eGFRとCrClの違いとは?
薬剤師のための使い分けと換算の考え方
検査レポートにはeGFRしか載っていないのに、添付文書はCrCl基準。
そんな場面で迷わないための考え方を整理します。
eGFRとCrClの違いは、体表面積で補正しているかどうかです。eGFRは体表面積1.73m²あたりに補正された値(mL/min/1.73m²)でCKDの診断・ステージ分類に使われ、CrClは補正のない値(mL/min)で多くの薬剤の投与量調整の基準に使われます。


違いを押さえたうえで、eGFRしか手元にないときにどうするかまで見ていこうかの。
eGFRとCrClの違い・使い分け
- eGFR — 体表面積で補正された値(mL/min/1.73m²)。CKDの診断・ステージ分類に使用
- CrCl(Cockcroft-Gault式) — 体表面積補正なしの値(mL/min)。多くの薬剤の添付文書で投与量調整の基準として採用




逆に言えば、小柄な高齢者や高度肥満の患者では乖離が大きくなる。乖離が問題になる場面こそ、次に話す換算の出番じゃ。
腎機能区分の基準値


| 区分 | CrCl | 臨床上の留意点 |
|---|---|---|
| 正常 | 90 mL/min 以上 | 通常用量で投与可。腎毒性薬に注意 |
| 軽度低下 | 60〜89 mL/min | 通常用量で投与可。腎毒性薬に注意 |
| 中等度低下 | 30〜59 mL/min | 多くの薬剤で減量・投与間隔延長が必要 |
| 高度低下 | 15〜29 mL/min | 禁忌薬の確認必須。透析導入を視野に入れた設計を |
| 腎不全 | 15 mL/min 未満 | 透析患者に準じた投与設計。禁忌薬多数 |


体表面積未補正eGFRへの換算


体表面積未補正eGFRの求め方
未補正eGFR(mL/min)= eGFR(mL/min/1.73m²)× BSA(m²)÷ 1.73


55 × 1.40 ÷ 1.73 ≒ 44.5 mL/minじゃ。区分としては同じ「中等度低下」でも、CrCl 50を境に減量が指示される薬なら判断が変わるのが分かるじゃろ。


ただしこの換算はあくまで体格の影響を取り除くための考え方じゃ。添付文書がCrClを指定しているなら、換算値ではなくCockcroft-Gault式で算出した値を使うのが原則じゃぞ。
検査レポートにeGFRしかない場合の実務対応


- 検査値に血清Crが併記されていないか確認する。あればCockcroft-Gault式でCrClを算出できる
- 血清Crがない場合は、eGFRと体表面積から未補正eGFRを求め、体格の影響を取り除いた腎機能の目安をつかむ
- 体格が標準から大きく外れる患者(小柄な高齢者・高度肥満)では、eGFRの数値をそのまま用量判断に使わない
- 減量・禁忌の境界に近い場合は、処方医に血清Cr値の確認や検査値の共有を依頼する


まとめ

- eGFRはCKDの診断・ステージ分類用(mL/min/1.73m²)
- CrClは薬の用量調整用(mL/min)。添付文書の基準を必ず確認する
- 体格が標準から離れるほど両者は乖離する。小柄な高齢者では特に注意
- eGFR × BSA ÷ 1.73 で体表面積未補正eGFRが求められる(体格の影響を取り除く考え方)
- 区分の境界付近では、血清Cr値の確認を処方医に依頼する

よくある質問
Q. eGFRが60以上あれば、CrClも問題ないと考えてよいですか?
A. 必ずしもそうとは限りません。eGFRは体表面積1.73m²あたりに補正された値のため、標準的な体格から離れた患者では実際のCrClと乖離します。特に小柄でやせ型の高齢者では、eGFRが60台でも体表面積未補正の値(mL/min)は40台まで下がることがあります。用量調整の判断では、体格を踏まえてCrClを算出することをおすすめします。
Q. 添付文書に「クレアチニンクリアランス」とだけ書かれている場合、eGFRの値を当てはめてよいですか?
A. 原則として当てはめるべきではありません。多くの添付文書のCrClはCockcroft-Gault式による値を想定しており、単位も体表面積補正のないmL/minです。eGFR(mL/min/1.73m²)をそのまま読み替えると、体格によっては用量区分が変わってしまいます。CrClが指定されている場合は、Cockcroft-Gault式で算出した値を使ってください。
Q. シスタチンC由来のeGFR(eGFRcys)はCrClの代わりに使えますか?
A. eGFRcysは筋肉量の影響を受けにくいため、やせ型の高齢者や四肢欠損のある患者など、血清クレアチニンでは評価しにくい場面で有用とされています。ただし添付文書の用量調整基準は主にCrCl(Cockcroft-Gault式)やeGFRで記載されているため、eGFRcysはあくまで腎機能の実像をつかむための補助情報として使い、最終的な用量判断は添付文書が指定する指標に基づいて行ってください。
参考文献
- 日本腎臓学会. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.
- 日本腎臓病薬物療法学会. 腎機能別薬剤投与量POCKET BOOK.
あわせて読みたい
Pharma Works
供給状況・回収・承認情報など
最新の医薬品情報をいち早くキャッチ!