50代で立ち仕事の体力が限界だが年収は下げられない方へ。つらさが根性の問題ではない根拠と、負担を左右する門前の診療科・人員体制・在宅の3条件、収入の下限の決め方、求人票・見学・エージェントのどこで何を確認するかを整理します。
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読者からの相談52歳、調剤薬局に勤めて20年以上になります。処方箋が集中する夕方は3時間近く座れないまま調剤台に立ちっぱなしで、帰る頃には腰と膝が固まって駅の階段を下りるのがつらいです。休みの日は一日寝て回復に使ってしまいます。定年まで、まだ10年以上あるのに、この体で立ち続けられる気がしません。かといって住宅ローンと下の子の学費が残っているので、収入を減らすわけにもいきません。薬剤師の仕事自体は続けたいのですが、体力の限界を感じています。
📌この記事のポイント
- 体力が限界でも、同じ調剤薬局のなかで負担の軽い職場は選び直せる
- まず確認したいのは門前の診療科・人員体制・在宅の有無の3条件
- 体力の条件と収入の下限を決めてから、求人票・見学・裏取りで確かめる
まず結論:体力の限界は「辞める理由」ではなく「職場を選び直す理由」
今日は、体力の限界を感じておる50代の薬剤師さんからの相談じゃ。読んでいて、この方が2つの道しか見えなくなっておるのがよくわかる。
我慢して続けるか、収入を諦めて負担を減らすか、ですよね。住宅ローンとお子さんの学費が残っているとなると、後者は選びにくいですし…。読んでいて息苦しくなりました。
そうじゃな。だが、その2つの間にもう1本道がある。同じ薬剤師として、同じ雇用形態のまま、負担の軽い職場へ移るという道じゃ。
同じ雇用形態のまま、ですか。でも薬剤師の仕事って、どこへ行っても立ち仕事ですよね?
立ち仕事であることは変わらん。変わるのは「どれだけ立ち続けるか」と「立っている間に何をしているか」じゃ。求人段階でまず確認したいのは、門前の診療科、人員体制、在宅の有無の3つ。体力の限界は、薬剤師を辞める理由ではなく、職場の条件を選び直す理由なんじゃ。
…言われてみれば、同じ病院薬剤師でも部署によって全然違いますもんね。「辞めるか我慢するか」ではなくて「条件を選び直す」。少し気持ちが軽くなりました。
ただし、先に一つだけ。痛みや強い疲労が続いておるなら、職場探しと並行して医療機関にも相談してほしい。原因を確かめんまま、転職だけで解決しようとせんことじゃ。
たしかに…。ご相談の方は階段を下りるのもつらくて、休日を回復に使っている状態ですもんね。職場を変えれば済む話とは限らない。
そのうえで、もう一つ伝えておきたい。体力がきついのは、甘えでも根性不足でもない。これはわしの感想ではなく、国の指針がそう扱っておるんじゃ。
50代で体がきつくなるのは、根性の問題ではない
厚生労働省に「職場における腰痛予防対策指針」というものがある。腰痛が起きやすい作業を5つ挙げておってな、そのうちの1つが「立ち作業」じゃ。
立ち作業が名指しされているんですね。何が書いてあるんですか?
事業者が講ずべき対策として、こうある。「長時間の連続した立位姿勢保持を避けるため、腰掛け作業等、他の作業を組み合わせる」。休憩の頻度も「おおむね1時間につき、1、2回程度小休止・休息を取らせ、下肢の屈伸運動やマッサージ等を行わせることが望ましい」とな。
1時間に1、2回…? 調剤室でそれができている職場、あるんでしょうか。
そこじゃ。夕方に処方箋が集中する3時間、小休止も、座って行う工程との組み合わせも、まず成立しておらん。指針にはほかに、床が硬い場合はクッション性のある作業靴やマットで衝撃を緩和すること、作業台は肘の角度がおよそ90度になる高さにすること、とも書かれておる。
床や作業台の高さまで…。どれも、自分の頑張りではどうにもならないところですね。
そこが肝心でな。この指針は個人にではなく事業者に向けて書かれておる。少なくとも、長時間の立ち作業による腰への負担を、本人の根性や体力だけの問題にすることはできん。指針でも、作業時間や人員配置、床、椅子を含めて対策するものとされておる。
「自分の体力が落ちたせいだ」と思い込んでいた方には、大きい話ですね。ただ、年齢のことはどう扱われているんでしょう。
腰痛の発生要因として、動作要因・環境要因・個人的要因・心理社会的要因の4つが並べて挙げられておってな。年齢はそのうち個人的要因の1つじゃ。指針はこれらを「多元的」で、作業の様子や働く人の状況と密接に関わって変化するもの、としておる。
つまり…「年のせい」と「職場のせい」は、どちらか一方を選ぶ話じゃないってことですか?
よい整理じゃ。年齢は変えられん。だからこそ、変えられる側の要因——どんな作業を、どれだけ続けて、どんな環境でやるか——を選び直す意味があるんじゃ。
脚のむくみや血管の浮き出しが気になる、という話も聞きますが…。
長時間の立ち仕事は下肢静脈瘤のリスク要因として知られており、加齢も同じくリスク要因に挙げられておる。2つが重なる年代じゃな。気になる症状があるなら、先ほど言ったとおり受診が先じゃ。ここから先は、体をどう治すかではなく、体に合わせて働く場所をどう選ぶかの話をしよう。
同じ調剤薬局でも1日の疲れ方は違う——まず確認したい3つの条件

同じ「調剤薬局の正社員薬剤師」でも、3つの条件で1日の体の使い方はまったく別物になる。断っておくが、この3つですべてが決まるわけではない。設備や調剤室の動線、事務員との分担も効く。ここで挙げるのは、求人段階で最初に確認できる入口じゃ。
入口が3つ、ということですね。同じ薬剤師の仕事なのに、そこまで変わるものなんですか…。
門前の診療科で、調剤の「中身」が変わる
まず調剤そのものの手間じゃ。眼科の門前では点眼薬が処方の中心になり、総合病院の門前で見るような複雑な処方は多くない。一方で皮膚科の門前は、外用ステロイドや保湿剤が中心で軟膏やクリームの混合調剤が多くなる。
軟膏の混合…! 病院でもやりますけど、あれは本当に時間がかかります。均一に混ぜるのは力もいりますし。
しかも混合したものは余った分を次に回せんから、処方のたびに作ることになる。転職メディアの記事では「眼科・皮膚科の門前は処方が軽くて楽」とひとくくりにされておることがあるが、皮膚科についてはそのまま受け取らんほうがよい。
違う。ただしな、同じ皮膚科の門前でも軟膏練り機があれば話は変わる。診療科名だけで負担が決まるわけではないんじゃ。内科・小児科・整形外科の門前は処方箋の枚数そのものが多くなりやすいが、これも設備や分担しだいでな。じゃから診療科ごとに「何を聞くか」を決めておくとよい。
門前の診療科ごとに確認したいこと(傾向であり、店舗ごとに差があります)
| 門前の診療科 | 確認したい処方・作業 | 求人選びで聞くこと |
|---|
| 眼科 | 点眼薬の本数、服薬指導の集中 | ピーク時間の枚数と、そのとき何人いるか |
| 皮膚科 | 軟膏・クリームの混合の件数 | 軟膏練り機の有無、混合は1日何件あるか |
| 小児科 | 散薬・水剤・一包化 | 自動分包機と監査設備、繁忙期はいつか |
| 内科・整形外科 | 多剤処方、一包化、湿布などの数量 | 一包化の件数、患者が集中する時間帯 |
診療科名は手がかりであって、答えではないんですね。何をどれだけやるかを聞く。これなら求人票の一行からでも質問が作れます。
わしが調剤薬局におった頃、門前の科が違う店舗へ移ったことがあってな。処方箋の枚数はほとんど変わらんのに、1日の終わりの疲れ方がまるで違って驚いたものじゃ。
枚数が同じでも、疲れ方が違う…。実際に移った方の実感だと説得力がありますね。
人員体制で、立ちっぱなしの「時間」が変わる
2つ目は人員体制じゃ。ここでも、見るべきは処方箋の枚数そのものではない。
枚数じゃないんですか? 「1日◯枚」って、求人票でいちばん目立つ数字ですけど…。
見るべきはピーク時間に実際に何人いるかじゃ。求人票の「薬剤師5名」を鵜呑みにはできん。非常勤の方は勤務時間が違うし、全員が同じ時間帯におるとも限らんからの。常勤に換算して何人か、夕方に何人が調剤室に入るか——そこまで確かめたい。
「5名」と書いてあっても、夕方に5人いるとは限らないんですね…。
うむ。事務員や調剤補助者との分担も効く。それに、人が足りん職場ではもう1つ別のことが起きる。座って進められる業務が、全部あとに回るんじゃ。薬歴入力、報告書作成、発注や在庫の確認——これらがピークに押し出されると、立ち続ける時間が途切れずに伸びていく。
…あ、冒頭のご相談の「夕方は3時間近く座れない」って、まさにこれですよね。
そこに気づいてくれたか。相談者さんが座れんのは、要領が悪いからではない。座って進める業務がピーク後に押し出される人員配置になっておるからじゃ。さきほどの指針でいう「腰掛け作業を組み合わせる」が、構造的にできなくなっておる状態でな。
在籍人数ではなく、ピーク帯に何人いるか。そこを聞くようにします。
そもそも1人体制で休憩そのものが取れていないという場合は、話が負担の軽い重いではなく体制の問題になります。その場合はこちらもあわせてご覧ください。
あわせて読みたい1人薬剤師で休憩が取れないのは違法?労基法の根拠と、構造的に解決しない職場の見極め方
1人体制で法定休憩が取れない状態について、労基法上の考え方と、体制が変わる見込みのある職場かどうかの見極め方を解説
在宅の有無で、体の「使い方」が変わる
3つ目は、調剤室の外に出る仕事があるかどうかじゃ。在宅のある職場では、訪問先までの運転、薬剤や器材の持ち運び、集合住宅の階段の上り下りが加わる。
そこは一律には言えん。移動中は座っておられるから、立位が途切れるという見方もできる。週に何件あるのか、車か徒歩か、施設の在宅か個人宅か。それによって負担の質はかなり変わるんじゃ。
一概に「在宅ありは避けたほうがいい」とはならないんですね。
ならん。やりがいを感じて在宅を選ぶ方もおる。あくまで身体的な負担という軸で見たときに条件が変わるという話じゃ。ただし求人票の「在宅あり」という一言からは、週何件なのかまではわからん。求人票では分からないことがある——この点が、あとの話につながる。
たしかに、その差は大きいのに求人票には出てこないですね。
収入を下げずに探すために、先に決めておく3つの数字
ここで大事な話をしておこう。「同じ雇用形態のまま移れば収入は変わらない」とは限らん。
変わる。役職手当がなくなる、賞与の月数が違う、残業の前提が変わる。基本給が同じでも年収は動くんじゃ。だから求人を見はじめる前に、3つの数字を決めておく。
- 直近1年の総支給額を出す(月給の記憶ではなく、賞与・手当・残業代を含めた1年の合計。源泉徴収票を1枚見れば済む)
- 絶対に下回れない額と、条件次第で許容できる額を分けて書く
- 求人と比べるときは総支給額どうしで比べる(基本給だけでなく、賞与の月数・手当・残業の前提まで揃える)
「今いくらもらっているか」を正確に把握するところからなんですね。下回れない額と許容できる額を分けるのは、何のためですか?
月給の記憶だけで進めると賞与の差で数十万円ずれるからの。そして体力の条件と収入の条件は、どこかで折り合いをつけることになる。そのとき下限が決まっておれば「ここまでは譲れる」の判断が早い。決めておらんと、求人を見るたびに迷うことになる。
うむ。あとは求人の年収レンジを早い段階で確かめること。応募が進んでから食い違いに気づくのが、いちばんつらいからの。
体力の3条件と、収入の3つの数字。両方を持って探すということですね。
求人段階でどう見分けるか——聞く相手を分ける
条件が決まったら、次は確かめ方じゃ。求人票に書いてあることと書いていないことがあるからの。何を、どこで確かめるかを分けておく。
何を、どこで確かめるか
| 確かめること | どこで確かめるか |
|---|
| 門前の診療科/1日の処方箋枚数/在籍する薬剤師の人数/在宅の有無/勤務時間帯/年収レンジ | 求人票(応募前に絞り込める入口) |
| ピーク時間に調剤室にいる人数/薬歴や報告書をいつ処理しているか/休憩が実際に取れているか/軟膏練り機・分包機などの設備/調剤台の高さと調剤室の動線 | 見学・面接(夕方の時間帯を希望する) |
| 採用の背景と欠員の理由/直近の定着状況/繁忙の時間帯/在宅の実際の件数 | エージェントに確認を頼む(開示範囲には限りがある) |
こうして並べると、求人票で分かるのは最初の1段だけなんですね。あとは全部、見学か裏取りに回っています。
そこが肝心じゃ。求人票に書いていないことを求人票で探しても、時間を使うだけでな。分けておけば、どこで何を聞けばよいかが決まる。
たしかに…。「軟膏練り機があるか」なんて、求人票を何度読んでも書いていないですし、設備は写真でも分かりません。
じゃから見学の機会があれば、夕方の時間帯を希望するとよい。いちばん知りたい場面が見られるし、そのときに設備や動線も自分の目で確かめられる。裏取りのほうは、自分では聞きにくいことを回すのがコツじゃな。採用の背景、欠員の理由、直近の定着状況。ただし、すべてが開示されるとは限らん。分かる範囲で、と頼んでおくのがよい。
面接で直接うかがうのは、たしかにためらいます…。ちなみに、面接で体力の話を出すのは不利になりませんか?
伝え方しだいじゃな。「体力に不安があります」とだけ言うと、採用側は業務範囲を判断できずに不安を持つことがある。抽象的に言うほど心配されると思ってよい。
条件で伝えるんじゃ。「長時間続けて調剤台に立つ体制ではなく、薬歴入力などと業務を切り替えられる職場を希望しています」——こう言えば、長く働くために必要な条件の話になる。3つの条件を持っておれば、そのまま言葉にできるじゃろう。
弱みを打ち明けるのではなく、条件をすり合わせる場になるんですね。
そういうことじゃ。50代の求人探しでは、年齢層に合う求人を持っておるか、店舗の人員体制や在宅の件数まで確かめてもらえるかで差が出る。自分に合うサービスを先に絞っておけば、あちこち登録せずに済む。いきなり応募する必要はない。まずは自分の条件に合った探し方を確かめるところから始めるとよいぞ。
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打ち手には順番がある——今の職場から、働き方を変えるのは最後
最後に、打ち手の順番を整理しておこう。3段階じゃ。
1つ目は、今の職場で調整すること。椅子の配置、作業台の高さ、床のマット、ピーク帯の人の配置——さきほど見たとおり、どれも指針が事業者の対策として挙げておるものじゃ。相談する材料になる。
担当業務の入れ替えもある。ピーク帯だけ座って進める工程に回してもらう、在宅の担当件数を見直してもらう、といった相談じゃな。2つ目が、同じ雇用形態のまま職場を変えること。今日の3つの条件で選び直す方法で、この記事の中心はここじゃ。
正社員のまま、負担の軽い職場へ移るということですね。そして3つ目が…? なぜこの順番なのかも気になります。
3つ目は勤務時間や雇用形態を変えることじゃ。時短、パートへの切り替え、派遣といった選択肢になる。この順番なのは、収入への影響が小さいものから試すほうが、生活設計を崩さずに済むからでな。ご相談の方には住宅ローンと学費があるからの。
たしかに、いきなり3つ目に行くとそこが崩れてしまいます…。
パートへの切り替えは、体力の問題に対しては有効な選択肢の1つじゃ。じゃが最初に選ぶ手ではない。1と2を検討せんまま3へ進むと、変えずに済んだ収入まで変えてしまうことがある。
正社員とパートのどちらが良いという話ではなく、順番の話なんですね。
まとめ:条件を選び直すのは、長く働くための設計
この記事の要点
- 1長時間の立ち作業による腰の負担は、国の指針が事業者に対策を求めている
- 2まず確認したいのは門前の診療科・人員体制・在宅の有無の3条件
- 3求人票で分かるのは入口まで。作業量と設備は見学と裏取りで確かめる
- 4打ち手は今の職場から。働き方を変えるのは最後にとっておく
体に合わせて職場の条件を選び直すのは、逃げでも妥協でもない。定年まで、あるいはその先まで薬剤師を続けるための設計じゃ。
「体力が限界だから辞めるしかない」と思い詰めていた方が、「条件を選び直せばいい」と思えたら、見える景色がまったく変わりますね。
そうじゃな。20年以上現場に立ってきた経験は、どの職場でも通用する。変えるのは働く場所の条件であって、これまで積み上げてきたものではないからの。まずは自分に合う探し方を確かめるところから始めてみるとよい。
積み上げてきたものは持っていける。そう思えるだけで、少し前を向けそうです。
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