薬剤師として職場が合わないと感じても、仕事そのものが向いていないとは限りません。調剤をする職場で共通する仕事と、人数や処方箋の量など職場で変わることを分け、嫌だった場面を次の職場で確かめる条件に書き換える方法を紹介します。
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読者からの相談調剤薬局で働いて4年目の薬剤師です。昼に処方箋が一気に来るのに、薬剤師は私ともう1人だけです。患者さんに「まだ?」と言われながら服薬指導をする毎日で、もうこの職場は合わないと感じています。でも、服薬指導がしんどいのは、自分が薬剤師に向いていないからかもしれません。職場を変えても同じだったらと思うと、動けません。
📌この記事のポイント
- 調剤をする職場なら調剤・疑義照会・服薬指導は共通で、処方箋の量や相手は職場で変わる。合わなくても向いていないとは限らない
- 処方箋の量や対応する相手、薬剤師の人数が変われば平気な場面なら、問題は職場のほう
- 職場の問題と分かったら、嫌だった場面を「次の職場で確かめる条件」に書き換えて求人を比べる
まず結論:職場が合わないだけなら向いていないとは限らない。量や相手が変われば平気な場面は職場の問題
毎日「合わない」と感じていると、自分が薬剤師に向いていないのでは、と考えてしまうものじゃ。先に答えを言っておこう。調剤をする職場なら、どこへ行っても共通する基本業務は、処方箋による調剤・疑義照会・情報提供と指導の3つじゃ。
その3つの中に嫌なことがあったら、やっぱり向いていないってことになるんでしょうか…。相談者さんも、服薬指導がしんどいのは自分のせいかもと書いていましたよね。
そうとは限らん。嫌なのが人の態度や人数、処方の量、休憩や勤務時間なら、変えるのは職場じゃ。服薬指導そのものが嫌に思えても、量や相手が今と違っていたら平気だという場面なら、それも職場の問題じゃ。
「職場か自分か」の二択だと思っていたけど、仕事そのものがつらいと感じる場面にも、職場の事情が関係しているんですね。
うむ。数字も一つ見ておこう。厚生労働省の令和7年雇用動向調査で、辞めて別の勤め先に入った人が前の職場を辞めた理由を見てみよう。「職場の人間関係が好ましくなかった」は女性11.5%・男性8.9%じゃ。「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」は女性12.9%・男性8.5%じゃ。どちらも「仕事の内容に興味を持てなかった」の女性4.6%・男性5.2%より多い。
辞めた理由としては、仕事の内容より、人間関係や働く条件を挙げた人のほうが多いんですね。
そうじゃ。ただ、全産業の値で薬剤師だけの数字ではないし、「興味を持てなかった」は「向いていない」と同じ意味でもない。この数字から言えるのは、全産業では人間関係や労働条件を理由に挙げた人のほうが、仕事の内容に興味を持てなかった人より多い、ということまでじゃ。
数字が何を表しているのかを知ったうえで読むのが大事なんですね。
それから、怒鳴る・無視するといった行為が続いておるなら、職場か仕事かを考えるより先に、パワハラにあたらないかを確かめてほしい。
怒鳴る・無視するといった行為が続いている方は、こちらの記事で対処法を確認してください。
あわせて読みたい薬剤師がパワハラ上司から逃れるには?転職で環境を変える判断基準
怒鳴る・無視するといった行為が続いている方へ。相談窓口と、転職で環境を変える判断基準を解説します
我慢して考え続けるより、先に身を守るほうが大事ですね。
うむ。眠れない、休日も回復しないといった状態が続いておるなら、まず休むことと受診を優先してほしい。厚生労働省の「こころの耳電話相談」にも無料で相談できる。
こころの耳電話相談:0120-565-455(平日17:00〜22:00、土日10:00〜16:00。受付は終了10分前まで。祝日・振替休日・年末年始は休み)
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調剤・疑義照会・服薬指導は調剤をする職場で共通の基本業務。処方の内容や人数は職場で違う
職場を変えても同じことになったら、と思うと動けなくなるものじゃ。そこで、どこへ行っても共通する基本業務が何なのかを、法律で確かめておこう。e-Gov で薬剤師法の条文を読むと、薬剤師が調剤するときは、処方箋にもとづき、その内容を勝手に変えずに調剤すること(23条)が求められておる。
「転職しても同じだったら」という不安に、法律から答えるんですね。
うむ。処方箋に疑わしい点があれば、医師に確かめてから調剤することも決まっておる(24条)。もう一つが25条の2で、調剤した薬剤について情報提供と、薬学的知見に基づく指導を行うこと。いわゆる服薬指導じゃ。
24条は、いわゆる疑義照会ですね。処方に疑問があれば医師に確かめる、あの仕事が法律に書かれているんですね。

ほかに、処方箋への記入(26条)や調剤録への記入(28条2項)といった記録の義務もある。調剤をする職場なら、記録もどこへ行ってもついてくる仕事じゃ。
記録も含めて、ここまでがどの職場にも共通する基本業務なんですね。
一方で、薬局に何人の薬剤師を置くかは、省令で最低限が決まっておるだけじゃ。必要な薬剤師の人数は、1日平均の処方箋の数を40で割った数以上じゃ。眼科・耳鼻咽喉科・歯科の処方箋は、1枚を3分の2枚として数える。
最低限だけ…ということは、実際の人数は職場ごとに違うんですね。
そうじゃ。この基準は、前年の処方箋の数から出した1日の平均で数える。端数は切り上げで、最低でも1人じゃ。ただし、混む時間帯に何人置くかまでは決めておらん。
1日の平均だけだと、昼に処方箋が集中する薬局の忙しさは分からないんですね。
うむ。何人をどの時間帯に置くか、処方箋がどこからどれだけ来るか、誰と働くかは職場が決める。扱う処方や患者さん、具体的な業務内容も職場によって違う。基本業務は共通でも、働き方まで同じというわけではないんじゃ。
共通するのは基本業務で、扱う処方や忙しさ、一緒に働く人は職場ごとに違うんですね。
ただし、調剤のないドラッグストアで働いておる人には、この3つの仕事がそもそもない。じゃから、3つの仕事を基準にしたこの分け方は、そのまま当てはまらん。
調剤のない職場だと、物差しそのものが違うんですね。
調剤のないドラッグストアで働いていて、業態そのものが合わないと感じている方は、こちらの記事が参考になります。
あわせて読みたいドラッグストア薬剤師を辞めたい|理由の出どころ別に、移り先で確かめる条件
ドラッグストアを辞めたい理由を売場の仕事・勤務の時間帯と場所・仕事の中身に分け、移り先の求人で確かめる条件を解説します
明日の勤務で嫌だと感じた場面を書き出し、「仕事」か「職場」かの印を付ける
「合わない」という気持ちはひとかたまりで押し寄せてくるから、どこが嫌なのか自分でも分からなくなる。そこで、明日の勤務で「嫌だ」と感じた場面を、スマホに1行ずつメモしてみてほしい。数は決めなくてよい。
明日の1日分だけでいいんですね。でも、どう書けばいいのか迷いそうです…。
- 13時台、待合が満席なのに薬剤師は2人だけだった
- 管理薬剤師に処方の確認を頼んだらため息をつかれた
- 服薬指導そのものがしんどかった
これなら休憩中でも書けそうです。最後の1行は、相談者さんの悩みに近いですね。
書き出したら、帰り道に、それぞれの横に印を書く。嫌だったのが仕事そのものなら「仕事」、職場の事情なら「職場」じゃ。「職場」のほうから付けていくと迷いにくいぞ。
人の態度や人数、処方の量、休憩が嫌だった場面には「職場」と書く
嫌だったのが、一緒に働く人の態度、薬剤師の人数や処方箋の量、調剤・疑義照会・服薬指導・記録以外の業務(品出しや電話番など)、休憩や勤務時間なら、「職場」と書く。どれも職場ごとに違うものじゃからの。
さっきの例だと、満席なのに2人だけの場面と、ため息の場面は「職場」ですね。
その通りじゃ。調剤・疑義照会・服薬指導・記録そのものが嫌だった場面には「仕事」と書く。先ほどの例の「服薬指導そのものがしんどかった」がそうじゃな。どちらか迷ったら「仕事」にしておけばよい。本当に仕事の問題かは、量や相手を変えて確かめられる。
「仕事」と書いても、まだ向いていないと決まったわけじゃないんですね。
相談者さんの場面も同じように分けられる。昼に処方箋が一気に来る中、2人で回すのがつらいなら「職場」。「まだ?」と急かされながら指導するのがつらく、服薬指導そのものが嫌なのかもしれないと思うなら、いったん「仕事」じゃ。
同じ昼の場面でも、何が嫌だったかで印が変わるんですね。
特定の人と合わないのは職場の問題で、薬剤師に向いていないからではない
「職場」の代表的なものが、管理薬剤師や同僚、事務スタッフなど、特定の人と合わない場面じゃ。
薬局で働いている友人からも、人数が少ないと合わない人と一日中顔を合わせることになる、と聞いたことがあります。
職場の人数が少ないほど、合わない相手を避けにくくなる。じゃが、それは仕事の中身ではなく、その職場の人の組み合わせの問題じゃ。嫌な場面の中心が特定の人だったなら、次の記事が参考になるぞ。
書き出してみて、嫌な場面の中心が特定の人だった方は、こちらの記事が参考になります。
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書き出してみて、嫌な場面の中心が特定の人だった方へ。逃げ場のない少人数の職場での対処法と、限界の見極め方を解説します
「仕事」と書いた場面は、量や相手が変わっても嫌かを確かめる
服薬指導や調剤そのものが嫌に思えると、「やっぱり向いていないのか」と自分を責めたくなる。じゃが、「仕事」と書いた場面にも、処方箋の量や対応する相手、薬剤師の人数といった職場の事情が隠れておることがある。そこで、「仕事」の場面にだけ「量・相手・人数が今と違っても嫌か」を自分に聞くんじゃ。
量や相手を変えて想像してみるんですね。それでも嫌だったら…?
量や相手が変わっても嫌なら、職場ではなく仕事そのものへの迷いに近い。嫌でなければ、印を「職場」に書き換える。問いの例を挙げておこう。
- 1日の処方箋が半分でも、服薬指導そのものが嫌か
- 穏やかな患者さんが多い職場でも、服薬指導が嫌か
- 電話がすぐつながる医療機関が相手でも、疑義照会が嫌か
「穏やかな患者さんが多い職場でも」と置き換えるだけで、答えが変わりそうな気がします。
相談者さんの「仕事」の場面にも、「急かされず、薬剤師が3人いる職場でも、服薬指導が嫌か」と聞いてみてほしい。嫌でなければ「職場」に書き換える。そうなれば、変えるのは職場じゃ。
最初に「仕事」と書いても、この問いで「職場」に変わることがあるんですね。最初の印だけで決めないのは、そのためなんですね。
そうじゃ。量や相手が違う職場を想像しても嫌だと感じるなら、すぐに決めんでよい。薬剤師の仕事そのものから離れることも考えたい場合は、続けるか辞めるかを整理する記事を読んでみるとよい。
仕事そのものへの迷いは、急がずに別の記事で整理できるんですね。
量や相手が変わっても嫌な場面が残り、薬剤師の仕事そのものから離れることも考えたい方は、こちらの記事で整理できます。
あわせて読みたい「薬剤師になるんじゃなかった」と後悔したら|続けるか辞めるか決める前に確かめること
薬剤師の仕事そのものから離れることも考えたい方へ。続けるか辞めるかを決める前に確かめることを整理します
「職場」と書いた場面を、次の職場で確かめる条件に書き換えて求人を比べる
嫌な場面が職場の事情だと分かっても、それだけでは「次はどこならいいのか」が見えず、また同じような職場を選ぶのでは、と不安になる。そこで、「職場」と書いた場面を、次の職場で確かめる条件に書き換えるんじゃ。
「嫌だ」を「こういう職場がいい」に言い換えるんですね。
うむ。「どんな職場ならこの場面が起きないか」を1つの条件にして、求人票・面接・転職エージェントのどこで確かめるかまで決めておく。よくある場面を表にしておこう。
嫌だった場面を、次の職場で確かめる条件に書き換える
| 嫌だった場面 | 次の職場で確かめる条件 | どこで確かめるか |
|---|
| 混む時間帯に薬剤師が自分だけ、または自分ともう1人で対応している | 混む時間帯の薬剤師数と、その時間帯の処方箋の受付状況 | 面接・転職エージェント |
| 特定の人と合わず、避けようがない | 職場の薬剤師・事務の人数、異動があるか | 面接・転職エージェント |
| 処方箋が昼に集中し、待ち時間が長くなる | 時間帯ごとの処方箋の集中度と、混雑時の応援体制 | 面接・転職エージェント |
| 困ったとき相談できる先輩・管理薬剤師がいない | 処方の確認や判断に迷ったとき、誰に聞くかが決まっているか | 面接 |
| 休憩が取れない | 昼休みの回し方(閉局か交代か) | 面接・転職エージェント |
相談者さんの場面だと、2人で回す昼の場面は1行目、処方が昼に集中することなら3行目ですね。
そうじゃ。昼の場面が「職場」なら、「混む時間帯の薬剤師数と、その時間帯の処方箋の受付状況」(1行目)と「時間帯ごとの処方箋の集中度と、混雑時の応援体制」(3行目)を確かめるんじゃ。1日の処方箋の枚数だけでは、昼にどれだけ集中するかは分からんからの。服薬指導の場面も「職場」に書き換えたなら、相談者さんが急かされるのは、混む時間帯の人手が足りんからじゃろう。じゃから、1行目の条件で確かめればよい。
条件になっていれば、職場を変えても同じだったら…という不安も小さくなりそうです。
求人票と面接で、それぞれの条件をどう確かめるかは、別の記事にまとめてある。
書き換えた条件を、求人票のどの欄と面接のどの質問で確かめるかは、こちらの記事で解説しています。
あわせて読みたい薬剤師のホワイトな職場の見分け方|求人票で読む4つと、面接で聞く4つ
書き換えた条件を、求人票のどの欄と面接のどの質問で確かめるかを詳しく知りたい方へ
ほかの職場の求人を見る前に、今の職場で人を増やしてもらえるか、別の職場へ異動できるかを、上司に一度聞いてみるのも手じゃ。今の職場で改善できるならそれでよいし、難しいと分かれば、希望する条件を持ってほかの職場の求人を見る理由がはっきりする。
今の職場で状況を変えられるかを先に聞いておけば、ほかの職場の求人を見るときに迷わずに済みますね。
そうじゃ。求人を見るのは、書き換えた条件に合う職場が実際にあるかを確かめることじゃ。転職を決めるのはその後でよい。求人を比べる転職サイトも、自分に合うものを診断で確かめておくとよい。30秒で終わり、転職意欲は「まずは情報収集したい」を選べばよいぞ。
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まとめ:基本業務は共通でも働き方は職場で違う。嫌だった場面を条件に変えて、合う職場を探そう
この記事のまとめ
- 1調剤・疑義照会・情報提供と指導は、調剤をする職場で共通の基本業務。働き方は職場で違う
- 2人の態度や人数、処方の量、休憩が嫌なら、変えるのは職場
- 3仕事そのものが嫌に思えても、量や相手が変われば平気なら、それも職場の問題
- 4職場の問題なら、嫌だった場面を確かめる条件に書き換えて求人を比べる
「合わない」と感じることは、薬剤師に向いていない証拠とは限らん。相談者さんなら、明日の昼の服薬指導のあとに1行書いて、「急かされなければ平気か」を自分に聞いてみるとよい。
答えが「平気」なら、変えるのは職場なんですね。毎日つらくて「合わない」と感じていた状態から、何が合わないのかを確かめられるようになるんですね。
職場の事情だと分かったら、条件を持って次を探せばよい。診断で自分に合う転職サイトを絞っておき、昼の人員配置のような細かい条件は、求人を紹介してもらうときや面接で個別に確かめるとよいぞ。
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困ったときに相談できる先輩や管理薬剤師がいないことが多く、処方の確認や判断を一人で抱える緊張がつらかった方は、こちらの記事が参考になります。
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