介護と仕事の両立が限界で、薬剤師を続けられないと感じている方へ。辞めるか迷ったとき、「続けられない原因」が勤務先・介護サービス・自分の心身のどこにあるかで次の打ち手は変わります。厚生労働省の調査をもとに、辞めると決める前に確認したいことを整理しました。
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読者からの相談40代後半、薬剤師2人体制の調剤薬局で働いています。半年前から母(要介護2)の介護が始まりました。デイサービスから「熱が出た」と連絡が入るたびに早退し、そのたびにもう一人の薬剤師に頭を下げています。上司に相談しても「みんな大変だから」で話が終わってしまいました。時短にすれば給料が下がりますし、この年齢で転職するのも不安です。かといって辞めたら、もう薬剤師には戻れない気もします。介護と仕事をもう続けられないと思うのに、辞めるか決心もつきません。
📌この記事のポイント
- 辞めるかどうかは「続けられない原因が勤務先・介護サービス・心身のどこにあるか」で決まる
- 介護離職の過半数は介護開始から半年未満に集中。決める前に確認の時間を取る価値がある
- 2025年4月から、介護に直面したと申し出れば会社が制度を説明する義務がある
まず結論 — 辞めるかどうかは「続けられない原因がどこにあるか」で決まる
今日は「介護で薬剤師を続けられない」という相談を扱う。辞めるかどうかの答えは、続けられない原因がどこにあるかで変わるんじゃ。
原因、ですか。私だったら「もう限界」としか言えない気がします…。相談者さんも、早退のたびに頭を下げているとありましたし。
その「もう限界」を分けてみると、たいてい3つのどれかに行き着く。勤務先の問題か、介護サービス側の問題か、自分の心身の問題じゃ。
3つ…。同じ「続けられない」でも、出どころが違うということですか?
そうじゃ。そして勤務先と介護サービスが原因なら、辞める以外の打ち手がまだ残っておる。心身が限界なら、優先すべきは仕事の判断より休むことじゃな。

逆に言うと、原因がどこにあるか分からないまま辞めるかを決めるのは、けっこう危ないんですね。
危ないというより、決めようがない。材料が揃っておらんからの。じゃから今日この場で結論を出さんでよい。
少しほっとしました。「早く決めなきゃ」と自分を追い込んでいる方も多そうです。
順番はこうじゃ。まず原因がどこにあるかを見分ける。次に勤務先へ介護のことを伝える。それでも難しければ、辞める前に職場を変えることを考える。
辞めた人の理由で最も多いのは「辞めたかった」ではない
その前に、実際に介護で辞めた人がどうだったかを見ておこう。厚生労働省の委託調査で、介護を理由に離職した759人に、当てはまる理由を複数回答で聞いておる。
介護に専念したくて辞めた、という方が多いんでしょうか。
それが違うんじゃ。いちばん多いのは「仕事を続けたかったが、勤務先の問題があった」で32.4%。次が「続けたかったが、介護保険サービスなどが利用できなかった」で25.6%じゃ。
「続けたかったが」から始まる回答が上位なんですね…。
「介護に専念したいと思い、辞めたかった」は13.3%にとどまる。最も多く挙がった理由は「辞めたかった」ではなく、「続けたかったが、続けられなかった」の側なんじゃ。
望んで辞めたわけじゃない方がそれだけいるのは、正直きついです。何が違ったんでしょう…。
もう一つの数字が手がかりになる。介護を始めてから辞めるまでの期間じゃ。半年未満が55.3%。1か月未満で辞めた人も9.6%おる。
しかもこの割合は、3年前の同じ調査(55.8%)とほとんど変わっておらん。個人の事情というより、構造的な傾向と見たほうがよい。
半年というと、介護保険の申請やサービスの調整が、ようやく回り始めるかどうかの時期ですよね。
よい着眼じゃ。一般に、認定の申請から介護の体制が整うまでには時間がかかるし、職場の理解も伝えてすぐ変わるものではない。この調査は離職時点で体制が整っていたかまでは調べておらんが、離職が集中する時期と体制づくりの時期は重なっておる。
じゃあ「続けられない」と感じるのは、頑張りが足りないからではなくて…。
まだ体制が整う前なだけ、という場合も十分にありうる。自分の頑張りの問題と決めつける前に、整える時間を確保する価値があるんじゃ。
いや、介護離職者全般が対象で、薬剤師に限った数字ではない。ただ、傾向として押さえておく価値はある。
年代でも差はあるんでしょうか。相談者さんは40代後半でした。
令和6年の雇用動向調査では、離職者のうち介護・看護が理由の人は全体で1.3%じゃ。ところが女性の55〜59歳では6.7%、男性の45〜49歳では6.2%まで上がる。
特定の年代に集まっているんですね。相談者さんが弱いわけではない、と。
そういうことじゃ。なお、この数字は事業所が答えた離職理由という点は頭に置いておくとよい。
あなたの「続けられない」はどこから来ているか
ここからは、自分の「続けられない」がどこから来ているかを確かめていく。当てはまるものが複数あってもよい。まずどれが一番重いかを見るんじゃ。
!「続けられない」の出どころを確かめるチェックリスト
勤務先に原因がある場合 — 制度がない、あっても使いにくい
勤務先が理由で辞めた人に、何が問題だったかを聞いた結果がある。「両立支援制度が整備されていなかった」が49.6%、「制度を利用しにくい雰囲気があった」が4割ほどじゃ。
制度が無いのと、あるけど使えないのと…。似ているようで別ですね。
そこが肝心じゃ。制度の有無と職場の空気は別問題で、どちらかによって次にやることが変わる。
順番が決まっておる。まず就業規則に介護の規定があるか、次にそれを使った人が職場におるかじゃ。
就業規則って、実はちゃんと読んだことがないかもしれません…。
明日できることは一つじゃ。就業規則の「介護」の項目を1か所だけ開いてみる。備え付けの冊子でも、社内システムでもよい。規定があれば、あとは使い方の話になる。
1か所だけなら、休憩時間でもできそうです。もう申し出たのに断られた、という場合はどうなりますか?
それは対処の仕方が変わってくる。別に整理した記事があるから、そちらを見るとよい。
あわせて読みたい薬剤師が介護休業を取れないときの対処法|辞める前に確認すべき2つのステップ
介護休業は法律で定められた権利であり、人手不足を理由に拒否できません。正しい申し出の手順と、それでも変わらないときの選択肢を解説しています
介護サービス側に原因がある場合 — 使えない、使い方がわからない
次は介護サービス側じゃ。介護側の体制が薄いまま、仕事のほうだけを削ろうとすると限界が早く来る。
早退や欠勤を増やしても、介護そのものは減らないですもんね…。
まさにそこじゃ。このタイプに必要なのは働き方の変更ではなく、介護側の設計のほうじゃな。
ケアマネジャーさんには、どう相談すればいいんでしょう。病院にいると、ご家族が「何を頼めるのか分からない」とおっしゃる場面をよく見ます。
目的を先に言葉にするとよい。「仕事を続けたいと思っています。そのために足りないものを教えてください」と伝えるんじゃ。
変わる。ケアマネジャーは、本人が仕事を続ける前提かどうかで組み立てを変えるからの。
前提が伝わっていないと、家族が家にいられる想定で組まれてしまうかもしれない、と。担当の方がまだいない場合は?
地域包括支援センターに電話すればよい。場所は市区町村の窓口で教えてもらえる。
あわせて読みたい薬剤師が親の介護と仕事を両立するには?厚労省「両立6ポイント」で最初にやるべきことを整理
要介護認定の申請からケアマネジャーとの初回面談、介護保険サービスの組み立てまで、両立体制を作る最初のロードマップを解説しています
自分の心身に原因がある場合 — 眠れない、体が動かない
3つ目は自分の心身じゃ。夜中に何度も起こされる日が続く。休日に寝ても回復しない。以前は気にならんかったことで涙が出る。
うむ。このタイプに最初に必要なのは、辞めるかどうかの判断ではなく休むことじゃ。
でも、休む選択肢があると気づけないまま、辞めるほうへ行ってしまいそうです。
じゃから順番が大事でな。辞める前に、まず主治医か職場の産業医に相談してほしい。療養が必要なら、退職の前に、勤務先の休職制度で回復に専念できないか確認する道がある。
退職してしまうと、その選択肢は使えなくなるわけですね。
そうじゃ。体調の判断は医師にしかできん。わしから言えるのは、受診を勧めるところまでじゃな。
勤務先に「介護に直面している」と伝える — 2025年4月から会社の義務になったこと
次は、勤務先に伝える話じゃ。一度言って流された人ほど、もう一度言う気にはなれんじゃろう。
相談者さんも「みんな大変だから」で終わってしまったとありました。あれは伝えた側が悪いわけじゃないですよね。
もちろん違う。そして2025年4月から、会社側の立場が変わっておるんじゃ。
育児・介護休業法が改正されての。介護に直面したと申し出た人に対して、事業主は両立支援制度を個別に説明し、利用の意向を確認することが義務になった。
説明するのが義務…。こちらから調べて交渉しなくてよくなった、ということですか?
申し出れば会社が説明する立てつけになった、ということじゃ。40歳前後の人への早めの情報提供や、制度を使いやすくする環境の整備も義務になっておる。
それは知りませんでした。ただ、現場にどこまで届いているかは職場によりそうです…。
届いておるかどうかは職場次第じゃな。さっきの調査では、勤務先の問題で辞めた人に「どんな職場の取組があれば続けられたと思うか」も聞いておる。いちばん多かった答えが「両立支援制度の個別の周知」で56.9%じゃ。
勤務先が理由で辞めた方が一番ほしかったものが、いまは会社の義務になっているんですね…。
そういうことになるの。伝え方は、長く準備せんでよい。「親の介護が始まったので、使える制度を教えてください」の一言で足りる。
構わん。人事や本部の窓口につないでもらえば、それで目的は果たせる。
相談者さんのケースは、上司の方が冷たいというより…。
改正の中身が現場に下りておらん場合も考えられる。制度の話として伝え直す余地はあるということじゃな。
薬剤師の職場だと、この一言がすごく重くなる気がします。
そこは正直なところじゃ。調剤や鑑査は薬剤師以外が代われん。少人数の体制では、急な欠員が出ると、残る薬剤師の負担や職場の運営に響きやすい。
だから「休みたい」ではなく「迷惑をかける」から話が始まってしまうんですね。
わしが調剤薬局におった頃も、家庭の事情を最後まで言わずに辞めていった人がおった。言えば手はあったかもしれんのにな。
人員の手当ては、本来は個人ではなく職場が考えることじゃ。伝えるのはわがままではなく、情報の共有と思ってよい。
介護休業や介護休暇も、そのとき一緒に聞けばいいんでしょうか。
制度ごとに使える場面と条件が違うから、そこは会社の説明を受けながら確認するとよい。ここでは名前を挙げるにとどめておこう。
それでも続けられないなら、辞める前に職場を変える
制度を申し出て、介護側の体制も整えた。それでも今の職場では続けられん。そう判断したときの選択肢は、辞めることだけではない。
職場を変える、ということですか。でも辞めてから探すのと、何が違うんでしょう。
同じ調査では、離職後に再就職した人に、再就職で選んだ働き方を複数回答で尋ねておる。最も多い「正規雇用を選んだ」でも45.9%で、「非正規雇用を選んだ」は21.3%じゃ。
戻り方は人それぞれで、全員が元と同じ条件で戻れるわけではないんですね…。
数字から言えるのはそこまでじゃ。ただ一般論として、辞めてから探すと生活の都合が先に立って、条件を選ぶ余裕は狭くなりがちでの。在職のまま探すほうが、収入を保ったまま条件を比べられる。
探すとなると、やっぱり業態で選ぶことになりますか? 調剤か病院か、みたいな。
それは勧めん。同じ業態でも、休める職場と休めん職場があるからの。見るべきは構造じゃ。
構造というと、具体的には何を見ればいいんでしょう。
3つある。まず、薬剤師が何人体制で回っておるかじゃ。
人数に余裕があれば、一人抜けてもその時間が止まらないですもんね。
2つ目は、急な欠員が出たときの運用が決まっておるかどうか。3つ目は、介護を理由に休んだ人が実際におるかじゃ。
人数はともかく、あとの2つは求人票には載っていない気がします。
そのとおりじゃ。運用や実績は、面接で聞くか転職エージェントに確認してもらう項目でな。求人票で分かることと、聞かないと分からんことを分けておくと迷わん。
何を誰に聞くかが決まっていれば、確認も進めやすいですね。
求人の具体的な選び方や、エージェントへの伝え方は別にまとめてある。
あわせて読みたい介護中の薬剤師が働きやすい職場の選び方|エージェント依頼文テンプレ付き
求人票だけでは分からない「急な休みへの対応力」を、転職エージェントへの依頼文や面接での逆質問テンプレで見極める方法を解説しています
正社員のまま職場を変えるほかに、雇用形態そのものを変える道もありますよね。
ある。ただ順番としては、同じ雇用形態で条件の合う職場を探すのを先に試すほうが、収入の面では有利じゃ。
いきなり働き方を落とさなくていい、というのは救いがあります。
転職を決めておらんでも、情報を集めるだけなら今日からできる。まずは転職サイトの選び方から見てみるとよい。
🔍比較ガイド薬剤師転職サイトの選び方・使い方
登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説
退職も選択肢になるとき — 決める前に確認したいこと
ここまで辞める前にできることを見てきたが、退職が選択肢に入る場合もある。それも隠さずに言うておこう。
それはどんなときでしょう…。自分が当てはまるのか、正直まだ分からないです。
状態の重さだけで決まるものではない。制度も介護サービスも休業も確かめたうえで、それでも続けるのが現実的に難しく、自分として退職を選びたいときじゃ。心身の不調が深いときや、看取りが近い時期に、そう考えるのは無理もないことでな。
間違いではない。ただ、決める前に確認の順番がある。自分の体調は主治医や産業医に、介護の体制はケアマネジャーに、辞める前に相談してほしい。
相談した結果、休職や介護休業で立て直す道が見つかることもあるんですね。
ある。自分の療養なら、勤務先の休職制度を使えるかを確認する。介護の体制を整え直すなら介護休業じゃ。介護休業は介護に専念するための休みではなく、両立の体制を整えるための準備期間とされておる。
準備期間…。辞めて介護に専念する前提の制度ではないんですね。
使えるかどうかは会社の規定と状況によるから、そこは確認が要る。そのうえで退職を選ぶ場合も、できれば在職のまま次の見通しを作っておきたい。
とはいえ、介護の先行きが読めないと「いつから働けます」とは言いにくそうです。
確定できんでもよい。相談できる相手を持っておくかどうかで、戻るときの負担が変わるんじゃ。
ブランクを心配される方も多そうです。私の友人にも、家庭の事情で一度現場を離れた人がいます。
介護での離職は珍しいことではない。復職の面接では「介護の状況が落ち着いたので復帰したい」と事実を伝えれば説明は通る。隠す必要はないぞ。
事実として言っていいんだ、と分かるだけでも気が楽になりますね。
まとめ:期限を決めて、いったん「辞めない」を選ぶ
この記事のまとめ
- 1続けられない原因は勤務先・介護サービス・心身の3つ。前2つなら打ち手が残る
- 2介護離職の55.3%は介護開始から半年未満に集中。決める前に確認の時間を取る
- 32025年4月から、申し出れば会社が制度を説明する義務がある
- 4辞めると決める前に、在職のまま職場を変える選択肢を検討する
今日決めねばならんのは、辞めるかどうかではない。いつ判断するかじゃ。
再判断する日を決めて、それまでは「辞めない」を暫定の答えにしておく、ということですね。
そうじゃ。再判断の日は、会社から制度の説明を受け、ケアマネジャーとの相談がひと巡りした時点に置くとよい。そこまでに原因の所在も確かめれば、判断の材料が揃う。
「もう限界」で止まっていた人が、確かめる順番を持てるのは大きいです。相談者さんにも、まだ手が残っていると伝えたいです。
原因を確かめた結果、今の職場の体制そのものが変わりそうにないと分かることもあります。その場合も、辞めてから探すより、在職のまま条件の合う職場を比べるほうが選択肢は広く残ります。転職を決めていなくても、情報を集めるところからは今日始められます。
🔍比較ガイド薬剤師転職サイトの選び方・使い方
登録から内定まで、自分に合うサイトの選び方を解説