Cockcroft-Gault式とは?
CrClの計算式と酵素法Cr値の+0.2補正を解説

腎排泄型薬剤の用量調整で必ず出てくるCrClの推算式。
式の意味と、実務でつまずきやすい補正のポイントを整理します。

Cockcroft-Gault式とは、血清クレアチニン値・年齢・体重・性別からクレアチニンクリアランス(CrCl)を推算する計算式です。1976年に報告され、蓄尿が不要なことから、腎排泄型薬剤の投与量調整の基準として現在も広く使われています。

新人
先生、腎排泄型の薬の用量を確認するときにCrClを計算するんですけど、Cockcroft-Gault式って結局どういう式なんですか?「酵素法だと+0.2する」というのも聞いたことがあって…。
先生
よいところに気づいたのう。Cockcroft-Gault式は薬剤師が最も使う推算式じゃが、「どんなデータから作られた式か」を知らんと補正の話が理解できん。
今日は式の意味から、酵素法の補正、体格による注意点まで順に見ていこうかの。

クレアチニンクリアランス(CrCl)とは

先生
クレアチニンクリアランス(CrCl)とは、腎臓が血液中のクレアチニンをどれだけ除去できるかを示す指標じゃ。糸球体濾過量(GFR)の近似指標として、腎機能の評価に使われるぞ。
新人
薬剤師の実務では、どういう場面で使うんですか?
先生
主に腎排泄型薬剤の投与量調整じゃな。抗菌薬やDOACなど、腎機能に応じて用量を変える薬は多いじゃろ?その判断基準としてCrClが使われるんじゃよ。

Cockcroft-Gault式とは

先生
CrClを推算する代表的な式がCockcroft-Gault式じゃ。1976年にCockcroftとGaultが報告した式で、血清クレアチニン値・年齢・体重・性別からCrClを簡易的に算出できるんじゃ[1]

Cockcroft-Gault式
CrCl(mL/min)=(140 − 年齢)× 体重(kg)÷(72 × 血清Cr(mg/dL))
※ 女性の場合は算出値に × 0.85

新人
蓄尿しなくても計算できるのは便利ですね!
先生
そうじゃ。蓄尿が不要なため、日常の臨床業務で最も広く使われている推算式なんじゃよ。多くの薬剤の添付文書でも、この式による腎機能評価が基準として採用されておる。

計算例:75歳女性・体重50kg・血清Cr 0.8 mg/dL

新人
式は分かったんですけど、実際に数字を入れるところでいつも自信がなくて…。
先生
では一緒に手計算してみようかの。75歳の女性、体重50kg、酵素法で測った血清Crが0.8 mg/dLという設定じゃ。
  1. 酵素法の値を補正する:0.8 + 0.2 = 1.0 mg/dL
  2. 分子を計算する:(140 − 75)× 50 = 3,250
  3. 分母を計算する:72 × 1.0 = 72
  4. 割り算する:3,250 ÷ 72 ≒ 45.1 mL/min
  5. 女性なので 0.85 を掛ける:45.1 × 0.85 ≒ 38.4 mL/min
新人
約38 mL/minですね。もし補正しないで0.8のまま計算したらどうなるんですか?
先生
3,250 ÷(72 × 0.8)× 0.85 ≒ 48.0 mL/minじゃ。
38と48では、CrCl 40や50を境に減量が指示される薬剤で判断が変わってしまうじゃろ?補正するかどうかで結論が変わり得るという感覚を持っておくことが大事なんじゃよ。
新人
数字で見ると差が大きいですね…。どちらで計算したかを記録しておかないと危ないです。

酵素法で測定された血清Crの補正について

新人
先生、Cockcroft-Gault式に入れる血清Crの値って、そのまま使っていいんですか?「+0.2の補正が必要」って聞いたことがあるんですけど…。
先生
よい質問じゃ。Cockcroft-Gault式はもともとJaffe法で測定された血清Cr値をもとに作られた式なんじゃ[1]
新人
今の日本の病院って、ほとんど酵素法ですよね?
先生
その通り。酵素法はJaffe法よりも約0.2 mg/dL低い値を示す傾向があるんじゃ。そのため、酵素法で測定された血清Cr値には「+0.2 mg/dL」の補正を加えてからCockcroft-Gault式に代入する方法が提唱されておる。
新人
じゃあ常に+0.2すればいいんですか?
先生
いや、そう単純ではないぞ。補正の要否は施設や添付文書の記載によって異なるんじゃ。例えば、添付文書に「酵素法の値をそのまま使用」と明記されている薬剤もある。投与量調整の判断には、必ず各薬剤の添付文書やガイドラインの推奨を確認することが大切じゃ。

肥満患者・高齢者のCrCl計算の注意点

肥満患者の場合

新人
先生、肥満患者さんのCrClを計算するときは何か気をつけることはありますか?
先生
よい質問じゃ。肥満患者では実体重を用いるとCrClが過大評価されることがあるんじゃ。Cockcroft-Gault式には体重が含まれるから、体重が大きいほど値が高く出てしまう。
新人
じゃあどうすればいいんですか?
先生
BMI 30以上の患者では、理想体重(IBW)補正体重(ABW)を用いた計算が推奨される場合があるぞ。

補正体重(ABW)の計算式
ABW = IBW + 0.4 ×(実体重 − IBW)

先生
ただし、この補正の要否や係数は薬剤・施設によって異なるから、必ず添付文書やガイドラインの推奨に従うことが大切じゃ。

高齢者の場合

新人
高齢者のCrCl計算でも注意点はありますか?
先生
あるぞ。高齢者は筋肉量が少ないため、血清Cr値が低く出やすいんじゃ。すると、実際の腎機能よりもCrClが高く算出されてしまう。
新人
つまり、見かけ上は腎機能が良く見えてしまうということですね。
先生
その通り。特に痩せ型の高齢者ではCrClの過大評価に要注意じゃ。必要に応じて補正体重を使用するなど、臨床状態を総合的に判断することが大切じゃよ。

まとめ

新人
先生、ありがとうございます!式の意味と注意点がつながりました。
Cockcroft-Gault式を使うときのポイント
  • CrCl =(140 − 年齢)× 体重 ÷(72 × 血清Cr)、女性は × 0.85
  • もとはJaffe法の測定値を前提とした式。酵素法では+0.2 mg/dLの補正が提唱されている(施設・添付文書により異なる)
  • 肥満患者では実体重によるCrClの過大評価に注意し、IBW・ABWの使用を検討する
  • 高齢者では筋肉量低下による血清Cr低値でCrClが過大評価されやすい
  • 算出値は目安。最終判断は添付文書・ガイドライン・患者の臨床状態を総合して行う
先生
うむ、上出来じゃ。数字を出すことより、「どの条件で出した数字か」を説明できることのほうが大事じゃぞ。

よくある質問

Q. 血清Cr値がとても低いとき(0.4 mg/dLなど)はそのまま計算してよいですか?

A. そのまま代入するとCrClが極端に高く算出されます。やせ型の高齢者など筋肉量が少ない患者では、血清Crが低くても実際の腎機能が保たれているとは限りません。施設によっては血清Crを0.6〜1.0 mg/dLに切り上げて計算する運用(ラウンドアップ)がありますが、この方法の妥当性は一律に確立されたものではありません。算出値をうのみにせず、施設の取り決めと患者の臨床状態を合わせて判断してください。

Q. Cockcroft-Gault式に入れる体重は実体重・理想体重のどちらですか?

A. 原報は実体重を用いた式です。標準的な体格であれば実体重で問題ありませんが、肥満患者では実体重を使うとCrClが過大評価されるため、理想体重(IBW)や補正体重(ABW)を用いる運用があります。逆に浮腫や腹水がある患者では体重が水分量で増えているため、実体重の使用に注意が必要です。どの体重を使うかは、対象薬剤の添付文書や施設のルールを確認してください。

Q. 小児にCockcroft-Gault式は使えますか?

A. 使えません。Cockcroft-Gault式は成人のデータから導かれた推算式で、小児の腎機能評価には適していません。小児ではSchwartz式など小児向けの推算式や、日本人小児の基準値に基づく評価が用いられます。小児の腎排泄型薬剤の用量調整では、必ず小児を対象とした指標・資料を確認してください。

参考文献

  1. Cockcroft DW, Gault MH. Prediction of creatinine clearance from serum creatinine. Nephron. 1976;16(1):31-41.
  2. 日本腎臓学会. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.
  3. 日本腎臓病薬物療法学会. 腎機能別薬剤投与量POCKET BOOK.
※ 本記事の計算例・数値は参考情報です。実際の投与量調整は、添付文書・ガイドライン・患者の臨床状態を総合的に判断して行ってください。本記事の情報の利用によって生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。

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