eGFRとCrClの違いとは?
薬剤師のための使い分けと換算の考え方

検査レポートにはeGFRしか載っていないのに、添付文書はCrCl基準。
そんな場面で迷わないための考え方を整理します。

eGFRとCrClの違いは、体表面積で補正しているかどうかです。eGFRは体表面積1.73m²あたりに補正された値(mL/min/1.73m²)でCKDの診断・ステージ分類に使われ、CrClは補正のない値(mL/min)で多くの薬剤の投与量調整の基準に使われます。

新人
先生、eGFRとCrClって何が違うんですか?検査レポートにはeGFRしか載っていないことも多いですよね。
先生
うむ、ここは非常に大事なポイントじゃ。両方とも腎機能の指標じゃが、単位と用途が違うんじゃよ。
違いを押さえたうえで、eGFRしか手元にないときにどうするかまで見ていこうかの。

eGFRとCrClの違い・使い分け

  • eGFR — 体表面積で補正された値(mL/min/1.73m²)。CKDの診断・ステージ分類に使用
  • CrCl(Cockcroft-Gault式) — 体表面積補正なしの値(mL/min)。多くの薬剤の添付文書で投与量調整の基準として採用
新人
なるほど、eGFRは病気の診断用で、CrClは薬の用量調整用ということですね。
先生
そういうことじゃ。特に腎排泄型の抗菌薬やDOACなどでは、CrCl(Cockcroft-Gault式)が指定されていることが多い[2]。添付文書がどちらの指標を基準にしているかを確認するのが鉄則じゃぞ。
新人
体格が標準に近い患者さんなら、そんなに差は出ないんですか?
先生
その通りじゃ。体表面積が1.73m²前後の患者なら両者は近い値になる。
逆に言えば、小柄な高齢者や高度肥満の患者では乖離が大きくなる。乖離が問題になる場面こそ、次に話す換算の出番じゃ。

腎機能区分の基準値

新人
CrClの値が出たあと、腎機能がどのレベルかを判断する目安はありますか?
先生
CrClの値に基づく腎機能区分の目安を表にまとめておこう[1]。ただし、薬剤の添付文書による用量調整の基準と必ずしも一致しない場合があるから、個別の薬剤については添付文書を確認するんじゃぞ。
区分CrCl臨床上の留意点
正常90 mL/min 以上通常用量で投与可。腎毒性薬に注意
軽度低下60〜89 mL/min通常用量で投与可。腎毒性薬に注意
中等度低下30〜59 mL/min多くの薬剤で減量・投与間隔延長が必要
高度低下15〜29 mL/min禁忌薬の確認必須。透析導入を視野に入れた設計を
腎不全15 mL/min 未満透析患者に準じた投与設計。禁忌薬多数
新人
こうやって表で見ると、CrCl 30を境に対応が大きく変わるんですね。
先生
そうじゃ。特にCrCl 30 mL/min未満では禁忌になる薬剤が増えてくるから、処方監査の際は十分注意するんじゃぞ。

体表面積未補正eGFRへの換算

新人
先生、eGFRを「その患者さん自身の腎機能(mL/min)」に直すことはできないんですか?
先生
できるぞ。eGFRは1.73m²あたりに補正された値じゃから、患者の体表面積(BSA)を掛けて1.73で割り戻せば、体表面積未補正eGFR(個別eGFR)が得られる。

体表面積未補正eGFRの求め方
未補正eGFR(mL/min)= eGFR(mL/min/1.73m²)× BSA(m²)÷ 1.73

新人
実際に計算するとどれくらい変わるんですか?
先生
小柄な高齢女性で、eGFRが55 mL/min/1.73m²、体表面積が1.40m²だったとしよう。
55 × 1.40 ÷ 1.73 ≒ 44.5 mL/minじゃ。区分としては同じ「中等度低下」でも、CrCl 50を境に減量が指示される薬なら判断が変わるのが分かるじゃろ。
新人
体表面積はどうやって出すんですか?
先生
身長と体重から推算するんじゃ。当サイトの体表面積(BSA)計算ツールを使えばすぐ出せるぞ。
ただしこの換算はあくまで体格の影響を取り除くための考え方じゃ。添付文書がCrClを指定しているなら、換算値ではなくCockcroft-Gault式で算出した値を使うのが原則じゃぞ。

検査レポートにeGFRしかない場合の実務対応

新人
薬局だと、患者さんが持ってくる検査結果にeGFRしか書かれていないことが多いです。そういうときはどうすればいいですか?
先生
慌てんでよい。手順を決めておけば対応できるぞ。
eGFRしか分からないときの進め方
  1. 検査値に血清Crが併記されていないか確認する。あればCockcroft-Gault式でCrClを算出できる
  2. 血清Crがない場合は、eGFRと体表面積から未補正eGFRを求め、体格の影響を取り除いた腎機能の目安をつかむ
  3. 体格が標準から大きく外れる患者(小柄な高齢者・高度肥満)では、eGFRの数値をそのまま用量判断に使わない
  4. 減量・禁忌の境界に近い場合は、処方医に血清Cr値の確認や検査値の共有を依頼する
新人
「境界に近いときは確認する」というのが実務的で分かりやすいです。
先生
そうじゃ。数値が区分の境界から離れていれば多少の誤差は問題にならん。逆に境界付近では、指標の選び方ひとつで用量が変わる。そこを見極めるのが薬剤師の腕じゃよ。

まとめ

新人
先生、ありがとうございます!使い分けがはっきりしました。
eGFRとCrClの使い分けのポイント
  • eGFRはCKDの診断・ステージ分類用(mL/min/1.73m²)
  • CrClは薬の用量調整用(mL/min)。添付文書の基準を必ず確認する
  • 体格が標準から離れるほど両者は乖離する。小柄な高齢者では特に注意
  • eGFR × BSA ÷ 1.73 で体表面積未補正eGFRが求められる(体格の影響を取り除く考え方)
  • 区分の境界付近では、血清Cr値の確認を処方医に依頼する
先生
うむ、完璧じゃ。腎機能の数値は「どの式で、どの単位で出したか」までがセットじゃぞ。

よくある質問

Q. eGFRが60以上あれば、CrClも問題ないと考えてよいですか?

A. 必ずしもそうとは限りません。eGFRは体表面積1.73m²あたりに補正された値のため、標準的な体格から離れた患者では実際のCrClと乖離します。特に小柄でやせ型の高齢者では、eGFRが60台でも体表面積未補正の値(mL/min)は40台まで下がることがあります。用量調整の判断では、体格を踏まえてCrClを算出することをおすすめします。

Q. 添付文書に「クレアチニンクリアランス」とだけ書かれている場合、eGFRの値を当てはめてよいですか?

A. 原則として当てはめるべきではありません。多くの添付文書のCrClはCockcroft-Gault式による値を想定しており、単位も体表面積補正のないmL/minです。eGFR(mL/min/1.73m²)をそのまま読み替えると、体格によっては用量区分が変わってしまいます。CrClが指定されている場合は、Cockcroft-Gault式で算出した値を使ってください。

Q. シスタチンC由来のeGFR(eGFRcys)はCrClの代わりに使えますか?

A. eGFRcysは筋肉量の影響を受けにくいため、やせ型の高齢者や四肢欠損のある患者など、血清クレアチニンでは評価しにくい場面で有用とされています。ただし添付文書の用量調整基準は主にCrCl(Cockcroft-Gault式)やeGFRで記載されているため、eGFRcysはあくまで腎機能の実像をつかむための補助情報として使い、最終的な用量判断は添付文書が指定する指標に基づいて行ってください。

参考文献

  1. 日本腎臓学会. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.
  2. 日本腎臓病薬物療法学会. 腎機能別薬剤投与量POCKET BOOK.
※ 本記事の数値・区分は参考情報です。実際の投与量調整は、添付文書・ガイドライン・患者の臨床状態を総合的に判断して行ってください。本記事の情報の利用によって生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。

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