫌がられることは我慢する対象ではない。記録して、相談する対象じゃ。
我慢する対象ではない…。でも実際には、「時短にしてもらっている立場だから」と嫌味を飲み込んでしまう方が多い気がします。SNSでも「時短で肩身が狭い」「申し訳ないと思い続けるのに疲れた」という声をよく見かけますし…。
「迷惑」「ずるい」と言われても、我慢しなくていい
その「肩身の狭さ」に対して、法律は答えを用意しておる。短時間勤務制度の申し出や利用を理由に、解雇その他の不利益な取扱いをすることは禁止されておるんじゃ(育児・介護休業法23条の2)。厚生労働省の指針では、減給や不利益な配置の変更が、その例として挙げられておる。
減給が禁止ということは…時短にして給与が下がること自体も、いけないことになるんですか?
そこは違うぞ。時短で実際に働かなかった時間の分だけ賃金が減ること自体は、不利益取扱いとは扱われん。問題になるのは、時短を使ったことを理由に、それを超えて減給したり、不利益な配置の変更をしたりする場合じゃ。
働いていない時間の分が減るのは当然で、それを超えた部分が問題なんですね。申し出た後のことまで、法律が決めているんだ…。
それだけではないぞ。上司や同僚が制度の利用を妨げたり、「時短の人はずるい」といった言動で働きにくくしたりすることについても、事業主には防止のための措置——相談体制の整備など——を講じる義務がある(同法25条)。
つまり、制度を使う人が肩身の狭い思いをしない環境を作るのは、本人の気遣いではなくて会社の仕事…。「申し訳ない」と謝り続ける必要は、そもそもないんですね。
記録の残し方 — 感情ではなく事実を書く
そのうえで、嫌がる言動があったときにやることはひとつだけじゃ。記録する。いつ・どこで・誰に・何を言われたかを、スマホのメモでよいから残しておく。
メモというと、つい悔しさまで書き殴ってしまいそうです…。
コツは、感情ではなく事実を書くことじゃ。「悔しかった」ではなく、「この時期に時短は困る、と言われた」と書く。それと、患者さんの名前などの個人情報は書かんようにな。
事実だけのメモなら、あとで誰かに相談するときも「何があったか」を正確に伝えられますね。
そう、これは戦うための武器ではなく、相談するための材料じゃ。相談先は、社内なら人事やコンプライアンス窓口。社外なら、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が対応しておるぞ。
申し出ても職場が動かないのは、あなたの伝え方の問題ではない
ここまで、確かめて、申し出て、記録するところまで見てきた。最後は、それでも動かん職場をどう見極めるかじゃ。その前に、現場のリアルも認めておこう。夕方に処方箋が集中するのは事実。薬剤師が1人しかおらん時間帯がある店舗で、時短のやりくりが簡単でないのも事実じゃ。
相談者さんが「残るスタッフに全部かぶさる」と気にされていたのも、その現実があるからですよね。
そうじゃ。じゃがな、だからこそ法律には代替措置が用意されておるし、店舗間の応援やシフトの組み方で解決しとる会社も実在する。回らん構造を、一人の薬剤師の我慢で埋め続けるのは、解決策ではないんじゃ。
今の職場で続けられるか見極める目安 — 申し出のあとに具体的な動きがあるか
見極めの判断材料は、「気まずさ」ではなく「動き」じゃ。申し出のあと、職場に具体的な動きがあるかを見る。
気まずさで判断しない、というのは意外です。つい空気で「無理そうだな」と諦めてしまいそうなので…。何を見ればいいんでしょう?
動きがあるなら、今の職場で時短が通る見込みは十分ある。逆に、動きがないまま先送りが続く、嫌がる言動が続く——そうなったら、それは伝え方の問題ではない。人員が足りておらんか、制度を使わせん空気があるか、そのどちらかじゃ。相談者さん一人が変えられる範囲を超えておる。
チェックがほとんど付かないなら、もう自分の頑張りでどうにかなる範囲を越えている、ということですね。
時短が当たり前に取れる職場は、何が違うか
時短が当たり前に取れる職場は、実在するぞ。違いは業態や会社の規模ではなく、構造じゃ。まず1つ目は、制度の実績が具体的に語られること。「取れますよ」ではなく、「いま何人使っています」と答えられる職場じゃな。
実際の人数が出てくるかどうか、ですか。それなら面接でも確かめやすそうです。
2つ目は、人員に余白があること。複数薬剤師体制で、1人抜けても回る設計になっておる。そして3つ目は、シフトが時短を前提に組まれておることじゃ。時短者の退勤時刻が、最初からシフト表に織り込まれとる。
「特別扱いでなんとかやりくりしてもらう」のではなくて、「仕組みとして最初から入っている」職場、ということですね。
あわせて読みたいママ薬剤師が働きやすい職場の見極め方|育児と仕事を両立できる求人の3条件
この3つの構造を求人票と面接でどう見分けるかは、働きやすい職場の見極め方としてハブ記事で具体的な質問例つきで解説しています
今の職場で確かめて、申し出て、それでも動かんかったのなら、次は「時短が当たり前の職場を、自分の条件で探すとどうなるか」を見てみる番じゃ。転職を決めておらんでもよい。子育てと両立したいという条件で診断してみると、自分に合う探し方が見えてくるぞ。
🎯無料・約1分・登録不要あなたに合う転職サイトは?
かんたんな質問に答えるだけで、マッチ度つきでおすすめ上位3サイトを比較できます。
まとめ:確かめる、申し出る、守られる
この記事のまとめ
- 13歳未満で対象要件を満たせば、時短勤務は法律が事業主に課した仕組み
- 2時短を取れない理由は子の年齢・労使協定・会社が選んだ措置で確かめる
- 3最初のひとことは「手続きと申出期限を教えてください」の確認でいい
- 4動かない職場は人員配置と文化の問題。時短が当たり前の職場は実在する
時短を言い出せんかったのは、性格の問題ではない。確かめ方と伝え方の情報が、手元になかっただけじゃ。
「お願いして許してもらうもの」だと思い込んでいると、渋い顔をされた時点で止まってしまいますもんね。手続きの確認だと分かっていれば、次の一歩が具体的になります。
確かめる、申し出る、守られる。この順番で動けば、頼み込む場面はどこにもない。それでも動かん職場だったなら、変わるべきは働き方ではなく、働く場所のほうかもしれんの。
🎯無料・約1分・登録不要あなたに合う転職サイトは?
かんたんな質問に答えるだけで、マッチ度つきでおすすめ上位3サイトを比較できます。