新薬承認

トボラフェニブを承認 BRAF遺伝子変異又は融合遺伝子を有する低悪性度神経膠腫に新たな治療選択肢

記事公開:承認日:

薬の概要

販売名
  • オジェンダ錠100mg、オジェンダドライシロップ300mg
一般名
  • トボラフェニブ
効能・効果
  • BRAF遺伝子変異又は融合遺伝子を有する低悪性度神経膠腫

注目ポイント

低悪性度神経膠腫(low grade glioma:低悪性度の脳腫瘍)は、増殖が比較的ゆっくりでも、脳の中で大きくなることで神経症状や視機能障害、けいれんなどにつながることがあります。特に小児では、長期にわたって治療が必要になりやすい病気です。 今回承認されたトボラフェニブは、BRAF(B-Raf proto-oncogene, serine/threonine kinase:B-Rafキナーゼ)を標的にする薬です。BRAF遺伝子の変異や融合により、MAPK(mitogen-activated protein kinase:分裂促進因子活性化タンパクキナーゼ)経路が常に働きやすくなり、腫瘍の増殖を後押しします。本薬はBRAFのキナーゼ活性を阻害し、この増殖シグナルを弱めることで腫瘍の抑制を狙います。 承認の根拠になったFIREFLY-1試験は、化学療法歴のあるBRAF遺伝子変異又は融合遺伝子を有するLGG患者を対象にした海外第Ⅱ相試験です。主要評価項目の奏効率は、RANO-HGG(Response Assessment in Neuro-Oncology high grade gliomas:神経腫瘍領域における奏効評価-高悪性度神経膠腫)基準で62.3%でした。事前に設定された閾値21%を上回っており、審査では一定の有効性が示されたと判断されています。小児を含む患者で、既存治療の次の選択肢になりうる点が注目ポイントです。 もう1つの特徴は、錠剤とドライシロップ剤の2製剤があることです。体表面積に応じて週1回経口投与する設計で、小児ではドライシロップ剤を使う場面が想定されています。条件付き承認であり、日本人患者での薬物動態試験や製造販売後調査が求められているため、実臨床での使い方と安全性の確認が今後も重要です。


注意点

【投与設計・製剤】 本薬は週1回の経口投与です。用量は体表面積(body surface area:体表面積)で決まり、通常用量は錠剤とドライシロップ剤で次のとおりです。 ・錠剤 - 0.90 m2以上1.12 m2以下:400 mg - 1.13 m2以上1.39 m2以下:500 mg - 1.40 m2以上:600 mg ・ドライシロップ剤 - 0.30 m2以上0.35 m2以下:125 mg - 0.36 m2以上0.42 m2以下:150 mg - 0.43 m2以上0.48 m2以下:175 mg - 0.49 m2以上0.54 m2以下:200 mg - 0.55 m2以上0.63 m2以下:225 mg - 0.64 m2以上0.77 m2以下:275 mg - 0.78 m2以上0.83 m2以下:300 mg - 0.84 m2以上0.89 m2以下:350 mg - 0.90 m2以上1.05 m2以下:375 mg - 1.06 m2以上1.25 m2以下:450 mg - 1.26 m2以上1.39 m2以下:525 mg - 1.40 m2以上:600 mg 他の抗悪性腫瘍剤との併用での有効性・安全性は確立していません。併用の有無は処方監査時に確認が必要です。 【特に注意したい副作用】 審査では、重度の皮膚障害、骨成長の遅延、貧血、光線過敏症、腫瘍出血、肝機能障害、不整脈が重要な注意点とされています。実務では、以下を意識すると確認しやすいです。 ・皮膚障害/光線過敏症 - 発疹、そう痒、紅斑、日光で悪化する皮膚症状がないかを確認します。 - 日光や紫外線への対策が前提です。 - 忍容できないGrade 2以上、またはGrade 3以上では休薬・減量・中止の判断が必要です。 ・貧血・血球減少 - 倦怠感、顔色不良、息切れ、検査値低下を確認します。 - Grade 3以上の貧血や輸血を要する例があり、定期的な採血が重要です。 ・腫瘍出血 - 鼻出血だけでなく、頭蓋内腫瘍出血も報告されています。 - 頭痛、神経症状の変化、急な状態悪化があれば早めの評価が必要です。 ・肝機能障害 - AST(aspartate aminotransferase:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(alanine aminotransferase:アラニンアミノトランスフェラーゼ)、ビリルビン上昇に注意します。 - 検査値異常が中心でも、継続投与可否の判断が必要になります。 ・不整脈/心臓障害 - 動悸、失神、脈の乱れの訴えがないか確認します。 - 心拍数変化やQT関連の評価が必要になる可能性があります。 【小児で特に見る点】 骨成長の遅延が重要なリスクです。身長の伸び、成長速度、通院記録を長期的に確認する必要があります。小児患者では、原疾患の影響と薬剤の影響が重なることもあるため、成長の変化を見落とさないことが大切です。 【相互作用】 本薬はCYP(cytochrome P450:薬物代謝酵素)やトランスポーターに影響する可能性があります。審査では、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP3A、BCRP(breast cancer resistance protein:乳癌耐性タンパク)、MATE1(multidrug and toxin extrusion 1:多剤排出輸送体1)などが論点になりました。処方・持参薬確認では、代謝酵素阻害薬や誘導薬、経口薬の併用に注意してください。 【妊娠・授乳】 動物試験で胚・胎児への影響が示唆されており、妊娠可能な女性には投与中および最終投与後の避妊が必要です。男性患者にもバリア法を用いた避妊が求められます。授乳への影響も否定できないため、妊娠・授乳の有無は必ず確認します。 【運用面】 本薬は条件付き承認で、承認後も日本人患者での薬物動態試験と製造販売後調査が予定されています。導入時は、適切な施設要件のもとで投与される点を踏まえ、薬剤部としても副作用モニタリングと患者指導の体制確認が重要です。


まとめ

トボラフェニブは、BRAF遺伝子変異又は融合遺伝子を有する低悪性度神経膠腫に対する新しい経口治療薬です。海外第Ⅱ相試験で一定の有効性が示されましたが、皮膚障害、骨成長の遅延、貧血、光線過敏症、腫瘍出血などへの注意が必要です。条件付き承認のため、日本人での薬物動態や使用実態の確認も今後の重要なポイントです。


詳細は審査報告書をご確認ください。

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