薬学生だけど薬剤師になりたくない|辞める前に整理すべきこと
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薬学部にいるけど薬剤師になりたくない。その気持ちは自然なことです。なりたくない理由の整理方法、薬剤師免許を取ってから別の道へ進む選択肢、今の段階でやるべきことを解説します。
登場キャラクター

薬剤師じいさん
薬剤師歴70年の大ベテラン。病院・薬局・ドラッグストアすべてを経験してきた生き字引。豊富な経験と公的データに基づいて、若手薬剤師の悩みにズバッと答えます。

みさ
新卒2年目の若手薬剤師。病院で働いているけど、年収やキャリアに不安を感じている。全国の悩める若手薬剤師を代表して、気になることをどんどん質問していきます!
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読者からの質問
薬学部5年生です。実務実習を経験して、薬剤師になりたくないという気持ちが強くなりました。でも6年も通った薬学部を無駄にしていいのか、親にどう説明すればいいのかもわからず、毎日悩んでいます。薬学生で薬剤師になりたくないと感じるのは、やっぱりおかしいことなのでしょうか。
📌この記事のポイント
- 薬学生が薬剤師になりたくないと感じるのは自然なことであり、大切なのは「なりたくない理由」を整理すること
- 理由は「仕事内容が合わない」「働き方が合わない」「患者対応が不安」「他にやりたいことがある」に分類でき、理由によって取るべき方向性が変わる
- 薬剤師免許を取ってから別の道に進む選択肢もあり、焦って決断する必要はない
薬学部にいるのに薬剤師になりたくないと感じるのは自然なこと

「薬学部に入ったのに薬剤師になりたくないなんて、自分はおかしいのだろうか」。そう思っている薬学生がおるかもしれんが、まず伝えておきたい。それは、まったくおかしなことではないぞ。

でも、薬学部って6年もかけて通うわけですよね。「今さら別の道」って、なかなか思い切れなさそうです。

そうじゃな。時間も費用もかけてきた以上、「もったいない」と感じるのは当然じゃ。親や周囲の期待もあるじゃろう。

周りが普通に就活を進めているのを見ると、余計に言い出しにくいですよね。

うむ。しかしな、18歳の時点で選んだ進路が、6年後の自分にぴったり合い続ける保証はないんじゃ。大学で学ぶうちに興味が変わること、実習で現場を知ったことで考えが変わることは、ごく自然なことなんじゃよ。

たしかに、高校生のときと今とでは、見えているものが全然違いますよね。

その通りじゃ。「なりたくない」と感じている自分を責める必要はない。その気持ちは、自分の将来を真剣に考えているからこそ生まれるものじゃ。大事なのは、なぜ「なりたくない」と感じているのか、その理由を整理することじゃよ。
薬剤師になりたくないと感じる理由を整理する

「なりたくない」の中身は、一つではないんじゃ。理由を分解してみると、今後取るべき方向性が見えてくる。大きく4つのパターンに分けて整理してみよう。
薬剤師の仕事内容自体が合わない場合

まず1つ目は、薬剤師の仕事内容自体が合わないケースじゃ。調剤、服薬指導、薬歴管理。こうした中心業務に対して「やりたいと思えない」「興味が持てない」と感じる場合じゃな。

この場合は、職場を変えても解決しにくいんですか?

そうじゃな。仕事内容そのものが自分の価値観や興味と合っていない可能性があるからの。ただし、一つ確認しておいてほしいことがある。

何ですか?

薬剤師の業務は調剤や服薬指導だけではないんじゃ。医薬品情報の管理、いわゆるDI業務や、在宅医療、公衆衛生など、現場によって業務内容は異なる。「薬剤師=薬局のカウンター業務」というイメージだけで判断していないか、確認してみてほしい。

なるほど。薬剤師の仕事の全体像を知ってから判断したほうがいいってことですね。
薬局・病院の働き方が合わない場合

2つ目は、薬剤師の仕事自体は嫌ではないが、薬局や病院の働き方が合わないケースじゃ。

「毎日同じ場所で同じルーティン」みたいな部分ですか?

うむ。それに加えて、「閉鎖的な人間関係」「給与の伸びが見えにくい」といった不満もあるじゃろう。こうした不満は、薬剤師という職種の問題ではなく、働く環境の問題なんじゃ。

つまり、環境を変えれば解決する可能性があるってことですか?

その通りじゃ。ドラッグストア、企業内薬局、在宅医療に特化した薬局など、同じ薬剤師でも働き方は多様じゃ。この場合は「薬剤師をやめる」のではなく、「合う職場を探す」方が解決策に近いかもしれんの。
患者対応や服薬指導が不安な場合

3つ目は、対人業務への不安から「なりたくない」と感じるケースじゃ。「患者さんとうまく話せない」「服薬指導で何を言えばいいかわからない」というものじゃな。

実習中にうまくできなかったら、向いてないって思ってしまいそうです。

気持ちはわかるが、この不安は実務経験の少なさからくることが多いんじゃ。実習中にスムーズにできなかったからといって、向いていないとは限らん。

でも、人と話すこと自体がどうしても苦痛な場合は、どうなんでしょう?

よい視点じゃ。ここで大事なのは、「苦手」と「苦痛」の違いじゃ。苦手なだけなら経験で克服できるが、苦痛なら無理に続ける必要はない。薬剤師の中でも対人業務が少ない領域、たとえばDI業務や品質管理もあるし、薬剤師以外の道を検討する価値もあるぞ。
他にやりたいことがある場合

そして4つ目は、薬学部で学ぶうちに、研究やIT、ビジネスなど、薬剤師以外の分野に興味が出てきたケースじゃ。

やりたいことがある場合は、「薬剤師か、やりたいことか」の二択になってしまうんですか?

そう考えがちじゃが、実はそうでもないんじゃ。薬剤師免許を持ちながら別の分野で活躍している人はおる。研究職、メディカルライター、医療系IT、ヘルスケア領域のコンサルタントなど、薬学の知識を活かせる仕事は複数あるんじゃよ。

二択じゃなくて、両方を活かす道もあるんですね。それは知らなかったです。

うむ。まずは「両方を活かす道がないか」を探ってみることじゃ。
薬剤師免許を取ってから別の道へ進むという選択肢

ここからは、薬剤師免許を取得するかどうかについて整理しよう。「なりたくない」と思っても、免許を取ること自体にはメリットがあるんじゃ。

薬剤師にならないのに、免許を取る意味があるんですか?

あるぞ。薬剤師免許は、いわば「保険」じゃ。別の道に進んだ後に、やっぱり薬剤師として働きたいと思ったとき、免許があれば戻れる。薬学部の6年間を「免許を取れる環境にいた」と捉えれば、取らずに卒業するよりも選択肢は広がるんじゃ。

なるほど。でも、なりたくない気持ちが強い状態で国試の勉強を続けるのは、精神的にきつくないですか?

そこは正直に向き合う必要がある部分じゃ。国家試験の勉強には相当な時間と労力がかかる。精神的な負担は、軽視できん。

どういう場合に免許を取る方がよくて、どういう場合は取らなくてもいいんですか?

整理するとこうなる。免許を取る方がよいのは、薬剤師以外の進路がまだ具体的に決まっていない場合、薬学の知識自体は嫌いではない場合、将来の選択肢を減らしたくない場合じゃ。

逆に、取らなくてもいいケースは?

やりたいことが具体的に決まっている場合、国試勉強が精神的に限界に近い場合、薬学そのものに興味がない場合じゃな。どちらが正解ということはない。自分の状況に照らして判断することが大事じゃ。
薬剤師にならない場合の進路

次に、薬剤師にならない場合にどんな進路があるのかを概観しておこう。薬学部卒の進路は、薬局・病院だけではないんじゃ。

具体的にはどんな職種があるんですか?

大きく分けると、製薬企業ではMR、研究職、開発職、薬事、学術がある。CROでは臨床開発モニター、データマネジメント、安全性情報管理。行政では公務員薬剤師、保健所、薬務課。そのほか、医療系IT、メディカルライター、化粧品・食品メーカーもあるぞ。

思ったより幅広いですね。それぞれ求められるスキルも違いそうですが…。

うむ。職種ごとに就活の進め方も異なる。詳しくは別の記事で整理しておるから、興味がある方は見てみてほしい。
あわせて読みたい
薬剤師以外の進路を詳しく知る
製薬企業・CRO・行政・医療系ITなど、薬学部卒で薬剤師以外に就職できる職種一覧と就活の進め方を解説
今の段階でやるべきこと

最後に、「なりたくない」と感じている今の段階でやるべきことを3つのステップで整理しよう。すぐに結論を出す必要はないぞ。
「なりたくない理由」を書き出す

まず1つ目は、「なぜなりたくないのか」を書き出すことじゃ。頭の中で考えているだけでは、同じところをぐるぐるしがちじゃからの。

紙に書き出すだけで、そんなに変わるものですか?

変わるぞ。書き出すことで、漠然とした不安が具体的な課題に変わるんじゃ。「仕事内容が合わない」のか「働き方が合わない」のか「他にやりたいことがある」のか。理由がはっきりすれば、次に何をすべきかも見えてくる。
情報を集める

2つ目は情報収集じゃ。薬剤師以外の進路にはどんなものがあるのか。薬剤師免許を取ってから別の道に進んだ人はいるのか。自分が「やりたい」と感じることに近い仕事は何か。

情報がないまま判断すると、選択肢を狭めてしまいそうですね。

その通りじゃ。まずは「どんな道があるのか」を知ることから始めてみてほしい。
誰かに話してみる

そして3つ目は、誰かに話してみることじゃ。一人で考え続けると、視野が狭くなる。信頼できる人に話を聞いてもらうだけでも、気持ちが整理されることがあるぞ。

でも、「薬剤師になりたくない」って相談しても大丈夫なんですか? なんとなく言いにくいです。

相談して問題ないぞ。むしろ、決まっていない段階だからこそ、第三者の視点が役立つんじゃ。大学のキャリアセンター、ゼミの教授、キャリアカウンセラーなど、相談先にはいくつかの選択肢がある。

どこに相談すればいいか迷ったら、相談先の選び方を調べるところから始めてもいいですね。
あわせて読みたい
相談先の選び方・活用法ガイド
キャリアセンター・キャリアカウンセラーなど、薬学生が進路を相談できる場所の特徴と使い方を解説
まとめ

最後に整理しよう。薬学部にいるのに薬剤師になりたくないと感じることは、自然なことじゃ。大切なのは、「なりたくない理由」を整理することじゃよ。

理由によって、取るべき方向性が変わるんですよね。

うむ。仕事内容が合わないなら薬剤師以外の進路を調べてみる。働き方が合わないなら職場選びを工夫する。患者対応が不安なら、苦手と苦痛を見分ける。他にやりたいことがあるなら、薬剤師免許と両立できないか探ってみる。
なりたくない理由別の方向性
- 1仕事内容が合わない → 薬剤師以外の進路を調べてみる
- 2働き方が合わない → 職場選びを工夫することで解決できる可能性がある
- 3患者対応が不安 → 苦手なだけなら経験で変わる。苦痛なら別の領域を検討する
- 4他にやりたいことがある → 薬剤師免許と両立できないか探ってみる

焦らなくていいんだって思えると、少し気が楽になりますね。

うむ。まずは「なぜなりたくないのか」を書き出し、情報を集め、必要であれば誰かに相談してみてほしい。「なりたくない」と感じたことは、自分の将来を真剣に考え始めた証拠じゃ。一つずつ整理していけば、自分に合った道は見つかるぞ。
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