薬剤師国家試験に落ちても、内定は自動的には取り消されません。ただし免許取得が採用の条件なら、取り消しの理由になり得ます。発表前に書類で確かめること、内定先へ結果を伝える時期と内容、次の試験日から1年を逆算する方法を整理しました。
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読者からの相談 私立薬学部の6年生です。国家試験の自己採点が予備校の予想ボーダーに10点近く届かず、たぶん落ちています。内定をもらっている薬局には3月25日の発表まで何も言えず、落ちたら内定取り消しで、無職のまま浪人するしかないのかと思うと眠れません。家族にもまだ言えていません。
📌 この記事のポイント
国家試験に落ちても、内定が自動的に取り消されるわけではない。ただし免許取得が採用の条件なら、取り消しの理由になり得る 結果の報告時期を内定先に指定されていればそれに従い、なければ発表の日に自分から電話する 次の1年は2月下旬の試験日から逆算して組む。合格しても、名簿登録までは働けない 1 まず結論:国家試験に落ちても、内定は自動的には取り消されない 2 第111回の薬剤師国家試験では、新卒の1,070人が不合格だった 3 国家試験の不合格は、内定取り消しの理由になり得る 4 内定先へは、指定がなければ合格発表の日に自分から電話で伝える 5 内定先から示される対応ごとに、確認すること 6 次の1年は、次の国家試験の日から逆算して組む 7 もう1年かけるか迷ったときは、内定先への連絡とは別の問題として考える 8 まとめ:内定通知書を読み、自分から結果を伝える まず結論:国家試験に落ちても、内定は自動的には取り消されない 相談者さんに最初に伝えたいのは、国家試験に落ちても、内定が自動的に取り消されるわけではない ということじゃ。ただ、薬剤師免許の取得が採用の条件になっておれば、不合格は取り消しの理由になり得る。どうなるかは内定先の判断と書類の条件しだいで、不合格という結果だけで一律に決まるものではないんじゃ。
相談者さんは「無職のまま浪人するしかない」と書いていますよね。自己採点の直後だと、そこまで一気に考えてしまうのも分かります…。
うむ。じゃが、そう決まっておるわけではない。発表を待つ間にもやれることがある。1つ目は、内定通知書と誓約書を読むこと。2つ目は、内定先へ自分から結果を伝えること。3つ目は、次の試験日から逆算して1年を組むこと じゃ。
待つしかないと思っていた時間に、やることがあるんですね。それが分かるだけでも、相談者さんは少し息がつけそうです。
第111回の薬剤師国家試験では、新卒の1,070人が不合格だった 先に、数字を1つだけ見ておこう。厚生労働省の発表では、第111回(2026年2月実施)の6年制新卒は、受験者7,781人のうち6,711人が合格した。合格率は86.25%じゃ。
受験者から合格者を引くと……1,070人。新卒だけで、それだけの人が不合格だったんですね。
そうじゃ。同じ立場の人は、毎年一定の数おるんじゃ。
自分だけじゃないと分かっても、落ち込むのは落ち込みますよね。でも「自分だけが特別に悪い状況にいる」わけではない、と知っておくのは大事だと思います。
国家試験の不合格は、内定取り消しの理由になり得る 採用内定は、入社前でも労働契約が成り立っているとされることが多く、会社が自由に取り消せるものではない。一方で、薬剤師免許の取得が採用の条件なら、不合格は取り消しの理由になり得る。わしは法律家ではないから、厚生労働省の「確かめよう労働条件」に書かれた説明の範囲で話すぞ。
採用内定は、入社前でも労働契約が成り立っているとされることが多い 内定の形は会社によってさまざまじゃ。ただ、内定の通知のほかに特別な手続きが予定されていなければ、入社日より前に労働契約が成り立っているとされることが多い。「確かめよう労働条件」は、大日本印刷事件(最高裁・昭和54年7月20日)の判決を紹介しておる。応募は労働契約の申込みで、内定の通知はその承諾にあたる、という考え方じゃ。
内定って「まだ入社していないから、会社の都合でどうにでもなるもの」だと思っていました。契約として成り立っているんですね。
同じページによると、取り消せるのは、内定当時に知ることができないか、知ることが期待できないような事実があった場合じゃ。そのうえで、取り消すことが「客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認できるもの」に限られる。
国家試験の不合格は、その「知ることができなかった事実」に当たるんでしょうか…?
同じサイトのQ&Aは、取り消しの理由になり得る例の1つ目に「契約の前提となる条件や資格の要件を満たさないとき」を挙げておる。免許の取得が採用の条件なら、不合格はここに当たり得るんじゃ。ただ、その取り消しが認められるかは、さっきの合理性・相当性の考え方で個別に判断される。この記事では、そこまでは判断せん。取り消しに納得できないときの相談先は、あとで紹介しよう。
発表の前に、内定通知書と誓約書で確かめる4つのこと じゃから、発表を待つ間に手元の内定通知書と誓約書を読んでおくんじゃ。見るのはこの4つ。
内定通知書って、もらったときに一度読んだきりの人も多そうです。でも、これなら発表の前にできますね。
書類によっては、書かれていない項目もある。書かれていなければ、電話のときに内定先へ聞けばよい。今日のうちにできることじゃ。
内定先へは、指定がなければ合格発表の日に自分から電話で伝える 合格発表は、厚生労働省のページに受験番号が載るだけじゃ。名前は載らんから、結果を内定先へ伝える役目は自分にあると考えておくとよい。黙って連絡を待っておると、内定先の判断だけで話が進んでしまうんじゃ。先に、内定通知書や内定先からの案内で、結果を報告する時期や方法が指定されていないか確かめる。指定があればそれに従い、なければ発表の日のうちに自分から電話して、働きたい気持ちと次の試験を受けることを伝える。
相談者さんは「発表まで何も言えない」と書いていました。自己採点の段階で、先に伝えたほうがいいんでしょうか?
「自己採点が出たら報告を」と言われておるなら、その段階で伝える。指定がなければ、自己採点の段階で伝えるかは内定先との関係で決めて構わん。その場合も、合否が分かったらできるだけ早く、発表の日のうちに伝えるのが原則じゃ。
電話の前に、家族と大学の就職担当へ伝えておく 電話の前に、家族には結果と「内定先にこう伝えるつもりだ」ということを先に話しておく。この先のお金の相談は、そのあとでも構わん。
家族に言うのがいちばん気が重いかもしれません。でも「こう伝えるつもり」まで決めてから話せば、話しやすくなりそうです。
それと、大学の就職担当にも伝えておくことじゃ。大学を通して内定先とやり取りしておる場合があるからの。
大学経由で内定先とつながっていたら、先に知らせておかないと行き違いが起きますね。
電話で伝えるのは「結果・働きたい気持ち・次の試験」の3つ 電話で伝えるのは、不合格だったこと、内定先で働きたい気持ちが変わらないこと、次の試験を受けるつもりであること の3つじゃ。言葉にすると、こんな具合になる。
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内定先への電話の例 〇〇大学の〇〇です。本日発表の国家試験に不合格でした。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。御社で働きたい気持ちは変わっておらず、来年の試験を受けるつもりです。今後についてご相談させていただけますか。
思っていたより短いですね。謝ってから、働きたい気持ちと次の試験のことを言って、相談をお願いする。これなら緊張していても言い切れる長さです。
謝罪から入って構わん。内定先から、その場で結論ではなく面談の日程を示されることもある。その場で答えを出す必要はない んじゃ。
内定先から示される対応ごとに、確認すること 内定先から示される対応には、取り消し・入社時期の延長・薬剤師以外の職種での採用などがある。どれを示されても、その場では決めずに、条件を確かめてから答えるんじゃ。
内定先から示される対応と、まず確認すること
示される対応 まず確認すること 内定の取り消し 取り消しの理由。納得できなければ相談できる窓口がある 入社時期の延長 延長中の身分と収入。次の試験も不合格だった場合の扱い 薬剤師以外の職種での採用 雇用形態・給与・勤務時間。合格後に薬剤師の職へ切り替わる時期と条件
どの対応になりやすいかは、会社によって違うんですよね?
そうじゃ。どれが多いかは内定先によって違う。ここでは、それぞれで何を確かめるかを見ていこう。
内定を取り消すと言われたとき まず、取り消しの理由について説明を受けることじゃ。納得できない、説明が足りないと感じたら、都道府県労働局や労働基準監督署にある「総合労働相談コーナー」に相談できる。
労働局の窓口って、働いている人のためのものだと思っていました。まだ入社前の学生でも相談できるんですか?
募集・採用を含む労働問題が対象で、学生や就活生の相談も受け付けておる。予約はいらず、無料じゃ。
それなら、ひとりで抱え込まずに済みますね。入社前の学生だからといって、泣き寝入りするしかないわけではないんですね。
取り消しになったあとの就職先探しで知っておきたいのが、厚生労働省の「青少年雇用機会確保指針」じゃ。卒業後少なくとも3年間は、既卒者も新卒の採用枠に応募できるようにすることを事業主に求めておる。
卒業してからでも、新卒の枠で受けられる可能性があるんですね。
ただし、これは努力を求める指針じゃ。すべての会社がそうしておるとは限らん。大学の就職担当は、卒業後も相談に乗ってくれることがある。同じ会社の選考を受け直す道もあるぞ。
入社時期を1年延ばすと言われたとき 入社時期の延長を示されたら、確かめることは3つある。
延長している間の身分(入社前のままか)と、収入があるかどうか 次の試験も不合格だった場合に、どう扱われるか 延長後の入社日(合格発表のあと、名簿登録を待つのか) 「待ってもらえるなら安心」と思いがちですけど、その間の収入や、もう一度落ちたときのことまでは考えていませんでした。
延長がよいか、取り消しがよいか、という話ではない。条件を確かめてから決めればよいんじゃ。
薬剤師以外の職種で採用すると言われたとき 薬剤師以外の職種での採用を示されたら、確かめることは4つじゃ。
雇用形態(正社員か、パート・アルバイトか) 給与 勤務時間(平日に勉強の時間を確保できるか) 合格後に、薬剤師の職へ切り替わる時期と条件 働きながら勉強するなら、勤務時間がいちばん効いてきそうです。平日の夜に机に向かえるかどうかで、1年の過ごし方がまるで変わりますね。
もう1つ、免許がないあいだに任される仕事の範囲も知っておくとよい。厚生労働省の通知(薬生総発0402第1号「調剤業務のあり方について」)は、薬剤師の指示に基づき、薬剤師の目が現実に届く場所で行うことなどを条件に、次のような作業を例に挙げておる。PTPシートのままの医薬品をそろえる。薬剤師の鑑査の前に、一包化した薬の数を確かめる。どちらも、最後の確認は薬剤師が自分で行うんじゃ。
免許がないと薬局では何もできないのかと思っていましたけど、そろえる作業や数の確認なら、現場に慣れながら勉強できそうです。逆に、できないことも決まっているんですか?
散剤・水剤・軟膏を量ったり混ぜたりすることはできん。どの仕事を任されるかも、確かめておくとよいぞ。
次の1年は、次の国家試験の日から逆算して組む 試験日から逆算すると、1年の使い方が決まる 薬剤師国家試験は、例年2月下旬の2日間で行われる。出願は1月上旬から中旬、合格発表は3月下旬じゃ。この日程から逆算して、1年を組む。 たとえば第112回の日程は、こうなっておる。
受験願書の配布:2026年10月中旬以降 出願:2027年1月4日〜14日 試験:2027年2月20日・21日 合格発表:2027年3月25日 14時 出願は1月の前半に締め切られるんですね。「1年ある」と思っていたら、準備の締め切りは思ったより早いです。
次の回の試験期日は、厚生労働省が例年8月末ごろに公示する。第112回は2026年8月28日の公示じゃった。公示されたら、手帳に書き込んでおくとよい。
もう一度受けるのに、何か条件はあるんでしょうか。卒業して時間がたつと受けられなくなる、なんてことは…?
e-Govで読める薬剤師法の第15条では、受験資格の1つが6年制の薬学課程を卒業していることじゃ。卒業後に受験資格がなくなる決まりはないぞ。
合格しても、薬剤師として働けるのは名簿登録の後になる 薬剤師免許は、国家試験に合格した人が申請し、薬剤師名簿に登録されることで与えられる。薬剤師法の第7条にそう書かれておる。名簿に登録されなければ、薬剤師として働くことはできんのじゃ。
私も新卒の春は、登録が済むのを同期と待っていました。国試に合格しただけでは、まだ薬剤師として働けないんですよね。
うむ。厚生労働省の案内では、年度はじめの申請が集中する時期は、名簿登録の完了までに約2か月かかる場合がある。登録済証明書は、名簿に登録されたあと、希望すれば発行してもらえる。免許証が手元に届くまでは、申請から最長で5か月程度じゃ。
免許証より先に、登録済証明書で登録されたことを示せるんですよね。
そうじゃ。2026年3月25日からは、登録済証明書をオンラインでも受け取れるようになった。
つまり3月下旬に合格してすぐ申請しても、薬剤師として働けるのは5月下旬ごろが1つの目安で、前後することもある、ということですね。
そうじゃ。処理の期間は前後するから、内定先と「合格後に薬剤師の職へ切り替わる時期」を話すときは、幅を持たせて考えてほしい。
予備校に専念するか働きながら受けるかは、4つの材料で決める 第111回の6年制既卒の合格率は41.33%じゃった。第105回から第111回までは、40.75〜44.05%で推移しておる。これは卒業年度を問わない、既卒全体の値じゃ。
4割ちょっと…。この数字だけを見ると、「働きながらでは厳しいのかな」と考えてしまう人もいそうです。
予備校に専念した人と、働きながら受けた人の合格率を比べた公的な統計は見当たらん。どちらが有利とも言えんのじゃ。じゃから、この4つを材料にして決めるとよい。
内定先の条件も材料の1つなんですね。電話のあとに示された条件で、選べる道が変わるということですか。
そういうことじゃ。生活費や予備校費用の話は、家族と相談するところじゃな。
もう1年かけるか迷ったときは、内定先への連絡とは別の問題として考える 2回目の不合格だった。もう1年かけることに気持ちが向かない。4月から働き始める同級生との差に焦る。こうした迷いは、内定先への連絡や1年の組み方では決まらん。別の問いとして分けて考えるんじゃ。
周りが4月から働き始めるのを見ていると、焦りますよね。手順が分かったからこそ、「本当にもう1年やるのか」が浮かんでくる人もいそうです。
受験資格は卒業後も失われんから、「今年は受けない」と決めても、後から変えることはできる。すすめるわけではないが、事実として知っておくとよい。次の試験に向けて1年をかけること自体に気持ちが向かんなら、こちらも参考になるじゃろう。
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まとめ:内定通知書を読み、自分から結果を伝える この記事の要点
1 国家試験に落ちても、内定は自動的には取り消されない。ただし免許取得が採用の条件なら、取り消しの理由になり得る 2 発表の前に、内定通知書と誓約書で取り消しの理由・入社の条件・結果の報告方法を確かめる 3 報告の指定があればそれに従い、なければ発表の日に自分から電話して、働きたい気持ちと次の試験を受けることを伝える 4 次の1年は試験日から逆算する。合格後も名簿登録を待つ期間があり、年度はじめは約2か月かかる場合がある 相談者さんにとっていちばん重かったのは、「取り消し確定」と思い込んで、発表まで動けなかったことじゃ。発表を待つ間にも、書類を読み、家族と大学に伝え、電話の準備をすることができる。
結果を待つ時間は何もできないと思っていましたけど、やることの順番が分かるだけで、ずいぶん違いますね。まずは内定通知書を探すところからです。
それでも、薬剤師を目指し続けるかどうか自体に迷いが残るなら、それは別に整理して構わん。一人で考え込むより、話しながら整理したほうが見えることもあるぞ。
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