退職時に有給を使い切りたい薬剤師へ。使い切れるかは退職日までに有給を充てられる労働日を確保できるかで決まります。残日数の確認から最終出勤日・退職日・入社日の決め方、職場への伝え方、渋られたときの相談先まで解説します。
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読者からの相談調剤薬局で7年働いていますが、転職を決めて次の職場を探し始めました。有給が25日残っているのですが、うちは薬剤師2人で回している店舗で、私が1ヶ月近く休んだら残るもう1人に業務が全部かかってしまいます。「有給を全部消化して辞めたい」なんて言ったら非常識でしょうか。退職日や次の職場への入社日をどう決めればいいのかも分かりません。
📌この記事のポイント
- 退職日までに充てる労働日があれば、有給は原則すべて消化できる。時季変更権は退職日を超えられない
- 段取りは「残日数→最終出勤日→退職日→入社日」の順に決める
- あなたが負うのは誠実な引き継ぎまで。抜けた後の人繰りは職場の仕事
まず結論:退職時の有給は原則使い切れる
今回は退職時の有給消化の話じゃ。相談者さんは「全部消化したいなんて言ったら非常識だろうか」と迷っておられるが、先に結論を言うぞ。退職日までに有給を充てられる労働日を確保できれば、残っている有給は原則として使い切れる。
使い切れるんですね…! 私のまわりでも「辞めるときに有給が残ったまま」という話はよく聞くので、意外です。でも「労働日を確保できれば」というのは、どういう条件なんですか?
有給は労働日に充てるものでな、もともとの休みの日には使えん。じゃから、退職日までに残日数ぶんの労働日があることが前提になる。相談者さんのように退職日をこれから決めるなら、その前提を満たす形で退職日を置けばよいんじゃ。
逆に、退職日を先に固定してしまっていると、労働日が足りないことがあるんですね。
そうじゃ。自分がどの状況かで動き方が変わるから、先に整理しておこう。
退職日の状況別・有給を使い切るための動き方
| 退職日の状況 | 動き方 |
|---|
| これから決める | 残日数を数えてから、消化を織り込んで退職日を決める(この記事の段取り) |
| 決定済みで、退職日までの労働日が残日数以上ある | 取得したい日を具体的に申請する |
| 決定済みで、労働日が足りない | 退職日を後ろへ動かせないか相談する。動かせない場合、足りない分は消化できない可能性がある |
相談者さんは「これから決める」に当てはまりますね。…でも、まとめて請求したら、会社に「この時期に困る」と断られたりしないんでしょうか?
そこは心配せんでよい。年次有給休暇は、労働者が請求した時季に与えるのが原則じゃ(労働基準法39条)。会社側には「時季変更権」があるが、これは事業の正常な運営を妨げる場合に取得日を別の日にずらす権利であって、有給を消す権利ではない。
ずらす権利…。あれ、でも退職する人の場合、ずらす先がなくないですか?
そこが今日いちばん大事なところじゃ。退職日が決まっていれば、退職日を超えて有給をずらすことはできん。厚生労働省の労働条件ポータルサイト「確かめよう労働条件」でも、退職間近に残りの有給をすべて使い切って辞めたいという請求には時季変更権を行使できず、取得を認めるほかないと説明されておる。
「認めるほかない」とまで書いてあるんですね。じゃあ、労働日さえ確保できていれば、「全部消化して辞めたい」はわがままでも何でもなくて、普通の権利の使い方なんだ…。
そういうことじゃ。ただし、法律上は通るからといって、明日いきなり申請書を出せばうまくいくわけではない。引き継ぎやシフトの調整を無視して進めれば、最後の数ヶ月がぎくしゃくしてしまう。円満に使い切る鍵は、日付を決める段取りじゃ。この記事で、その作り方を順番に渡していくぞ。
「取れるかどうか」で悩む段階から、「どう組み立てるか」の話に進めるんですね。
うむ。なお、個別のケースでどう扱われるかは状況にもよる。疑問があれば、労働基準監督署や、各地の労働局などに設けられた総合労働相談コーナー(無料の相談窓口)で確認できることも覚えておくとよい。
まだ退職を決めたわけではなく、「そもそも普段から有給が取れない」ことに悩んでいる段階なら、まずは職場の構造から知るほうが役に立ちます。
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法律上は通る。それでも言い出せんのは、法律の問題ではなく「残る人への申し訳なさ」のほうじゃろう。
相談者さんも、残るもう1人の方の顔が浮かんでしまうんでしょうね…。薬剤師の職場は少人数だから、自分が抜けた後のシフト表まで想像できてしまうのが、余計につらいところです。
相談者さんの「残るもう1人に業務が全部かかってしまう」という心配は、まさに職場の責任と本人の責任が混ざってしまっている状態じゃ。ここは切り分けたい。抜けた後の人員配置、シフトの調整、応援の手配。これらは職場の運営側の仕事であって、退職者が有給を諦めることで埋め合わせる筋のものではないぞ。
頭では分かるんですけど…実際のところ、抜けられた現場は回るものなんでしょうか。
わしが調剤薬局に勤めていた頃も、退職者が出るたびに現場は「回らん」と騒ぎになったもんじゃ。だが結局は、本部の人繰りや応援で何とかなってきた。現場は一時的に大変になる。それを解決する手段は応援体制や採用であって、辞める人の有給ではなかったよ。
現場を知っている人がそう言うなら、少し安心できます。…とはいえ、全部を職場任せにしていいわけでもないですよね?
よい問いじゃ。あなたが負うべき責任もある。それが「誠実な引き継ぎ」じゃ。次で、その範囲をはっきりさせよう。
引き継ぎは「ここまでやれば十分」(範囲の目安)
引き継ぎに終わりを決めんと、「まだ足りないのでは」といつまでも罪悪感が残る。目安はこの3つじゃ。
!引き継ぎ「ここまでやれば十分」の目安
引き継ぎ資料を作る(在庫・発注の状況、日次・月次業務の手順、施設・在宅対応で継続が必要な事項を職場所定の方法で整理する)
残るスタッフまたは後任に、口頭で説明する機会を作る
進行中の案件を整理し、期限があるものは申し送りに残す
資料と、口頭説明と、案件の整理…。逆に言うと、後任の採用が決まるまで居続けることは、この中に入っていないんですね。
入っておらん。後任を探すのも、抜けた穴のシフトを埋めるのも、運営と採用の仕事じゃ。それとな、これはわしの経験則じゃが、引き継ぎ資料が丁寧じゃと、辞めた後に職場から本人へ確認の電話がかかってくることも少ない。残った側が資料を見れば分かるからじゃな。
丁寧な引き継ぎ資料が、残る人への一番の誠意になるということですね。でも、それでも「最後まで出てほしい」と言われてしまったら…?
そのときは、「取るか、引き継ぐか」の二択にせんことじゃ。引き継ぎ資料を前倒しで仕上げて期間を縮める → 最終出勤日を調整する → 入社日に余裕があれば退職日を後ろへずらす、の順に調整の余地を探る。それでも労働日が足りなければ、取得できる日数を確かめたうえで落とし所を決めることになる。
諦める前に、動かせる日付がいくつもあるんですね。…そうなると、その退職日って、そもそもどうやって決めればいいんでしょうか?
残日数から退職日を決める消化スケジュールの作り方
次の職場がまだ決まっていないなら、日付は「残日数→最終出勤日→退職日→入社日」の順に積み上げて決める。

図の順番どおりに決めていけばいいんですね。もし、先に転職先と入社日が決まっていたら…?
その場合は、図の矢印を逆にたどればよい。入社日→退職日→消化開始日→最終出勤日→申し出の日と、入社日から逆算して置いていくんじゃ。決める日付はどちらも同じじゃから、この記事では、次の職場をこれから探す相談者さんの順で進めるぞ。
起点が違うだけで、決める日付は同じなんですね。では、最初のステップから教えてください。
ステップ1:残日数を確認する
最初にやることは、申請でも交渉でもなく、残日数の確認じゃ。給与明細か勤怠システムに載っていることが多い。見当たらなければ、就業規則で付与日——基準日というんじゃが——を確認する。
もし分からなくて人事や本部に問い合わせたら、「この人、辞めるのかな」って勘づかれたりしませんか…?
残日数の照会は、ごく普通の事務的な質問じゃよ。それ自体が退職の意思表示になるわけではないから、安心して確認するとよい。ただ1つ注意があってな。消化を始めるまでの間に次の付与日をまたぐ場合は、残日数が変わる。付与日がいつかも合わせて見ておくと、後の計算がずれんぞ。
ステップ2:引き継ぎ期間から最終出勤日を置く
次に、引き継ぎにかかる期間を見積もる。引き継ぎの3点セット——資料づくり・口頭説明・案件整理——を業務の合間にこなすなら、2週間から1ヶ月が目安じゃ。
その引き継ぎ期間が終わる日が、最終出勤日になるわけですね。
そうじゃ。あわせて、就業規則の退職申し出の期限も見ておく。「退職の1ヶ月前までに申し出ること」といった規定があれば、それも逆算に組み込むんじゃ。
ステップ3:退職日を決め、入社日はその翌日以降に置く
最終出勤日に残日数を足せば、退職日が出る。ただし、数え方に注意じゃ。有給は労働日に充てるものでな、もともとの休みの日には充てられん。
ということは、相談者さんの25日分なら…週休2日だと、暦の上では5週間くらいかかる計算ですか。カレンダーの日数と消化日数は、同じじゃないんですね。
そのとおり。それから、入社日は退職日の翌日以降に置く。間を空けても構わんが、退職日と入社日の間に空白期間があると、日数にかかわらず健康保険や年金の切り替えが必要になることがある。空けたい場合は、転職先の人事や加入中の健康保険に前もって確認しておくと安心じゃ。
全体でどのくらいの期間になるのか、具体的なイメージも欲しいです…!
- 申し出:退職の意思と有給消化の希望をセットで伝える
- 引き継ぎ:3週間
- 最終出勤日
- 有給消化:20日ぶん(週休2日なら暦で約4週間)
- 退職日
- 入社日:退職日の翌週(翌日以降ならいつでもよい)
引き継ぎの3週間と消化の約4週間を足すと、申し出から退職日まで少なくとも7週間、1ヶ月半を超える計算になる。さらに就業規則の申し出期限やシフト作成の時期も考えると、2〜3ヶ月前に相談できると調整しやすいぞ。
日数を足し上げていくと、伝えるタイミングまで決まってくるんですね。伝えるときに気をつけることはありますか?
要点は2つ。まず、退職の意思と有給消化の希望はセットで伝えること。退職日が固まってから「実は有給も」と後出しにすると、調整の余地が消えてしまう。
伝え方は、たとえば次のような形です。「◯月末での退職を希望しています。有給が◯日残っているため、◯月◯日を最終出勤日として、残りは有給消化にあてたいと考えています。引き継ぎは最終出勤日までに、資料の作成と説明を終える予定です」。日付と残日数を具体的に入れると、職場側も調整に入りやすくなります。
たしかに、あとから1ヶ月分の休みが出てきたら、組んだシフトが崩れてしまいますもんね。…もし、先に退職日だけ伝えてしまっていたら、もう手遅れですか?
手遅れではないぞ。気づいた時点で有給消化の希望を伝えて、退職日を後ろへ動かせないか相談すればよい。早く動くほど調整の余地は残っておるし、動かせない場合の扱いは、冒頭の「退職日の状況別」の表で見たとおりじゃ。
後出しになってしまっても、気づいたときに動けば取り返せるんですね。
うむ。そしてもう1つの要点は、口頭だけでなくメールなど形に残る方法でも伝えておくことじゃ。
形に残す…。それって、もしかして渋られたときのためですか?
渋られたときは「戦う」より「確認」で進める
段取りどおりに伝えても、現場では「この時期に全部は無理だよ」「前例がないから」「後任が決まるまで待ってくれ」と渋られることがある。ここで慌てる必要も、その場で折れる必要もないぞ。動き方は3段階じゃ。
- 申請と回答を、書面やメールに残す(口頭のやり取りだけで流されない形にする)
- 店舗や上司のところで止まったら、人事・本部に確認する
- それでも進まなければ、労働基準監督署や総合労働相談コーナーで取り扱いを確認する
外部の窓口まで行くとなると、ちょっと大ごとな気がしてしまいます…。
店舗の管理者だけでは判断できんことも、人事や本部へ確認すると対応が進む場合がある。管理者に人繰りの余裕がなくても、本部には応援や採用という手段があるからの。外部の窓口も「戦いに行く場所」ではなく「取り扱いを確認する場所」と考えると、気持ちが楽になるはずじゃ。
最初に記録を残しておけば、人事や本部に相談するときも「言った言わない」にならずに済みますね。
うむ。それともう1つ。「使い切れない分は買い取ってもらえばいい」という期待は、あてにせんほうが安全じゃ。先に買い上げる約束をして有給を取らせないやり方は、認められんとされておる。退職時に残った分の買い上げは例外的に差し支えないとされてはおるが、会社に応じる義務まではないんじゃ。
買い取りは「もしそうなったら」の救済であって、最初から当てにする設計にはしない、ということですね。
そのとおり。基本は、消化しきる前提で日付を組んでおくことじゃ。
有給消化中の転職活動と入社日の決め方
退職日まで置けたら、残る疑問は「消化中に何をしていいのか」じゃな。まず、有給消化中に転職活動をするのは問題ない。求人を見る、面接や見学に行く、条件を比較する。どれも構わんぞ。
まとまった時間が取れるから、働きながらの転職活動よりずっと動きやすい期間ですよね。
注意が要るのは、次の職場で「働き始める」ことのほうじゃ。働き始めること自体が、直ちに法律で禁じられているわけではない。ただ、前の職場の就業規則で副業・兼業がどう扱われているかを確認する必要があるし、雇用保険や健康保険・厚生年金の手続きも複雑になることがある。
保険に就業規則…なんだか急に難しくなってきました。どうすればいいんですか?
難しく考えんでよい。入社日を退職日の翌日以降に置けば、この問題はそもそも発生せん。 どうしても日程を重ねたい事情があるなら、前の職場と転職先の双方に確認してから決めることじゃ。
入社日の置き方ひとつで、手続きの悩みが消えるんですね。
これから職場を探す人にとっては、退職日が置けた今が、入社日から逆算して求人を絞り始めるタイミングじゃ。担当者がつくタイプの転職サイトなら、求人の紹介だけでなく、入社日の調整や退職交渉の進め方の相談にも使えるぞ。
いきなり登録や応募をする必要はありません。これから職場を探す方は、まず自分に合った転職サイトの選び方から確認してみてください。
🔍比較ガイド薬剤師転職サイトの選び方・使い方
登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説
まとめ:有給を使い切る退職は、段取りで設計できる
この記事の要点
- 1退職日までの労働日を確保すれば、有給は原則使い切れる(時季変更権は退職日を超えられない)
- 2あなたの仕事は誠実な引き継ぎまで。抜けた後の人繰りは職場の仕事
- 3残日数→最終出勤日→退職日→入社日の順に日付を決める
- 4伝えるのは2〜3ヶ月前が目安。退職意思と消化希望はセットで
有給を使い切る退職は、わがままではなく段取りの問題じゃ。「言い出せない」という気持ちの悩みに見えていたものは、段取りに落としていくと日付の決め方の話に変わる。
残日数を確認して、引き継ぎの終わりを決めて、退職日と入社日を置く。相談者さんの悩みが、そのまま手順になりました…! これなら罪悪感を抱えたまま我慢することも、けんか別れのような辞め方になることもなさそうです。
これから次の職場を探すなら、入社日から逆算して動き始めるとよいぞ。選び方を知っておけば、求人探しだけでなく入社日の調整も相談しながら進められる。
🔍比較ガイド薬剤師転職サイトの選び方・使い方
登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説