試用期間中に「本採用は難しい」と言われた薬剤師へ。解雇や退職勧奨を告げられても、すぐに退職届を書く必要はありません。言われた内容をメールで記録する方法、離職理由・退職日の確認点、会社都合の扱いや次の転職での伝え方を解説します。
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読者からの相談 調剤薬局から別の調剤薬局に転職して2か月、試用期間中の薬剤師です。先日、薬局長との面談で「処方箋の枚数についていけていないし、本採用は難しいと思う。自分から辞めることも考えてみて」と言われ、来週までに返事がほしいと言われました。試用期間なら会社は自由に辞めさせられるのか、言われたとおり退職届を書くしかないのか分かりません。数か月で辞めたことが次の転職でどう見られるのかも怖いです。
📌 この記事のポイント
試用期間の本採用見送りも解雇にあたり、会社が自由にできるものではない その場で返事も退職届もせず、解雇・退職勧奨・延長のどれに当たるかを確かめて当日中にメールで記録する 退職勧奨に応じるなら離職理由と退職日を、解雇なら理由の書面を確かめてから次へ進む 1 まず結論:試用期間の本採用見送りも解雇。その場で退職届を書かず、言われたことがどれに当たるかを確かめて記録する 2 「本採用は難しい」と言われたら、解雇・退職勧奨・延長のどれに当たるかを確かめる 3 はっきり解雇と言われないときは、退職のお願いと受け取って持ち帰り、当日中にメールで記録する 4 退職勧奨に応じるなら、退職届を書く前に離職理由と退職日を確かめる 5 解雇を告げられたら、予告の有無と解雇の理由を書面でもらう 6 試用期間に解雇や退職勧奨で辞めたことは次の転職に伝わる?会社都合になる? 7 試用期間で言われた理由を、次の職場で確かめる条件に言い換える 8 まとめ:試用期間で解雇や退職勧奨を告げられたら、その場で書かず、記録して確かめてから決める まず結論:試用期間の本採用見送りも解雇。その場で退職届を書かず、言われたことがどれに当たるかを確かめて記録する 先に答えを言っておこう。試用期間中の本採用見送りも解雇にあたり、会社が自由にできるものではない。 一般的な試用期間なら、その労働契約は、会社が適性を確かめたうえで契約を終わらせる権利(解約権)を残した契約として扱われる。期間が来たら終えると明確に合意しているなど、特別な事情があれば別の判断になることもあるがな。この権利は通常より広く認められる。ただし、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当(社会一般の考え方から見ても妥当)とされる場合に限られる(厚生労働省「確かめよう労働条件」裁判例「試用期間」)。
「試用期間だから、会社はいつでも切れる」と思い込んでいる人は多そうです。ただ、相談者さんの場合はどうなのかも気になりますね。
そこは先に断っておく。個々のケースの解雇が有効かどうかは、この記事では判断せん。今日やることは、その場で返事も退職届もせず、言われたことが①解雇の通告 ②退職勧奨 ③延長・指摘 のどれに当たるかを確認し、当日中にメールで記録を残すことじゃ。
応じるか、争うか、次へ進むかは、その後で決めればいいんですね。
そうじゃ。記録と確認を済ませてから決める。返事を急かされても、持ち帰ってかまわん。
言われた直後は、「自分がだめだったんだ」と思い込んでしまいそうです…。
そう感じるのは自然なことじゃ。じゃが、まだ何も決まっておらん。決めるのは、確かめてからで間に合う。
「本採用は難しい」と言われたら、解雇・退職勧奨・延長のどれに当たるかを確かめる 試用期間中に会社から言われることは、3つに分けられる。①解雇の通告(会社が日付を決めて契約を終わらせる)、②退職勧奨(自分から辞めるよう勧められる)、③延長・指摘(まだ決まっていない)じゃ。見分ける手がかりは、誰が契約を終わらせるのか と、日付が決まっているか の2つじゃな。
試用期間中に言われる言葉と、今日やること
言われた言葉の例 どれに当たるか 今日やること 「○月○日付で本採用しないことになった」(エリアマネージャー・本部から) ①解雇の通告 予告と解雇の理由を書面でもらう 「自分から辞めることも考えて」「退職届を出してくれれば」(薬局長から) ②退職勧奨 その場で書かずに持ち帰る 「試用期間を延ばす」「このままだと本採用は厳しい」 ③延長・指摘 指摘された点と期限を書き留める
処方箋の枚数や鑑査のことを言われた場合は、どれに入るんでしょう?
処方箋の枚数・鑑査・投薬についての指摘は、①②③のどれでも理由として挙げられることがあるんじゃ。指摘の内容だけでは、どれに当たるかは判断できん。分からないときは、「これは解雇ということですか、それとも退職のお願いですか 」と聞けばよい。
そうすると、相談者さんが言われた「自分から辞めることも考えて」は、②の退職勧奨ですね。
そのとおり。会社が日付を決めて、契約を終わらせると言ったわけではない。
試用期間を延ばすと言われたり、まだ決まっていないと言われたりした人は、宙ぶらりんでかえって落ち着かなそうです…。
③の延長・指摘なら、まだ解雇は決まっておらん。指摘された点と期限(何を・いつまでに)を聞いて書き留め、就業規則に試用期間の延長の定めがあるかを確かめる。
それでも、「いつ本採用しないと言われるんだろう」と毎日びくびくしてしまいそうです。
それなら、「もし本採用しない場合は、いつ・誰から・どう伝えられるのか 」を聞いておくとよい。予定が分かれば、少しは落ち着ける。
なお、契約社員など期間の定めがある契約は、期間途中の解雇に「やむを得ない事由」(契約を途中で終わらせざるを得ない事情)が要ります(労働契約法17条1項)。
はっきり解雇と言われないときは、退職のお願いと受け取って持ち帰り、当日中にメールで記録する 「解雇ですか、退職のお願いですか」と聞いても、答えが返ってこないことがある。はっきり解雇と言われていない以上、退職のお願いと受け取って、その場で返事をせずに持ち帰る 。そのうえで「解雇ということでしたら、その旨を書面でください」と頼み、面談当日中に、言われた内容をメールで送って記録にするんじゃ。
記録まで残すのは、少し大げさな気もしてしまいます…。何のためなんですか?
あとで「言った・言わない」にならないためと、自分で決める時間を取るためじゃ。
責める言葉は入れん。聞いたことを書くだけじゃ。宛先は言った本人で、必要なら人事・本部も入れる。自分宛てにも控えを残しておく。
宛先:面談で話した本人(必要なら人事・本部も)。自分宛てにも控えを残す(自分をBCC〔ほかの受信者に表示されない宛先〕に入れるか、送信後に自分へ転送) 本文:「本日○時、○○さんとの面談で『本採用は難しい。自分から辞めることも考えてみてほしい』と伺いました。解雇ということでしたら、その旨を書面でいただけますでしょうか。お返事は○日までにお伝えします。」 これなら事実だけですね。紹介会社を通して入った人は、担当の人にも伝えたほうがいいんでしょうか?
言われた内容をそのまま伝えてかまわん。それから、相談者さんが「来週までに返事をしてほしい」と言われた件も、期限までに決めるのは退職勧奨に応じるかどうかだけじゃ。それも、このあとの2点を確かめてからにする。
退職勧奨に応じるなら、退職届を書く前に離職理由と退職日を確かめる 退職勧奨に応じるかどうかは、本人が決めてよい。応じなければ、契約は終わらん(厚生労働省「スタートアップ労働条件」)。応じると決めたら、退職届を書く前に2点を確かめて、書面かメールで残す んじゃ。
離職理由まで確かめるのは、考えたこともなかったです。
会社からの退職勧奨による離職は、失業給付の扱いに関わる「特定受給資格者」の範囲に入っておる(ハローワーク)。だから、退職届を書く前に、離職票にどう書くのかを会社に確かめておく。届いた離職票の確かめ方は、後半の会社都合についての話で説明する。
知恵袋で、医療法人の医療機関に正社員で入って約2か月の人の相談を見たことがあります(職種は書かれていませんでした)。本採用しないと告げられたあと、「自主退社にすれば経歴に傷がつかない」と言われて、離職理由の扱いが話し合いになったそうです(2016年)。
だからこそ、退職届を書く前に確かめるんじゃ。「自己都合で退職届を書いて」と言われたら、その場では書かん。相談先は、後半の解雇理由証明書の説明で紹介する。相談者さんが応じると決めるなら、来週の返事の前に、この2点をメールで確かめておくことじゃ。
断っても、それだけで契約は終わらん。そのあと会社が解雇に進むなら、次に話す解雇の手続きになる。しつこい勧奨は、違法とされる場合もある(厚生労働省)。
解雇を告げられたら、予告の有無と解雇の理由を書面でもらう ここからは、①の解雇の通告を受けた人の話じゃ。確かめることは2つ。予告(または予告手当)があるか と、解雇の理由を書いた証明書 じゃ。この2つがそろえば、争うか次へ進むかを決められる。
入社から14日を超えていれば、解雇には30日前の予告か予告手当が要る 会社が労働者を解雇するときは、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を払う必要がある(労働基準法20条1項)。試用期間中の人も、入社から14日を超えて働いていれば同じじゃ(21条ただし書・4号)。
そうじゃ。予告の日数は、1日分の平均賃金を払った日数だけ短くできる(20条2項)。もう1つ、「試用期間の14日以内なら自由に解雇できる」と言われることがあるが、これは読み違いじゃ。
14日以内なら、何も言えないのかと思っていました。
14日以内で要らなくなるのは予告という手続きだけで、解雇に理由が要ることは変わらん(労働契約法16条)。言われた側がやることは、解雇日と、予告手当があるかを書面でもらうこと じゃ。
解雇理由証明書を請求し、納得できなければ総合労働相談コーナーへ持っていく 解雇理由証明書 とは、会社が解雇の理由を書いて交付する証明書のことじゃ。解雇を予告された日から退職の日までに請求でき、会社は遅滞なく(不当に遅らせずに)交付しなければならん(労働基準法22条2項)。就業規則に書かれた解雇理由に当たる場合は、その条項と該当する事実が書かれる(厚生労働省「確かめよう労働条件」)。
理由が紙で残るんですね。もし退職日を過ぎてしまったら、もう頼めないんですか?
退職日を過ぎても、退職証明書として退職の事由(解雇の理由を含む)を請求できる(22条1項)。請求しても交付されなければ、労働基準監督署に相談する。
理由が書かれた紙を手元に置くのは、正直ちょっと怖い気もします。もらったら、どう使えばいいんでしょう?
使い道は2つじゃ。納得できないときは、メールの控えと一緒に、都道府県労働局の総合労働相談コーナー (無料・全国378か所)へ持っていく。受け入れて次へ進むときは、書かれた理由を、次の職場で確かめる条件に言い換える。なお、民事上の個別労働紛争(労働者と会社の間のトラブル)について、令和7年度に寄せられた相談を見ておこう。普通解雇が25,967件、退職勧奨が26,022件あった(厚生労働省「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」)。全産業・全雇用形態の数で、試用期間や薬剤師に限った数ではないがな。
それだけの人が相談しているなら、一人で抱える話ではないんですね。
試用期間に解雇や退職勧奨で辞めたことは次の転職に伝わる?会社都合になる? 相談者さんの「次の転職でどう見られるのか」にも答えておこう。次の職場に出す退職証明書に解雇の理由を書いてもらうかは、自分で選べる。会社都合として扱われるかどうかは、離職票の離職理由をもとにハローワークが判定する。面接で聞かれたときの話し方まで見ておくぞ。
次の職場に出す退職証明書には、請求した項目しか書かれない まず答えから言うと、試用期間中に解雇されたことが、次の職場へ自動的に通知される仕組みはない。ただし、応募のときの申告や面接での説明、提出書類などから伝わる場合はある。
勝手に知らされるわけではないんですね。でも、書類から分かることもあるんですか?
在籍していたことや辞めた時期は、年末調整のために入社先へ出す前の職場の源泉徴収票などから分かることがある(国税庁「中途就職者の年末調整」)。そのうえで、退職証明書については、何を書いてもらうかを自分で選べるんじゃ。
選べるなら、少し気が楽になります。どこまで選べるんでしょう?
退職証明書には、労働者が請求しない事項を書いてはならん(労働基準法22条3項)。次の職場に出すなら、在籍期間と業務の種類だけを請求できる 。もう1つの書類、離職票は、失業給付(基本手当)の手続きでハローワークに出す書類じゃ。
在籍期間と業務の種類だけなら、安心して次の職場に出せそうです。
退職証明書に書いてもらう項目と、短い在籍を職務経歴書の4行で書く方法は、次の記事で確かめてください。自分から辞める人向けの記事ですが、4行の書き方は解雇のときもそのまま使えます。
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退職証明書に書いてもらう項目と、数か月の在籍を職務経歴書の4行(期間・業務・理由・次に確かめること)で説明する書き方をまとめています。
会社都合として扱われるかは離職票の離職理由で決まり、最後はハローワークが判定する 解雇と、会社から退職を勧められたことによる離職は、失業給付の扱いに関わる「特定受給資格者」の範囲に入っておる(ハローワーク)。ただし解雇からは、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(本人に重大な落ち度がある解雇)を除く。離職票に書かれた離職理由が事実と違うときは、ハローワークに異議を述べて状況を説明できる(厚生労働省「確かめよう労働条件」)。
離職票-2が届いたら、事業主が○を付けた離職理由と具体的事情記載欄を見る。違っていれば、離職者記入欄で自分の主張する理由に○を付け、具体的事情記載欄(離職者用)に経緯を書く。そのうえで、メールの控えや解雇理由証明書を持ってハローワークで説明するんじゃ(厚生労働省「離職票-2の離職理由欄等の記載方法について」)。
当日のメールが、ここでも役に立つんですね。会社都合になれば、失業給付も受け取れるということですか?
そこは別の話じゃ。基本手当を受け取れるかは、前の職場の分を含めて数えられることがある雇用保険の被保険者期間に加え、働く意思と能力があり、求職している「失業の状態」かどうかなどで決まる。詳しくは、文末の記事で確かめてほしい。
面接で聞かれたら、言われた理由と次の職場で確かめていることを順に話す 試用期間で辞めた理由を面接で聞かれたら、会社に言われた理由を事実だけで1文、次の職場で確かめていることを1文 、の順で話す。
前の職場のことを、どこまで話せばいいのか迷いそうです。
例えば相談者さんなら、「前の職場では、1日の処方箋枚数に慣れる前に本採用は難しいと言われました。今回は、中途の研修期間と、1日の枚数・薬剤師の人数を確かめたうえで応募しています」のように話せる。前の職場を悪く言う必要はない。
事実と、次にどうするかだけなら、言いやすいですね。短い在籍が1回あるだけでも、気にされるものなんでしょうか?
短い在籍が今回1回なら、転職回数が多いと見られる話とは別じゃ。
試用期間で言われた理由を、次の職場で確かめる条件に言い換える 次の職場を探すと決めたら、面談で言われた理由や解雇理由証明書の理由を、次の職場で確かめる条件 に言い換える。研修の期間や薬剤師の人数は、求人票に出にくいからの。
言われた理由を、次の職場で確かめる条件に言い換える例
言われた理由 次の職場で確かめる条件 処方箋の枚数についていけていない 1日の処方箋枚数と薬剤師の人数、中途採用者向けの研修・現場での指導(OJT)の期間 鑑査で戻すことが多い 鑑査の体制(ダブルチェックの有無)、監査機器の有無 投薬が長い 投薬にかける時間の目安、在宅や一包化の比重
言われた言葉が、そのまま次の職場で聞くことになるんですね。でも、求人票に出ていないなら、どうやって確かめれば…。
面接や見学で聞くか、転職サイトの担当者に確かめてもらう。転職サイト診断を使えば、担当者に職場の条件を確かめてもらえる転職サイトを選べる。期限を切られて次を探すと決めた人は、転職意欲で「できるだけ早く転職したい」を選ぶ。急いで決めるためではなく、研修や人員の体制を担当者に確かめてもらうためじゃ。
急いで決めるための選択肢ではないんですね。それなら、まだ延長や指摘の段階の人でも使えそうです。
そうじゃ。その段階で情報だけ集めたいなら「まずは情報収集したい」を選べばよい。診断のサポートに関する質問で「求人紹介から面接対策まで手厚くサポートしてほしい」を選べば、短い在籍の説明も面接対策で相談できる。30秒で終わるぞ。
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まとめ:試用期間で解雇や退職勧奨を告げられたら、その場で書かず、記録して確かめてから決める この記事のまとめ
1 試用期間の本採用見送りも解雇。会社が自由にできるものではない 2 その場で返事も退職届もせず、解雇・退職勧奨・延長のどれに当たるかを確かめて当日中にメールで記録する 3 応じるなら離職理由と退職日を、解雇なら理由の書面を確かめてから次へ進む 試用期間で解雇や退職勧奨を告げられても、その場で書かず、記録して確かめてから決める 。そうすれば、どの道を選んでも損をしにくい。納得できない人は、解雇理由証明書とメールの控えを持って相談に行けばよい。
言われた理由が、次の職場で聞くことのリストになるんですね。相談者さんも、来週の返事の前にできることがはっきりしたと思います。
次へ進むと決めたら、確かめる条件を持って探せばいい。
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次を決める前に辞めることになった方は、基本手当を受け取れるかと、保険や年金の手続きを確かめておくと安心です。
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短い在籍が今回だけでなく重なっている方は、職歴全体をどう説明するかを確かめておくと安心です。
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