薬剤師が人手不足のしわ寄せで限界|「自分が辞めたら回らない」の手放し方
公開日:
先輩の退職で欠員が補充されず、しわ寄せが自分に集中して限界——。人がいなくて回らないのは、あなたの責任ではなく、職場の人員体制の問題です。今できる負担軽減、退職を切り出すときの考え方、無理なく働ける職場を選び直す手順を解説します。
登場キャラクター

薬剤師じいさん
薬剤師歴70年の大ベテラン。病院・薬局・ドラッグストアすべてを経験してきた生き字引。豊富な経験と公的データに基づいて、若手薬剤師の悩みにズバッと答えます。

みさ
新卒2年目の若手薬剤師。病院で働いているけど、年収やキャリアに不安を感じている。全国の悩める若手薬剤師を代表して、気になることをどんどん質問していきます!
💬
読者からの相談
調剤薬局で6年目の薬剤師です。半年前に先輩が辞めてから欠員が補充されず、そのしわ寄せで監査も薬歴も発注も在庫管理もかかりつけ対応も、全部自分に回ってきています。毎日閉店後に残業で、確認が追いつかず調剤過誤も怖い。上司に「人を増やしてほしい」と言っても「採用が決まるまで頑張って」と言われるだけ。辞めたいけれど、自分が抜けたら残った人がもっと大変になると思うと、言い出せません。
📌この記事のポイント
- 人がいなくて回らないのは、あなたの能力不足ではなく、職場の人員体制の問題として考えるべきです
- 今の職場でできる負担軽減はありますが、人員配置そのものは個人で動かせる範囲に限界があります
- 改善を試しても欠員が放置されるなら、引き継ぎの範囲を決めたうえで、人員体制を基準に環境を変えていいのです
まず結論:人がいなくて回らないのは、あなたの責任ではない

半年も欠員のしわ寄せを受け続けて、確認も追いつかず過誤が怖い…。それはもう、限界のサインじゃ。まず一番大事なことを言うておくぞ。人がいなくて回らないのは、あなたのせいではない。

「自分が抜けたら回らない」と思うと、辞めたくても言い出せないですよね。読んでいて胸が痛みます。

わしも調剤薬局におった頃、同僚が抜けて人員が少なくなった時期に、患者さんが集中してな。監査も服薬指導も薬歴も思うように追いつかず、閉局後に一人で残って薬歴を書き続ける日があった。人手が足りんのに、不思議と「自分の要領が悪いのか」と自分を責めてしまうんじゃ。

人手不足が原因なのに、自分のせいだと感じてしまうんですね…。病院でも、誰かが抜けると残った人がそうやって抱え込みがちです。

そうじゃ。じゃが、これはあなた一人で背負う話ではないんじゃ。だからひとりで抱え込まなくていい。この記事では順番に考えるぞ。まず罪悪感を手放す。次に今できる負担軽減を試す。それでも放置されるなら、引き継ぎの範囲を決めたうえで、人員体制が整った職場を選び直す。この流れじゃ。

まず「自分のせいじゃない」と肩の荷を下ろすところからなんですね。
「自分が辞めたら回らない」を手放していい理由

「辞めたら回らない」という気持ちは、優しさと責任感から来るものじゃ。否定する必要はない。ただ、その責任を一人で背負わなくていい根拠を知っておいてほしい。

根拠があると、気持ちの整理がしやすいです。どういうことですか?
人員を確保する責任は、あなたではなく会社にある

一つは、薬局に必要な薬剤師を確保し、無理なく回る体制を整えるのは、本来、会社や法人の役割ということじゃ。現場の薬剤師が一時的に助け合うことはあっても、一人が限界を削って欠員を埋め続ける状態は、健全な体制とは言えん。

言われてみればそうですよね。でも現場にいると「自分がやらなきゃ」で頭がいっぱいになって、そこまで考えられないものですよね。

そこが怖いところでな。あなたが無理をして何とか回していると、上司や本部には現場の限界が伝わりにくくなる。「大変そうだけれど、何とか回っている」と見えてしまい、応援や補充の優先度が上がりにくいんじゃ。

頑張っているほど、限界が伝わりにくくなることもあるんですね…。

そうじゃ。そして、あなたが倒れれば現場はもっと回らなくなる。残った人のためにも、まず自分の限界を正直に認めることが先じゃ。

自分を守ることが、結果的に職場を守ることにもなるんですね。
「どこも人手不足だから仕方ない」と決めつけなくていい

もう一つ、思い込みを外しておこう。「薬剤師はどこも人手不足」というイメージがあるが、国全体では話が少し違う。厚生労働省が2021年に公表した需給推計では、将来的に薬剤師の供給が需要を上回る可能性が示されておる。

えっ、足りなくなるどころか、余っていく可能性があるんですか。意外です。

そうじゃ。ただし、これは全国平均の話じゃ。地域、業態、時間帯、管理薬剤師候補の有無などによって、現場では人が足りない職場もある。だからこそ、「薬剤師はどこも足りないから、自分が我慢するしかない」と決めつける必要はないんじゃ。

つまり、今の職場が回らないからといって、どこへ行っても同じとは限らないんですね。

その通りじゃ。採用力、応援体制、定着のしやすさは職場によって大きく違う。今の職場が回らない原因を、あなた一人の責任として抱え込む必要はないんじゃ。
今の職場で試せる、しわ寄せの負担軽減チェックリスト

次は、すぐ辞める前に今の職場でできることじゃ。先に正直に言うておくと、人員配置そのものは会社が決めることじゃから、個人の工夫で動かせる範囲には限界がある。そのうえで、明日からできることを3つに分けた。

限界があると正直に教えてもらえるのは、かえって安心します。3つを教えてください。
!今の職場で試せる負担軽減(A→B→C)
- A 抱え込みを見える化して線を引く:残業時間、未入力の薬歴件数、発注・在庫管理にかかった時間を書き出し、終わらない業務は上司に共有して優先順位を決める
- B 優先順位と担当を決める:監査・服薬指導・疑義照会など安全に直結する業務を優先し、発注や在庫整理なども期限・担当・確認方法を上司に相談する
- C 業務量を記録して増員・応援を求める:残業時間、処方箋枚数、薬歴残数、ヒヤリハットを記録し、感情ではなく事実をもとに上司や本部へ要請する

特に3つ目の「記録」は、このあと効いてくる。単に「大変です」と伝えるより、「閉局後の残業が何時間ある」「薬歴が何件残っている」「確認が追いつかずヒヤリハットが起きている」と事実で示すほうが、応援や補充を求めやすい。

感情ではなく、事実で伝えるんですね。たしかに、その方が上司や本部にも状況が伝わりやすそうです。

伝えるときは、「大変なので人を増やしてください」だけで終わらせず、「直近1か月で閉局後の残業が平均○時間あり、薬歴が○件残る日があります。確認が追いつかない場面も出ているため、応援勤務か業務分担の見直しを相談したいです」と、数字とリスクをセットで伝えるとよい。

ただ人を増やしてほしいと伝えるより、数字とリスクをセットで伝える方が相談しやすいですね。

ヒヤリハットを記録するときは、患者さんの氏名など個人情報を含めず、「確認が追いつかない場面があった」「一人で対応する時間帯にリスクが高まった」など、業務上のリスクとして整理するとよい。

患者さんの情報をそのまま書くのではなく、業務上のリスクとして整理するんですね。

そうじゃ。欠員のしわ寄せは、残業時間として表に出やすい。もし残業そのものが慢性化しているなら、残業が起きる職場の構造もあわせて見ておくとよいぞ。
あわせて読みたい
薬剤師の残業が多い原因は職場の構造|ワークライフバランスを改善する方法
欠員のしわ寄せで残業も慢性化しているなら、残業が起きる構造そのものを解説したこちらも参考になります。
改善を試した経験は、転職でも武器になる

ここで知っておいてほしいのは、欠員のなかで業務を回した経験、効率化の工夫、そして残してきた記録は、転職のときに語れる実績になるということじゃ。

つらい経験でも、伝え方を変えれば次の職場で評価される材料になるんですね。

冒頭のお便りの方のように、「人を増やしてと言っても採用待ち」と言われ続けているなら、まさに記録を残して動くべき場面じゃ。記録があれば、面接で「人員体制が整った職場で長く働きたい」と、事実にもとづいて前向きに話せる。

でも、勤続が短いと「すぐ辞める人」と思われないか心配する人もいそうです。

勤続年数が短い場合でも、改善を試みた事実があれば、転職理由を前向きに説明しやすくなる。面接で大事なのは前の職場の不満を並べることではなく、「次はどんな体制の職場で、どう長く働きたいか」を伝えることじゃ。

やれることをやったうえでの判断なら、胸を張って話せますね。

そうじゃ。やれることを試しても欠員が放置されるなら、今の職場に残る前提だけで考えなくてよい。いきなり応募する必要はないが、求人票で何を見るべきか、エージェントに何を確認してもらうべきかを知っておくだけでも、次に動くときの不安はかなり減らせるぞ。
退職を切り出すときは、引き継ぎの範囲を決めればいい

もう一つ大事なのは、辞めると決めたあとも、すべてを背負い込まないことじゃ。退職を切り出すときは、就業規則に沿って早めに伝え、薬歴の残り、発注・在庫管理の手順、かかりつけ患者や在宅・施設対応の注意点、期限が近い業務を整理して引き継げばよい。欠員を補充することまで、あなたが責任を負う必要はない。

引き継ぎは必要だけれど、次の人を採用するところまで背負わなくていいんですね。

その通りじゃ。残る人への申し訳なさがあるなら、業務内容、注意点、未対応の課題をメモにして渡す。それで十分に誠実な対応じゃ。職場がその後どう回るかは、会社が体制を整えるべき問題なんじゃ。

自分ができる引き継ぎと、会社が整えるべき体制を分けて考えるんですね。

うむ。「自分が辞めたら迷惑がかかる」と感じる人ほど、退職そのものを悪いことのように考えてしまう。じゃが、退職は裏切りではない。必要な手順を踏み、引き継ぎをすれば、それ以上の責任を一人で抱え込まなくていいんじゃ。

そう考えると、退職を切り出すハードルが少し下がりますね。

まずは今の職場でできることを整理し、それでも変わらないなら、次にどんな職場を選ぶべきかを考える。その順番でよい。大事なのは、焦って応募することではなく、人員体制や応援体制を確認したうえで判断することじゃ。
比較ガイド
薬剤師転職サイトの選び方・使い方
登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説
それでも欠員が放置されるなら、人員体制で職場を選ぶ

環境を変えると決めたら、大事なのは「次は人がそろった職場を選ぶ」ことじゃ。ここで業態だけで判断してはいかん。調剤薬局でもドラッグストアでも病院でも、人が足りている職場と足りていない職場の両方がある。見るべきは、業態名ではなく、普段の薬剤師人数・応援体制・退職時の補充ルールといった実際の人員体制じゃ。

たしかに、業態でひとくくりにはできないですよね。求人票の条件だけでは分からない部分が大事なんですね。

うむ。内定をもらう前に確認しておきたいことが3つある。

次も同じように欠員のしわ寄せを受けないために、確認しておきたいです。
- 常時、薬剤師が複数体制で動いているか(一人になる時間帯がないか)
- 欠員が出たときの補充・応援の仕組みがあるか(誰かが辞めても現場任せにならないか)
- 直近の退職や定着の状況はどうか(人がすぐ辞めていく職場ではないか)

この3つは求人票だけではなかなか分からん。だからこそ、転職サイトや転職エージェントを通じて職場の内情を確認するのが現実的じゃ。良い条件だけで決めず、実態を聞いてから判断するとよい。

条件の文字面ではなく、人員体制の実態を確かめてから選ぶんですね。

その通りじゃ。特に欠員補充の早さや応援体制は、働き始めてからの負担に直結する。次の職場を選ぶときは、年収や通勤時間だけでなく、「無理なく回る人数で働けるか」まで確認しておくことが大事じゃ。
まとめ:抱え込みをやめて、できることから。それでも変わらなければ環境を変えよう
まとめ:抱え込みをやめて、できることから。それでも変わらなければ環境を変えよう
- 1回らない原因はあなたではなく職場の人員体制。抱え込まなくていい
- 2今できるのは見える化・優先順位と担当決め・記録して要請の3つ。ただし個人の限界はある
- 3欠員下で改善を試した記録は、そのまま転職の実績になる
- 4退職時は引き継ぎの範囲を決めればよく、欠員補充まで背負う必要はない
- 5放置されるなら、人員体制を基準に環境を変えていい

人手不足のしわ寄せで限界なら、まず「これは自分の責任ではない」と肩の荷を下ろすところから始めてほしい。確認が追いつかず過誤が怖いと感じるなら、それは安全が崩れる前のサインじゃ。今の職場でできることを試しても変わらないなら、人員体制を基準に環境を変えていい。

退職を考えるときも、引き継ぎの範囲を決めれば、欠員補充まで一人で背負わなくていいんですね。

その通りじゃ。いきなり応募する必要はない。まずは求人票で何を見るべきか、自分に合った職場をどう探すかを知っておくだけでよい。それが、無理なく次へ進む第一歩じゃ。
比較ガイド
薬剤師転職サイトの選び方・使い方
登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説