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病院薬剤師が調剤薬局への転職で後悔しないために|見学と面接で確認したい5つのこと

公開日:

病院薬剤師が調剤薬局へ転職して後悔するかを完全には予測できません。ただ、病院で当たり前だった検査値・処方意図・相談相手が薬局でどう変わるかは、移る前にかなり確認できます。年収や勤務条件を比べたうえで、病院出身者が見落としやすい5つを見学と面接で確認する方法をまとめました。

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薬剤師じいさん

薬剤師じいさん

薬剤師歴70年の大ベテラン。病院・薬局・ドラッグストアすべてを経験してきた生き字引。豊富な経験と公的データに基づいて、若手薬剤師の悩みにズバッと答えます。

みさ

みさ

新卒2年目の若手薬剤師。病院で働いているけど、年収やキャリアに不安を感じている。全国の悩める若手薬剤師を代表して、気になることをどんどん質問していきます!

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読者からの相談

急性期病院で4年目の薬剤師です。病棟を1つ担当していて、仕事は好きです。ただ、来年結婚する予定で、今の給料と当直のある生活では続けていける気がせず、調剤薬局への転職を考え始めました。先週、去年薬局に移った同期と会ったら「年収は上がったけど、検査値もカルテも見られなくて、処方箋だけで患者さんの状態を推理してる。分からないときに聞く相手もいない」と言っていて、それを聞いてから求人を開けなくなりました。病院薬剤師が調剤薬局に転職して後悔するのは、どういう場合なのでしょうか。

📌この記事のポイント
  • 後悔するかを完全に予測はできないが、病院で当たり前だった環境が薬局でどう変わるかは移る前に確認できる
  • 年収や勤務条件は別に比べる。見落としやすいのは検査値・処方意図・患者の状態・相談相手・学ぶ環境の5つ
  • 今夜できるのは、今日1日で使った情報源と相談相手を書き出すこと。その変化を見学と面接で聞く

まず結論:後悔するかを完全には予測できない。ただ、病院で当たり前だった環境が薬局でどう変わるかは、見学と面接で移る前に確認できる

先生
今日は「病院薬剤師が調剤薬局へ転職して後悔するのはどういう場合か」という相談じゃ。先に答えを言う。後悔するかどうかを完全に予測することはできん。ただ、病院で当たり前に使っていた検査値・処方意図・相談相手が薬局でどう変わるかは、移る前にかなり確認できる。
新人
「完全には分からない」と正直に言うんですね。相談者さんの同期の方の話を聞くと、行ってみないと分からないもののように思えてしまいますが、確認できる部分もある、と。
先生
年収や勤務時間、休日のような通常の転職条件は、求人票と面接で比べる。それとは別に、病院の建物の中にあって当たり前すぎて、求人票を見ても気づきにくい環境が5つある。そこは見学と面接で聞かんと分からん。
新人
通常の条件は通常どおり比べて、それに加えて病院出身者が見落としやすい5つを確認する、という二段構えなんですね。この記事では何をするんでしょう。
先生
やることは3つじゃ。今夜、今日1日で使った情報源と相談相手を5行書き出す。見学と面接で、それが薬局でどう変わるかを聞く。年収や勤務条件と並べて選ぶ。薬局で新しく得るものもあるから、それも同じ重さで見ていく。
新人
「後悔しませんよ」と励ますのではなくて、確認できることを確認した状態で決める、ということなんですね。ところで、この記事は病院がつらくて辞めたい人向けではない、ということでいいですか?
先生
そうじゃ。病棟がつらい、当直で身体がもたない、そもそも辞めるべきか迷っておる人は、失うものを数える前に「辞めるべきかどうか」の判断が先じゃ。今日の話は、病院の仕事は嫌いではないが、生活や給与を理由に薬局を考えておる人に向けておる。

病棟業務がつらくて辞めるべきか迷っている方は、先にこちらの記事で判断基準を整理してください。

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病院から調剤薬局へ移る薬剤師は珍しくない。転職を考える理由の1位は「給与水準」

先生
まず、病院から薬局へ移るのが珍しい選択ではないことを数字で見ておく。厚生労働省の「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計」(2025年12月公表)では、届出薬剤師329,045人のうち、病院の従事者は57,595人で17.5%。薬局の従事者は197,437人で60.0%じゃ。
新人
病院薬剤師は全体の2割もいないんですね。病院にいると周りが全員病院薬剤師なので、少数派という感覚はあまりなかったです。平均年齢も違うんでしょうか。
先生
同じ統計で、平均年齢は病院42.5歳、薬局46.8歳じゃ。分かるのは、薬局が最も大きな就業先で、病院薬剤師は少数派だということまでで、この統計は誰がどこへ移ったかを示すものではない。転職を考えておる病院薬剤師も少なくない。
新人
「少なくない」と聞くと、相談者さんも少し安心しそうです。数字で言うと、どのくらいなんでしょう。
先生
厚生労働省の委託調査「薬剤師確保のための調査・検討事業 報告書」(2022年3月。調査は2021年11月〜2022年1月)では、病院薬剤師2,320人のうち33.9%が転職を希望・検討しておった。1年以内が5.6%、数年以内が28.3%じゃ。
新人
3人に1人…。同じ薬剤部の中にも、口に出さないだけで考えている人がいそうです。希望先はやはり薬局が多いんですか?
先生
1年以内の転職を希望する130人の希望先は、薬局36.9%、病院・診療所41.5%、その他21.5%。転職を希望する理由の1位は「給与水準」で36.5%、2位は「業務の内容・やりがい」14.2%じゃった(786人)。調査が2021年冬で、1年以内希望者は130人と少ない。いまも同じ割合とは言えんが、給与を入口に薬局を考える病院薬剤師が珍しくないことは分かる。
新人
相談者さんの同期も、給与が理由で薬局に移ったんですよね。給与を入口に考えるのは、珍しいことではないんだ…。
先生
珍しくはない。ただ、この調査は転職を考える理由を聞いたもので、移ったあとに後悔したかどうかを調べたものではない。後悔するかどうかは、この数字からは分からん。じゃから、給与や勤務条件を比べるのとは別に、病院で何を当たり前に使っていたかを知ったうえで薬局を見る必要がある。

病院で当たり前すぎて見落としやすい5つのもの:検査値・処方意図・患者の状態・相談相手・学ぶ環境

先生
求人票を見ても気づきにくい環境とは、病院の建物の中に置いてある5つのもののことじゃ。どれも「自分の能力」ではなく「建物の中に置いてあるもの」なので、建物を出ると手元から消える。
  • 検査値・カルテ:処方を判断するときに見ていたもの。腎機能・肝機能・注射指示・入院経過
  • 処方意図の確認先:疑義照会の前に「なぜこの処方か」を聞ける担当医、回診、カンファレンス
  • 患者の状態の情報源:看護記録、ベッドサイド、申し送りで得ていた「今日の患者の様子」
  • 相談相手とDI:分からない薬や稀な疑義を聞ける先輩薬剤師、薬剤部の勉強会、DI室
  • 学ぶ環境:認定・専門薬剤師の取得要件(症例、所属施設)、研究・学会への参加
新人
5つとも、私も病棟で毎日使っています。eGFRを見て用量を確認して、分からなければ担当医に聞いて、看護記録で今日の様子を確認して…。「当たり前すぎて、あるとすら思っていなかった」という感じです。薬局側では、これがどうなるんでしょう。
先生
わしが調剤薬局におった頃の話に限って言う。手元にあった情報は、処方箋とお薬手帳と、患者さんからの聞き取りがほぼ全部じゃった。検査値は、患者さんが持参した紙か、口頭でしか分からん。処方の意図を確かめる手段は疑義照会の電話だけで、相手は医事課やクラークを経由することが多く、処方医と直接話せるまでに時間がかかった。
新人
疑義照会の電話が、処方意図を知る唯一の窓口…。病院だとPHSで聞けるところが、薬局だと何段階か挟まるんですね。相談相手のほうはどうでしたか?
先生
同じ時間帯に薬剤師が自分1人という時間があり、その間は聞く相手がおらんかった。これはわしのいた薬局の話で、すべての薬局がそうだとは言わん。ただ、薬局へ移った人の声は、同じところに集まっておる。
  • 「薬局では患者の情報が限定的で、処方箋だけで状態を推理している」
  • 「カルテや検査値が見られない。他職種との交流も減った」
  • 「認定・専門薬剤師の取得要件が、薬局では満たしにくい」
  • 「保険のルール、一般名処方、一包化の判断を、病院ではほとんど知らなかった」
新人
相談者さんの同期が言っていた「処方箋だけで推理している」は、上の1〜3番目そのものですね。「聞く相手がいない」は4番目。年収は上がったのに後悔しているのは、建物の中にあった5つが手元から消えたからなんですね…。
先生
そう読める。もちろん、年収や勤務条件で後悔する人もおる。それは求人票と面接で比べられる。この5つは求人票に書いておらんから、先に自分の側を書き出す必要がある。相談者さんの今日1日を思い出せば、全部書き出せる。

今夜できること:今日1日で使った情報源と相談相手を書き出す

先生
ここからが今日の核じゃ。やることは分析でも反省でもない。今日使ったものを書き出すだけじゃ。
今日1日で使った情報源と相談相手を、検査値・カルテ、処方意図の確認先、患者の状態の情報源、相談相手とDI、学ぶ環境の5行に書き出すと、薬局で聞くことが決まることを示した図
書き出すのは5行だけ。書き出すと、薬局で聞くことが決まる

今日1日で使った情報源と相談相手を書き出す(右列は薬局に聞いて埋める)

項目病院で今日使ったもの(書き出す例)薬局で聞くこと
検査値・カルテ今日、処方を判断するときに見た検査値・カルテの項目(例:eGFR、肝機能、入院時の処方歴)(空欄のまま)
処方意図の確認先今日、処方の意図を聞いた相手(例:担当医、回診、カンファレンス)(空欄のまま)
患者の状態の情報源今日、患者の様子を知った経路(例:看護記録、ベッドサイド、申し送り)(空欄のまま)
相談相手とDI今日、分からないことを聞いた相手・調べた場所(例:先輩薬剤師、DI室、薬剤部の資料)(空欄のまま)
学ぶ環境続けたい学び(例:取得中の認定、参加している研究や勉強会)(空欄のまま)
新人
右列が空欄なのが気になります。ここは自分で埋めるものではないんですか?
先生
右列は自分では埋められん。薬局に聞いて埋めるものじゃ。今夜書くのは左列だけ。書き方のコツは3つある。「今日1日」に限定すること。1か月分を思い出そうとすると書けなくなる。使わなかった項目は空欄でよいこと。空欄は「薬局でも要らん」と判断する材料になる。5分で終わる粒度で書くこと。
新人
今日1日、5分、空欄OK。それなら当直明けでも書けそうです。相談者さんなら、左列は「病棟のカンファレンス」「担当医」「入院時の検査値」「DIの先輩」と埋まりそうですね。
先生
それで十分じゃ。左列が埋まったら、右列は薬局に聞くしかない。じゃから次は、聞く言葉じゃ。

書き出した5項目が薬局でどう変わるか、見学と面接で聞く5つの質問

先生
左列の5項目それぞれについて、薬局側で「代わりになるもの」があるかを聞く質問に変えていく。「代わりになる」は「同じものが手に入る」ではない。「病院より少ないが、無いわけではない」の水準で、何がどれだけあるかを確かめる。答えは有無の二択ではなく、運用の中身で読む。先に完成形を表にしておく。

見学と面接で聞く5つの質問と、答えの読み方

項目薬局で聞く質問答えの読み方
検査値・カルテ検査値が記載された処方箋を出す病院の門前ですか。電子処方箋への対応と、電子カルテ情報共有サービスのモデル事業への参加状況や本格運用後の導入予定は検査値付き処方箋の門前なら情報の一部が手元に来る。載っていない場合は、検査値をお薬手帳・持参物・聞き取りでどう補っているかを聞く
処方意図の確認先疑義照会以外で処方医と直接やり取りする機会(カンファレンス、勉強会、連絡先)はありますか。トレーシングレポートは月に何件出し、医師からの返信はありますか直接話す機会や返信の実績があるなら接点がある。件数だけで判断せず、返事が来ているかで読む
患者の状態の情報源在宅・施設の患者は月に何人ですか。来局時以外に患者の状態を把握する運用(電話でのフォローアップ、次回来局時の聞き取りの記録)は何ですか在宅があれば生活の場と多職種に会える。在宅が少なくても、フォローアップの運用を具体的に答えられるなら経路はある
相談相手とDI同じ時間帯に薬剤師は何人いますか。1人の時間帯があるなら、その間に相談できる先(本部のDI、他店舗、薬剤師会)と返事の速さは店舗内に相談相手がいない時間帯でも、外の窓口がすぐ使えるなら代わりがある。窓口の名前と返事の速さまで答えが返るかで読む
学ぶ環境取得を支援している認定・専門薬剤師は何ですか。研修は勤務時間内ですか。最近誰が何を取りましたか「支援制度はあるが取った人がいない」は要注意。実績まで聞く
新人
全部「何が」「何人」「何件」で答えが返ってくる聞き方になっていますね。「雰囲気はどうですか」みたいな聞き方だと、どの薬局も「アットホームです」と答えそうですし…。
先生
そうじゃ。答えが数と運用の中身で返る聞き方にしておく。ここからは、表の5行を3つに分けて、聞く根拠と答えの読み方を渡す。

検査値と処方意図は、検査値付き処方箋・電子処方箋・処方医との接点の運用で聞く

先生
左列の1番目と2番目は、3つの運用で聞く。1つ目は、検査値が記載された処方箋を出す病院の門前かどうかじゃ。院外処方箋に腎機能などの検査値を載せる病院は増えておるが、全国的にはまだ載っておらん処方箋のほうが多い。門前の病院が載せておるかどうかで、薬局に来る情報の量が大きく変わる。
新人
うちの病院も、院外処方箋に検査値を載せています。あれが薬局側でどれだけ使われているのか、病院にいると分からないんですよね。2つ目は電子処方箋ですか?
先生
そうじゃ。厚生労働省の電子処方箋推進会議の資料(2025年9月)では、2025年9月21日時点で電子処方箋の運用を始めておる施設の割合(オンライン資格確認を導入済みの施設が分母)は、薬局が85.5%、病院が15.3%じゃった。薬局側はほぼ対応済みで、差が出るのは門前の病院側、ということになる。
新人
薬局が85%で病院が15%…。病院側の遅れが、そのまま薬局に来る情報の差になるんですね。電子カルテ情報共有サービスというのも聞くようになりましたが、あれは薬局でも使えるんですか?
先生
厚生労働省の概要案内(医療機関・薬局向け、2026年7月版)では、患者がマイナ保険証で同意した範囲で、傷病名・アレルギー・感染症・検査43項目などを、薬局を含む医療機関等が閲覧できる仕組みとされておる。2025年2月からモデル事業が順次始まった段階で、厚生労働省は2026年度の冬頃からの全国的な運用開始を目標にしておる。閲覧できるのは患者が同意した項目に限られる。
新人
つまり「薬局で検査値が見られる」のはこれから広がる話で、今は「モデル事業に参加しているか、本格運用後に導入する予定か」を聞く、ということですね。3つ目のトレーシングレポートは、病院側で受け取ることはあっても、出す側の事情は知らないです。
先生
トレーシングレポートとは、薬局が服薬状況や患者から聞き取った情報を、処方医へ文書で提供するものじゃ。疑義照会のように処方を変えてもらうための連絡ではなく、次回の処方に活かしてもらうための情報提供でな。ただし、薬局から医師への一方向の文書じゃから、件数が多いだけでは処方意図を確かめる手段にはならん。医師から返信が来ておるか、カンファレンスや勉強会で処方医と直接話す機会があるかまで聞く。
新人
病院で受け取る側だったときは「薬局からの報告書」くらいの認識で、返事を書いた記憶もあまりないです…。返信があるかどうかで、つながりの太さが分かるんですね。答えはどう読めばいいですか?
先生
「検査値付き処方箋の門前」「処方医と直接話す機会がある」「トレーシングレポートに返信が来ている」なら、左列1・2の情報の一部は手元に来る。件数だけ多くて返事が無いなら一方通行じゃ。「疑義照会以外は無い」なら、処方意図は電話でしか確かめられん、と読む。

患者の状態と相談相手は、在宅の比重・フォローアップの運用・相談できる窓口で聞く

先生
左列の3番目と4番目は、在宅の比重と、来局時以外の運用と、相談できる窓口で聞く。在宅・施設の患者が月に何人おるか、医師・訪問看護師・ケアマネジャーと直接会う機会があるか。在宅は、患者の生活の場と多職種に会う機会が、薬局側で唯一まとまってある業務じゃ。
新人
在宅なら病棟と同じ、とまでは言えないですよね。在宅が少ない薬局だと、患者さんの様子を知る経路は無くなってしまうんでしょうか。
先生
無くなるとは限らん。調剤後に電話で状況を確認するフォローアップや、次回来局時の聞き取りを、誰がどう記録しておるか。ここを具体的に答えられる薬局なら、在宅が少なくても患者の状態を知る経路はある。在宅の人数だけで決めんことじゃ。
新人
在宅の人数だけで決めない、と。相談相手のほうは人数で聞くんですよね。「処方箋40枚に薬剤師1人」という基準を聞いたことがありますが、あれで目安を立てるのはだめなんですか?
先生
あれは薬局の業務体制の省令にある配置の基準であって、薬剤師1人あたりの上限でも、負荷の目安でもない。ここでは使わん。聞くのは「同じ時間帯に薬剤師は何人いますか」「1人の時間帯があるなら、その間に相談できる先と、返事が返るまでの速さは」の2つじゃ。本部のDI、他店舗の薬剤師、地域の薬剤師会。窓口の名前と返事の速さまで答えが返るなら、店舗に1人の時間帯があっても相談相手はおる。
新人
「1人の時間帯がある=相談相手なし」ではなくて、外の窓口がすぐ使えるかで読むんですね。病院の薬剤部で「同じ時間帯に自分1人」は想像しにくいので、ここは相談者さんも見落としやすいところかもしれません。

学ぶ環境は、認定取得の支援と研修が勤務時間内かで聞く

先生
左列の5番目は、3つ聞く。取得を支援しておる認定・専門薬剤師は何か、費用と受講時間は勤務扱いか。研修・勉強会は勤務時間内か時間外か。学会・研究発表の実績はあるか。
新人
認定・専門薬剤師のなかには、症例数や所属施設の要件で、病院でしか要件を満たしにくいものがある、という声が先ほどありました。取得中の人はどうすればいいんでしょう。
先生
左列5に「取得中の認定」が書かれておって、右列が埋まらんなら、「病院で取ってから移る」という選択がここで残る。後の節でもう一度触れる。答えの読み方は、「支援制度が求人票に書いてあるが、実際に取った人がいない」を要注意と見ることじゃ。「最近、誰が何を取りましたか」まで聞く。
新人
制度があることと、使われていることは別なんですね。5つの質問が揃うと、見落としやすい側はだいぶ見えてきました。

薬局で得るもの:「渡した後を見る」仕事は制度上も増えている

先生
失うものだけ見て終わるのは片手落ちじゃ。薬局の仕事は「薬を渡して終わり」ではなくなっておる。薬剤師は、調剤した薬の適正な使用のために必要があると認めるときは、患者の使用状況を継続的に把握し、必要な情報提供と指導を行う義務を負う。薬剤師法第25条の2第2項、2020年9月施行じゃ。
新人
渡した後の把握が、薬剤師法で義務になっているんですね。病棟でやっている「投与後の経過を見る」に近い話に聞こえます。
先生
報酬のほうも同じ向きに動いておる。2026年6月の調剤報酬改定で、かかりつけ薬剤師指導料と包括管理料は廃止され、服薬管理指導料に統合された。そのうえで、かかりつけ薬剤師が調剤後に電話などで状況を確認した場合と、患者宅を訪問して残薬や服薬状況を確認し医療機関へ情報提供した場合が、加算で評価されるようになった。制度事実を3つ、年と出典つきで並べておく。
  • 薬剤師法第25条の2第2項(2020年9月施行):調剤した薬剤の適正使用のため必要があるときは、使用状況を継続的に把握し、情報提供と指導を行う義務
  • 令和8年度調剤報酬改定(2026年6月施行):かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料は廃止され、服薬管理指導料に統合。調剤後のフォローアップと患家への訪問は、それぞれ加算として評価
  • 処方箋受取率(院外処方の割合)82.2%(2025年度・日本薬剤師会の推計):外来の処方箋の8割超が薬局で受け付けられている推計。患者と継続して会う場は、薬局側に多い
新人
処方箋の8割超が院外なら、退院後の患者さんに毎月会えるのは薬局のほうなんですね。病院だと、退院した患者さんがその後どうなったかは、再入院しない限り分からないです。
先生
それが薬局で得るものの1つ目じゃ。患者と継続して会えること。2つ目は、在宅で生活の場を見られること。3つ目は、処方全体を1人で見る判断じゃ。複数の科から出た処方の重複や相互作用を、最後に見るのは薬局側じゃからな。この3つは、見落としやすい5つと同じ重さで見てほしい。
新人
先生ご自身は、薬局で続けて会うことで何か見えたことはありましたか?
先生
わしの経験で言えば、同じ患者さんに毎月会い続けて初めて分かったことがある。病院で処方された薬が、家ではどう飲まれていたのか。残薬がどこにどれだけあるのか。病院から来た薬剤師が、病棟でやっていた「渡した後を見る」を、薬局の在宅でそのまま続けている姿も見た。これはわしのいた薬局での観察で、どの薬局でも同じとは言わん。
新人
どの薬局でも同じではない…。だからこそ、前の節の右列を聞くんですね。制度どおりに動いている薬局を選べるかどうかが、後悔を減らす分かれ目の1つになる。

年収は「薬局へ移れば必ず上がる」とは言えない

先生
年収にも触れておく。調剤薬局へ移れば年収が必ず上がる、とは言えん。厚生労働省の「第25回医療経済実態調査」(2025年11月公表、令和6年度)では、一般薬剤師の平均給与は一般病院で581.1万円、保険薬局(法人)で480.3万円と、病院のほうが高い。薬局の管理薬剤師は726.2万円と高いが、管理薬剤師になるかどうかは別の判断じゃ。
新人
え、平均は病院のほうが高いんですか。相談者さんの同期のように上がった人の話ばかり聞くので、意外です。
先生
上がる人はおる。ただ、平均はこうなので、年収は求人票の実額で比べることじゃ。年収や勤務条件は求人票と面接で比べ、5つの環境は見学と面接で聞く。物差しが違うだけで、どちらも要る。年収だけで選ぶと5つが見えんまま移ることになるし、5つだけ見て年収を確かめんのも危うい。
新人
「年収は年収で比べる」「5つは右列で比べる」と、物差しを分けて両方やるんですね。年代別の差や、病院に残ったまま年収を上げる方法は、別の記事にまとまっているんですか?

年代別の年収差や生涯年収、病院に残ったまま年収を上げる方法は、こちらの記事で整理しています。

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大手か中小かは優劣ではなく、5項目がその店舗でどうなっているかで選ぶ

先生
「大手チェーンと中小薬局のどちらが後悔しにくいか」もよく聞かれる。優劣では決まらん。年収や勤務条件を比べたうえで、前の節の右列、つまり検査値・処方意図・患者の状態・相談相手・学ぶ環境が、その店舗でどうなっているかで決める。
新人
薬局で働いている友人からは「大手は合わなければ店舗異動で調整できるし、研修と福利厚生が整っている」と聞きました。一方で「大手の中途採用は即戦力・全国勤務・管理薬剤師候補が前提になりやすい」という話も見かけます。
先生
中小については「即戦力を高い提示額で募集しやすく、シフトの相談に応じやすい」という声がある。どれも一人ひとりの経験で、会社の優劣を決める材料にはならん。決め手は、同じ会社でも店舗で右列が変わることじゃ。
新人
在宅の比重も、同じ時間帯の薬剤師数も、門前の病院が検査値を載せているかも、店舗ごとに違いますもんね。だから会社ではなく店舗で聞く、と。
先生
そうじゃ。業態を調剤薬局に決めて、在宅の比重や人員のような条件で店舗を探す段階に入ったら、自分の条件から合う転職サイトを診断で絞る方法もある。転職を決めておらんでも使える。
新人
トレーシングレポートの件数のような条件は、診断では絞れないですよね?
先生
そこは診断の軸に無い。次の節で、担当者に聞く側に回す。
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病院に戻れるかで決めず、戻りたい理由が生まれにくい薬局を選ぶ。聞くことは求人票に無いので担当者にも聞く

先生
薬局から病院への再転職ができないわけではない。ただ、中途採用の有無や応募要件は病院ごとに違う。将来病院へ戻る可能性を残したいなら、希望する地域や病院の中途募集の実績と必要な経験も、転職前に確認しておくとよい。

薬局から病院へ移るときの募集の出方と、年齢要件・経験要件の読み方は、以下の記事で解説しています。

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新人
「戻れない」と決めつけなくていいんですね。「戻れるか」を気にして決められなくなる方は多そうです。
先生
そのうえで、「戻れるかどうか」だけで選ぶのではなく、「戻りたい理由が生まれにくい薬局」を選ぶ。右列が埋まる薬局なら、戻りたい理由は減る。
新人
右列を聞いた結果、「今は移らない」という判断になることもありますか?
先生
ある。左列5に取得中の認定があって右列が埋まらんなら、「病院で認定を取ってから移る」が選択肢に残る。「今の病院に残る」も同じ重さで残してほしい。書き出しの目的は、移ることではなく、後悔を減らす選び方をすることじゃ。
新人
移ることが目的ではない、というのは大事ですね。ただ、右列の5項目は求人票には書いていないですよね。見学と面接で全部聞くしかないんでしょうか。
先生
見学と面接で聞くことになるが、その前に、転職サイトの担当者に同じ言葉で聞いておくと、見学に行く店舗を絞れる。聞く言葉はこのままで構わん。
  • 「病院出身の薬剤師を紹介した薬局で、在宅とトレーシングレポートをやっている店舗はどこですか」
  • 「その店舗の同じ時間帯の薬剤師数と、門前の病院が検査値付き処方箋を出しているかを確認してもらえますか」
  • 「病院出身者がその店舗で定着していますか。最近辞めた人がいれば、理由は分かりますか」
新人
3つとも、答えが店舗名と人数で返ってくる聞き方ですね。相談者さんが求人を開けなくなったのは、同期の後悔が自分にも起きるかどうかが分からなかったから…。右列を聞けば、少なくとも同期が失ったものが手元に残るかは、移る前に分かるんですね。
先生
そうじゃ。完全な予測はできんが、確認できることを確認して決めるのと、分からんまま決めるのとでは、後悔の残り方が違う。左列の5行と、この3つの言葉があれば、話は具体的に進む。どのサイトの担当者に聞くかは、選び方を知っておくとよい。
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薬剤師転職サイトの選び方・使い方

登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説

まとめ:後悔を完全には防げない。ただ、見落としやすい5つは移る前に確認できる

この記事のまとめ

  1. 1後悔するかを完全に予測はできないが、病院で当たり前だった環境の変化は移る前に確認できる
  2. 2年収や勤務条件は別に比べる。見落としやすいのは検査値・処方意図・患者の状態・相談相手・学ぶ環境の5つ
  3. 3今夜、今日1日で使った情報源と相談相手を書き出す。右列は見学と面接で薬局に聞く
  4. 45つを確認した薬局を選ぶ。病院で認定を取ってから移る選択も、残る選択も同じ重さ
先生
後悔するかどうかを完全に予測することはできん。ただ、病院の建物の中にあって当たり前だったものが薬局でどう変わるかは、移る前にかなり確認できる。同期の話が怖かったのは、何を失うかが分からなかったからで、書き出してしまえば、薬局で聞くことが決まる。
新人
「行ってみないと分からない」が全部ではなくて、確認できる部分がこれだけあるんだと分かりました。左列を書いた結果、病院で認定を取ってから移る、と決める方もいそうですね。
先生
それも同じ重さの選択じゃ。年収や勤務条件は求人票と面接で比べるとして、今夜やることは、今日使った情報源と相談相手を5行書くことだけ。右列は、薬局と転職サイトの担当者に聞く。病院出身者が定着している店舗を担当者に聞いてみるだけでも、見学に行く店舗が絞れる。
新人
5行書いて、3つ聞く。相談者さんも、今夜そこから始められそうです。
🔍
比較ガイド

薬剤師転職サイトの選び方・使い方

登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説

よくある質問

Q. 病院薬剤師が調剤薬局に転職して後悔するのはどんな場合ですか?

A. 後悔として語られやすいのは、病院で当たり前に使っていた検査値・カルテ、処方意図を確認できる医師、患者の状態の情報源、相談相手とDI、学ぶ環境の5つが薬局で手元から消えることです。年収や勤務時間・休日で後悔する場合もあるので、それらは求人票と面接で比べたうえで、5つが薬局でどう変わるかを見学と面接で確認すると見落としを減らせます。後悔を完全に防ぐ方法はありません。

Q. 病院薬剤師から調剤薬局への転職で、後悔しないために面接で何を聞けばいいですか?

A. 検査値付き処方箋を出す病院の門前か、処方医と直接話す機会とトレーシングレポートへの返信の有無、在宅の人数と来局時以外に患者の状態を把握する運用、同じ時間帯の薬剤師数と1人の時間帯に相談できる窓口、認定取得の支援と実績の5つです。答えは有無の二択ではなく運用の中身で読み、「支援制度はあるが取った人がいない」のような答えは要注意と見ます。

Q. 病院薬剤師が調剤薬局に転職すると年収は上がりますか?

A. 必ず上がるとは言えません。厚生労働省の第25回医療経済実態調査(令和6年度)では、一般薬剤師の平均給与は一般病院581.1万円、保険薬局(法人)480.3万円と病院のほうが高く、薬局の管理薬剤師は726.2万円です。上がる人もいるので、年収は求人票の実額で比べ、失うものは別の物差しで比べてください。

Q. 病院薬剤師の経験は調剤薬局でどう活きますか?

A. 薬剤師法第25条の2第2項により、薬剤師は調剤後も必要に応じて服薬状況を継続的に把握し情報提供と指導を行う義務を負い、2026年6月の調剤報酬改定では調剤後のフォローアップと患家への訪問が加算で評価されるようになりました。病棟で「渡した後を見る」ことをしてきた経験は、在宅やフォローアップに取り組む薬局でそのまま接続します。

Q. 調剤薬局に転職した後、病院に戻ることはできますか?

A. できないわけではありません。中途採用の有無や応募要件は病院によって異なるため、戻る可能性を残したいなら希望する地域・病院の中途募集の実績や必要な経験を転職前に確認してください。そのうえで、検査値・処方意図・患者の状態・相談相手・学ぶ環境が薬局でどう変わるかを確認し、戻りたい理由が生まれにくい薬局を選ぶことが後悔を減らします。取得中の認定があるなら、病院で取ってから移る選択も残ります。