薬学部の勉強についていけない、辞めたい|決める前に分ける3つのこと
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薬学部の勉強についていけず辞めたいと感じている方へ。「ついていけない」は大学ごとの進級制度・わからないまま進んだ科目・薬学への関心の3つに分けられます。文部科学省が公表する進級率データをもとに、辞めるか続けるかを決める前に確認したいことを整理します。
登場キャラクター

薬剤師じいさん
薬剤師歴70年の大ベテラン。病院・薬局・ドラッグストアすべてを経験してきた生き字引。豊富な経験と公的データに基づいて、若手薬剤師の悩みにズバッと答えます。

みさ
新卒2年目の若手薬剤師。病院で働いているけど、年収やキャリアに不安を感じている。全国の悩める若手薬剤師を代表して、気になることをどんどん質問していきます!
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読者からの相談
私立薬学部の2年生です。1年の後期からずっと追試と再試でギリギリ通ってきて、有機化学と薬理は講義中に何を説明されているのかもう追えていません。友だちは普通に単位を取っているのに自分だけ置いていかれている気がして、次の進級判定も通る気がしません。辞めたいと思っているのですが、辞めて何をするかも決まっていなくて、親にも言えていません。
📌この記事のポイント
- 「ついていけない」は、大学ごとの進級制度・わからないまま進んだ科目・薬学への関心の3つに分けられる
- 自分の大学の進級率は文部科学省が公表していて、大学ごとの差はかなり大きい
- 決めるのは「辞める/続ける」ではなく「いつまでに何がどうなっていたら続けるか」
まず結論:「ついていけない」は3つに分けると、次にやることが決まる

相談者さんの話を読んで、まず伝えたいことがある。「ついていけない」という一つの感覚の中には、性質のまったく違うものが3つ混ざっておるんじゃ。

3つ、ですか。自分がついていけていない、という一つのことだと思っていました。

大学ごとの進級制度、わからないまま進んだ科目、それから薬学そのものへの関心。この3つじゃ。分ける意味は、自分で変えられるかどうかが3つとも違うところにある。

自分で変えられるかどうか…。同じ「ついていけない」でも、手の打ちようがあるものとないものがあるということですか。

そのとおりじゃ。1つ目は自分では変えられん。ただし、その代わり自分の能力だけの話でもない。2つ目は自分で変えられる。3つ目は、どれだけ勉強法を変えても変わらん。

勉強法を変えても変わらないものがある、というのは少しこわい話ですね。でも、変わらないとわかっているなら、そこに時間を使わずに済みます。

それがこの記事で一番言いたいことじゃ。そしてもう一つ。辞めるかどうかを決めるとき、「辞める」か「続ける」かの二択で考えんでほしい。決めるのは「いつまでに、何がどうなっていたら続けるか」じゃ。

二択だと、どちらにも決め手がなくて動けなくなりそうです。期限と条件なら、いまの自分でも決められそうな気がします。

順番はこうじゃ。自分の大学の数字を見る。落ちている箇所を特定する。そのうえで期限と条件を決める。一つずつ見ていこう。
「ついていけない」を、自分で変えられるかどうかで3つに分ける

まずは、いま起きていることを3つに仕分けるところからじゃ。どれか一つに決める作業ではない。3つとも混ざっておるのが普通で、見たいのは「どれが主か」じゃ。
「ついていけない」を自分で変えられるかどうかで分ける
| 区分 | 中身 | 自分で変えられるか | 最初の一歩 |
|---|---|---|---|
| ① 大学ごとの進級制度 | 進級要件・再試の回数・必修の重さ。大学ごとに違う | 自分では変えられない。ただし自分の能力だけの話でもない | 学生便覧で進級要件を確認する |
| ② わからないまま進んだ科目 | 前の科目がわからないまま進み、あとの科目が重くなっている | 3つの中で唯一、自分で変えられる | 落とした試験を1つ開いて、つまずいた単元を書き出す |
| ③ 薬学そのものへの関心 | 内容そのものに興味が持てない | 勉強法では変わらない。進路の問題 | 見分ける問いへの答えをスマホに1行書く |
①大学ごとの進級制度 — まず自分が置かれている条件を確認する

何単位落とすと留年になるか、再試験は何回まで受けられるか、必修がどれだけ重いか。これは大学ごとにかなり違う。

大学によってそこまで違うものなんですか。同じ内容を同じように学んでいるものだと思っていました。

差はある。そして進級要件は、自分の努力では変えられん条件じゃ。じゃから、いま起きていることを自分の能力だけで説明する必要はない。まずは自分がどういう条件のもとにおるのかを、正確に知るところからじゃ。

その言い方だと、少し肩の力が抜けます。ただ、変えられないなら確認する意味はあるんでしょうか。

ある。最初の一歩は、自分の大学の学生便覧を開いて進級要件を確認することじゃ。何がどうなると留年なのかを正確に知っておる学生は、意外と多くない。
②わからないまま進んだ科目 — ここだけ自分で変えられる

2つ目は、わからないまま進んだ科目じゃ。薬学部の科目は積み上がる構造になっておる。前提になる科目の理解が薄いまま進むと、あとの科目が急に重くなる。

追試や再試で通した科目は、理解が薄いまま次の土台になってしまうということですね。学生のとき、とりあえず通ったから大丈夫だと思っていた科目が、あとで効いてきた覚えがあります。

まさにそれじゃ。そして3つの中で、ここだけは自分で変えられる。最初の一歩は、直近で落とした試験を1つ手元に出して、どの単元でつまずいたかを書き出すこと。紙でもスマホのメモでもよい。
③薬学そのものへの関心 — 勉強法では変わらない

3つ目は、内容そのものに興味が持てん、という状態じゃ。これを2つ目と混同したまま勉強法を試すと、消耗するだけで終わる。

相談者さんの「追試で通してきた」という書き方は、2つ目の典型に見えます。でも、有機化学の講義がもう追えないという感覚は、どちらとも取れそうです。

そのとおりで、2つ目と3つ目は同時に起きる。見分け方はあとで渡すから、いまは決めつけんでよい。ただ一つだけ言っておくと、3つ目は「向いていない」ことの証明ではない。関心の対象が別にある、という事実にすぎん。

「向いていない」と「興味が別にある」は、たしかに別のことですね。
自分の大学の進級率は、公表されている

1つ目が自分の資質の話ではない、というのは気休めではない。数字があるんじゃ。
5年次進級率は、私立の合計で75.6%

文部科学省の「薬学部における修学状況等」2025年度の調査結果じゃ。2019年度に私立大学の6年制薬学科へ入学した9,906人のうち、2023年度に5年次におったのは7,486人。割合にすると75.6%じゃ。

4人に1人近くが、5年生になる前のどこかで止まっているということですか…。思っていたより多いです。

国立大学の合計は95.5%、公立大学の合計は86.0%じゃった。設置区分でもずいぶん違う。ただし、この数字は留年率ではない。休学や退学など、留年以外の理由で5年次におらん人も含まれておる。

そこは混ぜないほうがいいですね。「4人に1人が留年する」と読んでしまうと、話が変わってきます。
同じ「薬学部」でも、進級率は大学によって大きく違う

合計だけ見ても、相談者さんの足元はわからん。同じ調査は、大学別にも同じ数字を出しておるんじゃ。私立の5年次進級率を大学ごとに見ると、4割に満たない大学から、9割を超える大学まで開きがある。

4割と9割が同じ「薬学部」なんですか。それはもう、別の場所の話みたいです。

ただし、この数字から言えるのは結果に差があるということまでじゃ。進級率が低い大学は要件が厳しい、と決めつけることはできん。入学時の状況も学修支援の仕組みも大学ごとに違うからの。

数字を見ただけでは、その理由まではわからないということですね。

そこは分けておきたい。数字は背景として見て、自分の大学の進級要件そのものは学生便覧で確かめる。これが順番じゃ。自分の大学の数字は文部科学省のページで見られるし、学年ごとの進級者数も、大学が修学状況の資料を公表しておれば確認できるぞ。

自分の大学の数字を見るのは、少し勇気がいりそうです。でも、知らないまま「自分だけができない」と思い込むよりはいいですよね。
!自分の大学について確認すること
- 進級要件(何単位落とすと留年か・再試は何回まで受けられるか)→学生便覧で確認できる
- 自分の大学の5年次進級率→文部科学省の調査結果で確認できる
- 自分の大学の卒業率→同じ調査結果に大学別で載っている
- 学年ごとに何人が進級しているか→大学が修学状況の資料を公表している場合に確認できる

数字を見る目的は、大学のせいにすることではない。原因を自分の資質にすべて寄せるのをやめることじゃ。そこが変わると、次に何をするかが変わる。

「自分がダメだから」で止まっていると、打つ手が思いつかないですもんね。
②わからないまま進んだ科目を減らすなら、まず「どこで落ちているか」を特定する

2つ目は自分で変えられると言ったが、闇雲に勉強時間を増やす話ではないぞ。
追試で通した科目が、あとの科目に効いてくる

いま追えておらん科目そのものではなく、その土台になっとる科目に原因があることがよくある。有機化学が追えんのなら、その前提になっとる基礎の範囲が抜けておる、という形じゃ。

いま困っている科目を必死にやっても届かない理由が、それなんですね。手前が抜けていたら、そこだけ頑張ってもつらいままです。

最初の一歩は、いま追えておらん科目のシラバスを開いて、前提科目として何が挙がっとるかを見ることじゃ。

シラバスなら今日でも開けます。ただ、そもそも机に向かえない状態の人もいそうです。

よい指摘じゃ。眠れておらん、朝起きられん、気分が落ち込んで机に向かえん。そういう状態が2週間以上続いておるなら、それは勉強の問題ではなく体調の問題かもしれん。学生相談室や医療機関で相談してみてほしい。
大学の学修支援は、成績が落ちてから使うものではない

多くの大学には、学修支援の窓口やオフィスアワー、チューター制度がある。名称は大学によって違うから、自分の大学で何と呼ばれておるかを確かめるとよい。

成績が危なくなってから駆け込む場所、というイメージがありました。

そこが逆でな。進級判定の前に相談するほど、選べる手が残るんじゃ。再履修をどう組むかも相談の対象になる。

早いほど選択肢が多いというのは、たしかにそうですね。何を持っていけばいいんでしょうか。

最初の一歩は、次のオフィスアワーの日時を調べて、1科目分の質問を持っていくことじゃ。「全部わかりません」ではなく、1問だけでよい。
③薬学への関心が主なら、それは学業ではなく進路の問題

1つ目と2つ目をひととおり整理しても、まだ気持ちが動かん。そのときに残ってくるのが3つ目じゃ。ただし、手を打つ気力そのものが出ん状態なら、先に見るのは体調のほうじゃぞ。さっき話した2週間の目安を思い出してほしい。
「試験がつらい」と「内容に関心が持てない」は違う

見分けるための問いは2つじゃ。1つは「成績が戻ったら、この勉強を続けたいと思えるか」。もう1つは「点数と関係なく、面白いと思った授業が1つでもあったか」。

点数を抜きにして考えたことがなかったです。つらさの中身が点数なのか、内容そのものなのかで、話が変わるということですね。

そのとおりじゃ。点数のつらさが中心なら2つ目、内容そのものへの関心が中心なら3つ目に寄っていく。この2問で決めきる必要はない。整理するための材料じゃ。最初の一歩は、答えをスマホに1行書くこと。頭の中で考え続けても答えは出んからな。

1行なら書けそうです。書いてみて、自分でも意外な答えが出ることもありそうですね。
薬剤師にならない道は、辞めなくても選べる

ここは誤解されやすいところじゃ。「薬剤師になりたくない」と「薬学部を辞める」は、別の決断なんじゃ。

別、ですか。3つ目が主だとわかったら、辞めるしかないと思っていました。

薬学部を卒業したうえで、薬剤師以外の道へ進む人はおる。辞めることが唯一の出口ではないんじゃ。
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そのうえで、もし辞める方向で考えるなら、辞めたあとの計画を先に確かめてほしい。何年かかるか、どのくらいの難しさか、いくらかかるか。この3つじゃ。

そこを確かめずに決めてしまう人は多そうです。「こっちのほうが楽そう」という感覚だけで選ぶと、同じことをもう一度繰り返すことになりますもんね。

そういうことじゃ。勉強法では変わらん部分が主な原因だとわかったなら、そこから先は勉強のやり方をどう変えるかという話ではなくなる。誰かと状況を整理してから決めたほうが、結果的に早いこともある。キャリア相談は薬学生でも使えてな、薬剤師として働くか別の道に進むかで迷っておる段階の相談も受け付けておるぞ。
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「辞める/続ける」ではなく、期限と条件を決める

3つのうちどれが主かが見えたら、最後に決めるのは二択ではないぞ。決めるのは次の3つじゃ。
- 期限をいつにするか(次の進級判定、次の定期試験など)
- その時点で何がどうなっていたら続けるか
- そのことを誰に言っておくか

期限、条件、それを誰に言っておくか。この3つですね。

期限は自分の大学の学年暦で決まるから、この記事で「◯月まで」と決めることはできん。次の進級判定でも、次の定期試験でもよい。

その期限までに条件を満たせなかったら、そこで辞めるということですか。

そうではない。期限は辞める日ではなく、判断し直す日じゃ。 条件を満たせなんだら、その場で退学届を出すのではなく、3つのどれが主だったかをもう一度見て、大学の窓口や家族とも話したうえで、続けるか別の道を考えるかを決める。決める材料が前より増えた状態で、もう一度考えればよいんじゃ。

期限を切るのが怖かったんですけど、辞める日を決めるわけではないなら、置いてみようと思えます。

それでよい。期限を決める目的は、追い込むことではなく、宙ぶらりんの時間を区切ることじゃ。

これを決めておくと、「決められない」が「まだ期限が来ていない」に変わりますね。それだけでも、いまの状態よりはずっと楽そうです。
遅れて卒業した人は、毎年二千人以上いる

先ほどと同じ文部科学省の調査に、2024年度の卒業者を入学年度別に集計した数字がある。私立の6年制薬学科を2024年度に卒業したのは8,844人。このうち標準修業年限どおり——つまり6年で卒業した2019年度入学は6,527人じゃ。

ということは、残りの2,300人ほどは、それより前に入学した人たち…。遅れて卒業している人が、それだけいるということですか。

そうじゃ。こちらも留年率ではなく、休学などを含んだ数字ではあるがな。わしが見てきた範囲でも、標準修業年限より時間をかけて卒業して、いま薬剤師として働いておる人は何人もおる。遅れることは行き止まりではない。

「遅れたら終わり」だと思い込んでいる人には、この数字は届きそうです。
決めない時間にも、値段がついている

一方でな、文部科学省の別の調査に、入学から標準修業年限+4年を超えて在籍しておる学生の割合が大学別に載っておる。最も高い大学で6.7%じゃった。

辞めるでも卒業でもない状態が、そこまで長く続くことがあるんですね…。

これは脅しではないぞ。決めない時間にも学費と時間がかかっておる、というだけのことじゃ。じゃからこそ、期限を切る意味がある。

決めないことも一つの選択で、しかも一番高くつくことがある、ということですね。

そういうことじゃ。なお、すでに留年が決まっておって、問題が続けるかどうかよりお金のほうに移っておるなら、確認する順番が変わる。
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まとめ:3つに分ければ、次にやることが決まる
この記事の要点
- 1「ついていけない」は、大学ごとの進級制度・わからないまま進んだ科目・薬学への関心の3つに分かれる
- 2進級率は大学ごとに大きく違う。原因を自分の資質に全部寄せる必要はない
- 3自分で変えられるのは②だけ。落とした試験を1つ開いて、つまずいた単元を書き出す
- 4決めるのは「いつまでに、何がどうなっていたら続けるか」

いま追えておらんことは、事実かもしれん。じゃがそれが「薬剤師に向いていない」という結論に直結するわけではないんじゃ。

3つのどれが主なのかを見て、期限と条件を決める。そこまでやってから決めても遅くない、ということですね。

そうじゃ。順番を踏めば、次にやることは必ず1つに絞れる。今日できるのは、学生便覧を開くか、落とした試験を1枚出すか、そのどちらかじゃ。

「辞めたい」と思っている日に、その2つならできそうです。決めるのはそのあとでいいと思えると、少し呼吸がしやすくなりますね。

もし3つ目が残っておって、薬剤師を目指し続けるかどうかそのものが決まらんのであれば、一人で抱え込まんでよい。在学中から相談してよい場所もあるからの。
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