薬剤師が育児と仕事を両立するために使える制度を、子の年齢順に整理しました。時短勤務は原則3歳まで、残業免除は小学校入学前まで、子の看護等休暇は小3まで。2025年の法改正で広がった制度と、時短中の収入を補う給付金も解説します。
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読者からの相談 調剤薬局で働く薬剤師です。1年の育休のあと時短勤務で復帰して2年、なんとか回してきました。でも先日、上の子が3歳になる来月から時短が使えないと言われました。「うちは3歳までの決まりなので」と。フルタイムに戻ったらお迎えに間に合いません。仕事と育児の両立をどうにか続けてきたつもりでしたが、この先も薬剤師を続けられるのか急に分からなくなりました。
📌 この記事のポイント
薬剤師が育児と仕事を両立するのに使える制度は、子の年齢で次々と切り替わっていく 最大の山場は3歳。ここから先に何が使えるかは、会社が選んだ制度しだいで変わる 2025年の法改正で使える手はむしろ増えた。時短中の収入を補う給付金も新設された 1 まず結論:育児中に使える制度は「子の年齢」で切り替わる 2 0歳から1歳:育児休業中にもらえるお金は2025年に1つ増えた 3 3歳になるまで:時短勤務は原則として会社に用意する義務がある 4 3歳を過ぎると、時短が使えるかは会社の選択しだいになる 5 残業免除は小学校入学前まで、子の看護等休暇は小3まで対象が広がった 6 制度を確認しても回らないなら、職場の人員・運用・勤務条件を疑う 7 まとめ:いま確認するのは就業規則の1か所だけ まず結論:育児中に使える制度は「子の年齢」で切り替わる 育児と仕事の両立が、ある日を境に急に苦しくなる。これはな、相談者さんの頑張りが足りんからではないんじゃ。使える制度のほうが、子の年齢で切り替わるように作られておる 。
頑張りの問題じゃなくて、制度の作りだったんですね…。急に「来月から使えません」と言われたら、自分のやり方が悪かったのかと思ってしまいそうです。
そう思わんでよい。切り替わりは0歳から小学3年まで何度もある。なかでも働き方そのものを組み直すことになる大きな節目が、3歳 、小学校入学 、小学3年生の終わり の3つじゃ。育休や給付金は、その手前の1歳・2歳でも切り替わるぞ。
そんなに何度もあるんですか…。ということは、いま大丈夫でも、また同じことが起きるかもしれないってことですよね。
逆に言えば、いつ起きるかが分かっておれば身構えられる。じゃから今つらいなら、確かめるのは1つだけでよい。自分の子の年齢では今どの制度が使えて、次に切り替わるのはいつか 。これが分かると「あと何年このやり方が続けられるのか」が読めるようになる。
先が読めないのがいちばん不安ですもんね。制度の名前を全部覚えるのは大変そうですけど…。
覚えんでよい。下の図で、自分の子の年齢の欄だけ見ればよいんじゃ。
ここからは年齢の順に見ていく。自分の子の年齢のところから読んでもらって構わんぞ。
0歳から1歳:育児休業中にもらえるお金は2025年に1つ増えた まずは育児休業からじゃ。原則として子が1歳になるまで取れて、保育所に入れんなどの事情があれば最長で2歳まで延ばせる。
延長の話は職場でもよく聞きます。保育園に入れるかどうかで予定が変わってしまうのは、みなさん大変そうです。
その間の収入を支えるのが育児休業給付金じゃ。厚生労働省の資料では、休業開始から180日目までは休業前賃金の67%、それ以降は50%と示されておる。
半年を過ぎると5割まで下がるんですね。そこは知っているつもりでも、実際に振り込まれる額を見ると重く感じそうです。
そこへ2025年4月から、上乗せがひとつ加わった。出生後休業支援給付金 じゃ。夫婦がともに14日以上の育児休業を取ったとき、最大28日分について13%が上乗せされる。育児休業給付金の67%と合わせると、実質的に手取りの10割ほどになる期間ができる。もっとも給付の計算に使う賃金には上限が決められておるから、もともとの賃金が高い人ほど10割には届きにくい。
手取りの10割ですか!それは知らなかったです。育休中はどうしても収入が減るものだと思っていました。
ただし、ここは勘違いされやすいところじゃ。これは出生直後の期間だけ の制度でな。母親の場合は産後休業が終わってから8週間以内が対象になる。育休の間ずっと13%が乗るわけではない。
なるほど…。「育休中ずっともらえる」と思っていると、あとでがっかりしてしまいますね。
うむ。なお配偶者が専業主婦、専業主夫の場合やひとり親の場合など、配偶者側の要件には例外が設けられておる。当てはまりそうなら勤め先か、ハローワークで確かめるとよい。
夫婦そろって取らないと駄目、と決めつけずに済みますね。
そもそも職場で育休を言い出しにくい、取らせてもらえないという段階でつまずいている場合は、対処の仕方が別にあります。
あわせて読みたい薬剤師が育休を取れない・辞めたいときの対処法|法的権利と状況別の2つの道
育休を言い出せない・断られた場合に、法律上どこまで認められているかと、状況別の進め方を解説しています。
3歳になるまで:時短勤務は原則として会社に用意する義務がある 復帰したあと、いちばん多く使われるのが時短勤務じゃ。正式には「所定労働時間の短縮措置」という。
制度の名前で言われるとかたく感じますけど、要するに勤務時間を短くする、あの時短ですよね。
そうじゃ。これはな、3歳未満の子を育てる人のために、会社が用意せねばならん措置 として育児・介護休業法の23条に定められておる。原則は1日6時間の勤務を選べるようにすることじゃ。
会社の好意じゃなくて義務なんですね。「うちは特別に認めてあげている」みたいな空気の職場もあると聞くので、そこは知っておきたいところです。
大事な点じゃ。ただし、誰でも無条件に使えるというわけではない。労使協定があると、勤めて1年に満たない人や、週の勤務が2日以下の人は対象から外れることがある。業務の性質上どうしても短時間勤務が難しい場合も同じでな、そのときは会社が代わりの措置を用意することになっておる。
「制度がある」と「自分も使える」は別なんですね…。自分が対象かどうかは、どこで分かりますか?
そこも就業規則の「育児・介護休業規程」に書いてある。対象から外れる人の条件も、代わりの措置も、載っておるはずじゃ。この記事で何度も出てくるが、確かめる先はいつも同じところじゃな。
あわせて所定外労働の制限 も請求できる。いわゆる残業免除で、請求すれば所定の時間を超えて働かせることができなくなる。こちらは時短より長く使えて、後で見るとおり小学校入学前まで残るぞ。
時短と残業免除はセットで考えていいんですね。時短にしたのに結局残業していたら意味がないですもんね。
ただし残業免除のほうにも対象外の条件があるうえ、事業の正常な運営を妨げる場合には会社が請求を断れることになっておる。請求すれば必ず通る、とまでは言えんのじゃ。
収入の面でも、2025年4月に新しい給付ができた。育児時短就業給付金 じゃ。2歳未満の子を育てながら時短勤務をする雇用保険の被保険者に、支払われた賃金額の原則10%が支給される。賃金と給付の合計が時短前の賃金を超えんよう、調整が入ることもある。
減った分を全部は埋められないにしても、1割戻ってくるのは助かりますね。
ここで1つ、知っておいてほしいずれがある。給付金の対象は2歳未満まで、時短勤務の措置義務は3歳未満まで でな、1年ずれておるんじゃ。
つまり、子どもが2歳を過ぎたら時短は続けられるけれど、給付だけ止まるということですか…?
そのとおりじゃ。2歳の誕生日で手取りが少し下がる。先に見込んでおけば慌てずに済む。
そこは知らないと「何かの手続きを忘れたのかな」と焦ってしまいそうです。
この時期がいちばん制度の厚い期間じゃ。逆に言えば、今のやり方が制度に支えられておるのはここまで、ということでもある。
時短にすると収入がどれだけ下がるのかを具体的に把握しておきたい場合は、内訳を分解した記事があります。
あわせて読みたいママ薬剤師が時短で年収ダウン|下がり方が妥当か確かめる3つの物差し
時短勤務で年収がどれだけ下がるのか、その下がり方が妥当かを確かめる手順を解説しています。
3歳を過ぎると、時短が使えるかは会社の選択しだいになる さて、冒頭の相談者さんがぶつかったのが、まさにこの3歳の壁じゃ。「うちは3歳までの決まりなので」という説明はな、実は法律の作りをそのまま映しておる。
えっ、あの説明は間違っていないんですか。てっきり職場が制度を出し惜しみしているのかと思いました…。
出し惜しみとは限らんのじゃ。3歳未満で会社の措置義務が終わったあと、仕組みそのものが入れ替わる。3歳から小学校就学前までは「柔軟な働き方を実現するための措置」 が受け皿になる。2025年10月から始まった制度じゃ。
名前だけ聞くと良さそうですけど、時短とは別物なんですね。
別物じゃ。この制度では、事業主が次の5つの選択肢から2つ以上 を用意して、働く側はその中から1つ を選んで使う。
始業時刻等の変更(時差出勤やフレックスタイム制など) テレワーク等(月10日以上利用できるもの) 保育施設の設置・運営等 養育両立支援休暇(年10日以上) 短時間勤務制度 短時間勤務は5つのうちの1つでしかないんですね…。ということは、会社がそれを選んでいなければ…。
そう、3歳以降は時短が使えないことがあり得る 。「うちは3歳まで」という説明は、その意味では間違っておらんのじゃ。
それを聞くと余計に不安になりますけど、打つ手がないわけではないですよね?
もちろんじゃ。裏を返せば、会社は必ず2つ以上を用意せねばならん 。時短がなくとも、別の手が用意されておるはずでな。始業時刻の変更が選ばれておれば、出勤を早めて退勤も早める形でお迎えに間に合うかもしれん。テレワークが選ばれておれば、月の何日かは通勤の時間を家庭に回せる。
「時短はありません」で会話が終わってしまうのがいちばんもったいないんですね。
そのとおり。じゃから3歳が近づいたら、就業規則の「育児・介護休業規程」を開いて、自社が5つのうちどれを選んでおるかを確かめてほしい 。これが今日できることじゃ。総務や人事に「3歳以降に使える措置を教えてください」と聞いてもよい。
時短がないと言われた時点で諦めずに、「では何が用意されていますか」と続けるわけですね。
よい言い換えじゃ。それともう1つ、2025年10月から始まったものがある。個別の意向聴取・配慮 じゃ。会社は、子が3歳になる前の適切な時期に、働き方についての本人の意向を聴いて、配慮せねばならんことになった。聴取の対象には勤務時間帯や勤務地も含まれる。
希望を伝える場が、制度としてちゃんと用意されているんですね。自分から切り出すのは勇気がいるので、それは心強いです。
その場で慌てんために、就業規則を先に見ておく意味がある。ただし気をつけてほしいのは、会社に求められておるのは意向を聴いて配慮することであって、希望どおりにする義務まで定められておるわけではない、という点じゃ。
通ることもあれば通らないこともある、と身構えておいたほうがよさそうですね。
時短が使えなくなり、お迎えの時間に間に合わなくなりそうなときは、勤務時間帯そのものを動かす手を先に検討することになります。
あわせて読みたい薬剤師が保育園のお迎えに間に合わない|シフト調整と職場見直しの3ステップ
お迎えの時間に間に合わないときに、勤務時間帯をどう動かすかを段階的に解説しています。
残業免除は小学校入学前まで、子の看護等休暇は小3まで対象が広がった 「3歳で時短が終わったら、あとは打つ手なし」と思われがちじゃが、そうではない。むしろ2025年4月の法改正で、対象年齢が広がった制度が2つある。
減っていく話ばかりだと思っていたので、広がったものもあると聞くと少しほっとします。
1つは所定外労働の制限 、残業免除じゃ。もともとは3歳未満が対象じゃったが、2025年4月から小学校就学前 まで広がった。
時短が使えなくなっても、残業を減らす手は入学前まで残るということですか。フルタイムに戻る不安が、少しは軽くなりますね。
もう1つが子の看護等休暇 じゃ。子の病気やけが、予防接種や健康診断のときに取れる休暇で、年次有給休暇とは別枠でな。子1人につき年5日、2人以上なら年10日まで取れて、時間単位でも使える。
有給とは別に取れるのはありがたいです。実際は有給を削って対応している方も多いと聞きます。
この制度も2025年4月に変わってな。対象が小学校就学前から小学3年生の修了まで に広がった。取れる理由にも、感染症による学級閉鎖 や入園式・卒園式・入学式への参列 が加わっておる。行事なら何でも、というわけではない。
学級閉鎖で使えるようになったのは大きいですね…!子どもは元気なのに預け先だけがなくなる日って、いちばん困るところだと思います。
ほかに時間外労働の制限 と深夜業の制限 も、小学校就学前まで請求できる。前者は残業を月24時間・年150時間までに抑える請求、後者は午後10時から午前5時までの勤務を免除する請求じゃ。ただしこの2つは改正前から就学前が対象で、2025年に広がったわけではない。
「2025年に残業まわりが全部広がった」と覚えてしまうと不正確なんですね。広がったのは所定外労働の制限のほうだけ、と。
制度の対象が小3で切れると分かると、次に気になるのは小学校に上がったあとです。保育園より預かり時間が短くなる「小1の壁」については、別の記事で扱っています。
あわせて読みたい薬剤師が「小1の壁」で時短を続けられないと感じたら|入学前後でできる3ステップ
小学校入学で預かり時間が短くなる時期に、入学前と入学後で何ができるかを解説しています。
制度を確認しても回らないなら、職場の人員・運用・勤務条件を疑う ここまでの制度をひととおり確かめても、それでも回らんことがある。その場合、足りておらんのは制度そのものではなく、職場の人員や運用、勤務条件のほうかもしれん。
制度を調べ尽くしても解決しないときは、そもそも土俵が違うということですね。
次のどれかに当てはまるなら、制度をさらに調べるより職場の条件を変えるほうが早い段階に来ておる。
3つとも、自分の努力ではどうにもならないことばかりですね…。
この3つはな、それぞれ制度・人員・運用という別の層の話じゃ。どれか1つでも当てはまるなら、相談者さんが制度を使いこなせておらんのではない。制度を使える余地が、職場の側に用意されておらんということじゃ。
層で分けてもらうと、自分を責める話ではないんだと整理できます。
もっとも、効いておるのがこの3つ以外ということもある。通勤に時間がかかりすぎる、会社が選んだ措置と自分に必要な手がずれておる、といった具合にな。当てはまらんかったからといって、気のせいということではないぞ。
「どれにも当てはまらないから我慢するしかない」と思わなくていいんですね。
どんな職場なら回るのか、その条件と確かめ方は別の記事にまとめています。
あわせて読みたいママ薬剤師が働きやすい職場の見極め方|育児と仕事を両立できる求人の3条件
育児に理解のある職場を見分ける3つの条件と、求人票や面接での確かめ方を解説しています。
薬剤師の場合、この人員の問題が他の職種より重くのしかかる。薬剤師が不在の時間は調剤ができず、調剤室を閉じることになるからじゃ。事務スタッフが何人おっても、薬剤師1人の穴は薬剤師でしか埋められん。
少人数の薬局で「休みます」と言いにくいのは、遠慮の問題ではなくて構造の問題なんですね。
わしが調剤薬局におった頃も、薬剤師2人体制で片方が育児中という職場を見てきた。制度の上では権利があっても、現場には圧がかかりやすい。人が薄い職場では、誰かが悪いわけでもないのに、そうなってしまうんじゃ。
だからこそ、人員に厚みがあるかどうかは、育児中の薬剤師にとって優先度の高い条件になるんですね。
そういうことじゃ。今の職場でこれ以上の調整が難しいと感じたら、育児との両立を条件に入れて探してくれる相手を選ぶ ところから始めるとよい。すぐ動かんでも、どこに相談できるかを知っておくだけで気持ちの余裕が変わるぞ。
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まとめ:いま確認するのは就業規則の1か所だけ この記事のまとめ
1 使える制度は子の年齢で切り替わる。大きな節目は3歳・小学校入学・小3修了 2 3歳以降に何が使えるかは、会社が5つから選んだ2つ以上で決まる 3 残業免除は入学前まで、子の看護等休暇は小3まで。2025年に対象が広がった 4 制度を使っても回らないなら、職場の人員・運用・勤務条件を疑う 制度はどれも名前がかたくて覚えにくいが、やることは1つでよい。就業規則の「育児・介護休業規程」を開いて、自社が選んだ措置を確かめる。 自分の子の年齢で次にいつ切り替わるかは、この記事の図に戻れば分かる。それだけで、「あと何年もつのか」という不安の輪郭がはっきりするぞ。
全部を理解しようとしなくていいと分かると、今日にでも動けそうです。就業規則って、いざ開こうと思わないとなかなか見ないものですし。
切り替わる時期を先に知っておけば、その月が来てから慌てて辞めるかどうかを決めずに済む。準備できる期間があるというのは、それだけで選べる道が増えるということじゃ。
「続けられるか分からない」から「次は3歳のときに備えればいい」に変わるだけで、気持ちがずいぶん違いますね。
制度を確認したうえで、それでも薬剤師を続けられるか迷いが残る場合は、判断の材料を整理した記事もあります。
あわせて読みたいワーママ薬剤師が「続けられない」と感じたら|辞める前に確かめたい3つのこと
辞めるかどうかを決める前に、続けられる条件が残っているかを確かめる手順を解説しています。