調剤薬局から病院への転職は難しいと言われますが、病院が直近3年で採用した薬剤師の4割弱は新卒以外です(2021年厚労省委託調査)。難しさの中身は募集時期・年齢要件・経験要件の3つ。希望地域の病院の経験者採用ページを開いて要件を書き写す方法をまとめました。
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読者からの相談 調剤薬局で6年目、31歳の薬剤師です。内科クリニックの門前で、処方箋は1日60枚くらい。在宅は月に数件ついていく程度です。新卒のときは奨学金の返済があって薬局を選びましたが、実習で見た病棟の薬剤師が忘れられず、入院中の患者さんの薬物療法に検査値を見ながら関わりたい気持ちがずっとあります。転職サイトで病院の求人を探しても、通える範囲ではほとんど出てきません。先輩には「病院は新卒か病院経験者しか採らないよ。30過ぎたら無理」と言われました。調剤薬局から病院への転職は、やっぱり難しいのでしょうか。
📌 この記事のポイント
病院が採用した薬剤師の4割弱は新卒以外(2021年厚労省委託調査)。「病院は新卒しか採らない」は事実と異なる 難しさの中身は募集時期・年齢要件・経験要件の3つ。どれも病院の採用ページに書いてある 希望地域の病院の経験者採用ページを開いて4つを書き写すと、応募できる病院が通える範囲にあるか分かる 1 まず結論:「病院は新卒しか採らない」は事実と異なる。難しさの中身は募集時期・年齢要件・経験要件の3つで、応募資格を読めば自分の場合が分かる 2 「難しい」の中身は3つ。募集時期・年齢要件・経験要件のどれも、採用ページに書いてある 3 今夜できること:希望地域の病院の経験者採用ページを開き、年齢要件・経験要件・募集時期・自分の通算経験年数を書き写す 4 面接前に用意しておきたい「なぜ薬局から病院か」「当直・夜勤はできるか」の答えは、薬局で「薬を渡した後」に関わった経験から作る 5 病院に入ってからつまずくのは注射薬・腎機能・組織の仕事。薬局の電子処方箋・服薬情報等提供・在宅の経験は病院につながる 6 年収は、同じ年代で比べると病院の方が500万円未満の人が多い。自分の場合は求人の提示条件と年収の記事で確かめる 7 募集が出る回を待てる体制を作る。募集の出方は求人票に無いので担当者に聞く 8 まとめ:応募資格を書き写せば、自分が応募できる病院の条件が分かる。届かないなら薬局で経験年数を満たすのも同じ重さの選択 まず結論:「病院は新卒しか採らない」は事実と異なる。難しさの中身は募集時期・年齢要件・経験要件の3つで、応募資格を読めば自分の場合が分かる 今日は「調剤薬局から病院への転職は難しいのか」という相談じゃ。先に答えを言う。病院は「新卒しか採らない」わけではない。病院が直近3年で採用した薬剤師のうち、新卒以外は38.2% じゃ(厚生労働省委託調査・2021年)。
4割近くが新卒以外…。相談者さんの先輩の「新卒か病院経験者しか採らない」とは、だいぶ違いますね。
そうじゃ。難しさの中身は別のところにある。募集が欠員や増員に応じて時期を限って出ること、新卒枠と経験者枠で年齢要件が別なこと、応募要件が病院ごとに違うこと。この3つじゃ。希望地域の病院の採用ページを読めば、自分が今応募できる病院があるかは分かる。ただし「応募できる病院がある」と「受かる」は別じゃ。募集が今この瞬間に出ているとも限らん。分かるのは「自分の経験年数と年齢で受けられる病院が、通える範囲にあるか」までじゃ。
それでも、探す前に「無理」と決めていた相談者さんには、大きな違いだと思います。38.2%の中身は、薬局から来た人だけですか?
いや、「新卒以外」であって「薬局出身」ではない。病院から病院へ移った人も、企業から来た人も含む。それでも、「新卒しか採らない」が事実と違うことは、この数字で分かる。
うちの薬剤部も、中途で入った先輩は病院出身の方と薬局出身の方が両方います。「新卒だけ」ではないですね。
この後は、まず難しさの3つの中身を、病院の採用ページと厚労省の調査で確かめる。次に、今夜できる行動として、希望地域の病院の経験者採用ページを開いて4つを書き写す方法を渡す。それから面接前に用意しておきたい2つの答え、入ってからつまずく点、年収の見方、募集が出る回を待つ体制の順じゃ。
「難しい」という感覚そのものは、否定しないんですね。
せんよ。ただ、難しいのは、募集時期・年齢要件・経験要件の3つが見えていないこと じゃ。年齢は上限が無いのではなく、枠ごとに要件として確かめるもの。そこは、採用ページを読めば見える。
逆に、病院から薬局へ移りたい方が読んだ場合はどうでしょう。
この記事は調剤薬局で働く薬剤師が病院へ移る場合の話じゃ。病院がつらくて薬局へ移りたい、という逆方向の方は対象ではない。
「難しい」の中身は3つ。募集時期・年齢要件・経験要件のどれも、採用ページに書いてある ここからは、「難しい」と言われる理由を3つに分ける。先輩や知恵袋の言葉ではなく、病院の採用ページと厚労省の調査に当たって分ける。3つとも、相談者さんが自分で確かめられるところに書いてあるものじゃ。
病院の求人が見つかりにくいのは「採らない」からではなく、欠員や増員に応じて募集の時期が限られるから 1つ目は募集時期じゃ。病院の薬剤師採用とは、多くの場合、欠員や増員に応じて時期を限って出る募集のこと。薬局のように常時募集している業態ではない。
たしかに、うちの薬剤部の中途募集も、誰かが辞めたときにしか出ていない気がします。
まず、病院が中途を採っている事実から確かめよう。厚生労働省の委託調査「薬剤師確保のための調査・検討事業 報告書」(令和4年3月)じゃ。平成30年4月から令和3年3月までの3年間に病院が採用した薬剤師1,565人のうち、新卒は61.6%、新卒以外は38.2%。二次医療圏の人口規模で見ても、10万人未満で39.5%、50万人以上で39.7%。報告書も「人口規模に比例する傾向は見られなかった」としておる。
都会でも地方でも、4割近くは新卒以外なんですね。この調査、どのくらい信じていいものですか?
注意はある。調査は2021年の冬で、病院の回収率は19.8%(631施設)じゃ。「現在もこの割合」とは言えん。ただ、「新卒しか採らない」という先輩の言葉を、そのまま信じる理由が無いことは分かる。
うちの薬剤部は、いつ聞いても「人が足りない」と言っています。病院側のその不足感は、この調査にも出ているんでしょうか。
出ておる。同じ調査で、薬剤師が「全く足りない」「やや足りない」と答えた病院は64.8%じゃ。「全く足りない」に限ると、400床以上で47.8%、高度急性期機能の病院では49.3%。大きな病院ほど不足感が強い。じゃが、不足感と採用枠は別物 。足りないと思っていても、予算と定員が動かなければ募集は出ん。「大病院ほど入りやすい」とは言えん。
足りないのと、募集が出るのは別…。では、募集はどういう形で出るんですか?
公的病院機構の採用ページを見ると、出方は大きく3つに分かれる。
随時採用:欠員が出た病院が個別に募集する型。国立病院機構の関東信越グループは「薬剤師(既卒)」の枠を随時掲示。九州グループは「令和8年度中途採用(病院選考)」を随時選考、北海道東北グループは「新卒・経験者問わず」で掲示(いずれも2026年9月4日確認) 年数回の経験者採用:機構が年に数回まとめて選考する型。神奈川県立病院機構の経験者採用は令和8年度に第5回(10月30日選考)まで実施。東京都立病院機構の有資格者採用は採用月をまとめて年に数回募集する型(令和7年度は2回実施) 名簿登載型:選考に通ると採用候補者名簿に載り、欠員が出た時点で内定が出る型。地域医療機能推進機構(JCHO)九州地区の令和9年度採用要項がこの形。名簿に載っても、直ちに採用されるとは限らない 3つとも、転職サイトに常時載っている種類の募集ではないですね。知恵袋でも「満員の状態で、募集する病院はありません」という回答を見たことがあります。
2023年の相談へのベストアンサーじゃな。「求人が見つからない」は「採らない」ではなく、「今は欠員や増員の募集が出ていない」と読み替えるのが正確じゃ。相談者さんの「通える範囲ではほとんど出てこない」も、この出方のせいじゃ。探した日に出ていなくても、不思議ではない。
年齢の壁は新卒枠と経験者枠で別。「40歳まで」「30代前半まで」は確認した公的病院機構の採用ページに無い 2つ目は年齢じゃ。病院の採用ページの年齢要件とは、新卒枠と経験者(有資格者)枠で別々に書かれる受験資格のこと。年齢の上限があるのは主に新卒枠で、経験者枠は生年月日で60代前半までを上限にする例が公的病院機構にある。
「30過ぎたら無理」と言われた相談者さんには、いちばん気になるところだと思います。実際の記載を見せてもらえますか。
病院の年齢要件の実例(採用ページの記載・確認日つき)
機構 枠 採用ページの記載 実施年度・確認日 東京都立病院機構 新卒採用(免許取得見込み者) 令和9年4月1日現在35歳未満の人(平成4年4月2日以降に生まれた人) 令和9年4月採用・2026年9月4日確認 東京都立病院機構 有資格者採用 「薬剤師」の資格免許を有しており、昭和39年4月2日以降に生まれた人 令和8年6月選考分(募集終了)・2026年9月4日確認 神奈川県立病院機構 経験者採用 昭和40年4月2日以降に生まれた人 令和8年度実施・第5回・2026年9月4日確認 大阪市民病院機構 有期雇用職員 採用日において満65歳未満の方 2026年9月4日確認
新卒枠は35歳未満なのに、経験者枠は1964年か1965年の4月2日以降生まれ…。60代前半まで入るんですね。先輩の「30過ぎたら無理」とは、まるで違います。
そうじゃ。転職サイトの記事には「常勤は40歳まで」「30代前半までに動け」と書いたものがある。じゃが、根拠は示されておらん。少なくともこの3つの機構の採用ページに、そういう上限は書かれていない。ただ「40歳」で混同しやすいものが1つある。
JCHOの「40歳迄」ですか?あれは採用の上限だと思っていました。
混同しやすいところじゃ。地域医療機能推進機構(JCHO)の「入職時点で40歳迄」は、薬剤師就職支度金貸与制度の対象条件じゃ。入職時に支度金を借りられる制度の条件であって、採用の年齢制限ではない。なお、この支度金は有償の人材紹介会社経由で採用された人は対象外じゃ。JCHOを受けるなら、直接応募か担当者経由かで条件が変わる。
支度金の条件だったんですね…。でも、だからといって「年齢制限は無い」と言い切っていいんでしょうか。
それも書けん。新卒枠には上限がある。市立病院のように公務員として採用する型では、年齢要件と一般教養を含む試験がある。知恵袋にも「国公立や市立は年齢制限があります」(2023年)という声と、「昨今の年齢制限が緩くなっているのも確かです」(2026年)という声の両方がある。
どちらの声も、採用ページを読めば自分の場合が分かる話ですね。相談者さんの31歳は、経験者枠の年齢要件に入ります。新卒枠は免許取得見込みの人向けなので、既卒の相談者さんは経験者枠で見ることになりますね。
経験者枠の受験資格には入る。ただし「入る」のは受験資格であって、「受かる」ではない。ここは分けて考えてほしい。
応募要件は病院ごとに違う。薬局での調剤経験2年以上で受けられる機構と、病院経験が必須の病院がある 3つ目は経験要件じゃ。病院の経験要件とは、採用ページの受験資格に書かれる「薬剤師免許のみ」「医療機関または調剤薬局での経験〇年以上」「病院での薬剤師経験」のいずれかのこと。薬局経験で応募できるかは、この1行で決まる。
「調剤薬局での経験」を要件に書いてくれる病院が、本当にあるんですか?
薬局経験を明記して認める:神奈川県立病院機構の経験者採用(令和8年度実施・第5回)。受験資格は「薬剤師として、医療機関における職務経験、または調剤薬局での調剤経験が2年以上ある人(医療機関、調剤薬局の経験を合わせて2年以上でも可)」。職務経験は6か月以上継続して就業した期間の通算で、契約社員や派遣社員も正規と同じ勤務形態なら含む 免許のみで、薬局経験の可否を書いていない:国立病院機構の各グループの中途採用(応募資格「薬剤師免許所有者」)、岡山大学病院薬剤部の特別契約職員の随時募集(応募資格「薬剤師免許を有する者」)など。応募はできるが、薬局経験がどう見られるかは書かれていない(2026年9月4日確認) 病院経験が必須:京都済生会病院の正職員薬剤師。応募資格は「病院での薬剤師経験(2026年新卒可)」(2026年9月4日確認) 1つ目の神奈川県立は、「調剤薬局での調剤経験が2年以上」とはっきり書いてありますね。これなら、薬局出身でも応募できる病院は多いと言ってよさそうな…。
そこは言わん。薬局経験を明記して認めている例は、確認した範囲では神奈川県立の1つじゃ。多くは免許だけを書いていて、薬局経験の扱いは書かれていない。病院経験を必須にする病院もある。だから、やることは1つ。書いてあるとおりに読む。書いていなければ聞く。
相談者さんの先輩の「新卒か病院経験者しか採らない」は、3つの型のうち3番目だけを見た言葉だったんですね。1番目と2番目の病院は、先輩の視界に入っていなかったんですね。
そういうことじゃ。なお、調剤併設のドラッグストアの調剤室で働いている方は、調剤室での経験を薬局での調剤経験として数えてよい。調剤室は薬局開設許可を受けた薬局じゃからな。
ドラッグストアの調剤室も薬局なんですね。3つとも、先輩の記憶ではなく採用ページに書いてある…。
じゃから今夜やることは、その採用ページを開いて書き写すことじゃ。
今夜できること:希望地域の病院の経験者採用ページを開き、年齢要件・経験要件・募集時期・自分の通算経験年数を書き写す ここからが、この記事の核じゃ。分析でも決意でもなく、「採用ページを開いて4つを書き写す」だけの行動に入る。
書き写すのは4つだけ。書き写すと、応募できる病院が通える範囲にあるか分かる 開くのは、どこの採用ページですか?転職サイトでは見つからなかった、という相談でしたよね。
通える範囲にある公的病院機構と、大手の民間病院グループの採用ページじゃ。都道府県立や市立の病院機構、国立病院機構のグループ、大学病院、それに民間の病院グループ。「採用情報」から「薬剤師」へ進み、「経験者採用」「中途採用」「有資格者採用」のページを探す。転職サイトに無くても、機構の採用ページには募集の形が書いてある。
書き写すのは、さっきの3つに自分の経験年数を足した4つ、ということですか。
病院の採用ページから書き写す4つ
項目 採用ページのどこを見るか 自分の書き込み 年齢要件 受験資格の「〇年〇月〇日以降に生まれた人」か「〇歳未満」か。新卒枠と経験者枠を分けて読む (例:経験者枠は1965年4月2日以降生まれ→入る) 経験要件 受験資格の「免許のみ」か「医療機関または調剤薬局での経験〇年以上」か「病院での薬剤師経験」か (例:医療機関または調剤薬局2年以上→薬局6年で満たす) 募集時期 随時か、年何回か、名簿登載型か。直近の実施日と次回の予定 (例:年数回、次回は10月30日選考) 自分の通算経験年数 6か月以上継続した勤務の合計。契約・派遣も正規と同じ勤務形態なら含む例がある (例:正社員5年〇か月)
相談者さんなら、通算経験は5年以上で「2年以上」を満たしますね。年齢も31歳で、経験者枠に入ります。
そうじゃ。内科門前で1日60枚、在宅は月に数件という中身は、採用ページの経験要件には書かれん。それは面接で語る側に回す。
書き写した結果、「今は届かない」という人もいますよね。経験年数が足りなかったり、通える範囲に募集が無かったり。
当然ある。そのときの選択も、同じ重さで置いておく。経験年数が要件に足りないなら、満たすまで今の薬局で在宅や服薬情報等提供書(薬局から処方医へ返す文書)の経験を積む。これは諦めではなく準備じゃ。
準備、ですか。積んだ経験は、そのまま面接で語る材料にもなりそうですね。
そうじゃ。この後の面接の答えと、入ってからの接続に、そのまま使える。希望地域に募集が出ていないなら、募集が出る回を待つ体制を作る。これは記事の後半で扱う。どちらも「病院を諦める」ではない。書き写した要件に、自分がいつ届くかを決めるだけじゃ。
面接前に用意しておきたい「なぜ薬局から病院か」「当直・夜勤はできるか」の答えは、薬局で「薬を渡した後」に関わった経験から作る 採用ページで「受けられる」と分かった途端、次に怖くなるのが面接じゃ。薬局出身だと聞かれると考えて用意しておきたい質問が2つある。答えを、今の薬局の経験から作る。
「なぜ薬局から病院か」は、やりがいではなく薬局で「薬を渡した後」に関わった場面で答える 「なぜ薬局から病院か」は、まず聞かれると考えてよい。知恵袋に、47歳で調剤薬局から病院の面接を受ける方の相談がある(2015年)。採用面談の経験がある回答者は、想定質問として「なぜ現職を辞めて、病院勤務を目指すのか」「調剤薬局でどの診療科経験を有するか?皮膚科、整形だけなど偏っていないか?」を挙げた。
47歳でも面接まで進んでいるんですね。その質問をされた方ご本人は、想定質問をどう受け止めていたんですか。
投稿者本人も、調剤薬局のみの経験者が病院を志望する理由は必ず訊かれるところだ、と受け止めておった。ここで、「やりがいを感じたい」「成長したい」「患者さんに寄り添いたい」だけで答えると、答えにならん。
どれも、薬局でもできることですもんね。「なぜ薬局ではなく病院か」に答えていない…。落ちやすい型というより、質問に答えていない型ですね。
そのとおりじゃ。答えの材料は、薬局で「渡した後」に関わった場面 にある。薬を渡して終わりではなく、渡した後の患者の経過に自分が関わった場面じゃ。4つ挙げる。
在宅で、医師・訪問看護師・ケアマネジャーと患者の状態を話した場面。検査値や食事の様子を聞いて薬の提案をした経験があれば、それが病院の病棟でやりたいことの原型 疑義照会で処方が変わり、その後の経過を薬歴で追った場面。処方が変わった理由と、変わった後にどうなったかを自分で追ったなら、病院で処方提案をしたい理由になる 服薬情報等提供書(トレーシングレポート)を書いて処方医に返した場面。薬局から医療機関へ文書で薬剤情報を渡した経験は、病院で他施設へ文書でつなぐ仕事と同じ型の経験 退院してきた患者の薬を、退院時の情報をもとに引き継いだ場面。退院時の情報が足りなくて困った経験があれば、「病院側でそれをやりたい」につながる 4つとも、薬局の毎日の中で頻繁にある場面ではなさそうです。先生が調剤薬局にいらしたとき、「渡した後」に関われる場面はどのくらいありましたか?
多くはなかった。在宅で訪問看護師と話す日、疑義照会で処方が変わって次の来局で経過を聞ける日、退院してきた患者のお薬手帳を見て前の処方とつなぐ日。その数少ない場面で、自分が何を感じたか。「病院なら毎日これができる」とまでは言えんが、「この場面で感じたことが、なぜ病院か、の答えになる」とは言える。
相談者さんの「検査値を見ながら関わりたい」も、そのままだと薬局でもできることに聞こえてしまいますね。
じゃから、在宅で訪問看護師と検査値の話をした場面や、疑義照会で処方が変わった場面と一緒に語る。そうすれば、薬局の経験に根ざした答えになる。診療科の幅も聞かれるぞ。門前の科目と、それ以外で受けた処方箋の科目を数えておく。偏っているなら隠さず、偏っている科目の中で何をしたかを言う。
「当直・夜勤はできるか」は、月の回数と翌日の勤務をできる範囲の数字で答える 2つ目の質問は「当直・夜勤はできるか」じゃ。当直のある病院なら聞かれる。体制は病院ごとに違う。面接の前に、できる範囲を自分で決めておく。月に何回までか、翌日の勤務はどうか、家庭の事情で外せない曜日はあるか。
「できません」も「何でもできます」も、範囲が無いと病院側は判断できないですよね。うちの当直も、月の回数と翌日の勤務は人によって違います。
そのとおりじゃ。当直の回数と翌日の勤務は病院ごとに違う。薬局で6年働いて病院へ移った29歳の方が、毎日3時間以上の残業と日当直で体調を崩して退職した相談が知恵袋にある(2011年と古いが)。だから面接では、聞かれる前に自分から回数と翌日の勤務を聞く。病院に移った後の当直と残業そのものには、この記事では踏み込まん。
体制は病院で違う、というのはそういうことですね。聞かれるのを待たずに、自分から聞いたほうがいいんですね。
そうじゃ。回数と翌日の勤務を数字で言えれば、病院側も自分の体制と照らして判断できる。前の節の診療科の幅も同じで、「内科門前で1日60枚、うち糖尿病と高血圧が中心。整形外科と皮膚科は月に数件」のように数字で言えば、偏りも含めて伝わる。
病院に入ってからつまずくのは注射薬・腎機能・組織の仕事。薬局の電子処方箋・服薬情報等提供・在宅の経験は病院につながる 薬局から病院へ移った人がつまずくのは、注射薬・輸液の鑑査、腎機能に応じた用量確認、委員会などの組織の仕事、医師との距離の4つと言われる。一方で、薬局でやってきた電子処方箋の運用、服薬情報等提供書、在宅での多職種との接点は、病院側の制度が薬局との協働へ動いている今、そのまま病院で意味を持つ。
医師との距離まで入っているんですね。注射薬は想像がつきますが、「組織の仕事」でつまずくというのは…。この4つは、実際に移った人の声ですか?
そうじゃ。調剤薬局から総合病院へ移った方のnoteには、「不安しかありませんでした」「一番驚いたのは『組織で仕事をする』ということでした」とある(2025年8月)。知恵袋には、精神科病院に入職する前の相談に、注射薬の処方監査(投与速度や溶解液の種類)が新しい業務になると予測した回答がある(2011年、古い投稿じゃ)。転職したばかりの病院薬剤師の「代表者会議や院内感染対策委員会に衛生委員とかあり」という声(2021年)もある。
「組織で仕事をする」は、私も入職してすぐに驚いたところです。委員会の多さも…。移った人が皆こうなる、とは言えないですよね。
言わん。ただ、つまずく場所には型がある。つまずく点と、薬局の経験で接続するものを並べる。
病院でつまずくと言われる点と、薬局の経験で接続するもの
つまずくと言われる点 薬局の経験で接続するもの 接続する根拠 注射薬・輸液の鑑査 接続する薬局経験は、ほぼ無い 教える体制がある病院を選ぶ。「新卒のようにちゃんと指導してくれるような病院を希望するといい」(知恵袋・2025年) 腎機能に応じた用量確認 検査値付き処方箋を受けた経験、在宅で検査値を見た経験(あれば) 処方箋に検査値を添える病院の門前なら、日常的に見ている 組織の仕事・多職種 在宅で医師・訪問看護師・ケアマネジャーと話した経験 病棟の多職種との会話と、同じ種類の場面 医師との距離 疑義照会、服薬情報等提供書で処方医とやり取りした経験 医師に薬の提案を文書と電話で伝えた経験 (病院側が弱い領域) 電子処方箋の運用、保険調剤のルール 電子処方箋の運用開始は薬局85.5%・病院15.3%(厚労省・令和7年9月21日時点)
1行目の「接続する薬局経験は、ほぼ無い」を隠さないんですね。
隠さん。注射薬と輸液の鑑査は、教わるしかない。だから教える体制がある病院を選ぶことになる。知恵袋の2025年の相談で、ドラッグストアから病院を目指す方への回答が両方を正直に言っておった。「ほぼ新人さんのように思われてしまう」「新卒のようにちゃんと指導してくれるような病院を希望するといい」。
「新人扱いになるのでは」という不安は、隠さずに「教える体制を聞く」に変える、ということですね。聞き方は後で出てきますか?
最後の節で渡す。表の「医師との距離」と「病院側が弱い領域」の2行には、制度上の根拠がある。電子処方箋の運用を始めた施設は、令和7年9月21日時点で薬局が51,978施設、病院が1,222施設じゃ。オンライン資格確認を導入した施設に対する割合では薬局85.5%、病院15.3%(厚生労働省・第5回電子処方箋推進会議資料)。薬局側の方が運用経験が多いことは、数字で言える。
病院で即戦力になる、とまでは言えないですよね。うちもまだ運用が始まったばかりです。
言えん。ただ、病院側にまだ少ない経験を持って入る、とは考えられる。もう1つ。令和8年度の診療報酬改定(2026年6月施行)の個別改定項目に、「電子処方箋の活用や医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進」という項目が置かれた。
病院薬剤師と薬局薬剤師の「協働」が、改定項目の名前になっているんですね。
その中で、入院中の内服薬を見直して減らす取り組みを評価する薬剤総合評価調整加算は、転院時または退院時に施設間で文書により薬剤情報を連携することが要件になった。病院薬剤師が退院・転院時に薬剤情報を他施設へ文書でつなぐ仕事が、評価されるようになったということじゃ。薬局で書いてきた服薬情報等提供書は薬局から医療機関へ渡す文書で、同じ文書ではない。ただ「薬剤情報を整理して、他施設へ文書でつなぐ」という仕事の型は共通する。薬局で「渡した後」に関わった経験は、その型の経験じゃ。
年収は、同じ年代で比べると病院の方が500万円未満の人が多い。自分の場合は求人の提示条件と年収の記事で確かめる 年収の話も、避けずに1つだけ置いておく。同じ年代で比べると、病院の方が年収500万円未満の人が多い。だから薬局から病院へ移るときは、年収が下がる可能性を想定して、求人票と提示条件で確かめる。厚生労働省の委託調査「薬剤師確保のための調査・検討事業」(2021年調査)では、常勤の年収500万円未満の割合が20代で病院91.8%、薬局67.1%。30代で病院49.5%、薬局28.0%じゃ。
20代と30代では、病院の方が薬局より低い人が多い…。相談者さんは「下がるのは分かっている、それでも行きたい」という方だと思いますが、奨学金の返済が続いていると気になりますよね。
その前提で、いくら下がるのか、生涯で見るとどうなのか、国公立と民間で違うのかは、別の記事にまとめてある。年収で迷うなら、そちらで判断してから、この記事の書き写しに戻ってきてほしい。返済額と生活費は人によって違うので、ここでは数字を置かん。
病院薬剤師の年収がなぜ低いのか、年代別・生涯年収の比較と国公立と民間の差は、以下の記事で詳しく解説しています。
あわせて読みたい病院薬剤師の年収はなぜ低い?平均581万円の実態と年収を上げる現実的な方法
病院薬剤師の年収が低い構造的な理由を厚労省データで解説。年代別の年収差、薬局との生涯年収の比較、国公立と民間の違いまで
募集が出る回を待てる体制を作る。募集の出方は求人票に無いので担当者に聞く 最後に、募集が出る回を待てる体制じゃ。病院の募集は欠員や増員に応じて出て、大きな公的病院は年1回から数回の選考。令和8年度に経験者採用を5回実施した機構もある。今すぐ応募できる募集が無くても、次の回と、産休代替や期間限定の枠を追いかける体制を作れば、出たときに動ける。
産休代替や期間限定の枠まで視野に入れるんですね。追いかける先は、書き写した採用ページの他にもありますか?
2つある。1つ目は、書き写した機構の採用ページの次回実施日じゃ。年数回型と名簿登載型は、次の回の日程が採用ページに載る。書き写した表の「募集時期」の欄に、次回の日付を入れておく。
次回の日付まで表に入れておけば、「待つ」が具体的になりますね。2つ目は、転職サイトの担当者でしょうか。
そうじゃ。随時型の募集や、産休代替・期間限定の枠は、機構のページに出る前に担当者経由で出ることがある。期間限定や嘱託の枠から入って正職員になった、という話は個人の体験談の範囲でしか見当たらん。あるかどうかは担当者に聞くしかない。
担当者に聞くことは、求人票にも採用ページにも書かれないことに絞る、ということですね。
「病院の中途枠を紹介した実績はありますか。直近でどの病院に、病院経験なしの人が入りましたか」。実績が病院名と人数で返ってくるかを見る 「産休代替・期間限定・嘱託の枠で、正職員への登用実績がある病院はありますか」。期間限定から入る道が、通える範囲にあるかを確かめる 「病院経験なしで入った人が、入職後に注射や病棟でどう教わりましたか」。前の節の「教える体制」を、実例で聞く 3つ目が、さっきの「教える体制」の聞き方なんですね。相談者さんなら、通える範囲の機構の次回実施日を表に書き写して、担当者にこの3つを聞いて、出たときに面接の答えで受ける。この順ですね。
そうじゃ。今すぐ応募できなくても、体制は今夜作れる。転職サイトは「登録して待つ」道具ではなく、「聞くことを持って使う」道具じゃ。どの転職サイトをどう使うかは、選び方をまとめた記事がある。
🔍 比較ガイド 薬剤師転職サイトの選び方・使い方
登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説
まとめ:応募資格を書き写せば、自分が応募できる病院の条件が分かる。届かないなら薬局で経験年数を満たすのも同じ重さの選択 この記事のまとめ
1 病院の採用の4割弱は新卒以外(2021年調査・直近3年)。「新卒しか採らない」は事実と異なる 2 難しさの中身は募集時期・年齢要件・経験要件の3つ。どれも採用ページに書いてある 3 希望地域の病院の経験者採用ページを開き、4つを書き写すと応募できる病院があるか分かる 4 面接の「なぜ薬局から病院か」は、薬局で「渡した後」に関わった場面で答える 先輩の言葉ではなく、採用ページの1行で決めるんじゃ。今夜、通える範囲の機構の経験者採用ページを開いて、年齢要件・経験要件・募集時期・自分の通算経験年数の4つを書き写す。そこまでやれば、「難しい」が「今は届く」か「まだ届かない」かに変わる。
書き写した結果、経験年数が届かない人は、今の薬局で要件の年数まで積んでから受ける。それも転職と同じ重さの選択なんですね。
そうじゃ。届いているなら、面接で聞かれる2つの答えを薬局の経験から用意して、募集が出る回を待つ体制を作る。書き写した要件と面接の答えを持って、募集の出方を担当者に聞いてみるとよい。求人票に書かれないことは、聞けば分かる。
「難しい」で止まっていた相談者さんが、今夜、採用ページを開くところから始められそうです。
🔍 比較ガイド 薬剤師転職サイトの選び方・使い方
登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説
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